子どもに見えて、大人に見えない、それは大人がはなから見ようとしない、認めようとしないから。意固地になったおかあさんとドラゴンを、だれがほぐしてあげますか?
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『びっくり ドラゴンおおそうどう!』 ジャック・ケントぶん え なかがわけんぞうやく 好学社 1984年
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ある朝ビリィが起きたら、ちいさなかわいいドラゴンが。 「ドラゴンなんかいるはずありません!」 おかあさんはにべもなく、相手にもしてくれません。 するといないはずのドラゴンがみるみる大きくなって、ついには家を背負って走り出してしまいました!
あっさりとユーモラスな線画で、物言わぬ無邪気なドラゴンの変貌の顛末を描いた味わい深いコメディ絵本。
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びっくりしたのなんのって、あさ、ビリィがめをさましたら、なんと、へやのなかに、こねこくらいのおおきさの、かわいいドラゴンがいたのです。
おおいそぎでおかあさんにしらせると、 「ドラゴンなんかいるはずありません!」
いるはずのないドラゴンですから、台所の机の上にぎょうぎわるく座っていたって、おかあさんは知らん顔。焼くそばからドラゴンがつぎつぎと食べつくしてしまうあさごはんのパンケーキを、バターがすっかりなくなるまで焼き続けても、おかあさんはちっとも認めません。 その間にも、ドラゴンはどんどん大きくなって、おかあさんの掃除の邪魔になるほど巨大化して、とうとう、昼には家の中いっぱいに。
昼寝からさめた巨大ドラゴンは、おなかがぺこぺこ。ちょうど家の前の道を通りかかったパンやのトラックを、かたつむりみたいに家ごとせおったまま、どんどん追いかけ始めました。 おとうさんが帰ってきたら、家がない! ・・・
ジャック・ケントさんは、作家であり挿絵画家であり漫画家だそうです。 (『びっくりドラゴンおおそうどう!』好学社 著者紹介より) とぼけた表情のコミカルなイラストが、いるはずのないドラゴンのまきおこした大騒動にぴったり。皮肉をひそませた無邪気なテキストとイラストで、奇想天外な物語を軽妙に描いています。 知らん顔で家事を続けるお母さん、知らん顔で成長を続けるドラゴン、みんなのきょとんとした点々のお目目が愛嬌たっぷり。天真爛漫に厚かましいというか、あっけらかんと図々しいというか、面の皮も図体もぶ厚く、われ関せずと肥大化していくドラゴンと、がんとしてそれを無視する肝のすわったおかあさんの見た目の落ち着きぶり(?)が抱腹絶倒。 やっと家をさがしあて、玄関から飛び出たドラゴンの頭をよじ登って二階の窓から家の中に到着したおとうさんの、あまり動じていない様子も堂々たるもの。 「こりゃいったいどうしたことだね?」
そしてこの大騒動に決着をつけたのは・・・。 どうしてドラゴンの大きさが、みるみる変化したのかな?
無邪気で楽しくてちょっぴりお気の毒(?)、スパイスのぴりっときいたお騒がせな物語。 「いるはずありません」なんて言い切るテキストを、小気味よく裏切るイラストが愉快痛快。
原書は『THERE'S NO SUTH THING AS A DRAGON』 1975 Western Publishing Company Inc. とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『There's No Such Thing As a Dragon (ハードカバー) 』 Golden Books (2001/09)
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装丁、版型が少し異なりますが、表紙のイラストは邦訳と同じものだと思われます。 さまざまな版が出ていて、別の版は今でも購入可能。邦訳ともども、ロングセラーなのですね!
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ドラゴン、竜、恐竜などの、この世にいないと思われている動物たちが、自分を認めてもらいたいと登場する絵本では、他にも、『ネス湖のネッシーおおあばれ』▲(小学館、品切れ)などを思い出します。
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理性ある大人は見えないと思っているけれど、野生児の子どもは見ようとがんばる。だって恐竜に会いたいんだもん。恐竜見たさの一念で、エイリアン、ドラゴン、ユニコーン、などなど、この世にいないと思われている生き物たちが、期せずしてせっかく登場しているにもかかわらず、まったく子どもの目に入っていない気の毒な物語はこちら。
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『いつかきっとみつかるさ!』 マーク・スペリングぶん アレクサンドラ・スティール=モーガンえ 久山太市やく 評論社 2004年
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恐竜って、きっといる。かくれるのがとってもじょうずなんだ。 ベッドの下にも、戸棚の中にも、いたのは当て外れのモンスターばかりだったけれど、恐竜はきっとどこかにいるはずだよね。 いつかきっとみつかるさ!
一切惑わされず、一途に夢を追いかけ続けた一本気な少年の愉快痛快な物語。読めばきっと元気と勇気が見つかるよ!
