■タルリーサ・ヴァルスタさんの絵本 |
Taruliisa Warsta 1947年、フィンランドのヘルシンキ生まれ。ヘルシンキ大学卒業。地方新聞記者を経て、画家として独立。2作目の絵本は、「王女様が泣き出した時」。広島県福山市をはじめに、日本各地で個展を開催している。ギャラリア風の巣(広島県福山市)にて常設展示。 (『子うさぎヌップのふわふわふとん』あかね書房、著者紹介 より) |
『子うさぎヌップのふわふわふとん』 |
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『子うさぎヌップの ふわふわふとん』 タルリーサ・ヴァルスタ作絵 稲垣美晴訳 あかね書房 2000年
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子うさぎヌップと、子ぎつねバルデマルの、大切な友情を描いたさわやかな物語。さまざまな夢や希望、メッセージが、可憐な草花をちりばめた装飾に、しっとりとしっかりと刷り込まれた美しい絵本。
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子うさぎヌップのふわふわふとんは、ヌップのことをだれよりも愛し、心配する、おかあさんの心のこもったてづくりふとん。 ふとんがヌップを、夜のきけんなものからまもってくれると、おかあさんはしんじていました。 あるばん、うさぎのうちのすぐそばに、おそろしい子ぎつねのバルデマル一家が引っ越してくるまでは・・・。
心配のあまり、遊び盛りのヌップは、家の中に閉じ込められてしまいます。 だんだんふとんが小さくなってきたある朝、ヌップはとうとう我慢ができなくなって、ふとんをぬいで、森へでかけていきました。 野原には見たことのない子どもがいて、にこにこしてヌップのことを見ています。 ふたりにとって、お互いは、ヌップとバルデマルという名前のこどもでしかありません。 ・・・
動物版ロミオとジュリエットのような、切ないはじまりから、希望に満ちた結末へと広がっていくすがすがしい物語。 うさぎときつねがどうやって仲良く共存するか・・・という難しい問題を絵本的に扱うと、ありえないメルヘンの世界か、ナンセンスの世界か、それとも悲劇のロマンスの世界になってしまわざるを得ないように思うのですが、『子うさぎヌップのふわふわふとん』は、そのどれにも少しずつあてはまるようでいて、そのどれとも少しずつ趣がことなっているように思います。 強いて言うなら、メルヘンのエッセンスをしのばせたユートピア。うさぎときつねの子にたくされた大切なメッセージ。 眺めているだけで心が和み、きもちがしゃっきりと目覚めていくような美しい装飾のイラストが、とてもよく似合っていると思いました。
本当に、イラストのさまざまな濃淡の緑色から、草木の香り、森の香りが、つんと鼻をくすぐるようです。 可憐な草花をちりばめた心和む配置と、ステンシルのような素朴なぬくもりが、野原をわたる風のようにさわやかで、すっきりと美しく輝くよう。 ヌップとバルデマルが無邪気に遊ぶ野原の場面など、軽やかで、華やかで、若くみずみずしい一面の緑に、心が弾んでしまいます。 見返しの草花の模様も、きれい!
愛らしくまとまりのある連続模様が、手の込んだステンシルや、美しいプリントの布のよう・・・と思ったら、 「セリグラフィーをシルク・スクリーン方式で創作。染色用の切り口を開けた型紙を使い、和紙に手刷りする。」 と、ありました。 (『子うさぎヌップのふわふわふとん』あかね書房、著者紹介より)
夢の花が咲きこぼれるような幻想的なイラストのなかに、和紙による仕上がりのやわらかさを感じて、何だか嬉しくなってきます。
原書は、『Nuppu, Waldemar ja peitto』1998 Lasten Keskus, Helsinki とあります。
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