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『カクレンボ・ ジャクソン』 デイヴィッド・ルーカスさく なかがわちひろやく 偕成社 2005年
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カクレンボ・ジャクソンは、内気ではずかしがりやで、目立つのが嫌い。だからいつもお手製の、巧みな保護色の洋服を着て、おくゆかしく暮らしています。 そんなある日、カクレンボ・ジャクソンのもとに、お城から女王さまのお誕生日パーティの招待状が届きました。 金と銀と宝石のきらびやかなお城はぜひとも見たいけれど、はずかしがりやのカクレンボ・ジャクソン、一体どうしたらいいでしょう?
にぎやかに華やかに描きこまれたイラストがとびきり楽しい絵本。われらがカクレンボ・ジャクソンの華麗なる変身ぶりに拍手喝さい!逃げもかくれもしない天晴れな結末に元気いっぱい。
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大きなたまご型の太陽を背に、金色のタイトル文字の「カクレンボ・ジャクソン」(このタイトル文字にも実は意味があるのですよ、お楽しみに!)。 この表紙からして、目立つのが嫌いな主人公のカクレンボ・ジャクソンがこっそりかくれんぼしているのですが、おわかりですか?
つばのおおきな帽子に、Aラインのどこかひらべったい上着、こじんまりとした可愛いお顔。 カクレンボ・ジャクソンは、内気ではずかしがりやで、目立つのが嫌い。いつもひっそりと目立たぬように周りに溶け込んで暮らしています・・・そう、周囲にあわせて自身の色を変える、カメレオンや、ひらめのように。なにしろ、買い物ではこんな服、図書館ではこんな服と、背景に合わせた模様の布の特別仕立ての洋服や帽子で、まるで消えてしまったかのように、カクレンボして暮らしているのです。自分の家でほっとくつろぐときさえも、家具の色の保護色の洋服を着ているほどの、筋金いりのはずかしがりやさん。
そんなカクレンボ・ジャクソンもとに、一通の巻物の手紙が届きます。 それはお城からの、女王さまのお誕生日パーティーの招待状。 写真でしか見たことのない、金と銀と宝石でできているお城に行ってはみたいけれど、人前に出るのははずかしい・・・さあ、どうしたらいいでしょう・・・?
内気で目立つのがきらいなカクレンボ・ジャクソンは、繊細で思慮深く、目立たず周囲に自然にとけこむための鋭い観察眼を持っています。さらに、それを洋服の生地選びにぴったり生かすセンスのよさ、そしてその不思議なぴったりの背景の布を、自分でお洋服に仕立てる裁縫の才能も、同時に持ち合わせているのです。そう、あのカクレンボお洋服は、自分で作成しているのですよ! しかもその豊かな才能をひけらかさない、つつましやかさとおくゆかしさも併せ持つのですから、なんて可愛いの。
にじみを活かした華やかな線画と、軽やかな色使いで、にぎやかで美しく、お茶目な世界がたっぷり描かれています。 ひかえめな主人公を探し出す、かくれんぼ・みつけっこ遊びも、ふんだんに盛り込こまれていて、子どもたちのお楽しみもいっぱい。 読後にさわやかな元気と勇気が出てきますよね!
原題は『Halibut Jackson』 Andersen Press Ltd.,London.2003、とあります。 アマゾン洋書はこちらなど↓
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『Halibut Jackson』 Andersen Press Ltd
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『ナツメグと まほうのスプーン』 デイヴィッド・ルーカスさく なかがわちひろやく 偕成社 2006年
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味気ないごはん、味気ない毎日。 ふと散歩に出たナツメグが、ひょんなことから浜辺で手に入れた魔法のスプーンは、とんでもないやんちゃなスプーン。最初はおとなしく美味しいばんごはんをつくってくれましたが、夜中に台所をひっかきまわして・・・。
ナツメグの家も家族も毎日も、読み手の気持ちもさまざまにひっかきまわして、新しい味付けを見せてくれる不思議な絵本。
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原書は『Nutmeg』Andersen Press Ltd.,London 2005 とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど↓。
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『nutmeg』 Andersen Press Ltd 2005
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洋書の表紙を一目みたときからどきどきときめいて、邦訳発売を知ったときには本当にその日を指折り数えて待っていたのです。嬉しい!
