『ウクライナ民話 てぶくろ』(のら書店)

『ウクライナ民話 てぶくろ』
アルビン・トレッセルト再話 
ヤロスラーバ絵 
三木卓訳
のら書店
2005年

とてもさむいふゆのひ、もりのなかでたきぎをあつめていたおとこのこは、てぶくろのかたほうをおとしちゃった。
このさむいのに、どうしてそんなことになったかだって?
それはわからない。だって、これぼくのおじいちゃんがはなしてくれたことだから。

おとこのこがいってしまうと、ちいさなねずみがチョロチョロはしってきた。
・・・。

ウクライナ民話の「てぶくろ」が、アメリカの作家アルビン・トレッセルトさんと、ヤスロラーバさんの独自の味付けにより、元のお話を大切にしながらも、すっきりと洒落たフォークロア絵本になりました。

ウクライナ民話「てぶくろ」の挿絵といえば、ロシアの画家エフゲーニィ・ラチョフさんの描いた、民族衣装を着た動物たちの表情豊かな『てぶくろ』(福音館書店)オンライン書店ビーケーワン:てぶくろ、(ネット武蔵野)オンライン書店ビーケーワン:てぶくろが有名ですが(くわしくはこちら)、他にもさまざまな画家による絵本がありますよね。
1925年、ニューヨーク生まれの画家、ヤロスラーバ(Yaroslava Mills)さんの描く『てぶくろオンライン書店ビーケーワン:てぶくろも、その一つ。
動物たちの身を包む民族衣装などに、ラチョフさんと似た雰囲気を感じますが、ヤロスラーバさんの描く『てぶくろ』の、細い輪郭線のすっきりとしたフォルムもまたこれおしゃれ。
洒落たぬりえのように、無駄のないシンプルな線と、抑えた色数の明快な配分で構成された、味わい深いカラーページと、水色と白黒以外のすべての色を取り去った、モノクロの線画の沈むような静かなページが、交互に組まれたクラシカルな構成です。

原書は『THE MITTEN』、コピーライトは1964年とあります。
アマゾン洋書ではこちらなど↓
ハードカバー、ペーパーバック、カセットなど、いろいろな形で、版を重ねているようです。

 『THE MITTON』
Mulberry Books

てぶくろ』(のら書店)の著者紹介によると、ヤロスラーバさんは、
「古くから伝わるウクライナのガラス絵の技法の影響を受け、作風にも取り入れており、ガラス絵をプリントしたポストカードのなども多くある」
とあります。
ガラス絵、のイメージが、まさにぴったりの、透明感のある、繊細な線のイラスト!
何より表紙の男の子のポーズ、そして表情、それから表紙のすこしくすんだ水色とオレンジ色の色使いが、本当に好みです。
しんとした冬の空気を思わせる水色と、ガラスアートを思わせる、雪の結晶の模様が、とても映えて美しいですよね。

この雪の結晶の、少しずつ形の異なる美しい模様は、本文中にも品よくちりばめられ、水色の地のページには白色の線で切り抜かれたように、交互に組まれている白色の地のページには水色の線で切り込まれたように、きらきらと静かに物語を彩っています。てぶくろを中心としたシンプルな銀世界に、不思議な奥行きを与えているよう。

古いウクライナ民話をしたじきに、
「ぼくのおじいちゃんがはなしてくれた」
という形式で物語られているアルビン・トレッセルトさんの再話も、楽しくて不思議な広がりがあります。
落とした片方の手袋(ミトン)に、かえるやねずみやふくろうやうさぎや、果てはいのししやくままでが、ぎゅうぎゅうのきつきつ状態にしろ、無理やり入り込んでおさまってしまうなんて、そんな無茶な、といいたくなるような、とぼけたナンセンス物語に、丁寧にさしたとどめの場面は、別のフォークロアにも通じているような広がりを感じます。
「ぼくのおじいちゃんがはなしてくれた」
とすることで、本当のことともお話の中のことともつかない、そのはざまの余韻を楽しみながら、安心してお話の世界に入っていける、という感じもします。

小さな手袋に、つぎつぎと動物たちがやってきて、どんどん無理やり入り込む、繰り返しの楽しい昔話を、また一つ、新鮮な雰囲気で楽しめる絵本です。
いろいろな味わいの「てぶくろ」を読んでみたいなと思ったら、この一冊は欠かせないかも。
よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。

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