『ミンケパットさんと小鳥たち』 ウルスラ・ジェナジーノ作 ヨゼフ・ウィルコン絵 いずみちほこ訳 セーラー出版
水墨画のようなモノクロのページと、渋い茶色を基調としたカラーのページが交互に編まれたレトロな構成の絵本。原書は『HERR MINKEPATT UND SEINE FREUNDE 』Middlehauve Verlag Munchen 、1964 、とあります。1971年あかね書房の『ミンケパットさんとことりたち』の新訳による復刊。
ミンケパットさんは、すこし風変わりで、いつもひとりきりの、ちいさな男の人でした。いろいろな仕事につきましたが、最後に森の小鳥の世話をする仕事をしたおかげで、小鳥たちのさえずりがわかるようになりました。 年をとって仕事をやめると、ミンケパットさんは自分の屋根裏部屋に古いピアノを一台買って、練習をかさね、とうとう小鳥のさえずりをメロディにすることができました。いつしか窓辺に小鳥たちが集い、ささやかな音楽会がはじまったのです。
ところが、ミンケパットさんのピアノの音は、近所の人たちにとってはうるさいだけだったのです。 ・・・
ささやかな線と、大胆な筆の面でのびやかに描かれたイラストは、白黒、あるいは、黄昏のような沈んだ色。ミンケパットさんのちいさな、ちぢこまった身体と心から、にじみ出るような物悲しさ、うら寂しさ・・・。 ミンケパットさんのイメージは横顔、帽子、コート。冬の物語なので、当然の装いなのですが、帽子で守り、コートですっぽりとつつんでいるのに、横顔がなお寒そうで、しんしんと冷えています。
静かな物語の結末は、モノクロで、静かな余韻。
この絵本の表紙カバー見返しには、いわさきちひろさんのご子息で安曇野ちひろ美術館館長の松本猛さんの言葉が添えられています。
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