■ターシャ・テューダーさんの絵本 |
Tasha Tudor 1915年米国マサチューセッツ州生まれ。アメリカでもっとも愛されている絵本作家の一人。園芸家。現在もヴァーモントの森で、19世紀のライフスタイルを実践し続けている。80冊以上の著作があり、主な邦訳作品には、『ターシャのスケッチブック』(メディア・ファクトリー)、『みくにがきますように』▼(日本キリスト教団出版局)、『すばらしい季節』(すえもりブックス)など、多数。 (『こねこのクリスマス』いのちのことば社フォレストブックス、表紙カバー裏見返し、著者紹介、参照) |
『こねこのクリスマス』*『人形たちのクリスマス』*『ホワイト・グース』*『みくにがきますように』 |
『こねこのクリスマス』いのちのことば社 フォレストブックス
|
|
『こねこのクリスマス』 ターシャ・テューダー絵 エフナー・テューダー・ホールムス作 辻紀子訳 いのちのことば社 フォレストブックス 2006年
|
クリスマスの前の寒い日、家を失い、森をさまようはい色のこねこが、目を覚ましてみたものは・・・。
冬色の色彩で荘厳に描かれたクラシカルなイラストと、クリスマスの不思議なめぐりあわせを描いた心温まる物語が、静かにとけあった古典絵本。 小さな幸せに照らされた兄弟とこねこの物語。
|
クリスマスの前の日のことでした。 吹雪のあとの寒い森の中を、家を失ったはい色のこねこがさまよい、つかれはてて木の下で眠ってしまいました。
森のはずれの小さな農場では、あたたかな家の中で、ネイトとジェイソンの二人の男の子の兄弟が、クリスマスの馬小屋飾りのクッキーをせっせとつくっていました。 眠る前、暖炉の上に準備された馬小屋飾りに、ローソクのあかりをともしながら、 「森の動物たちは、どんなに寒いだろうね・・・」 と、心配しあうのでした。
その夜、森の中で目を覚ましたはい色のこねこは、静かになった森の遠くの方から、何か音が聞こえてくることに気がつきました。 たくさんの動物たちが、音のする方へと、木の間をもくもく歩いていくと、 ・・・。
ターシャ・テューダーさんの抑えた色彩の静かなイラストが美しいクリスマス絵本。 凍えるようなクリスマスの夜、こねこと二人の兄弟が、不思議な運命に導かれるように、出会うまでの軌跡を描いた、心温まる物語。 テキストの作者、エフナー・テューダー・ホールムスさんは、ターシャ・テューダーさんの娘だそうです。
暗く重くたれこめる、厳しい冬の森の様子、暖炉の火に照らされるほのあかるい部屋の様子、動物たちがあつまった森の中の月明かりの広場の冷たく青くおごそかに輝く様子。写実的なみずみずしいタッチで、心を込めて描かれたイラストが、つつましやかで満ち足りた喜びを静かにうたいあげているよう。
それにしても・・・森の広場に現れた、動物たちに慕われているやさいいあの方は、いったい誰なのでしょうか。 クリスマスのすばらしい不思議を、いろいろ思い巡らす楽しみもありますよね。
原書は『The Christmas Cat』1976 Harpercollins Children's Books とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
|
『The Christmas Cat (ハードカバー)』 Harpercollins Childrens Books (2000/09)
|
邦訳と表紙が異なっています。
|
▲上へ
|
『人形たちのクリスマス』 ターシャ・テューダー ないとうりえこやく メディア・ファクトリー 2001年
|
ターシャ・テューダー家に伝わる、<人形たちのクリスマス>のお祝いを描いた、愛らしくいとおしい絵本。 子どもたちによる人形のための手作りのクリスマスには、ずっと守って、はぐくんでいきたい大切なものが、たくさんちりばめられていて、輝いています。 かつて、あるいはいま、お人形と心を交わし、魔法を感じた子ども時代をもつすべての人に。
|
人形たちはしあわせでした。 なぜなら、この家で長年可愛がられ、パンプキン・ハウスとよばれる、とくべつの大きな人形のいえにすんでいたから。
