いるいる絵本、まずはガツンと逆説的に、「いないでしょ?」からいってみる? ちゃんといるのがわかった上で、いないでしょなんて念押しゴリ押しされる、知らぬが仏、見えぬがほっとけ〜の絵本。
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『ネズミなんていないでしょ?』 |
バーナード・ウェーバーさく ながたきやふきこやく あかね書房 1996年 品切れ |
わがホテル・エッヘンに、なんとネズミが! ・・・いるはずなんてあるわけないでしょ? 何ならみんなに聞いてみる? どうぞその目で確かめて!
愉快痛快、ツワモノぞろい、役者ぞろいのホテル・エッヘンでおきた、とんでもない茶番劇。 子どもだけのお話にしておくなんてもったいないでしょ?
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「ネズミなんていないでしょ?」 ホテル・エッヘンを愛する人々、ドア係にフロント係、荷物係にコックさん、床屋さんも社長さんもみんなこぞって言うことにゃ、 「ほら、どこにいるっていうんです?」 逃げも隠れもしない堂々たる態度、ご立派ですよ、ネズミ色のおチビちゃん。
そうは言っても、念のため、ネズミ捕り名人パットとチュートルが、ホテルのすみずみくまなく上から下まで、はいつくばってふんぞりかえってさがします。 そうそう、そこには、いないみたい。 そっちにも、いまは、いないみたい。
さてさて、ついにみんなで言うことにゃ、 ・・・。
真剣にとぼけた陽気なテキストを信じるか、大真面目にふざけた軽やかなイラストを信じるか、あなたの観察眼が決め手の愉快痛快な物語。 「ほら、どこにネズミがいるっていうんです?」 あらっとした顔の、しれっとした台詞。 豆鉄砲くらったハトみたいな目をしていますが、よくよく見ると、これがとんでもないくわせ物。 何にも知らない素直な子どもたちに読み聞かせて(ウシシ)、何ページ目でこのこれみよがしのからくりに気が付くか、噴出しそうになるのを堪えて、お楽しみお楽しみ(ククク)。 子どもたちが気づいたら、もう立派なホテル・エッヘンの一員、一緒に大合唱してくれますよ、きっと。
これって痛快な笑い話だと思うのですが、痛烈な皮肉でもありますよね。たくさんのさまざまな職業人が登場するにもかかわらず、子どもが一人も登場していないところが鋭いというか、それでいて子どもの絵本であるところが奥が深いというか。 世間をえぐった風刺的な読み方もできる、大人の絵本でもあります。
原書は『DO YOU SEE A MOUSE?』1990 Curtis Brown Ltd. とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『Do You See a Mouse? (ペーパーバック)』 |
Houghton Mifflin (Jp); Reissue版 (1996/8/26)
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うわ、いるよ!大人に見えず、子どもに見える、おそろしいライオン!おびえてうったえる子どもを、にっこりと上手にあしらったおかあさんのアドバイスがお洒落。でもほら、ほんとうにいるんです!
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『はらっぱにライオンがいるよ!』 |
マーガレット・マーヒーさく ジェニー=ウィリアムズえ はましまよしこやく 偕成社 品切れ |
はらっぱにライオンがいるよ! チムがうったえても、おかあさんは家事や育児でおおいそがし。本気にしてくれません。 でも、ほんとうにいるのです・・・ほら!
