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『カレル・チャペックの 童話の作り方』 カレル・チャペック 田才益夫 訳 青土社 2005年
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1.「童話作りの実践教室」 2.「童話の作り方・総まとめ」
1.「童話作りの実践教室」には、何度読んでもそのたび楽しい、そのたぴ新しい、ユーモアとウィットに富みとびきりとぼけた愉快な童話・『九編の童話(デヴァテロ・ポハーデク)とヨゼフ・チャペックのおまけのもう一編』のなかから抜粋したいくつかのお話がおさめられ、2.「童話の作り方・総まとめ」には、チャペックさんの童話にかんするいろいろな文章がおさめられて、一冊にまとめられています。 イラストはもちろん兄・ヨゼフ・チャペックさんによるもの。 幾重にもひねりうねり、知性あふれる茶目っ気をまじえながらさらさらと続いていく快い文章に、シンプルでさらりとした潔いイラストが息もぴったりで、なんて粋。
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児童も読んでためになる、大人も大満足の、世代も時代も超越した一冊。
まず、1 「童話作りの実践教室」として、チャペックさんの長い長いタイトルの童話『九編の童話(デヴァテロ・ポハーデク)とヨゼフ・チャペックのおまけのもう一編』が、抜粋しておさめられています。あとがきによると、正式タイトルは、 『デヴァテロ・ポハーデク・ア・イェシュチェ・イェドナ・オド・ヨゼファ・チャプカ・ヤコ・プシーヴァジェク・オブラースキ・ジョゼファ・チャプカ』と、いうそうです。 (『長い長いお医者さんのお話』(岩波書店)のタイトルで日本では有名)。 目次は以下のとおり。 ●カレル・チャペックのまえがき ●とってもながーい猫ちゃんの童話より 王様が猫を買われたわけ 猫ちゃんにできること ●お犬さんの童話 ●郵便屋さんの童話 ●とってもながーいお医者さんの童話より 魔法使いマギアーシュのこと ソリマーンのお姫さまの話
↑ この、『ソリマーンのお姫さまの話』が、独立してイラスト豊富な読み物になった幻の名作が、
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『ソリマンのおひめさま』 カレル・チャペックさく ヨゼフ・パレチェク絵 千野栄一訳 集英社 現在品切れ
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なのですよね・・・。くわしくは≫こちらのエントリなどで。 当時、大好きなヨゼフ・チャペックさんが、日本の子どもたちのために、特別にイラストを描きおろしになった、美しすぎる珠玉の一冊。 熱く厚く復刊切望。 あまりにすばらしい作品だし、当時の日本の子どもたちだけで独占したなんてモッタイナイ、と、思っていたら、後にドイツ語版で絵本としても出版になっていたようで(本国チェコ語版が出たのかどうかはわかりませんが)、このたびめでたく縁と運があって古本を入手いたしました! 待って待ってポストに発見したときの喜びときたら! まさに、下でご紹介する『カレル・チャペックのごあいさつ』の郵便のお話の「なにか奇跡的なもの」を、思いもかけずうやうやしくいただいてしまった感じで、手も心もふるえてしまいました(笑)。
さて、『カレル・チャペックの童話の作り方』です。 何度読んでもそのたび楽しい、ユーモアとウィットに富みとびきりとぼけた愉快な童話を、ひととおり堪能した後には、 2 「童話の作り方・総まとめ」 として、チャペックさんの童話についてのさまざまな文章がおさめられています。 ここは、子どもには少し難しいかもとは思いますが、大人にも少し難しいので(笑)、・・・かなり理解に集中力を要すると同時に、ひとたび解すればかなり知的好奇心が満たされる、手ごたえ・歯ごたえ・読みごたえのあるエッセイです。
しかも、理路整然・明瞭明晰にてきぱきと迫りながら、あちこちでユーモアと人間愛が顔をのぞかせる茶目っ気ある文章なので、まるでおしつけがましくなく、書いてあることが脳のシワに染み入ってくるようです。 そして自分の中でもやもやしていたまとまりのない考えみたいなものを、ぴしっと美しく的確に、職人技でたちどころに形づくってくれます。 読み進めていくだけで、 「そうだったのか!」 と、ぽろぽろ目からうろこが落ち、晴れ晴れと気持ちすっきり、胸のすく爽快さです。
とにかく、久々に絵本ではない大人の書物を読んだハハには、もしかすると遠い学生時代においてきぼりにしてきたかもしれない内なる知的なものがふつふつとたぎってくる錯覚すら覚えるような(笑)、久々に脳の血流が増し細胞が一斉に活性化したような、快い好ましい刺激を感じる書物、でした。
