大人には見えなくて、子どもには見える。それもうんと薄気味悪くてこわーい影が。さて、そこであなたならどうしますか?目で見るものと、心で見るもの。どちらも曇らせたくないものですよね。
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『アレキサンダーと りゅう』
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キャサリン・ホラバードぶん ヘレン・グレイグえ ごとうかずこやく 福武書店 1992年 品切れ
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怖がりの子も怖いものみたさの子も竜好きの子も、みんなみんなよっといで。 子どもの素直な期待を、いちばん子どもの喜ぶ形で、見事にかなえてくれた、人気作家による愛らしい絵本。
見えない恐怖に立ち向かう勇気を、コワゴワ戦いに用いるか、ユウコウに使って味方にしちゃうか、目をよくこらして読んでみてね。
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『アンジェリーナはバレリーナ』(講談社)などの「アンジェリーナ」シリーズのコンビ、キャサリン・ホラバードさんとヘレン・グレイグさんによる、勇気の出てくる楽しい絵本。
『アレキサンダーとりゅう』の小さな主人公は、とっても勇敢な男の子。いぬだってかみなりだってへっちゃらなのに、こわいものが一つだけありました・・・暗いところです。 夜一人で寝るのが大嫌いなのです。 大男や魔女がドアやカーテンにうかびあがるようで、アレキサンダーはベッドから飛び出して、一目散におかあさんのところへ。 「ただのかげよ、アレキサンダー。だいじょうぶ、だいじょうぶ。」 もう一度おかあさんに寝かしつけてもらうのでした。
ある晩のこと、 アレキサンダーは、ベッドのしたに、なにかくろいかげみたいなものがいるのにきがつきました。 おかあさんにうったえても、 「なにもいないわよ、アレキサンダー。ベッドのしたっていうのは、いつだってくろいかげになっているの。だいじょうぶ、だいじょうぶ。」
アレキサンダーがおそるおそるのぞくと・・・、 りゅうです!まちがいありません!
翌朝おとうさんとおかあさんに訴えると、おとうさんは言いました。 「うーむ。たいさくは、ふたつあるな。 ひとつは、りゅうをおいだす。 もうひとつは、りゅうとともだちになる。 そのどっちかだな。」
お昼ごはんを食べた後、アレキサンダーは、特別製のかぶとと盾で身を固め、おもちやのつるぎをもつと、ぬきあし、さしあし・・・。
大人に見えず、子どもに見えてしまうおそろしい影。幼い恐怖心と豊かな想像力とこの世界の神秘的なものがないまぜになって定型をもたずうごめいている、どうしても目が離せない何かの影。 それはかげよ、だいじょうぶ、と暗にはなから存在を否定し、科学的説得でなだめるやさしいおかあさんと、そのりゅうを追い出すか、友達になるのどちらかだ、と存在をひとまず既成概念とした上で対策を講じる明るいおとうさん。なかなか粋ですが、そのままとっとと仕事に行ってしまうので、その対策手段、方法、日時などすべての選択決定権はアレキサンダーにゆだねられることになります。 結局、アレキサンダーの他愛ない話を本気で取り合ってくれるのは、アレキサンダー自身と絵本と絵本を読んでいるワタシとアナタだけ、という感じもしないでもないですが、とどのつまり、アレキサンダー自身が自分で立ち向かわないといけない問題でもあるのですよね。
鬼が出るか蛇が出るか、りゅうがでるか。 勇敢なアレキサンダーが選んだのは、重装備で身を固め、剣を振りかざし「出て行け」とつきつける最後通告。 昔話や民話にもよくあるように、恐ろしい竜は英雄が倒してしかるべきもの、かもしれませんが、でも、よく見て・・・。
どこか拍子抜けのどんでん返しが、ほほえましくて、それから考えさせられます。 「人は見たいように見る」という言葉をきいたことがありますが、いろいろなレンズやフィルターを取り去って、自分の目が見ているそのままを自分の心が見る、ということは、案外難しいことでもあり、大切なことでもあり。
細い線と淡い色で静かに描き込まれた、登場人物一人一人のまなざしの温かい絵と、あちこちにやさしさとウィットがあふれている文で、読後にほのぼのとしたぬくもりとあこがれが残る楽しい絵本。
原書は『Alexander and the Dragon』1988 All Books for Children, London,U.K. とあります。
子ども部屋の暗闇の世界を描いた「いるいるえほん」的絵本には、他にも『アルフィとくらやみ』▲(評論社)などがあります。
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「ベッドの下」絵本では、こちらのワニも。パパとママも知らない、秘密の使命を帯びた愉快で勇敢なワニがいる!
ベッドのしたにワニがいる!
ビーケーワン
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『ベッドの したにワニがいる!』 イングリッド・シューベルト作・絵 ディーター・シューベルト作・絵 うらべちえこ訳 佑学社 1984年 品切れ |
細やかであたたかなタッチの丁寧な絵で、ちょっぴりこわくて楽しくて、そしてほんのり切ないワニのお話を描いた絵本。 ベッドのしたのワニがこんな秘密を抱えていたなんて、今日からベッドのしたのワニを応援しちゃいましょうネ。
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パパとママはこれからおしゃれしておでかけ、ペギーはこれからひとりでおやすみです。ペギーが部屋のドアをあけると、 なんと!ベッドのしたにワニがいます!
