■長新太さんの絵本
1927-2005 東京生まれ。漫画、絵本、エッセイなど様々な分野で活躍。2005年6月25日、中咽頭がんのため亡くなる。手がけた絵本は400冊以上。
*『なにをたべたかわかる』*『わたし』*『あなた』

 
『なにをたべたかわかる?』絵本館

『なにをたべたかわかる?』
長新太さく
絵本館
2003年

1977年銀河社の再刊、だそうです。

ねこが大きな魚をつったんだけど、重くて大変。
必死に背負って歩くんだけど、大きすぎて後ろなんか振り向けない、重すぎて周りもよく見えない。
そんな魚をおぶったねこを、ねずみがびっくりして見ているんだけど、そのねずみを、背中の大きな魚がぺろりと食べてしまった。
ねこは知らない見えないわからないんだけど、魚はどんどん大きく重くなる・・・。
つぎにうさぎがやってきて・・・。

食べる、食べられる、というちょっぴりシュールな展開が大好きな小さい子には、大受けのナンセンス絵本。
とぼけた表情の動物たちがいいお味出してます。

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『わたし』福音館書店

オンライン書店ビーケーワン:わたし

『わたし』
谷川俊太郎さく
長新太え
福音館書店
1992年

わたし、みち子、5歳。
お兄ちゃんから見ると「妹」、犬から見ると「人間」・・・。
わたしは「わたし」だけど、見る人によって、見方によって、こんなにもいっぱいの「わたし」がいるの。

「わたし」についての社会的認識を楽しくはぐくむ、小さい子のためのはじめての哲学絵本。
初期のあっさりしたタッチも好きです。それでいて奥が深くて。

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「あなた」福音館書店(月刊誌『おおきなポケット』2004年4月号より)

上記『わたし』(福音館書店)オンライン書店ビーケーワン:わたしの姉妹編として同じコンビ(谷川俊太郎ぶん 長新太え)で企画された作品がこちらだそうです。 福音館書店発行の小学生からの月刊誌「おおきなポケット」2000年4月号の、トップを飾る読み物(絵本)です。32ページ。

月刊予約雑誌
「おおきなポケット」
2004年4月号(97号)より

「あなた」
谷川俊太郎ぶん 
長新太え
福音館書店
2004年
現在入手困難

絵本『わたし』の姉妹編。
『わたし』とは違った切り口から、「わたし」と、わたし以外のあらゆる「あなた」について、のびやかに歌い上げ描かれた作品。


イラストは、長新太さんの、ビビットなピンクオレンジが楽しくのびやかで自由な、最近のタッチ。

わたし』は、立場が変わると「わたし」がいろいろな「わたし」になる、「わたし」はみちこだけど、お兄ちゃんから見ると妹、医者から見ると患者、という風に、どんどん変わってゆく、という、社会的芽生えの一歩、哲学的芽生えの一歩、のような作品でしたが、『あなた』は、少し違いました。

「わたし」は見方を変えてもその対象はわたしひとりですが、「あなた」は違うのです。
お兄ちゃんも、なかよしのさっちゃんも、この本のために働いている人たちも、木も草も動物も、「わたし」以外のすべてのひと、そしてものが、「あなた」だから。

「絵本『わたし』と同じ方法でこの『あなた』を書くのは不可能でした」

と、「おおきなポケット」の中の大人向けのページで、谷川俊太郎さんが書いていらっしゃいます。

そして、別の切り口から、「わたし」と「あなた」、自分と他人についての意識を整理できるようにとお作りになられたのがこの『あなた』です。

「わたし」の目の前の、身近な「あなた」から、目には見えないけれど「わたし」を支えてくれているより大きなたくさんの「あなた」へと、美しい日本語とのびのびしたイラストで、若木に水を与えるように、たっぷりと語りかけてくれています。

また、上記の「おおきなポケット」の解説のページで、谷川俊太郎さんがお書きになっていることには、詩集『みみをすます』(福音館書店)オンライン書店ビーケーワン:みみをすますのなかにも、「あなた」という詩がすでにあるそうですので、

「この『あなた』を前に出た絵本『わたし』と、また詩「あなた」とともに読んでいただけると幸いです」

と、あります。

早速この『みみをすます』を、図書館で借りて読んだのですが、まさしく耳を澄ますと聞こえてくる、心地よい雨だれのような、寄せる波音のような、美しい日本語の詩、でした。
ちょうど小学一年生の長女が、はりきって音読に挑戦したのですが、ところどころつっかえながらも、読み上げるのにぴったりの文章、という感じ。

「わたしではないあなた」・「わたしとはちがうもうひとりのひと」にさざ波のように語りかける詩「あなた」も素敵です。

話を「おおきなポケット」の『あなた』に戻しますが、この大人向けのページの、松居直さんのれんさい「内ポケットのはなし」も、とても心に残りました。
さらに、長新太さんの文章も、ユーモアたっぷりでありながら、しみじみと胸を打ちます。
長新太さんがあれほどののびやかで自由で素直で、独創的で大胆で幸せな絵を描きながらも、「子どものように絵が描けたら」、と、お考えになっていらっしゃったなんて、驚きでした。まさに、天性の「こどものよう」な絵をお描きでいらっしゃったのに・・・。
お亡くなりになられたなんて、今でも信じられない気持です。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

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