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『どうぶつだいすき』 ヨゼフ・ラダ絵 イジー・ジャーチェク文 飯島周訳 平凡社 2005年3月
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チェコの国民的画家、ヨゼフ・ラダさんの生誕100周年を記念して刊行された絵本の待望の邦訳。
人そっくりに大胆に2本足で立つ、どこかとぼけて憎めない動物たちが、こっくりした色使いもはっきりした輪郭もきっちりしたバランスも美しく、クククとコミカルにチクリとシニカルに、楽しい世界にご招待!
「いつでもようきにしていればなんでもきっとうまくいく!」
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2005年春に出た、大物ラインナップ。 これですよ、これ(以前情報を教えていただきました猫丸さま、本当にありがとうございました!)。
チェコの国民的画家、ヨゼフ・ラダさん(1887-1957)の生誕100年を記念して刊行された本、だそうです。 原書は『Mame radi Zvirata』Albatros、1987、とあります。
全頁カラフルで愉快痛快、ニヒルでシニカルでコミカルでクククと笑いがこみ上げてきそうな、楽しい動物たちのイラストが満載。小ぶりなサイズながらも豪華愛蔵決定版。
一つ一つのイラストに添えられた楽しい詩は、イジー・ジャーチェクさん、という、1945年お生まれのチェコの風刺作家、詩人、子どもの本の作家などなど、多才な現代作家によるもの、だそうです。
ヨゼフ・ラダさんのイラストの本、といえば、これまで、『きつねものがたり』(福音館書店) のみ入手可能、ほかはすべて品切れ状態だった、という淋しさですから、この邦訳出版のニュースは本当に嬉しかったのですよ!
版元の平凡社さんといえば、ジビュレ・フォン・オルファースさんの『ねっこぼっこ』 などを復刊、そして初邦訳出版してくださっている注目の出版社さま。本当にありがとうこざいます!
さて。 『どうぶつだいすき』です。 邦訳に使用されている紙質が、またこれ味わいある紙なのです。決してツルツルピカピカではない、画用紙のような、温かみのある感じの白い紙。 そのせいか、ヨゼフ・ラダさんの温かいイラストが、しみじみとしみこんでいるようで、真新しい絵本なのに、どこか懐かしいような、やわらかな手触りを感じます。 つやをおさえた黄色い表紙も、見返しの黄色い紙も、大人のこだわりと心意気を感じます。
その分、乳幼児のどろどろべたべたお手手に好き勝手に触られては、致命的な汚れを吸い込んでしまうような危険性なきにしもあらずですので少々お気をつけくださいませ(笑)。 いえいえ、そのようなちっぽけなことを恐れているようでは、真の芸術を伝えてゆくことは出来ないですよね。
まさしく、ヨゼフ・ラダさんの美しく味わい深いイラストは、芸術書、美術書の域。 力強い確かな輪郭線をもち、すこしくすんでこっくりした色をほどこされた、表情豊かな動物たちは、牧歌的で、親しみやすく愛嬌たっぷり。 あるべきところにくっきりと記された線、あるべきところにぴったりとおさまった色形は、何度眺めてもあきない、いちまいいちまい飾っておきたくなるような、完成された美しさ。
動物たちのまんまるくつぶらな白い瞳は、邪気がなく、天真爛漫で、まるで小さな子どもたちみたい。 2本足で立ち、両手を使う擬人化された動物たちのポーズは、どこかしゃちほこばっていながらも、一生懸命自分の足で歩こうとする幼児の元気な動きを思い出します。 ラダさんの絵を眺めていると、のびのびと遊ぶ子どもたちを見ているような、ほのぼのと和やかでにぎやかな、のんびりと幸せな光景が、心に浮かんでくるようです。
そして、その温かみとユーモアたっぷりのイラストのそれぞれに、ぴったりの楽しい詩がそえられているのですから、贅沢な子どもの詩集でもありますよね。
我が家のどろべた二歳には少し早すぎるかもしれませんが(笑)、二女、長女、特に、一年生の長女がひとりで音読するには、量・質ともにぴったりのテキストではないかと思います。
「いつもようきにしていればなんでもきっとうまくいく!」 と、帯にコピーのあるとおり、楽しくておかしくて、「笑う角には福きたる」絵本。
それから、ラダさんのイラストのかたすみに、ときおり咲く変わった形の花。なにやらしっかりとした茎ですっくとのび、肉厚そうなはなびらや花弁を持ち、心なしか毒をふくんでいそうな、つまり量さえ間違えなければものすごい薬になりそうな、個性的な印象深い花が、ラダさんのイラストの隠し味というか、さらに魅力を深めているスパイスなのかも。
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ヨゼフ・ラダさんの絵本 「や」の絵本箱へ

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