パパがベッドの下をのぞいてくれましたが、 「ワニなんかいないよ。くつにおもちゃにがらくたがあるだけだ。さあ、おやすみ、ペギー。」 ペギーをねかせると、でんきをけしていってしまいました。
確かにベッドの下には誰もいなかったけれど、ものすごく大きなワニが、たんすの上でニヤニヤしています! 「ぼくはヘンリー。こわくなんかないだろ?ぼくは、やさしいワニなんだ。」 ・・・
そう、ヘンリーは子どもたちの味方、優しいワニ。ヘンリーがペギーの部屋にやってきたのは長い長いさすらいの途中、実は深いわけがあったのです・・・。
色鉛筆画のような石版画のような、丹念に描かれた絵は結構リアルで、表情も豊か。最初はこわくて、それからほのぼのユーモラス(ワニとロックンロールをおどっちゃうなんてね!)、さらに過去を知ったあとではふっと影を感じたりして、なかなかしっとり魅力的。 こんなワニなら、うちの子供部屋にも大歓迎。777人目の子どもにぜひどうぞ、しかも3人もいるから、一気に仕事がはかどるヨ、なんてね(笑)。
原書は『Er ligt een krokodil onder mijn bed!』1980 Lemniscaat b.v.Rotterdam とあります。 アマゾン洋書で発見した英語版はこちら。↓
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『There's a Crocodile Under My Bed! (ハードカバー)』 Front Street Pr (2005/8/10) |
表紙が邦訳と異なります。真ん中の四角枠にワニさがしの図があって、その四方にワニ、という構図の雰囲気は似ています。
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大人にふりまわされる気の毒な子どもの退屈しのぎに見えてくる、子どもだけの愉快な世界。逃げることもできず、じっとおとなしくしていることしかできなくったって、想像力一つあればいいんです。テーブルの下にだって、いるいる、不思議がいっぱい。ほーら、靴だって。
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『テーブルのしたには ふしぎがいっぱい』 オレリー・ギュレ絵・文 石津ちひろ訳 講談社 2002年 |
テーブルのしたにはふしぎがいっぱい。 ページをひらけば小粋がいっぱい。 メロウな色使いも大胆な筆使いも、みずみずしくてもぎたての香り。 子どもの想像力の生み出す世界を、不思議で楽しいデフォルメで鮮やかに描いた絵本。
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表紙イラストの深い水色にぐっと惹かれました。テーブルの下の紺色も好み、ちらりとのぞいている黄色がまた好み、背表紙のワインのような渋い赤色との取り合わせもまたまた好み・・・! もしもこの表紙の色使い、なだらかな独特のフォルムにときめきを感じてしまったなら、もっとたっぷり小粋な本文ページにくらくら、めまい・動悸が止まらないかも(笑)。
さらに嬉しいことには、テキストもこれまた洒落ているのです。
マルタンはママたちとレストランへ。優雅な食事とおしゃべりに夢中の大人たちにとりのこされた少年マルタンは、退屈しのぎにテーブルの下をのぞきこんで、探検を始めました。
しょうがない・・・ テーブルのしたでものぞいてみよう・・・。
テーブルの下には何があるって、そりゃ、靴です。靴、靴、靴・・・。 マルタンには、靴の上の人物たちのおしゃべりのかけらがもれ聞こえてきます。
「オオカミみたいにはらぺこさ」 ピエールおじさんのこえだ。
わっ、びっくり! おじさんのくつ、オオカミにそっくりじゃん!
ピエールおじさんの真っ黒い紳士靴は、たちまち歯をむき出したオオカミの顔に早がわり。 インド旅行帰りのマリーおばさんが、向こうの人々が暑さしのぎにベッドを外に出して寝ていた話をすれば、おばさんの裸足のサンダルの足の指が、いびきまでかいてねているよ! 大人たちがぺらぺらしゃべるたびに、その靴がテーブルの下で大変身、みるみる話のネタそっくりに見えてくるから不思議不思議。靴まで無邪気に自己主張しているのでしょうか?それとも靴だけは、退屈なマルタンを遊んでくれているのかな?
