■ユリ・シュルヴィッツさんの絵本

1935年、ポーランド・ワルシャワ生まれ。4歳で第2次世界大戦をむかえワルシャワを離れ、パリ、イスラエルに移った後、美術学校で学ぷ。1959年、24歳でアメリカに渡り、1963年『ぼくとくまさん』(あすなろ書房)オンライン書店ビーケーワン:ぼくとくまさんで絵本デビュー、現在ニューヨーク在住。
『空とぶ船と世界一のばか―ロシアのむかしばなし』(岩波書店)オンライン書店ビーケーワン:空とぶ船と世界一のばか で、1969年コールデコット賞受賞、『ゆき』(あすなろ書房)オンライン書店ビーケーワン:ゆきで1999年コールデコット賞オナー賞受賞。

『ねむいねむいおはなし』*『ゆき』*『よあけ』*『あめのひ』
≫別頁『あるげつようびのあさ』*『ぼくとくまさん』
≫別頁*『たからもの』 

『ねむいねむいおはなし』あすなろ書房

『ねむいねむい
おはなし』
ユリ・シュルヴィッツさく
さくまゆみこやく

あすなろ書房
2006年

ねむいねむいよるの、
ねむいねむいへやの、
ふしぎなたのしいできごとのおはなし

読んでいるだけで楽しくなり、穏やかになっていく絵本。
ページを開けば月明かりの夜。ユリ・シュルヴィッツさんの描く、ところどころに淡い色の光をうかびあがらせた藍色の世界が、美しく静かに横たわっています。
どこからかやってくる不思議な調べが、ほんのりと明るい色を添えて、パレードのようにうきうきと、ひととき、部屋中を楽しませてくれます。そのひかえめににぎやかな様子は、部屋中の家具やものにさりげなく描かれた顔からも伝わってきて、なんだか一緒にリズムを刻んでしまいそう。

オンライン書店ビーケーワン:ねむいねむいおはなし

ユリ・シュルヴィッツさん2006年の新作。
静かな闇にほの白く浮かぶおすまし顔の三日月が印象的。でもよく見ると、一番印象に残るのは、その三日月の下の小さなおうちの窓と入り口だったりしませんか?なんとなく、なんとなく、顔みたいに見える・・・。

ページを開くと、その疑問はたちまち氷解します。なんとなく顔みたい、ではなく、はっきりと顔なのです。ねむいねむいへやのあらゆるものの、あるものは木の木目や布のひだにまぎれるように巧みに描かれ、あるものはまぎれもなくはっきりと正面に描かれた、ねむいねむい目、鼻、口、きょとんとした顔。

ねむいねむいよるがくると、
おつきさまもおうちもねむいねむい。
ねむいねむいへやには
ねむいねむいテーブル。
ねむいねむいベッドには
ねむいねむいおとこのこ。
くまさんもねむいねむい

・・・

と、そこへどこからか
たのしいしらべがきこえてきた

・・・

ふいに安らかな眠りを起こされて、何が起こったのかわからず、きょときょと辺りを見回しているような、ちょっぴり困ったたくさんの顔、顔、顔が、ほほえましくて、ひとつひとつがいとおしくなります。
誰もがぐっすり寝静まる夜に、三日月さえ驚くような、こんな不思議な出来事がおこるなんて、夜の気まぐれな魔法でしょうか?
ナンセンスな楽しさとわらべうたのようなくりかえし、そして美しい絵に身をゆだね、こもりうたのような穏やかな雰囲気に身をひたし、気がつくと気持ちがゆったりとやすらいでいるような、ねむいねむい絵本。

余談ですが、絵本の中の男の子の部屋のベッドのそばの小さな本箱にある絵本のタイトルは、
SNOW』『MOON JUMP』『WISE BIRD』『DAWN
と読めます。このうち、『SNOW』と、『DAWN』は、もしかすると著作で、邦訳でいえば、『ゆきと、『よあけかしら・・・なんて、思ったりして。残りの2冊も気になるのですが、不明。

