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『赤ちゃんを ほしがった お人形』 ディミーター・インキオフ さく トラウドゥルとヴァルター ・ライナー夫妻 え くりはらかずのぶ やく 偕成社 1994年 品切れ
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昔、ロシアの人形作りの親方が丹精込めてこしらえた、どんぐりお目目パッチリ、りんごほっぺたふっくらの、愛らしいお人形が、ある朝突然こう言いました。 「あたし赤ちゃんがほしいの」 人形が赤ちゃんをほしがるなんて!ほだされた親方は可愛い娘人形を作って、お腹のなかに入れてやるのですが、今度はその娘人形が、 「あたしも赤ちゃんがほしい」 と、言い出して・・・。 テキストもイラストも、わくわくとどきどきをおなかに秘めた、素朴で可憐なマトリョーシカ人形にぴったりの作品。 児童書の体裁ですが、3姉妹も大好きで、読み聞かせ頻度大。
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ずうっと、むかし、ロシアに、腕のいい木の人形づくりの親方がいました。ある日見つけたすばらしい木の切り株で、みごとな人形をつくったのですが、見事なできばえで、売るのが惜しくなるほど。そこでベッドのそばのテーブルの上にかざり、毎朝楽しそうに話しかけました。 「わたしのかわいいマトリョーシカや。ごきげんはいかかがな」 マトリョーシカというのは、「小さなお母さん」といういみのことばでした。 ある朝いつものように声をかけると、 「ごきげんはよくないわ。あたし、赤ちゃんがほしいの。」 とつぜん、お人形の小さな小さな声がかえってきたのです! ・・・
ロシアのマトリョーシカが主人公の物語。 ひとりぼっちはさみしいと訴えるマトリョーシカにほだされて、同じ切り株から、少し小さな愛らしい女の子・リョーシカを作ったら、今度はおなかに入れてくれとせがまれます。そこで願いどおり、マトリョーシカのおなかを切断してくりぬいた中に、リョーシカをおさめたら、今度はそのリョーシカが、私にも赤ちゃんがほしい、と、訴えるのです。 親方がその願いもかなえて、リョーシカの娘のお人形・シカーを作ってやると、今度はシカーが・・・
美しく民族色豊かにぬりをほどこされた、ころんとしたぬくもりあるお人形の中に、またお人形、そのまた中にお人形…。どこまでも続きながら、だんだん小さく愛らしくなっていく驚きと喜び、そして最後まで謎をつきとめたいという、素直な探究心を満足させてくれるロシアの小さな芸術「マトリョーシカ」が、少し離れたドイツで、こんなに愛らしくほのぼのとした物語になるなんて!
しかも、たびかさなる可愛いお人形のお願いに、ついにたまりかねた親方の、果て無しはなしにきっぱりとけりをつける、英断がとってもあっぱれで、心憎い!
緑と赤を基調としたシンプルな色使いの、ところどころにコラージュをほどこした、美しいフォルムのイラストが、素朴で温かく、モダンな雰囲気をかもしだしています。 本文テキストの活字の色が緑色であることも、イラストの雰囲気になじんでいておしゃれ。 少ない色使いなのに、かえって洗練された感じがするのは、ユーモラスな親方のタッチと、愛くるしいマトリョーシカの民族衣装や、いきいきとした表情のせいかしら。
原書は『Die Puppe,die ein Baby haben wollte』Jugend und Volk Verlag, Germany,1974、とあります。
ディミーター・インキオフさんの洋書を、アマゾンで検索すると100件以上もヒットして、とても人気の高い作家であることがうかがえます。 主として1980年代後半−1990年代前半に邦訳も数多く出されたようで、個人的に大好きな児童書のシリーズに、 「ぼくとクララおねえちゃん 」シリーズ(全5巻 学研 品切れ) が、あります。
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「ぼくとクララおねえちゃんシリーズ」全5冊 ディミーター・インキオフ 作 曽我舞 絵 飯豊 道男 訳 学研 品切れ
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『犬をふたりで半分こ』 『子ねこちゃん、みーつけた』 『ポニーにのろう』 『まねっこきょうだい』 『どうぶつえんにいこうよ』
おてんばじゃじゃ馬な姉・クララと、クララに一目も二目もおきつつ、けんかしてもいつのまにか尻に敷かれるけなげで姉思いの弟「ぼく」の、愉快痛快大笑いの物語。 もしもあなたが弟を持つ姉なら、あるいは姉をもつ弟なら、きっと何か感じるものがあるかも(笑)。こういう姉弟、確かにいそうで、全5巻、あっというまに読めちゃいます。続きはないの?
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『Ich und Klara und die Tiere. Die lustigsten Tiergeschichten zum Vorlesen (ハードカバー)』 Ellermann Heinrich Verla (2003/07)
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邦訳のイラストとは違いますが、アマゾン洋書で見つけた原書の1冊。
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ちなみに、テキストの、ディミーター・インキオフさんの、「お母さん」と「お人形」をキーワードにした、愉快な読み物はこちら(も、品切れ…)。
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『わたしも お母さんがほしい!』 ディミーター・インキオフ作 遠山明子訳 牧野鈴子絵 偕成社 品切れ
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デパートご自慢の愛らしいおやすみ人形・ミリアは値段が高すぎて、買い手がつかず、誰も「お母さん」になってくれません。そこで、気のいいどろぼうのぬいぐるみに相談して、値札をこっそり安いものに変えたり、自ら安い棚に移ったり、何とか「お母さん」を見つけようとするのですが、店員に見つかって失敗ばかり。
そんなある日、母親を事故で亡くした一人の女の子がやってきて、このお人形を見つけました。「お母さんがほしい」お人形と心が通じた女の子は・・・。
とびきり巧みな構成と夢のある筋立てで、お人形や子どもたちと一緒にはらはらどきどきしながら、楽しく読めます。何もかもがめでたくおさまる大団円がお見事、大満足の1冊。小学初級〜中級くらいから。
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