チャペックさんの卓越した文章はもちろんいわずもがなですが、訳者の田才益夫さんの訳もすばらしいのだと思います。
童話にご興味のある方も、いままでそうでなかった方も、大人も、児童も、ぜひ図書館などでお読みになってくださいね。
このカレル・チャペックさんのエッセイシリーズ(青土社)、これまでに他にも出ていて、これからも出るのではないかという嬉しい期待の本たちです。
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『カレル・チャペックの ごあいさつ』 カレル・チャペック 田才益夫 訳 青土社
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実は、この中の「郵便」というエッセイ、たまらなく好きなのです。 別に何かが届く予定など全くなくても、毎日淡い期待感のもとにポストを確認してしまうくせは、私だけではなくて世界共通で、まさにコレだったのね、という感じ! 「・・・何か予想つかないもの、奇跡的なものに対する人間の永遠の期待感が決定的に、しかも徹底的に裏切られるなんてことは決してありませんよ」 チャペックさんの限りない人間愛を深く感じます。ひそかにハハの心のよすがにしている一文。 表紙も大好きな、『郵便屋さんの話』のヨゼフ・チャペックさんのイラスト。
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『カレル・チャペックの日曜日』 カレル・チャペック 田才益夫 訳 青土社
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これも抱腹絶倒。「本はどこへ消えるか」なんて、これでウチの本たちの行方不明のナゾが解けた、なんて(笑、まあ、ウチにはその他小さい犯人が推定三人ほどいるのですけれども)。 どこから読んでも面白いことこの上なし。チェコへの大いなる愛情の賛歌に心打たれて、行けるものなら今すぐ這ってでも行きたいくらいです! この表紙も、『郵便屋さんの話』のヨゼフ・チャペックさんのイラスト。
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『カレル・チャペックの 新聞賛歌』 カレル・チャペック 田才益夫 訳 青土社
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昨日の街角で偶然目にしたあの人だかりの真相を、翌朝の新聞をひらいて真っ先に探す、あのどきどきの答えがここに!、と、ひざをうつような名文です。 チャペックさんの軽やかで研ぎ澄まされたエッセイに一生懸命ついていけば、嬉しい頭の活性化体操になるし、すべての謎がときほぐされてあるべき場所にきちんとおさまってゆく爽快さを、こころゆくまで堪能できます。まさに頼もしい探偵、ベテラン達人の水先案内人という感じですよね。
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『カレル・チャペック童話全集』 カレル・チャペック 田才益夫 訳 青土社
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『九編の童話(デヴァテロ・ポハーデク)とヨゼフ・チャペックのおまけのもう一編』が、1932年原典初版のチャペックが意図した最初の配列でおさめられ、さらに、追加の二編ももりこまれた、日本初のチャペック童話原典版全編。チャペックさんの文章の豊かなジョークや個性や息づかいをチェコ語から直接伝える、田才益夫さんの熱い直訳。
長いけれどとどまることを知らない楽しさ、胸をすく愉快さ、ひざをうつ痛快さ、あっというまの395p、ヨゼフ・チャペックさんの軽快なイラストとともに、宝物にしたい一冊。 巻頭には、嬉しいカラーの口絵イラストが8場面。
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『カレル・チャペックの 映画術』 カレル・チャペック 田才益夫 訳 青土社
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カレル・チャペックさんが文章もイラストも手がけた、愛犬と愛猫に関する本はこちらなど。
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『ダーシェンカ あるいは子犬の生活』 カレル・チャペック 保川亜矢子 訳 メディア・ファクトリー
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ダーシェンカ、しばらくじっとしておいで。おまえにお話をしてあげるからね。