クリスマスに、人形たちはパーティをひらきました。自分たちのクリスマスツリーを立てて。 おなじ夜に、マリオネットショーもおこなわれます。 持ち主のローラとエフナーが人形にかわって、人形サイズのびんせんに招待状を書いたり、森からもみの木をさがしてきたり、ゆびぬきで小さなクッキーのかたぬきをしたり、いろいろ準備にいそしみます。 ・・・
ターシャ・テューダー家に伝わる、<人形たちのクリスマス>のお祝いを描いた、愛らしくいとおしい絵本。 古い大きな人形のひとつ、鼻のすりへったナイシー・メリンダは、ひいおばあさんがこどもだったころから、ずっと愛され続けて、ほおずりされてきた由緒ある人形なのですって! 人形たちのためのパンプキン・ハウスは特別大きくて、妹のエフナーがせのびしても2階に届かないくらい。 人形たちを使ったままごとや、着せ替え遊びは、子どもたちの大好きなごっこ遊びのひとつだから、絵本に描かれてあることはとても親しみやすくてなつかしくて、ほほえましくて、そして、あこがれ。 人形たちにぴったりの小さなクリスマスを、子どもたちがひとつひとつ自分たちの手で本格的に準備して、家族や親しい友達、そしてその人形たちをまねいて祝うのです。 人形たちにも、ちゃんとそれぞれのクリスマスの贈り物が用意され、パーティーのディナーが準備されていて、本当に、年に一度のすばらしい魔法のような時間。
静かな人形たちの目を通して描かれている文章は、人形たちをお祝いに参加させているローラとエフナーを温かなまなざしで描きながら、ところどころユーモアたっぷりに、人形たちが自分で行動しているような一文もおりまぜられてあって、茶目っ気と、不思議を感じます。人形たちが準備にくたびれたり、目を覚まして光景におどろいたりする様子は、もしかすると、クリスマスのすばらしい魔法で、本当のことかもしれないですよね!
人形のための手作りのクリスマスのお祝いを通して、子どもたちは、誰かのために用意を整えたり、飾りつけをしたり、お祝いをしたり、贈り物をしたりする、本当の意味とその喜びを知っていくのですね。
巻末の、ターシャ・テューダーさんの言葉のすべてがあこがれで、何度も読み返してしまいます。
原書は『THE DOLLS' CHRISTMAS』1950 Oxford University Press ,Inc.とあります。 ターシャ・テューダーさんの、現在では入手困難な初期の傑作11冊を邦訳出版した「ターシャ・テューダークラッシックコレクション」の中の貴重な一冊。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
|
『The Dolls' Christmas (Tasha Tudor Collection) (ハードカバー) 』 Simon & Schuster (Juv) (1999/10)
|
|
▲上へ
|
『ホワイト・グース』 ターシャ・テューダー ないとうりえこやく メディア・ファクトリー 2002年
|
妖精に魅入られた牛飼い少年ロビンの、一瞬の出会いと別れ、華やぎとゆらめきを、藍色に沈む美しい色調で描いた、神秘的な物語。 清楚で、そしてどこか妖艶で、畏怖の念さえ感じる、静謐な世界。千載一遇の余韻にいつまでもひたっていたい絵本。
|
月あかりの中、夜と夜明けの合間に、白いはねの雁が1羽、むれからはぐれた。 牛をあつめに外に出ていたロビンは、白いはねの雁が消えるのを見た。 川のあたりで野の雁のよぶ声がする。何かの気配がして、ロビンはふりかえる。 草の原に白いはねが1つ、またその先、その先に。
ロビンは忘れた。牛を、あたたかないえを、朝ごはんをつくってまつかあさんを。 牛の道をそれ、森をぬけ、川べりへ。 野の雁がいっせいに、高くなきたてて、なきやんだ。 アシの葉のおく、雁の群れの真ん中に、おさない少女がいた。ロビンを見て笑い声を立て、手まねきした。 ロビンは冷たい月の光に、つらぬかれたと感じた。 ・・・
「いらっしゃい」 少女はロビンの手をとり、ロビンはためらう。 「ぼくにはうちがある」 「知ってるわ。でも行くのよ。・・・」 ・・・
