■チェン・チーユエンさんの絵本 |
陳 致元 Chih-Yuan Chen 1975年生まれ。台湾で人気の絵本作家。『小魚散歩』でイタリア・ボローニャ国際絵本原画展(2003年)に入選。邦訳絵本には、『赤い花』(朔北社)、『いちばんすてきなクリスマス』(コンセル)がある。 (『ぼく、グジグジ』朔北社 著者紹介 より) |
『ほく、グジグジ』*『いちばんすてきなクリスマス』 |
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『ぼく、グジグジ』 チェン・チーユエン作 宝迫典子訳 朔北社
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たまごがコロコロ、アヒルの巣へ。いろいろな模様のアヒルにまじって、生まれてきたのはなんと、ワニ! ワニのグジグジは、他のアヒルと同じように、アヒルのおかあさんにかわいがってもらって、大きくなったけれど、ワニの仲間がアヒルをねらってやってきて・・・。
まったく異なる生まれと育ち。ぼくはいったい何者だろう? どちらの道を選ぶのか、それとも? 大きなテーマをユーモラスにしっとりと描いた、美しい絵本。
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たまごがコロコロころがっていました。 さいごにコロンとアヒルのすのなかへ。
3羽のアヒルに続いて最後にたまごから出てきたのは、 ぜんしんあおみどりいろのみにくいアヒル。 ずっとグジグジないているのでグジグジとなづけました。
たとえみためがちがっていてもかあさんアヒルは こどもたちをみんなおなじようにかわいがりました。
そんなあるひ、グジグジにとてもよくにたどうぶつが 3びきみずうみのなかからでてきて・・・
アヒルのたまごのなかに一つだけ紛れ込んだ別のたまごをあたためるはじまりは、アンデルセン童話の「みにくいあひるの子」みたい。 けれど生まれたのは、同じ鳥の仲間の白鳥ではなくて、アヒルの天敵ともいえるワニ、途中からの展開は大きく異なり、どこか現代的な寓話の趣きも感じたりします。 みかけは異なれど、他のアヒルの子と分け隔てなく可愛がって育ててくれたアヒルの家族や仲間と、生物学的に本来の仲間だけれど、アヒルと共に暮らすグジグジを笑い飛ばし、けなしたあげく、おどして、グジグジをダシにアヒルを食べてしまおうとするワニの一味。 グジグジはどちらの味方をするのでしょうか?
「なかまはたすけあうもんだろ」
と、ワニに言われて・・・。
墨絵とコラージュのような絵は、しっとりと東洋的な雰囲気で、淡い影がきれい。 グジグジが水面に自分の影を写す場面は、とても美しく、さざなみにもやさしさを感じます。 結末のページの影にも注目。
グジグジの生きてゆく覚悟が頼もしく、心から応援したくなる絵本。 波紋のように静かな余韻が残ります。 ひとりだけ種類の異なる子どもが生まれ、自分の生きる道を模索するという物語は、いろいろな設定や、いろいろな展開、いろいろな結末が考えられますが、『グジグジ』もまた、自らの力で自分の生きる道を定めた、すがすがしい絵本の一冊だと思いました。
『Guji Guji』 2003 Hsin Yi Publications とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『Guji Guji (Ala Notable Children's Books. Younger Readers (Awards)) (ハードカバー) 』 Kane Miller Book Pub (2004/09)
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邦訳と表紙が異なります。
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『いちばんすてきな クリスマス』 チェン チーユエン作 片山令子訳 コンセル 2006年
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おとうさんが仕事をなくした、ちいさいくまくんの一家のクリスマスは・・・。
温かな思いやりと、ものを大切にする心をはぐくむ、真心のこもったクリスマス絵本。垢抜けたデッサンの穏やかな絵が魅力的。
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そのとし、ちいさいくまくんのおとうさんは、しごとをなくし、あたらしいしごとをみつけることができないまま、クリスマスをむかえようとしていました。 家族をたべさせるのにやっとのお金しかなく、子どもたちへのプレゼントをかうこともできません。 せめてもの飾り付けに、おかあさんぐまは、くまくんの小さくなった洋服でクリスマスの飾りをつくり、くまくんのおにいさん、おねえさんは、まどを飾りました。くまくんのおとうさんは、ツリーになる木切れを探してきました。 ツリーに小麦粉をふったら、まるで雪のよう。 手作りのクリスマスをつつましく祝った家族が、クリスマスの朝、目覚めてみると、朝の光に照らされて、ツリーのしたに、いつつのプレゼントの箱を見つけたのです。それぞれの名前が書かれ、よりそうように置かれた、大きさの異なるいつつの箱が・・・。
みんなが喜んであけてみると・・・
つらく厳しい暮らしの中にも、家族への思いやりや、ものを大切にする心を忘れない、ちいさなくまくんの家族に訪れた、いちばんすてきなクリスマスの物語。 おとうさんの失業という、重く暗いテーマにもかかわらず、さらりとしたブルーグレーの垢抜けた色彩の、都会的なセンスのきらめくイラストであるために、節約さえもどこかおしゃれな、清貧で気品のある仕上がりになっています。 表紙のように、くまくんのふとした場面に、やわらかく影を落とす、光線の描き方が印象的。この不思議な質感をもつ影が、絵本の中のある場面でも、さりげなく重要な伏線となっています。 表紙も印象的ですが、表見返し、裏見返しにも物語があり、中表紙から実はお話が展開していくという、トータルで表現されている作品の世界にも、魅了されます。
ちいさいくまくんの家族それぞれに届けられた、真心のこもったプレゼントは、豊かな暮らしの中で忘れかけていた、大切なものを思い出させてくれました。
原書は、『The Best Christmas Ever』2005 heryin Books, Inc.とあります。
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『The Best Christmas Ever (ハードカバー)』 Heryin Books, Inc. (2005/12/31) |
タイトルのかすれたタイプライターのような文字が、個人的に好みです。
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