
くろいとんかち
ビーケーワン
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『くろいとんかち』 山崎英介さく 福音館書店 年少版こどものとも通巻154号 1990年1月号 品切れ
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なんとも不気味で面白い黒いとんかちにクロウするお話。 たたくとなんでもまっくろになる黒いとんかちを見つけて、かたっぱしから試しにたたきはじめたようたくんですが、ついには自分までまっくろに・・・!
色と光の粒子が描き出されたような不思議な空間に、そこだけ抜け落ちたような黒いとんかちの影がぽっかり。 ようたくんの子どもらしい好奇心が痛快で、次々とものがまっくろになっていく展開が子ども心をとらえます。 描かれているなつかしい風景も、奇妙で不思議な物語の雰囲気を盛り立てています。
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おばあちゃんのうちでるすばんのようたくんは、ものおきでくろいとんかちをみつけました。ためしにあたりのものをたたいてみると・・・、ありゃりゃ、まっくろ! さあ、とんかち探検(?)です。うちに戻って、台所も、お座敷も、みーんなたたいてまっくろくろに。ちょうしにのったようたくんは、ねこもたたこうとしますが、とびかかられて、あっ、とんかちが、ようたくんの頭に! どうしよう、ようたくんもまっくろです。 ・・・
力強い黒い輪郭に、赤青黄と元気一杯原色使いのようたくんの帽子が冴えています。ようたくんをとりまくまわりの空気は、かすれた版画のような、砂絵のような、霧のような、原色が入り混じった独特の雰囲気。 さまざまな濃度の色がたちこめた光の世界に、突然真っ黒一色できっちりとぬりつぶされたとんかちが出現したのですから、初めて目にしたときは、どっきーん。 そこだけ底知れぬ穴のように、かっぽりと別の空間に抜け落ちたように、うつろな真っ黒が広がっているのですから、なにやら不吉で、胸がざわめきます。
ようたくんが面白がって、つぎつぎととんかちでものをたたいていく場面は、なかなかぞくぞくと刺激的。間違えて自分まで真っ黒になったところはなおさら、強烈な印象が刻まれます。 おばあちゃんのうち、るすばん、ものおき、長い年月を経て忘れ去られた雑多なふるいものたち・・・と、キーワードがつぎつぎそろえば、やっぱりおばけ、もののけ、妖怪系のお話なのかしら。新しい種類の妖怪かな、でもいったい何をする何のための妖怪??? どこか想像力を刺激される絵本なので、もっともっと続編や、シリーズ化などを期待してしまいます。とんかちの仲間のお話など、子どもたちと考えるのも楽しいかも。
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かげくんのかくれんぼ
ビーケーワン
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『かげくんのかくれんぼ』 やまざきえいすけ 年少版こどものとも 通巻191号 1993年2月号 品切れ
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うわあ。おおきなかげくん。 帰り道、公園の階段に映る長いかげくんが・・・いきなり、ぼくの頭をバットの影でたたいて、逃げ出してしまったら! ねえ、かげくん、どこへいってしまったの?
光と影の粒子が織り成す砂絵のような不思議な絵の、じわり、こわくて、不思議な絵本。
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夕方、公園で友達とさよならしてふりむいた帰り道、目の前に長ーい影を見つけました。影も僕と同じ、バットとグローブを持っています。 ところが、その影が、ぼくの頭を影のバットでごつん! そればかりか、公園に逃げ出した! さがすぼくを尻目に、ゆうゆうと影にうつる遊具で遊ぶ影・・・。
今度はかげ。といっても、黒くなくて、全体的に青い色調でまとめられています。
今度の影はぬりつぶしではなく、他の影の色調と同じなので、もののけ的恐ろしさというよりは、どこか感傷的でたそがれた雰囲気。 泣きながら探すぼくと、知らん顔でちゃっかり影の遊具で遊ぶ影、一つの絵の中に相反する二つの世界が鏡のように合わさっていて、不思議な感覚。 物言わず動けぬはずの影くんが、突然反意を抱いて勝手に逃げだすなんて、よく考えたらやっぱり恐ろしい話ではあります。 闇と光の入れ替わる、黄昏時のあやうい雰囲気が、長く心に影を落とす魅力的な絵本。
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こっちむいて
ビーケーワン
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『こっちむいて』 山崎英介さく ちいさなかがくのとも 通巻46号 2006年1月号 福音館書店 |
金魚、ぶた、ばった・・・。 もしかすると、いつもみんなが見ているのは、私の横顔ばかりかしら? 絵になるのは横顔だけだなんて、いったい誰が決めたの? さあ、正面を向いた私の顔、あなたの目にはどう映るかしら?
シャッターチャンスを逃さず描いた、美しい写真のような絵本。
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こっちむいて はい、なんでしょう
まるでお散歩中の生き物たちに、横から声をかけて、振り向いてもらった瞬間の写真みたい。 横向きの姿と、同じ生き物の正面を向いた姿が、産毛の輝きまで逃さずピントぴったりに描かれていて、思わずカメラを構えているような、どきどきした気持ちになります。 普段正面からの印象のうすい生き物たちの、堂々の正面顔のアップ写真のような、息をのむ迫力。 一瞬の光や、風のゆらぎ、水のせせらぎをとらえながら、ほどよくぼやけた背景も、本当にファインダー越しに見つめているよう。
光を浴びる生き物たちの色が、こんなにも豊かで、こんなにも繊細で、こんなにも輝いているなんて・・・普段見過ごしていたような小さなことまでも、気が付かせてくれるような、いのちの絵本。
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