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ある日ママから恐竜の話を聞いたマーティは、恐竜に会ってみたくなりました。恐竜はもういないのよ、と、ママは言いますが、きっとどこかにいるはずです。 「きょうりゅうはとってもかくれるのがじょうずなんだ」
さっそくマーティがベッドの下をのぞくと・・・
かくれていたのは、ただのへんてこりんなおばけだけ。
せんたくかごのなかからとびだしたのは・・・こおにたち。 おふろばのたなにいたのはドードーだし、 ・・・
次々と見つかるのはおよびでないものばかり。 でも・・・、 「いつかきっとみつかるさ!」
あきらめずわきめもふらず恐竜だけを探し続けるひたむきなマーティの、とことん純情根性物語。 猪突猛進、初志貫徹、恐竜以外は眼中にない頑固なマーティに、かやの外、のけもの扱いされたもののけたちの、無邪気なさまがお気の毒(で大笑い)。 クライマックスで、ページの両側を開いて迫力を楽しむ、大型の仕掛けページがあるのですが、目の肥えたマーティにとっては肩透かし、まがいものも同然かも。 おこぼれをあずかる読み手としては、諸手を上げて大喜びしちゃうんだけどね。
ピンク、紫、黄緑と、鮮やかで都会的な色使いの、やわらかいフォルムの絵がおしゃれ。表面の処理の、ほどよく色落ちしてきたデニムのような、すりガラスをふきそうじした(?)ような、独特のかすれ模様の処理が新鮮で、奇想天外な愛らしいファンタジーにぴったりのフィルターをかけているみたい。
とにかくひたすらしゃにむに恐竜だけを追い求め続ける、元気で無邪気な物語。マーティの祈りのような幻想的な青い絵の結末で、ほんのちょっぴり一休みしたら、また明日もへこたれず夢をさがし続けなくちゃね。その結末の静かな夜の絵が、実は楽しい隠し絵になっていたりするから、子どもたちも大喜び。 まったくくじけていないマーティの勇気と情熱にカンパイ!
原書は、『FIND-A-SAURUS』2003 Chiken House Publishing Ltd.,London とあります。
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『Find-a-Saurus (ペーパーバック)』 Chicken House Ltd (2004/8/2) |
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音だって、大人には聞こえなくても、聞こうとしなくっても、子どもにはちゃんと聞こえてくるのですよね。だって本当にいるんだもん。ほ〜ら!
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『ママ〜! へんなおとがするよ』 |
ダイアン・グッド作 なかやまのぶこ訳 文化出版局 1994年 品切れ |
幻想的な青い絵の、綿密に計算された美しい舞台で、人間と幻獣の母と子の世界を茶目っ気たっぷりに描いた、キップのよいさわやかな絵本。 「ママ〜!」なんて、やっぱりどこの親子も同じかも?
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原書は『I HEAR A NOISE』1988、E.P.Dutton,A division of Penguin Books USA Inc. とあります。 アマゾン洋書では、こちらなど。↓
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『I Hear a Noise (ペーパーバック)』 |
Unicorn Paperbacks; Reissue版 (1992/04) |
邦訳と同じ表紙だと思われます。
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繊細な青色で、きれいなのに、どこか空恐ろしい雰囲気の表紙。 「ママ〜!へんなおとがするよ」 ぼうやがねどこからママを呼びます。 夜風をとりいれるべく、半分あけはなたれた窓にうつる緑色の葉陰を、ぼうやの黒猫がのぞいています。 部屋に入ってきたママは、窓の様子をさっとうかがうと、 「ただのかぜでしょ。さあはやくおやすみ」 ・・・窓の外の葉陰は、なんとなく不穏になびいているのですけれどもね。
「ママ〜!またきこえたよ」 ぼうやがまた呼びます。 不安にゆがむぼうやの顔、ぼうやのくまのぬいぐるみの目、ベッドの下のうさぎのぬいぐるみの目、それから、いまやはっきりと不吉な緑の影を、しっぽをさかだてて見ている黒猫の目。 「かぜでこえだががさがさしているだけですよ。あんしんしておねむりなさい」 やってきたママは言ったけれど、あんしんするのはまだはやいかも・・・。
「ママ〜!」
青色に緑をさしいろにした、美しく澄んだ枕元のイラストが、一転して、壮大な夜空の不思議な世界へとわくわくと広がります。実際に、ぼうやの部屋の場面では、テキストが左に、イラストが右にきっぱりとわかれて構成されているのですが、急展開して緑色の恐竜(怪獣?ドラゴン?)にさらわれた場面からは、テキスト・イラストのページの区別なく、見開き一面にイラストが描かれ、緑色の占める割合もぐんと大きくなっています。
変な音というのは、つまり、ぼうやのいちばんおそれていた種類の、小さい読み手ががおそらくいちばん期待していた部類の、見た目もおそろしい巨大な怪獣(?)の発する音だったのですね。 もしかすると読み聞かせの大きい読み手にとっては、 「ママ〜!へんなおとがするよ」 という台詞の意味は、もう少しちがって聞こえたかもしれませんが・・・。
ともあれ、ぼうやとママをかっさらった緑色のドラゴン(?)は、自分の家のある夜空の雲の上までぐんぐん飛んでいきました。 「ただいま」 と、得意気に帰ったのはいいのですが、それをめざとく見つけた他の怪獣(?)たちは・・・。
恐竜(?)たちのくりひろげるスケールのどでかいお話に、思わず大笑い。見てくれと中身のズレ、つぎつぎとひっくりかえる小気味よい展開、愛嬌と度胸とキップのよさに、かなり痛快爽快な気分が味わえます。
登場人物ひとりひとりの表情がとてもいきいきと魅力的なのですが、とりわけ、つぶらな瞳にふっとさすやさしさが好きです。部屋のひとつひとつの小物までも、じっくりと眺めて楽しめる、美しい茶目っ気のある絵本。
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