朝まだきの灰青色にけぶる束の間のひとときの出会いが、残り月の白い明かりに照らされて、この世のものとも思えないくらい、冴え冴えと美しい絵本。 小さな版型のしっとりとした絵本の中から、古くから伝わる不思議の伝説が、まるで青白い炎のように、ホログラムのようにゆらりと浮かび上がるよう。 短編小説のように魅惑的なテキストから、夜明け前のひんやりした静けさが、雁の声が、少女の笑い声が、頭の中にこだまして、戸惑いゆらぐロビンの心と共振するようです。
もし自分がロビンのように誘われてしまったら・・・。もし子どもが誘われてしまったら・・・。 行ってしまうかもしれない。行かないかもしれない。 見果てぬ一歩を踏み出してしまうかもしれない。あえて踏みとどまるかもしれない。 しんとした夜と夜明けの狭間で、ロビンをひきとめるあたたかな現実と、ロビンをすいよせる青白い妖精の不思議。
いつまでもいつまでも、神秘的な余韻にひたっていたい、美しい瞑想のような絵本。 大好き。
原書は『The White Goose』1943 Oxford University Press New York,Inc.とあります。 ターシャ・テューダーさんの、現在では入手困難な初期の傑作11冊を邦訳出版した「ターシャ・テューダークラッシックコレクション」の中の貴重な一冊。
▲上へ
|
『みくにが きますように』 しゅのいのり ターシャ・テューダーえ 日本キリスト教団出版局 2006年
|
|
イエス・キリストが教えられた祈りの言葉に、ターシャ・テューダーさんの美しく清らかな絵が添えられた祈りの絵本。 自然の中ですこやかに暮す子どもたちを描いた、みずみずしく澄んだ絵は、読んでいる子どもたちにもわかりやすく、親しみやすく語りかけてくれるよう。
|
てんにましますわれらのちちよ、 ねがわくはみなをあがめさせたまえ みくにをきたらせたまえ ・・・
「「主の祈り」は、「祈りを教えてください」という求めにこたえてイエス・キリストが教えられた祈りである。」 と、あります。 (『みくにがきますように』日本キリスト教団出版局 教師カバー裏見返し より)
恵みと赦し、救い、祈り、願い、清らかなものへの尊い導きを、ターシャ・テューダーさんの澄んだ色彩でおごそかに描いた美しい絵本。
豊かな自然を背景に、素朴でみずみずしい季節の草花のリースのような装飾がほどこされ、その内側を中心として、穏やかでやさしいまなざしの子どもたちや動物たちが描かれています。 日々、暮らしの中で祈り、感謝をささげる人々の静かな輝きは、どうしてこんなに美しく、力強いのでしょう。 自然とともにつつましく、そして豊かに暮す人々の穏やかな絵が、しみじみと心を打ちます。
少しむつかしい言葉の祈りを、子どもたちにやさしく語りかける絵本。
表紙から裏見返しまで、どのイラストのページにも、リースのような、庭のバラのアーチのような、美しい飾り枠が描かれているのに対して、絵本の裏表紙のイラストには、何の飾り枠も描かれていないのですが、ここまで読み終えると、どのアーチにもおとらぬくらい、神々しいまでに美しく輝いて見えるのは不思議・・・。
原書は『GIVE US THIS DAY』1987 Philomel Books, A division OF Penguin Young Readers Group,A nember of Penguin Group( Young Readers Group,A nember OF Penguin Group(USA) Inc. とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
『Give Us This Day: The Lord's Prayer (ハードカバー)』 Philomel Books; Mini Rei版 (1992/02)
|
邦訳と同じ表紙だと思われます。
|
『Give Us This Day: The Lord's Prayer (Picture Books) (ペーパーバック)』 Puffin (1999/05)
|
邦訳の本文中の一場面と同じだと思われます。
|
この記事へのコメントを読む▼*書く▼ (この記事へ戻るには、ブラウザの戻る、をクリックしてくださいね) |
▲上へ
ターシャ・テューダーさんの絵本 「た」の絵本箱へ
HOMEへ
Copyright (c)2005-2007 kudolacieko All Rights Reserved
|