■特集*おおかみ*えほん  
!おおかみくんのホットな刺激にご注意ください!
『オオカミくんのホットケーキ』*『さんびきのぶたたち』*『いちばんつよいのはオレだ』*『いちばんうつくしいのはオレだ』*『おおかみくんはピアニスト』
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『オオカミくんのホットケーキ』評論社

『オオカミくんの
ホットケーキ』
ジャン・フィアンリーさく
まつかわまゆみ やく
評論社
2002年

オオカミくん、とくれば赤ずきんちゃんに三匹のこぶた。ホットケーキ、とくれば、逃げ出したパンぼうやに、おとなしい赤いめんどり。
それではそれでは、『オオカミくんのホットケーキ』とくれば・・・?

あのオオカミくんがしおらしくホットケーキを焼くなんて、意外や意外とおもいきや、あの赤ずきんちゃんもめんどりも、何だか様子が変だったり?

昔話の主人公たちが大集合した、豪華で豪快なパロディ絵本。
昔話や絵本に対するイメージを、もしかするとことごとくくつがえす衝撃の展開は、昔話のパロディならではの大人の楽しみ?かも。

原書は『Mr.Wolf's Pancakes』Egmont Books Limited,London,1999、とあります。
アマゾン洋書ではこちらなど↓

Mr.Wolf's Pancakes
Tiger Tales
(2001/03)

上記のほか、ペーパー・バック、ミニ本、CD付きなど、種類も多数。かなり人気があるのでしょうね!

さて、邦訳です。
オオカミくんは、あのオオカミです。
あかずきんちゃん」「さんびきのこぶた」などの昔話でおなじみの、にっくき悪者敵役、主人公たちをかまずに丸飲みしたばっかりに、消化不良をおこして…じゃなかった、昔話の勧善懲悪的モチーフにのっとって、最後にはこてんぱんにやっつけられてしまう、あわれな(?)あのオオカミを、下敷きにしております。
が、酸いも甘いもかみわけた現代版オオカミは、もはやあのころとは別人、いえ別オオカミのよう、一味も二味も違います。

ある日、突如としてほかほかのホットケーキを食べたくなったオオカミくん。
ところが、いざ自力で作ろうとすると、作り方ののったお料理本が読めず、買い物をするためのリストも書けず、お金も数えられず、もちろんお料理自体も苦手と、なんとも心もとないことに気がつきます。
そこで、ご近所のブレーメンの音楽隊を引退したニワトリさんや、ショウガパンマンや、あかずきんちゃんの助けを借りようと、丁重にお頼み申しあげるのですが、…過去の数々の行いが今ごろ身に跳ね返ってきたのでしょうか、行く先々で、乱暴にぴしゃりとはねつけられます。

読み書きそろばん・料理が不得手のわりには、ものの頼み方はきちんと心得ている礼儀正しいオオカミくんなのですが、対する昔話のヒーロー・ヒロインたちは、「めでたしめでたし」でお話が終わったあとにいったい何が起こったのか、この絵本ではかぎりなく意地悪でへそまがり。
軽やかな色彩でユーモラスに描かれたイラストのなかでも、ひときわ性悪そうな表情がきわだっています。

で、すべての援助要請をおことわりされた、ひとりぽっちでおとなしい気の毒なオオカミくんは、結局散々苦労した末、ついに独力でほかほかのホットケーキを完成させます。

そしてご近所中にただよう、何ともかぐわしいホットケーキの香り。
…に、さそわれて、むげにおおかみの頼みをはねつけたはずのご近所さんたちが、ぞろぞろ・どやどやと、ホットケーキの湯気もあたたかな、オオカミくんのおうちへ押し入ります。
強制捜査・差し押さえ、じゃなかった、不法侵入・無銭飲食、「ホットケーキをたべさせろ! 」と、いうわけです。

ああ、人の良いおとなしいオオカミくんは、そして彼が一人きりで何もかも仕上げた汗と涙のホットケーキの運命は、いったいどうなってしまうのでしょうか?

3姉妹ハハは、思わずワハハとおなかを抱えてしまったのですが、読み聞かせの3姉妹は、…ハテ、もひとつ心もとない様子(笑)。
意地悪そうな赤頭巾ちゃんたちの表情をみて、「うわー、ほんとにいじわるなかお」と、びっくりすることしきりでしたが、4歳、6歳では、このパロディの面白さや、文章とイラストの落差、ラストの急展開が、おしいかな、うまくのみこめなかった模様です。
10歳くらいの、もう少し大きい子だったら、無粋な説明不要で、この問答無用の面白さを、おなかのそこから楽しめるのかしら。

あるいは、いっそ、大人向けの絵本なのかもしれません。
もしかすると、好き嫌いのはっきりわかれる絵本かもしれませんが、この大胆で自由な発想はお見事ですよね。

作者のジャン・フィアンリー(ファーンリー)さんはイギリスの絵本作家のようで、他にも邦訳絵本が結構出版されているよう。

ちっちゃくたっておっきな愛』(小峰書店)オンライン書店ビーケーワン:ちっちゃくたっておっきな愛 、『みんなとくべつ』(評論社)オンライン書店ビーケーワン:みんなとくべつなど、今度こそ(?)子ども向けの、そして大人にも愛されそうな、ハートフルな絵本の挿絵もお描きになっているようです。

さらに、昔話のパロディで、こんな絵本も見つけましたので、どうぞごらんあれ!

