『チモレオンアフリカへ行く』チモレオンの世界りょこうシリーズ 金の星社 品切れ |
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『チモレオン アフリカへ行く』 (チモレオンの世界りょこう1) ジャック・ガラン絵 ダニエル・フランソワ文 久米みのる訳 金の星社 1974年 品切れ |
やあ、ごきげんよう。ぼくうさぎのチモレオン。 生まれて初めて、故郷フランスのサン・クル・ラ・シーヌ村から飛び出したぼくの、アフリカで出会った魅力的な動物たちとのびっくりどっきり旅行記を読んでみてね。
レトロでシックな色使い、おしゃれで愛らしいセンスの、当時のヨーロッパの絵本の雰囲気をたっぷり盛り込んだイラスト、ウィットとユーモア、しゃれっ気の光るテキストで、あなたをアフリカへご招待。 嬉しい続編でも、チモレオンはところせましと大活躍!・・・ただし品切れ。
せかいのどこでもいけるパスポートを、すでにフランス外務省からもらっている。いまごろ、きみのものおきごやで、ひるねをしているかも。チモはわが社に、かれのぼうけん記を、えほんにすることをやくそくした。わが社は、それを、ウサギ航空で、せかいじゅうにばることをやくそくする。たのしみに、ね。 (『チモレオンオセアニアに行く』より) |
原書は『TIMOLEON DECOUVRE L'AFRIQUE』LIBRAIRIE HACHETTTE S.A.,1972とあります。
これは古い絵本です。古本屋でも一度も見たことがないので、もしかするとかなりレアかも? 図書館の書庫からリクエストで取寄せました。 大型の絵本(約32*23.5センチ)で、イラストはレトロで愛らしく、くっきりとした色彩、はっきりとしたフォルム。その特徴を大胆に引き出して、ユーモラスに描かれた動物たちの、にぎやかに活躍する楽しい楽しい旅行記です。
普通の絵本のように一つの物語を描いている作品ではありません。 フランスの田舎の穴そだち、世界旅行はこれがはじめてのうさぎのチモレオンと、アフリカならではの迫力の動物たちとのおりなす愉快な事件や、ユーモアとしゃれっ気たっぷりのさまざまなアフリカ動物事情が、どこから開いても楽しめるような、子どもの楽しい雑誌のような、新聞のような盛りだくさんの絵本になっています。
主人公は、しりたがりやの元気いっぱい、わんぱくうさぎのチモレオン。 チモレオンは、それまで生まれ故郷のサン・クル・ラ・シーヌ村からとびだす勇気がなかったのですが、心配した父に「そとにでてごらん」と勧められ、渡り鳥のコウノトリに「アフリカはとってもすてきだったわ」と聞かされて、すっかりその気になり、必要な旅行道具を揃えてはりきってアフリカへ飛び出します。
その旅行道具が・・・、これまた、フランス絵本、という感じ(?)で、遊び心たっぷり。 最初のページに、とても魅力的に道具たちが描かれているのですが、 ぼくのカバン、ぼくのしょうめいしょ(うぎたんけんくらぶ会員しょう)、ぼくのうんてんめんきょしょう(空とぶじゅうたん)、・・・。 ぼくのとけい(世界一べんりだよ) ・・・これは、「ときどきなまけるはり」 の金色の懐中時計で、 「世界じゅうでおいしいにんじんができるところいちらんひょう」 と 「世界じゅうのおまつりの日がかいてあるさいじつひょう」 などを内蔵し、 「ぶどうしゅのみわけかた」 や 「ビタミンをとりすぎると赤くなる」 ボタン(?)も装備された、本当に 「世界一べんり」 で不思議な時計なのです! そして 「ワニの歯をそうじするピンセット」 もカバンに忘れずに!
これらの旅行道具のイラストを眺め、ウサギ流ユーモアたっぷりの説明を読むだけで、もううきうきわくわく!(しかも余談ですが、この便利な旅行道具たち、果たして実際に当地ではほとんど使われていないのですよね・・・それよりももっと次々と目を奪い心をつかむ不思議で楽しい見聞記が満載なのですよ!) 自分で字の読める大きい子なら、どのページのどの小さな文字も、どの動物の姿かたちも表情も台詞も、どんななぞなぞもひとりごとも、目を皿のようにして一つ一つ確かめ、あまさず味わわずにはいられないのでは?