大人には見えず、子どもにだけ見える世界を、静かに美しく描いた絵本。子どもの空想を豊かにひろげ、あたたかくはぐくんでくれます。 ときどきは子ども心にもどって、子どもの目でものを見て、子どもの話に耳をかたむける大人でありたいですよね。
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原書『A Lion in the Meadow』の初版は1969年。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『A Lion in the Meadow (Picture Puffin S.) (ペーパーバック) 』
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Puffin Books (1989/5/25)
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邦訳版の表紙と同じです。
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「おかあさん、たいへん、はらっぱにライオンがいるよ!」 チムには見えます・・・でっかくてきいろいライオンが。 でもおかあさんはちっとも気づきません。赤ちゃんのお世話や家の仕事でいそがしいし、ライオンがいるなんてチムのつくったお話だと思っているのです。 「じゃあ、おかあさんもおはなしをつくってみるわね。そこのマッチ箱をはらっぱであけるとね・・・ちっちゃいドラゴンがでてきて、あっというまに大きくなるわよ。」
チムがマッチ箱をもってはらっぱにとびだしていくと・・・。
テキストの作者、マーガレット・マーヒーさんは、ニュージーランドのお話の名手だそうです。 『はらっぱにライオンがいるよ!』も、想像力にあふれ、子どもの世界を豊かにひろげる楽しいお話。そして、子どもの豊かな想像力の世界に、大人がふとたちかえり、思い出すことのできる作品でもあります。 子どもの気持ちで読むと痛快、大人の気持ちで読むと苦笑い・・・ちょっぴり、ほろ苦かったり。 頭の固い大人にはなりたくないなーと思いながら、いつしかカチンコチンになりがちな日々を、親しみやすくみずみずしい絵と夢のある楽しいお話で、そっとほぐしてくれる絵本。 結末への巧みなまとめ方、おしまいのめでたしめでたしが、大人も子どももにっこりさわやか(たとえ大人の胸が途中でちくりと痛んでいたとしても)、ほのぼのと幸せな気持ちに。
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い、いると思う!大人にはもちろん見えないけれど、子どもも恐ろしくて一度もまだ見たことがない・・・けれど確かにそこにいる!、という楽しい絵本はこちら。ちゃんと本気にしているのかいないのか、おかあさんのアドバイスが洒落ています。
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『くまにてがみをかきました』 ジョアナ・ハリスン作 竹下文子訳 偕成社 1996年 品切れ
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わたしのこわいもの。それは階段の下のくま。 みたことはないけど、ぜったいにいるの。
「てがみをかいてどこかへいってってたのんだら?」 おかあさんの忠告どおり手紙を書いたら、さっそく返事が来ました。月曜日まで旅行に行くことにしました、だって。
いてもいなくても気になるくま。 ちょっぴり怖がりのわたしが、くまとの手紙のやりとりで、だんだん心に感じたことは・・・。
アニメーターとして活躍した腕を生かした、快活な動きの絵の愉快な絵本。
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わたしには悩みがあります。遊んでいるときは忘れているんだけど、夜になると、だめ。どうしても考えてしまいます。 かいだんのしたにすんでるこわいくまのこと。 みたことはないけど、ぜったいにいるの。
おとうさんはいそがしくて聞いてくれないし、おかあさんはこんなことを言うんです。 「てがみをかいてどこかへいってってたのんだら?」
そこでわたしはくまにてがみをかきました。
そしたら、次の日、階段の下にくまの返事がおいてあって、「旅行にいくことにしました」だって。 くまってば、今どこでなにをしているんだろう。
でも何日かしたら、おみやげと手紙がおいてあったんです。 わたしはお礼の手紙をかいたのですが、返事はなくて・・・。
明るくて優しくて、ちょっぴり怖がりで、想像力豊かな女の子の、夢とも恐れとも幻ともつかないびっくりばこのようなお話。 暗闇に、きっと大きなくまがいて、おそいかかって来るんだわ、なんて、自ら生み出した想像にまんまとおびえて、大騒ぎしてしまうのは、小さな子よくあるほほえましいお話かも。けれど、そのくまに手紙を書いて、さらにそのくまが返事をくれるなんて、これはもうかなりわくわくするファンタジーの予感がしませんか?