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『3びきのぶたたち』
デイヴィッド・ウィーズナー作
江国 香織訳
BL出版
2002年

「さんびきのぶた」ではありません。「さんびきのぶたたち」です。
ディヴィッド・ヴィズナーさんの描く昔話が、一つの絵本の紙の枠の中におとなしくおさまっているはずがありません!

一冊の絵本の枠も、紙の二次元も飛び越えて、トンでもなく広がる物語の宇宙へ、さんびきのぶたたちがご案内。
こんなパロディをまっていた!
2002年度コールデコット賞受賞作だそうです。

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『いちばんつよいのはオレだ』平凡社

さらに。
また、見ーつけた、の、嬉しい楽しいパロディ絵本です。あなたの見る目を変える、視点が変わる、心憎いフランスのエスプリ絵本。

『いちばんつよいのは
オレだ』
マリオ・ラモ作
原光枝訳
平凡社
2003年

こわーいオオカミの出てくるお話はいっぱいあるよね。でも何故だかやっぱり、最後にはこてんぱん。

「いちばん強いのは誰だ」
よせばいいのに、そんなお話の見栄っ張りオオカミが、あのお話の主人公たちに聞いて回って、思っても見ないとんでもない答えをもらっちゃうお話。

ある日、満腹の狼が腹ごなしに森を散歩して、出会う人(動物)ごとに、
「いちばん強いのは誰だ」
と、自信満々で聞きます。
うさぎに聞くと、
「あなたさまです」
赤頭巾ちゃんに聞くと、
「ぜったいにあなたよ!」
三匹のこぶたに聞くと、
「まちがいなくあなたです。りっぱないじわるオオカミさん!」

思惑通りの答えをもらって、すっかり満足のオオカミが、最後に出会ったのは、ちいさなヒキガエルみたいな生き物でした。
そのヒキガエルみたいなぼうやが答えるには…。

笑えます。
愉快痛快。わっはっは。
ラストのトリミングが粋です。余韻がたまらない。
オオカミが腰に手を当て前をにらみつけるコワモテの表紙にもご注目。一見普通の表紙ですが、読後もう一度眺めれば・・・一枚上手の、新たな視線を感じるはず?
表紙から物語はすでにはじまっているのですね!

原書は『C'EST MOILE PLUS FORT』l'ecole des loisirs,Paris、2001、とあります。
アマゾン洋書で検索すると、ドイツ語版ではこれかしら?↓

『Ich bin der Staerkste
im ganzen Land!
(ハードカバー)』
Moritz Verlag-GmbH
(2003/02)

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さらに、続編が出たのですって!

 

『いちばんうつくしいのは
オレだ』
マリオ・ラモ作
原光枝訳
平凡社
2007年

うぬぼれオオカミくんの自我自尊鼻高々物語の、待望の続編がでました!
まだまだ懲りないオオカミくん、またまた鼻息も荒く、ネクタイをしめて意気揚々、おなじみのみんなに、「いちばんうつくしいのはだれだ」と、聞いて回るのですが・・・。

前作の『いちばんつよいのはオレだ』をふまえて読むと、細かな部分まで笑えて嬉しい一冊。表紙の色は・・・やっぱりあの色ですよね?

原書は『C'EST MOILE PLUS BEAU』l'ecole des loisirs,Paris、2006、とあります。
アマゾン洋書で検索すると、英語版ではこれかしら?↓

『Aren't I Handsome
(ペーパーバック)』 
Zero to Ten
(2007/4/10)

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『おおかみくんはピアニスト』新風舎

もしかして、あなたとわたしのオオカミ像が、さらりと変わってしまうかもしれない絵本。


新風舎 
2005年

『オオカミくんは
ピアニスト』
石田真理さく

オオカミくんはピアニスト。
そしてひとりぼっち。
オオカミくんはさすらいます・・・。

ひとりぼっちの魂がほとばしるオオカミくんのピアノに、心がふるえる美しい絵本。

オンライン書店ビーケーワン:オオカミくんはピアニスト

オオカミくんはピアニスト。
そしてひとりぼっち。

「ぜひピアノをきかせてください」
あるひ届いた手紙にさそわれて、遠いところへ、ピアノをもって出かけることにしました。

・・・

オオカミくんのピアノを待つ見知らぬ遠い客たちのもとへ、くるひもくるひもピアノをひきずって、オオカミくんはあるきます。
幻想的な絵がきれい。
濃厚な色、重ね方、かすり方。踊る波のような、そよぐ風のような、不思議なゆれと広がりを持つ空間。
誰に似ているというわけでもないけれど、いまとても輝いている絵のオーラを持っていると思いました。
シンプルで、繊細で、すこし切ないテキストも、美しい絵の雰囲気にぴったり。
たくさんの気持ちをだまって抱えたひとりぼっちのオオカミくんの、静かなピアノのメロディが、絵本からそっと流れてくるよう。
お手紙書いたら、オオカミくん、うちにもきてくれるかしら。

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