さっそく手にした絵本の表紙は、やさしいアイボリーの地に、きらきらとうずを巻くおほしさま、それからフライ返しにおたまにカップなどなど、台所道具たち。うずのまんなかに、ほうきを持った、おさげの可愛い女の子。 タイトル文字「ナツメグとまほうのスプーン」と一部の星の模様には金色が用いられ、求心力のあるイラストに、さらに特別の輝きの粉をふりかけてくれたみたい。
表紙をめくると、見返しには、打って変わって、何やら廃墟かがらくた置き場のようなごちゃごちゃした色あせた場所が、寂寞と広がっています。(この表紙カバーにもさりげない茶目っ気がありますのでお楽しみ) 物語の始まりも、地味な色あいの、浜辺のごちゃごちゃとしたふきだまりのような、なぞめいた空間。そこに写真のように描かれているのは、3人の家族の集まる台所でしょうか。一見蝶ネクタイのスーツにも見えそうな地味な色のガウンをまとったニコデマスおじさんが、ナツメグとネズビットに食事をよそっている場面が3つ、朝、昼、晩、とほとんどかわりばえなく描かれています。
あさごはんはいつもダンボール。 おひるごはんはいつもひも。 ばんごはんはいつもおがくず。
まったくナンセンスで衝撃的な食事内容ですが、そのどうししようもない味気なさ、退廃的でうんざりした雰囲気を、ユーモアでくるんだ短い言葉でぴたりと言い当てていて、胸のすく面白さ。
そんなつまらない食事をくりかえすつまらないある日、ふいにナツメグはさんぽを思い立ちます。
「なんで?」といとこのネズビット。 「いったいなんのために?」とニコデマスおじさん。 「そんなのわからないけど・・・」
なにはともあれ、さんぽにでかけたナツメグは、海で不思議な小瓶を拾います。 中から出てきたのはなんと大男! 1000年閉じ込められていた大男は、出してくれたお礼にと、ナツメグの願いを3つかなえてくれます。 突然そんなことを言われても、とっさには思い浮かばないナツメグ。大男にせかされて、
「ばんごはんになにかちがったものをたべたい」 「ふたつめのねがいは?」 「あさごはんになにかちがったものをたべたい」 「みっつめは?」 「ひるごはんになにかちがったものをたべたい」
ウン、この願いは、アノまずしい食事の描写の後では、かなりかなり切実かも(笑)。 そこで、大男がくれたのは、魔法のスプーン。 大急ぎで家に帰ると、魔法のスプーンは魔法でいろんな材料を取り出して、すてきなばんごはんを作ってくれました。ところが、それはとんでもないいたずらなスプーンだったのです。 3人がほほえんで眠ったその晩、何やら台所から、カタカタかちゃんと、ものすごい音が聞こえてきて・・・!