チャペック家の生まれたてのちっぽけな子犬・ダーシェンカが、やんちゃでいとおしい子犬に育つまでを、軽快なエッセイと自筆イラストでさらりとつづったユーモアと愛情あふれる一冊。チェコ語原本からの全訳で、カレル・タイゲ装丁だそうです。 さらりと、走り書きのようなシンプルに記されたダーシェンカとの暮らしの終わりの、行間にこめられた思いやいかに。
ダーシェンカの楽しいイラストと、モノクロの美しい写真もたっぷり。心の犬小屋に、いつもこの一冊を。
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1933年に原書が出版されて以来、世界的ロングセラーをつづける『ダーシェンカ』は、さまざまな版元から翻訳が出版されています。 チェコ語からの翻訳はこちらにも。
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『チャペックの犬と猫のお話』 カレル・チャペック 石川達夫 訳 河出書房新社
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チェコ語からの完訳。 愛犬ダーシェンカとの日々、愛猫プドレンカとの暮らしもおさめられた、贅沢な一冊。 「ダーシェンカ」「犬の品評会」のイラストは、カレル・チャペックさん自身による挿絵、その他は兄のヨゼフ・チャペックさんによる挿絵入り。おちゃめでおしゃれなイラストと、実際の美しい貴重な写真もおさめられ、あたたかな生き物へのまなざしがちりばめられた、いとおしい一冊。
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『子犬の生活 ダーシェニカ』 カレル・チャペック 小野田若菜 訳 ペトル・ホリー監修 ブロンズ新社
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”ダーシャとの出会いから別れまでを、1932年、6回に分けて新聞の子ども欄に連載したものに、「子犬の写真を撮る方法」、「ダーシェニカが静かにおすわりするためのお話」、そしてチャペック自身が撮った写真が加わって、1933年に一冊の本『Dasenka cili zivot stenete(ダーシェニカ、あるいは子犬の生活)』としてまとめられたものの、1958年度版を翻訳した本”だそうです(訳者あとがき より)。 チェコ語からの完訳。愛犬ダーシェンカについて、人間と犬についての愛情あふれる珠玉のエッセイと、愛らしい自筆のイラスト、貴重な写真が、おしゃれでみずみずしい一冊になりました。 |
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『ふしぎ猫 プドレンカ』 カレル・チャペック 小野田若菜 訳 ペトル・ホリー監修 ブロンズ新社
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挿絵はヨゼフ・チャペックさんによるもの。チャペックの猫に関するエッセーだけを編んで、1970年に出版された『pudlenka』を定本としているそうです。 「チャペックの新聞記者としての活動から生まれた作品で、子猫を通して世界の理(ことわり)をわかりやすく解いているのです。」(『ふしぎ猫プドレンカ』監修者あとがきより) 注釈も豊富。
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『こいぬとこねこは 愉快な仲間』 ヨゼフ・チャペック いぬいとみこ・ 井出弘子訳 河出書房新社
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こいぬとこねこが仲良しで、一緒に暮していた頃のお話です。
なかよしのふたりが、どんなおもしろいことをしたか、もう一度読めるようになって嬉しい! ヨゼフ・チャペックさんのイラストとテキストによる愉快な動物童話が、子どもと大人のために増補・改定されて復刊になりました。 巻末に訳者の一人・井出弘子さんによる、「訳者あとがき・・・ヨゼフ・チャペックの作品とその生涯」がおさめられ、ヨゼフ・チャペックの生涯についても知ることのできる、貴重な本。
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弟・カレル・チャペックとともにチェコの国民的文化人の一人、ヨゼフ・チャペックさんによるテキストとイラストの、愉快な動物物語。かつて童心社より『こいぬとこねこはゆかいななかま』として出版されていたものを、子どもだけでなく大人も楽しめるように、増補・改定したものだそうです。祝・復刊。
こいぬとこねこが仲良しで、一緒に暮していた頃のお話です。ふたりは森の中に、小さいうちを建てて、一緒に住んでいました。そして、何から何まで、人間の大人たちがやるとおりに、やりたいと思っていました。
さあ、なかよしのこいぬとこねこがどんなおもしろいことをしたのかな?
