■ディミーター・インキオフさんの絵本

Dimiter  Inkiow 1932年ブルガリア生まれ、1965年ドイツに亡命後、ドイツ語の作品を多数発表。世界的にも人気の高い作家。『赤ちゃんをほしがったお人形』は、1975年<ドイツ児童文学賞>優良図書に選ばれた。
***『赤ちゃんをほしがったお人形』*「ぼくとクララおねえちゃんシリーズ」*『わたしもお母さんがほしい!』
≫別頁『おかのうえのおおきな木』

 

『赤ちゃんをほしがったお人形』偕成社 品切れ

赤ちゃんをほしがったお人形

赤ちゃんを
ほしがった
お人形

ディミーター・インキオフ さく
トラウドゥルとヴァルター
・ライナー夫妻 え
くりはらかずのぶ やく
偕成社
1994年
品切れ


昔、ロシアの人形作りの親方が丹精込めてこしらえた、どんぐりお目目パッチリ、りんごほっぺたふっくらの、愛らしいお人形が、ある朝突然こう言いました。
「あたし赤ちゃんがほしいの」
人形が赤ちゃんをほしがるなんて!ほだされた親方は可愛い娘人形を作って、お腹のなかに入れてやるのですが、今度はその娘人形が、
「あたしも赤ちゃんがほしい」
と、言い出して・・・。
テキストもイラストも、わくわくとどきどきをおなかに秘めた、素朴で可憐なマトリョーシカ人形にぴったりの作品。
児童書の体裁ですが、3姉妹も大好きで、読み聞かせ頻度大。

ずうっと、むかし、ロシアに、腕のいい木の人形づくりの親方がいました。ある日見つけたすばらしい木の切り株で、みごとな人形をつくったのですが、見事なできばえで、売るのが惜しくなるほど。そこでベッドのそばのテーブルの上にかざり、毎朝楽しそうに話しかけました。
「わたしのかわいいマトリョーシカや。ごきげんはいかかがな」
マトリョーシカというのは、「小さなお母さん」といういみのことばでした。

ある朝いつものように声をかけると、
「ごきげんはよくないわ。あたし、赤ちゃんがほしいの。」
とつぜん、お人形の小さな小さな声がかえってきたのです!
・・・

ロシアのマトリョーシカが主人公の物語。
ひとりぼっちはさみしいと訴えるマトリョーシカにほだされて、同じ切り株から、少し小さな愛らしい女の子・リョーシカを作ったら、今度はおなかに入れてくれとせがまれます。そこで願いどおり、マトリョーシカのおなかを切断してくりぬいた中に、リョーシカをおさめたら、今度はそのリョーシカが、私にも赤ちゃんがほしい、と、訴えるのです。
親方がその願いもかなえて、リョーシカの娘のお人形・シカーを作ってやると、今度はシカーが・・・

美しく民族色豊かにぬりをほどこされた、ころんとしたぬくもりあるお人形の中に、またお人形、そのまた中にお人形…。どこまでも続きながら、だんだん小さく愛らしくなっていく驚きと喜び、そして最後まで謎をつきとめたいという、素直な探究心を満足させてくれるロシアの小さな芸術「マトリョーシカ」が、少し離れたドイツで、こんなに愛らしくほのぼのとした物語になるなんて!

しかも、たびかさなる可愛いお人形のお願いに、ついにたまりかねた親方の、果て無しはなしにきっぱりとけりをつける、英断がとってもあっぱれで、心憎い!

緑と赤を基調としたシンプルな色使いの、ところどころにコラージュをほどこした、美しいフォルムのイラストが、素朴で温かく、モダンな雰囲気をかもしだしています。
本文テキストの活字の色が緑色であることも、イラストの雰囲気になじんでいておしゃれ。
少ない色使いなのに、かえって洗練された感じがするのは、ユーモラスな親方のタッチと、愛くるしいマトリョーシカの民族衣装や、いきいきとした表情のせいかしら。

原書は『Die Puppe,die ein Baby haben wollte』Jugend und Volk Verlag, Germany,1974、とあります。

ディミーター・インキオフさんの洋書を、アマゾンで検索すると100件以上もヒットして、とても人気の高い作家であることがうかがえます。
主として1980年代後半−1990年代前半に邦訳も数多く出されたようで、個人的に大好きな児童書のシリーズに、
ぼくとクララおねえちゃん」シリーズ(全5巻 学研 品切れ)
が、あります。

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「ぼくとクララおねえちゃんシリーズ」全5冊
ディミーター・インキオフ 作
曽我舞 絵
飯豊 道男 訳
学研
品切れ

『犬をふたりで半分こ』
『子ねこちゃん、みーつけた』
『ポニーにのろう』
『まねっこきょうだい』
『どうぶつえんにいこうよ』

おてんばじゃじゃ馬な姉・クララと、クララに一目も二目もおきつつ、けんかしてもいつのまにか尻に敷かれるけなげで姉思いの弟「ぼく」の、愉快痛快大笑いの物語。
もしもあなたが弟を持つ姉なら、あるいは姉をもつ弟なら、きっと何か感じるものがあるかも(笑)。こういう姉弟、確かにいそうで、全5巻、あっというまに読めちゃいます。続きはないの?

『Ich und Klara
und die Tiere.
Die lustigsten
Tiergeschichten zum Vorlesen
(ハードカバー)』
Ellermann Heinrich Verla
(2003/07)


邦訳のイラストとは違いますが、アマゾン洋書で見つけた原書の1冊。

なみに、テキストの、ディミーター・インキオフさんの、「お母さん」と「お人形」をキーワードにした、愉快な読み物はこちら(も、品切れ…)。

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『わたしもお母さんがほしい!』偕成社 品切れ

わたしもお母さんがほしい!

『わたしも
お母さんがほしい!』
ディミーター・インキオフ作
遠山明子訳
牧野鈴子絵
偕成社
品切れ


デパートご自慢の愛らしいおやすみ人形・ミリアは値段が高すぎて、買い手がつかず、誰も「お母さん」になってくれません。そこで、気のいいどろぼうのぬいぐるみに相談して、値札をこっそり安いものに変えたり、自ら安い棚に移ったり、何とか「お母さん」を見つけようとするのですが、店員に見つかって失敗ばかり。

そんなある日、母親を事故で亡くした一人の女の子がやってきて、このお人形を見つけました。「お母さんがほしい」お人形と心が通じた女の子は・・・。

とびきり巧みな構成と夢のある筋立てで、お人形や子どもたちと一緒にはらはらどきどきしながら、楽しく読めます。何もかもがめでたくおさまる大団円がお見事、大満足の1冊。小学初級〜中級くらいから。

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