原書は『SO SLEEPY STORY』 2006 Farrae,Straus and Giroux,LLC,New york とあります。
アマゾン洋書ではこちら。↓

『So Sleepy Story:
So Sleepy Story
(ハードカバー)』
Farrar Straus &
Giroux (J)
(2006/8/8)

▲上へ

 

『ゆき』あすなろ書房

『ゆき』
ユリ・シュルヴィッツさく
さくまゆみこやく
あすなろ書房
1998年

寒々とした灰色の町の風景にも、寓話的な人々にも、現代的な男の子にも、ただ舞い降りて降り積もる白い雪の物語。
余情の広がる美しいイラストに、ひきしまったテキストがぴたりと添えられて、いつのまにかそらんじてしまいそう。

さまざまなメッセージを受け取ることができそうですが、無邪気な男の子の明るい喜びに希望を感じるところが、とても好き。
1999年コルデコット賞オナー賞受賞作品。

オンライン書店ビーケーワン:ゆき

どんよりはいいろのそらから
ひとひらのゆきがまいおりてきました。
「ゆきがふってるよ」
いぬをつれたおとこのこがいいました。

「これっぽっちじゃふってるとはいえんな」
くろひげのおじいさんがけちをつけても、雪はまたひとひら、ひょろながぼうしのおじさんがせせらわらっても、雪はまたひとひら、おしゃれがさのおばさんがたかをくくっても、雪はまたひとひら、あとからあとから舞い降りてきます。

「ゆきはふらないでしょう」ラジオがいいました。
「ゆきはふらないでしょう」テレビもいいました。
けれどもゆきは、ラジオをききません。
それにゆきは、テレビもみません。

・・・

ひとひら、またひとひら、無心に舞い降りて、いつのまにか、音も無く地上を真っ白におおう雪。舞い落ちてすぐに溶けてもかまわず、誰になんと言われようとかまわず、誰の上にも等しく、ひたむきに振り続ける雪。

どんよりとした色使いの中にも、美しく澄んだ色が見え隠れする詩情豊かなイラストが、しみじみと心に染みわたる絵本。
痛快な皮肉も、ユーモアも、遊び心も、不思議も、雪はみんなふんわりと白くくるんでしまいます。
無邪気な男の子の自然ないでたちに比べて、ひげや帽子やかさなどが誇張され、バランスがデフォルメされた登場人物たちの風格が、寓話的で、昔話やわらべうたから抜け出てきたよう。
あどけない男の子の喜びと、真っ白に輝く雪景色が、よあけのように、希望をつれてきてくれるような気がします。

原書は『SNOW』1998 Farrar Straus & Giroux,Inc.とあります。
アマゾン洋書ではこちらなど。↓

『Snow
(Caldecott Honor Book)
(ハードカバー)』
Farrar Straus &
Giroux (J)
(1998/10)

▲上へ

 

 『よあけ』福音館書店

『よあけ』
ユリ・シュルヴィッツ作・画
瀬田貞二訳
福音館書店
1977年

夜から朝へ。
闇から光へ。
深い眠りの間にも、瞬きの間にも、この世界を包み、よどみなく移り変わってゆくはかない一瞬をとらえ、うるおった筆で描きとめた静謐な絵本。

おともなく、うごくものもなく、くろぐろとしずもるみずうみの例えようも無く美しい絵に、無い音を聞き、無い動きを追いかけ、無いにおいをかぎ、無い風を感じ、無いひそやかな息づかいを感じ、無いこの瞬間に全身をひたし、五感を開放する絵本。日本語の訳もなんて美しいのでしょう。

唐の詩人柳宗元の詩「漁翁」をモチーフとした作品だそうです。
(『よあけ』福音館書店 著者紹介より)

オンライン書店ビーケーワン:よあけ←ビーケーワンの書評は要チェック。

みずうみのきのしたにおじいさんとまごがもうふでねている。
つきがいわにてり、ときにこのはをきらめかす。
やまがくろぐろとしずもる。
あ、さざなみ。
どこかでとりがなきかわす。
おじいさんがまごをおこして、ぼーとをこぎだす。
そのとき・・・

