ナターリヤ・チャルーシナさんの、待望の日本発邦訳デビュー絵本はこちら。
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『もりのてぶくろ』 ちいさなかがくのとも 2004年11月号 八百板洋子 ぶん ナターリア・チャルーシナ え 福音館書店
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手のひらのような、てぶくろのような形をした一枚の金色の葉っぱに、動物たちが次々と自分の手を重ね、その大きさを確かめて・・・。
現実の葉っぱや動物たちの大きさ、色、形、特徴にきちんと基づきながら、ファンタジーをひとさじ加えた愛らしい物語は、ウクライナ民話「てぶくろ」をほんの少し思い起こさせる楽しさ。
美しく色づく秋の森を、手をつないで散策したくなる絵本。
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ロシアの画家の描いた絵本、「てぶくろ」とくれば、ウクライナ民話の「てぶくろ」が思い出されますが、この『もりのてぶくろ』は、本物のてぶくろではありません。親指だけがわかれたミトンのてぶくろではなく、可愛い5本指のようにわかれた、黄色い木の葉。
静かな秋の森に落ちていた葉っぱに、最初に目をとめたのは、小さなねずみ。 自分の身体より大きな葉っぱをのぞきこむように、そっと手をあてて、 「ぼくの手より大きいや」
次にやってきて、きれいなはっぱに目をとめ手をあてたのは、うさぎ。 「ぼくの手より大きいや」
次にやってきたのは・・・。
シンプルなくりかえしと、だんだん高まる期待感が、ウクライナ民話の「てぶくろ」にも通じるような、とっても楽しい果て無しはなし。 チャルーシン家の血筋を感じさせる美しい自然のイラストは、さらに繊細に、しなやかに、チャルーシナさんの中で結集された感じがします。
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『おしゃべりなもり』 E.シム/N.スラトコフさく N.チャルーシナえ たなかともこやく 福音館書店 2005年
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豊かな北の森に懸命に生きる、動物たちの小さなおしゃべりが、15話。 一筆ひとふで心を込めて描かれた動物たちのイラストをたっぷり添えた、緑の宝箱のような絵本です。
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厳しい自然を生き抜く動物たちの知恵と技と努力を、動物作家のウィットとユーモアを添えたにぎやかなおしゃべりにして、動物画家のしみじみと美しいイラストをちりばめた、自然科学の絵本です。 自然観察に基づいた一つ一つのお話は短くて、身近なものも多く、特徴を美しくとらえたわかりやすいイラストが添えられているので、初めての図鑑としても親しむことができそうです。 3姉妹の興味を特にひいたのはこちらなど。↓
「ケムシのごちそう」
(ケムシを食べるのは)31ぴきめ、など、具体的な数字が出てくるところが気になったよう。実際に毛だらけのケムシを目撃したことがあるため、ケムシのイラストに興味津々、釘付けでした。 |
「いちばんおいしいものは?」
たくさんの小鳥たちが、何の実がいちばん美味しいかぴいぴい言い争っています。そのついばむ小鳥たちと、えさの実が美しく配置されていて、図鑑のようにも楽しめるお話。トコロ変われば、シナかわる、オチが最高。
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「テンのいえはどんないえ?」
森の動物たちはみんな家をそれぞれ持っているのに、テンさんはどこに家があるの、と、無邪気なキツツキがテンに聞きます。するとテンが答えます・・・。トコロ変わらず、ヌシかわる、オチが最高その2。 |
などなど、興味深い小さなおはなしがもりだくさん!
原書は『MERRY CHAT IN THE FORSET -selections from NEWS FROM THE FOREST』text by v. Bianki,A.liverovskii,N.Pavlova,N.Sladkov and E.Shim、あります。 First published by Detgis,Leningrad,1961、とあります。 さらに2005年イラストのコピーライトに、Natalia Charyshina-kapyshinaとあります。 つまり、画家のナターリヤ・チャルーシナさんが、この絵本のためにイラストを描きおろしてくださった絵本!
この絵本の中の 「カッコウのしんせつ」、 「テンのいえはどんないえ?」 などの作者のE.シムさんは、1930年レニングラードお生まれ、ロシアの代表的な動物文学者ビアンキの指導で1951年から作家活動を始められたそうです。
もう一人の作者で、この絵本の中の 「くいしんぼうのこどもたち」、 「いちばんおいしいものは?」 などの作者のN.スラトコフさんは、1920年モスクワ生まれ(〜1996)で、ビアンキの指導で1952年から作家活動を始められたそうです。 スラトコフさんの邦訳された作品には『北の森の12ヶ月上、下』(福音館書店 画像のハードカバー版は品切れ、文庫版で発売中)などがあります(くわしくはこちら▼)。挿絵を描いているのは、動物画家ニキータ・チャルーシンさん。『おしゃべりなもり』の画家、ナターリヤ・チャルーシナさんは、その娘にあたる方です。
親娘だから画風が似る、ということばかりでもないと思いますが、少しくすんだ緑色、蓬色の草の葉の感じ、細い絵筆を自在に駆使して丹念に綿密に仕上げた感じ、白い色の指し色・・・などなど、細やかな美しさに、チャルーシン家の血筋を感じます。愛情と敬意を込めて、あるがままに描いた動物の絵から感じる気品も、チャルーシン家に共通するもののように思います。 現在タブロー画家、絵本作家として活躍中ということですので、これからの作品がとても楽しみ!
翻訳者の田中友子さんは、ロシア児童文学の研究と普及につとめる「カスチョールの会」の一人で、ロシアグラフィックコーナーの主催者の方です。 ≫関連エントリはこちらとこちら。
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『北の森の十二か月 上』(文庫版) ニコライ・スラトコフぶん ニキータ・チャルーシンえ 福井研介訳 福音館書店 |
羽毛や、毛皮や、うろこのある、すばらしい動物たちのすむ、みどりの森の国を旅しよう。 私たちは、旅するのに必要なものを、足も、目も、耳も、考える頭も、すべて持っている。 行うのは銃を使わない 「幸せな狩り」 だ。胃袋ではなく心を満たし、死ではなく喜びをもたらす。自然のいとなみを発見し、なぞをときあかす。12の国を旅するように、12の月を旅しよう。
そっと森にとけこんで、森の知恵や、ユーモア、時には命がけの厳しさを学ぶこと。 生き物の命を奪わない、幸せな狩りの方法。 観察ノートもなにもなく、五感だけをたずさえて、全身で森を感じとるやり方。 ・・・。
森への深い愛情と敬意を込めて、詩情豊かに、ウィットに富む文章で記された生き物たちのエッセイが、1月から6月までの章に分かれてたっぷり収録されています。 しみじみと添えられたニキータ・チャルーシンさんのイラストは、日本版のための描きおろし!
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『北の森の十二か月 下』(文庫版) ニコライ・スラトコフぶん ニキータ・チャルーシンえ 松谷さやか訳 福音館書店 |
森のやり方で教えてくれるさまざまな教訓。 森のめぐみ。 森の時間。 森を指揮する偉大な太陽は、あらゆる森の生き物の上にふりそそぐ。きみにも、わたしにも・・・。
少年時代からつちかった自然観察の確かな目と、エコロジーの精神で描かれた、森の詩人ニコライ・スラトコフさんのおくりもの。上巻は7月から12月まで。
随所に添えられた、ニキータ・チャルーシンさんの味わい深いイラストが、静かに彩りを添えています。 文庫版で復刊かなって、よかった!
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