例えば、チモレオンが旅行先で利用し(ようとし)たのは「カバタクシー」。
カバタクシー ● じぶんのおもさ (3トン) 草を1トンたべさせて くだされば、10キロだけ はこびます。
長さ 4メートル はば 1.5メートル とし 30さい
(ただし、ライオンせいふは あんぜんをほしょうしません。) |
ところが、いせいがいいばかりで、のろいこと、それになんてうんのわるいことか、タイヤがパンク、モーターもとまった。ペリカンのしゅうりやをよんだが、どうぐばこのくちばしがりっぱなだけで、ぶあつい皮をきているどうぶつのことは、なんにも知らないんだ。
やっとなおった。ところが、きたないみずたまりのところへくると、「すみませんが、ここで洗車、水あびをさせてください」といいだした。・・・。
「でもほんとうは、ちょうになって空をとびたいんだよ」と、うっとりした目で空をみあげていた。・・・
大真面目にユーモラスなイラストと、ユーモラスで大真面目な旅行文で、とんでもなく楽しいチモレオンの旅行は、チモレオンペースでどんどん愉快に続きます。
絵本に書いてあることは、アフリカの動物たちについての特徴や生態あれこれの、本当のことを元に、ひねりと皮肉とユーモアを添えた、ウィットあふれるナンセンスやスパイスの効いたジョークたち! 前述のカバならその鈍重な見た目の大きさ、泥水につかる性質から楽しいカバタクシーの創作に、キリンなら長い首の長さや7本の骨の数についてもふれながら、同時に首の長さを心棒に活かした(?)メリーゴーランド遊びをさせられる楽しいイラストや、お洒落なキリン仕様の衿飾りなどなど、ライオンなら老いぼれたライオンにチモレオンがぴったりのカツラを作ってあげるエピソードなどなど、愛すべきチモレオンと動物たちの大活躍が、ふんだんに盛り込まれています。 これを読めば、いままで子どもたちが親しんでいたアフリカの動物たちへのイメージがさらに楽しく豊かにふくらみ、物知りにもなれる上に、一流の遊び心のセンスが磨けること間違いなしかも?
嬉しいことに、「チモレオンの世界りょこう」は当時大人気を博し、シリーズ化されたようで、当時の金の星社さんによる邦訳もシリーズ全5冊、出版がなされたようです。・・・ただし、現在は品切れですが・・・。
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フランスののどかな田舎のうさぎチモレオンが、広い世界、まずはアフリカに飛び出した。カバ、ゾウ、キリン、サイ、ライオン・・・見るもの聞くもの珍しく、やることなすこと愉快痛快! さあ、また旅に出かけよう。 おわりのページには「チモレオンのうた」、旅の余韻をもう一度。 |
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チモレオンがインドでトラに、チベットでヤクに、ヒマラヤで雪男に、中国でパンダに・・・などなど遭遇、はしや漢字にも挑戦、日本では「鵜飼い」を楽しむ、愉快な愉快なアジアの旅! おわりのページには、チモレオンが出会った動物たちへ贈ったひとひねりのプレゼントたち。そして歌で、旅の余韻をもう一度!(この後のシリーズ共通の粋なしめくくりになっています) |
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チモレオンが今度はアメリカへ。しかし迎えのいとこが来なくて、お金のないチモレオンは、次々と仕事を見つけながらアメリカをくまなく縦断します! まずはニューヨークのアライグマの消防士に加わり、ウサギ新聞の記者になって、ビーバーたちが建築中の高層ビル工事現場のてっぺんへ。アラスカへもとび、南部ではならず者の「コヨーテ・ビルぐみ」を追いかけて、ハリウッドのディズニーのスタジオにもお邪魔。アマゾンではピラニアとアルマジロに遭遇、アルゼンチンにも、ブラジルにも、立ち寄っては大騒ぎ! |
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チモレオンが今度はオセアニアで、動物たちのお世話になります。カンガルータクシーの指定席でごきげん、カモノハシの水辺の家を見たり鋭い歯で道路工事中のフクロネズミに出会ったり、コアラの家で滞在中にわんぱくコアラ坊主の子守をさせられたりなどなど、わくわくがいっぱい。 |
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世界を巡ったチモレオンが今度はヨーロッパへ。ギリシャ、イタリアで美術鑑賞、スペインで太陽の光と元闘牛士にフラメンコを習い、フィンランドでサウナにはいり、ウラル、ロンドン、そして不思議なおとぎの国々、タイムマシンで昔の城へもひとっとび! そしてやっぱりふるさとフランス、あこがれのみやこ、パリを満喫、空気のきれいな田舎も見て、スイスではネス湖のかいじゅうにも出会って・・・。 そして我が家へ。 あなたがにんじん荘、大りょこうかのチモレオン氏のべっ荘へくるときは、おみやげのにんじんをわすれずに、ね。 | 全5巻 各冊 A4変型 30ページ カラー刷り 小学初級以上向
ですって。(各巻表紙カバー裏見返しより)
ちなみに、作者のジャック・ガランさんは、 1926年パリ生まれ、1946年に美術工芸学校アニメーション・アトリエを卒業、アニメーションスタジオにつとめ、1963年自作で幼児向きの月刊誌を創刊。1969年絵本の挿絵を担当して評判に、1972年チモレオンを創作、斬新な画風は大好評を博した。 ■この(チモレオン)シリーズの文章は、ダニエル・フランソワの名で数人の作家とジャック・ガランが合作したものです。
と、あります。(同上、各巻表紙カバー裏見返しより)
当時のヨーロッパ絵本の雰囲気をお洒落にただよわせた愛らしいイラストのチモレオンは、もしかすると、ヨーロッパの多くの絵本たちに大きな影響を与えたのかもしれませんよね。
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