地味で味気なく、退屈に描かれた始まりから、派手で突拍子もなく、刺激的な展開へと、目の前で鮮やか繰り広げられる摩訶不思議な世界をお楽しみください。 3人のかつての食事がダンボール、ひも、おがくずだったのですから、いつもとちがった食事をつくる魔法のスプーンが、このままありきたりの食事をつくるはずがありません! まったく何というか・・・本当に何と言えばいいのか、ぴったりな言葉が見つからず途方にくれるような、不思議な不思議な物語です。
ともあれ、 いつもとちがったものをたべたい と、願ったナツメグの願いは、思っても見ない奇想天外な展開で、かなえられました。 ナツメグがさんぽにいくと言ったとき、なんで?と、問い返してくるような、あまり毎日に熱心でない二人をもまきこんで、とんでもない方向にむかってかなえられました。 ぜひ、図書館などで、摩訶不思議な物語の渦に翻弄される心地よさを味わってみてくださいね。
このお話を読んで、「銀のスプーンをくわえて(持って?)生まれた赤ちゃんは、食べ物に困らない、幸せになる」という欧米の言い伝えを思い出しました。 思い出しただけで、何の関連があるかというとこれまた途方にくれるのですが・・・、生まれ出るのを待つ胎児がスプーンをくわえて子宮の海でまあるくなっている図を想像すると、ナツメグの魔法のスプーンのモチーフも、いつもとちがった世界へ新しく生まれ出たいと願いながら、さんぽに出てみたナツメグに、ふと与えられた魔法のきっかけの象徴なのかな・・・などと思ったりして。このお騒がせな魔法のスプーンは、赤ちゃんの銀のスプーンみたいに、可愛らしくておとなしいスプーンなどではまったくありませんでしたけれどもね。
とにかく、ひとくちでは言い表せない、不思議がいっぱいつまった絵本。 添えられたなかがわちひろさんの訳者の言葉も合わせて、何度も何度も繰り返し読んで考えてしまいます。
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『くじらのうた』 デイヴィッド・ルーカス なかがわちひろ訳 偕成社 2007年
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町にくじらがのりあげてしまいました。ジョーと人々は、くじらを助けるために、自然からの答えを待って・・・。
おおらかで健やかで、神秘的な海と人々の心温まるメルヘン。 どこか暗示的なくじらの文様が印象的。
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みんながぐっすりねむっている夜、 どどーん! あらしにうかれ、歌を歌っていたくじらが、ふいの大波にまきこまれ、町にのりあげてしまいました。 「くじらよ、われわれのまちになんということをしてくれたのだ!」 町長が声を張り上げると、くじらは、ぼおぼおとほえるような声で答えました。 「まことにもうしわけない。・・・みなさん、わたしをきりきざむがいい。くじらパイがたくさんできますぞ」 魚屋が喜ぶ中、ジョーはきっはり言いました。 「ねえ、たすけてあげようよ!」 とは言っても、方法がわからないので、まずふくろうにたずねると、ふくろうは飛んでいって、風に相談し、風は太陽に相談し・・・。
海の青、空の青、夜空の青、くじらの青がとても美しく、ゆったりときらめくようなおとぎ話。 独特のにじみの効いた輪郭線で描かれた、くじらの身体を包む文様が神秘的。大型絵本に堂々と描かれた繊細なくじらの文様は、石をつみあげた古い建築物のようにも、石版に刻まれた古代の文字のようにも思え、いにしえのおおらかなロマンも感じました。そういえば・・・デイヴィッド・ルーカスさんのにじみの刻まれた輪郭線それ自体が、どこか小さな導火線のような、手作りの細い縄のような、不思議なリズムと質感を持っているような気がします。
くじらを助ける方法を発見するまでの、ゆったりとしたリズムもとても好き。 大きな身体を持つくじらのそばで、大きなものたちの存在を感じながら、みんなで穏やかに答えを待つ場面は、こちらまでおおらかな気持ちに包まれます。 やがて教えてもらったくじらを助ける方法も、みんなが自然に一つになって力を合わせる心にくい方法。人々の素朴さや善良さにも、美しいメルヘンにも心がほっと和みます。 くじらを助けたのはいいのですが、後始末でちょっと困ったことがおきて、でもすぐにくじらの機転で解決して、でも今度は別の困ったことがおきて・・・と、右に左にゆれる小船のような展開も、最後まで楽しませてくれます。
最後の場面は、華やかな色使いもあいまって、にじみの効いた輪郭線がにぎやかで、本当に輝いているみたい。 海のいのちへの敬いと憧れと、美しいメルヘンに、ゆったりとひたれるような絵本。
原題は、『Whale』、Copyright by David Lucas とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『Whale (ハードカバー)』 Andersen Press Ltd (2007/02)
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