二人で床を洗えば、石けんをお菓子かと思ったこいぬはこっそり味見してぺっぺっ。ブラシがなくて思いついた名案は、互いの毛をブラシにしてごしごし。床とうらはらに自分たちが汚れてしまったら今度は自分たちをお洗濯・・・。「こいぬとこねこが床を洗ったら」
こいぬのズボンの穴をこねこがかがれば、落ちていたひもならぬみみずでお裁縫・・・。「こいぬのズボンの穴かがり」
こいぬとこねこがケーキをやけば、ふたりが一番好きなものを全部全部まぜこんでかきまぜて、グツグツ、シューシューととんでもないケーキがやきあがって・・・。「こいぬとこねこがケーキを焼く」
・・・。 一見おすましのしっかりもののようで実はおちゃめなおとぼけのこねこと、どこからどうみてもおとぼけのおひとよしのこいぬの、お騒がせな楽しい毎日を描いた、愉快な愉快な物語。作者のヨゼフ・チャペックさんがお話の中に登場する場面もあって、こちらまでうきうき楽しい気持ちに。シンプルで洒落た白黒の線画のところどころに、シックな水色、オレンジ、黄色の3色がほどこされ、得した気分。 ヨゼフ・チャペックさんが 「娘アレナとその友だちを相手に話しをする中から、この本の物語は生まれた」 そうです。(『こいぬとこねこは愉快な仲間』訳者あとがきより) お話を聞くこどもたちの真剣なまなざし、楽しい笑い声が、聞こえてきそうですよね。
←文庫版は購入可能のようです。
ヨゼフ・チャペックさんのあかぬけた装丁デザインの古本の表紙を集めた、豪華で贅沢な作品集はこちら。
『チャペックの本棚−ヨゼフ・チャペックの装丁デザイン』ピエ・ブックス
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『チャペックの本棚− ヨゼフ・チャペックの装丁デザイン』 ヨゼフ・チャペック ピエ・ブックス
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もくじ ヨゼフ・チャペックの表紙/千野栄一 本の表紙/ヨゼフ・チャペック 本の表紙はどのように作るか/ヨゼフ・チャペック 作品リスト
一見は百聞にしかず。百頁どころか、240pも、ヨゼフ・チャペックさんの芸術がここに!
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これは宝物。 千野栄一さんの文章も、ヨゼフ・チャペックさんの文章も、惜しみなくたっぷりとおさめられた数々の美しい表紙たちも、輝かしい作品リストたちも、何もかもが憧れの、チェコ的なるものに通じている魔法の扉。 名は体をあらわし、目は心の窓、としたら、本の名のタイトルはその本の本体をあらわし、本の目の表紙は、その本の中心への窓となる、大切な芸術。 ヨゼフ・チャペックさんの手がけた手仕事の芸術たちを、まるでアルバムをめくるように、こんなにも簡単に手にして目にすることができるなんて!心して読みたい一冊。
適切に単純化されたデザイン、長い時に淘汰されたような美しい中間色のとりあわせ、鮮やかな文字と図のレイアウト・・・一枚一枚が目を奪い、心を捉え、ふるわせます。 贅沢すぎる240p、ぜひ、あなたの本棚に。
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