おしゃべりに夢中の大人たちのスカートやズボンの影で、あるいは自転車の子ども椅子で、すっかり手持ち無沙汰でじっとしていることに飽き飽きした子どもたちの、「ねー、もーかえろーよー」のあの視線、あのぐずり、あのひっぱり、なんとなく思い当たるフシがあるような、ないような(笑)。 そんなとき、子どもたちがこんな風に想像たくましく、遊びの世界に心を羽ばたかせているのかしら、なんて考えると、愉快だったり、なかなか頼もしかったり、わが身をふりかえってちょびっと反省したり、ね。
絵も文もおしゃれでお茶目で、ユーモアとウィットにあふれていて、新鮮でみずみずしい感覚の絵本。 作者のオレリー・ギュレさんは、 1975年フランス生まれ。1999年、キオッジア子ども向けイラストコンクールで第一位を獲得。フランスで数多くの絵本を出版している。 と、あります。 (『テーブルのしたにはふしぎがいっぱい』講談社 拍子カバー裏見返し 著者紹介 より)
とろりとしたクリーミーな色使いが、ミントやマロンやストロベリーのアイスクリームのように美味しそう。ただひとつ、余計な心配だけど気がかりをあげるとすれば、マルタンをとりこにしたこの靴だまり、だれの靴からもあの靴特有のにおいがなかったのかしら、それなら本当によかったね、ということかしら(笑)。
原書は『QUE SE PASSE-T-IL LA-DESSOUS?』最初のコピーライトは2000年 Editions Nathan/HER-Paris,France,pour la presente edition., とあります。
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いるいるえほん、そうそうたるそうまとめ的絵本を発見!ここは大切だから試験に出ます・・・ハズないけどさ(笑)。おぼえておくと、毎日がきらきら楽しくなるような、アートな絵本。
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『ぼくみたんだ』 えとぶん・くろだせいたろう アートン 2003年 |
子どもの絵のように無邪気で奔放でありながら、計算された色形の美しさ、計算をこえた摩訶不思議さが、心地よくページからあふれてくるような自由な絵本。 恐竜に会えるポイント、みんなみんな載っています。
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ぼく みたんだ おひさまの なかにいたんだ ぼく みたんだ やまとやまの あいだに かくれたよ ・・・
みーんな誰も気づかないけれど、ぼくみたんだ、恐竜を。ほんとだよ。それならぼくの目撃談を教えるから、今度、きみも見てごらんよ。ぜったいいるから。ほーら、ね。 そんなおしゃべりが聞こえてきそうな、元気いっぱい夢いっぱいの青空みたいにさわやかな絵本。 恐竜に会えそうな時と場所、ふと見過ごしそうな時間の狭間、うっかり見落としそうな空間の隙間を、ぼくの的確なおしゃべりと、画家の軽やかな筆づかいで、のびのびと自由に教えてくれる貴重な遭遇案内記。ガイドブックも地図も持たず、この絵本をリュックにポンと入れて、てくてく恐竜探しの旅などしてみたくなっちゃいます。
嬉しいことに、この絵本は続編が出ていますので、全部読んだら恐竜遭遇ポイント完全制覇、あとは本当に見つけるだけ・・・かな?
『ぼく みたんだ2』 えとぶん・くろだせいたろう アートン 2004年
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例えば絵の具をこぼしたところ、よく見てごらん。しみも、にじみも、ほらね。
おとなには み・え・な・い
自由に今を生きる子どもたち必見の絵本。想像力を目いっぱいふくらませて、思い切り絵を描きたくなります。
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『ぼくみたんだ3』 えとぶん・くろだせいたろう アートン 2005年
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さあ、かみとえのぐでたんけんだ。 たくさんのいのちをさがしてね。
アートな表紙を開けたら、切り口新鮮なページがこんにちは。最後はまたねって、手を、じゃなかったしっぽをふってくれるかもね。
ちょきちょきぺたぺた、自由に夢中に工作する子どものあの感じを、いつまでも大切にしたい絵本。
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いるいる絵本、こんなところにも彼らはいるんです。
あるひそらからさんかくが
ビーケーワン
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『あるひそらからさんかくが』 風木一人ぶん 中辻悦子え 福音館書店 こどものとも年少版 2004年6月号 通巻237号
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あるひそらからさんかくが ふってきたらどうなった?
天から降ってきた色とりどりの単純な形が、集まってまとまって大変身、新しい形と命を生み出す、奇想天外な幼児絵本。きれいな色ときれいな形に着目しながら、自由に想像力をはぐくんで。
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あるひそらからさんかくが くるくるくるりとふってきて、
つもってうごいてあれれれれ?
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水色の空に、いろとりどり形さまざま向き好き好き、よりどりみどりのきれいな三角が、ぱらぱらばらばらあらららら。 紙ふぶきのようにひらひらふってきて、フライパンの上のポップコーンのようにちりちりぽんぽんはねてはずんで、これ、なーんだ。
見てびっくり、子どもたちの大好きな、「さんかくかいじゅう」に大変身! 「サンガジラ」なんて、もじった名前もがっしり強そうで楽しいね。 それじゃあ今度は、四角はどうかな?
積み木みたいな単なる三角から、四角から、丸から、こんなものが生まれるなんて、驚愕の幼児絵本。 積み木のごっこ遊びや、切り紙のつなげ遊びが、今度からもっともっと楽しくなりそうですよね。 原色を中心にした、色鮮やかでグラフィカルなイラストは、中辻悦子さんの作品だからお墨付き。 表紙の、晴れ渡った青空のような水色の背景に、夢がどんどんふくらみます。
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