このくまがまたのっそりもっそりと、図体と見てくれの割にはなかなか憎めない愛嬌のある大ぐまで、どういうわけかだんだん気になってくるのですよね。 いればいたで気になるし、いなければいないで気になるし。ちゃんとお返事もおみやげもくれたしね。わるいくまじゃないみたい・・・。 表情の楽しいコミカルなイラストの、マンガのようなコマわりのリズミカルなページで、だんだん、わたしの気持ちがほぐれていく様子が、軽快に描かれています。 わたしといつも行動をともにしている、しましまの猫の表情も魅力的。 わたしといっしょにちょっとびくびく、ちょっとどきどきしながら、最後までページをめくったら・・・オトメゴコロもびっくりの豹変振りに、あんぐり、しちゃうかも。
ところで、わたしに手紙を書いたのは、本当にくまだったのかな? 何か手がかりはないかと何度もすみずみまで絵本を眺めてみるのですが、今でも心地よく謎めいたまんまです。もしかするとわたしを案じるあの人この人の、粋なとりはからいかもしれないけれど。
怖いもの大好きのおしゃまな3姉妹二女が、たちまち飛びついてきたおしゃれな女の子絵本。
作者のジョアナ・ハリスンさんはイギリス生まれ、ブリッグスの『スノーマン』『風がふくとき』のアニメ制作など、アニメーターとして活躍後、子どもの出産を機に絵本の制作をはじめたそうです。 (『くまにてがみをかきました』偕成社 著者紹介より)
原書は『Dear Bear』1994 HarperCollins Publishers Ltd.,Great Britain とあります。
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『Dear Bear (Carolrhoda Picture Books) (ハードカバー)』 Lerner Pub Group (T) (1994/10)
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いるのにね。いるいる絵本、勝手にひとくぎりは、いる・いないのとってもナイーブな、いいな・絵本。類はきっと友を呼ぶのです。子どもにだけ見えることり、いついつまでも、そっと歌い続けてくれますように。
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『ことりはどこ?』 シャーロット・ゾロトウ文 ナンシー・タフリ絵 みらいなな訳 童話屋 1991年
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ことりはスーザンにはなしかけるのでした。 四季の喜びを。命のきらめきを。 でもことりのこえは、みんなにはきこえないのでした。
ことりはいつもスーザンのそばで歌いましたが、いつしかスーザンはことりのことを誰にも話さなくなりました。
冬が過ぎ、再び春がめぐってきたある日、 ・・・
ことりが運んできてくれた、甘酸っぱくてさわやかな物語。忘れかけていた気持ちがよみがえるよう。
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あるはるのあさスーザンは ことりのよぶこえでめをさましました ことりはスーザンに はなしかけているのでした
春の喜びを。 夏の輝きを。 秋の恵みを。 冬の耐える力を。
ことりのいうとおりでした 「かあさん!とあさん! ことりがはなしをしているわ」 でもことりのこえは みんなにはきこえないのでした
感受性豊かなことりといっしょに春を、夏を、秋を過ごし、みんなにことりのことを伝えようとしたスーザンは、冬を迎える頃、誰かに話すことをあきらめてしまいます。 ことりはスーザンのそばで冬を歌い、やがて春がきたことを歌い・・・。
冬の家の窓のように、スーザンが心を閉ざしたかに思える場面はどきりとしますが、続く象徴的なうさぎの絵のぬくもりと、秘めた意思を感じるまっすぐな瞳が、耐え忍んだ後にくる春の予感を感じさせてくれます。
めぐる四季の中で、ことりと心を通わせ、ことりの歌い上げる四季の喜びに共鳴したスーザン。 そして新しい春、ことりが新しい出会いの喜びを結んでくれました。 小鳥の翼のように軽やかで、羽毛のように繊細でやわらかく、歌のように美しいテキストに、穏やかなまとまりの、アール・ヌーボーのように華やかなデザインのイラストが添えられた絵本。 紫の翼をひろげることりは気品にみちて、さりげない草花も可憐な立ち姿。スーザンの細やかなプリーツスカートのひだが、繊細にゆれて、なつかしい少女のひとときをよびさますよう。 春、スーザンの感じたどきどきに、私までも少女みたいに(笑)ときめいてしまいました。ことりがいつまでもふたりのそばにありますように。
原書は『THE SONG』Greenwillow Books,New York 1982 とあります。
わたしだけに見えるともだち、という絵本には、他にも『アルド・わたしだけのひみつのともだち』▲(ほるぷ出版)や、『ひみつのともだちモルガン』▲(偕成社 品切れ)などがあります。
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