太古から変わることなくこの世界でいとなまれてきた夜と朝の交代に立ち会う老人と孫。
奇しくもいのちのいとなみの、夜と朝をのせて、一そうのボートは湖へ漕ぎ出す。
これからも果てしなく変わることが無いだろう、一日のおわりとはじまりの、命のおわりとはじまりの、永遠にめぐるいとなみ。

静かに研ぎ澄まされ、抑えの効いた美しさで描かれた、徐々に明けそめる未明の空の変化に、あらゆるもの息吹と、希望の兆しを感じることができる絵本。
絵本全体の、藍色のなめらかなグラデーションが息をのむほど美しく、各場面の、色と色との喫するところ、藍色のはしからちらとのぞく、十二単の衣のすそのような、色を重ねたわずかな部分が、底知れぬ豊かな風情をひきたててます。
瀬田貞二さんの日本語訳の美しさも、この絵本の放つ静かな魅力の一つ。

原書は『DAWN』1974 Farrae,Straus and Giroux,LLC,New york とあります。
アマゾン洋書ではこちらなど。↓

『Dawn
(ペーパーバック)』
Farrar Straus &
Giroux (J)
(1987/12)

▲上へ

 

『あめのひ』福音館書店 品切れ

『あめのひ』
ユリ・シュルヴィッツ作・画
矢川澄子訳
福音館書店
1972年
品切れ

青と黄、黒の、押さえた色数で、透き通るように描いた繊細な絵本。水の流れ、伝う雨粒、ひろがる波紋、しぶき、しずく、あわだち、なみ、うねり、とどろき・・・水のとる一瞬の姿を、町や山のたたずまい、子どもたちのはしゃぐ風景の中に、詩情豊かに描きとめた作品。

オンライン書店ビーケーワン:あめのひ 

淡い淡いインクか水彩の、青と黄色とその重なりの緑色と、黒色の繊細な線で描かれた、みずみずしい雨の日の絵本。
屋根裏の小さな女の子の部屋の窓をたたく雨の場面からはじまって、女の子の住む下町へ、そして、人里はなれた野や山へ。雨の恵みが、地の恵みとあわさって、川をつくり、流れ、うねりながら、海の恵みに注ぎこむ。
小さな雨の、大きな変化。
下町に降る雨は、子どもたちに喜びをもたらし、遊びを生み出す。
野も町もうるおし、いのちをはぐくむ雨。
恵みの雨に、子どもたちの喜ばしい姿を重ね、果てしなくめぐる水のはじまりとおわりを描き、子どもたちの成長をも見つめているような絵本。
矢川澄子さんの日本語訳も美しく、透き通るよう。

原書は『RAIN RAIN RIVERS』1969 Farrae,Straus and Giroux,LLC,New york とあります。
アマゾン洋書ではこちらなど。↓


クリックしてチェック!

『Rain
Rain
Rivers
(ペーパーバック)』

Farrar Straus &
Giroux (J)
(1988/04)

邦訳とは表紙が異なります。アマゾン洋書で中身の画像を見ると、本文は同じだと思われます。色数が増えた表紙は再販版の新しいもの???
構図的には、邦訳本文にもある初めの方のイラストの植木鉢の位置に、女の子が描き足されているようにも思われます。(アマゾン洋書のこのイラストです!)
窓からのぞく景色は、邦訳本文にもある町の風景のイラストと同じように思われます。

この記事へのコメントを読む*書く
(この記事へ戻るには、ブラウザの戻る、をクリックしてくださいね)

▲上へ

ユリ・シュルヴィッツさんの絵本3
「や」の絵本箱へ

くどー★La★ちぇこさんの絵本箱へ

HOMEへ
くどー★La★ちぇこさんの絵本日記HOMEへ


Copyright (c)2005-2007 kudolacieko All Rights Reserved