
『なんでもふたつ』 リリー・トイ・ホンさいわ・え せきみふゆやく 2005年 評論社
中国の昔話をもとにした愉快なお話。 むかしむかし、とてもびんぼうなハクタクじいさんとおばあさんが、粗末な家の小さな庭で野菜をつくって暮していました。ある日、ハクタクじいさんが庭で畑を耕していると、しんちゅうでできた古い大きなかめが出てきました。 もって帰ろうとしたもののあんまり重いので、よろけて全財産の財布をかめの中に落としてしまいました。 もって帰ったかめをおばあさんがのぞきこんだ拍子に、おばあさんのたったひとつの髪飾りがかめの中に落ちてしまいました。
おばあさんがかめの中を手探りしてびっくり。なんと、財布がそっくりふたつ、髪飾りもふたつ! それは、入れたものがなんでもふたつになるという、魔法のかめだったのです! 大喜びしたおじいさんとおばあさんは、やがて財布を何度も何度もほうりこんで、にわかに大金持ちになりますが・・・。
まんまるほっぺとおちょぼお目目の、もとからふたごみたいにそっくりなおじいさんとおばあさんの絵がほのぼのと愛らしく、トントンとはずむように進む物語がわくわくと楽しい絵本。
昔から、うまいはなしには裏がある、といわれるように、何かきっと落とし穴があるはずだ、なんて、ともすれば大人読みで先回りしつつ、 「このかめは、わしらがかんがえていたほどありがたいかめじゃないぞ。わしらのしんぱいごとまでばいになっちまうじゃないか」 と、まんまとおじいさんが叫ぶあたりで、やっぱりねー、なんてニンマリわくわく(?)してしまうのですが、物語は、そんな思惑などのほほんととびこえて、ほのぼのまんまるい絵にぴったりの、四方八方まるくおさまるめでたい結末を迎えます。 いろいろありましたが、最後の近所の人々の言葉が、すべてを物語っているのかも。おじいさんとおばあさんたち、末永くお幸せに!
作者のリリー・トイ・ホンさんは、中国系アメリカ人で、他にも『The Empress and the Silkworm』(Albert Whitman & Co) など、中国の昔話を題材にした絵本があるそうです。
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