■新読書社・プログレス出版所(モスクワ)・ラードガ出版所(モスクワ)

『ソビエトの子どもの本』シリーズ


新読書社と当時のプログレス出版所(モスクワ)、あるいは当時のラードガ出版所(モスクワ)の共同出版として発行されました。製本も紙質も印刷も、当時のソビエトの香りを伝えるもので、今より技術的には劣りますが、とてもレトロで素朴なぬくもりがあります。
当時と現代のさまざまな背景から再販は困難だと思われますので、もし図書館などでごらんになり、お気に召しましたら、状態や在庫など、直接版元の新読書社さんか、オンライン書店・プレシャスブックスさん、オンライン書店海ねこさんなどにお問い合わせくださいね。在庫僅少、ともうかがっています!

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***『マーシャよるのさんぽ』*『いいってどんなこと?わるいってどんなこと?』*『おえかきだいすき』*『おふろおばけ』*『いきているぼうし』*『きんのさかなのものがたり』*『銀色のうま』*

 
■『マーシャよるのおさんぽ』

マーシャよるのおさんぽ

『マーシャよるの
おさんぽ』

ガリーナ・レーベジェワ作
みやした ひろこ訳
新読書社・
ラードガ出版所
1983年
税込価格 525 円
(本体 500円)
12p

オンライン書店ビーケーワン:マーシャ よるのおさんぽ 

おかあさんはマーシャをベッドいれました。そしてへやのあかりをけすと、おとなりへでかけていきました。
マーシャはよこになっていましたが、いつまでたっても、ねむくなりません。
(※余談ですが、子どもが子ども部屋で一人で眠る海外の作品には、ベッドへ入った後の、子どもだけの小さな冒険へと続く展開が豊富ですよね)

まくらの高さやふとんの重さもすっかりいやになったマーシャは、こっそりいやなベッドから抜け出して、用心しながら玄関のドアをあけて、とびはねながら駆け出しました。
「ああ おきているってたのしいな!」

門のところに犬のチャーフカがいて、「どうしておきているの?」とほえますが、マーシャがいやなベッドの話をすると、
「なんといってもいぬごやでねるのがいちばんだよ。さあ、ぼくのこやをかしてあげるよ!」

「まあ、おもしろそうね。」
マーシャはさっそく犬小屋に入ってみますが、マーシャにはちょっとせまくてきゅうくつ。
親切にほねを持ってきてくれたチャーフカに、
「ありがとう。いいおうちね。でも、わたしはここではねたくないわ」

そしてマーシャは、気を悪くしたチャーフカと別れて、めんどりのココのとりごやへ走っていきました。
・・・。

マーシャよるのおさんぽ

切りそろえた前髪もあどけない、ふっくらと愛らしいマーシャの、よりよい寝床を探して歩く、ほほえましい夜のお散歩の物語。

夜おとなしくベッドで眠るなんて、たいくつでつまらないと思っているマーシャは、そのことをベッドのせいにして、こっそり家から抜け出すことに成功して大喜び。
もっといいベッドはないかと、つぎつぎと出会う動物たちにきいてみるのですが、こんなおそくに外にいるもんじゃないよと、さりげなくたしなめてくれる親切な彼らの寝床は、あいにくマーシャにはしっくりこないものばかり。
素直にきっぱりと断るマーシャに、動物たちは少々おかんむり。

昔話の形式をふんだ、その繰り返しのリズムが心地よく、どこか月明かりに浮かぶ版画のような、やわらかく蒼いイラストが、気持を穏やかにしてくれます。

おやすみ前に読んだら、マーシャとともに、世界中でいちばんいいベッドにくるまれて、幸せな眠りにつけそうな絵本。

魅力的なイラストを描いたガリーナ・レーベジェワさんの、その他の作品もぜひ見てみたいです。

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■『いいってどんなこと?わるいってどんなこと?』

いいってどんなこと?わるいってどんなこと?

マヤコフスキー作
『いいって
どんなこと?
わるいって
どんなこと?』
キリロフ ヴェ絵
松谷さやか訳
新読書社・
プログレス出版所
1981年
税込価格 420円
(本体 400円)
22p

オンライン書店ビーケーワン:いいってどんなこと?わるいってどんなこと?

かわいいぼうやがやってきて
おとうさんにききました
「いいことってどんなこと?
わるいことってどんなこと?」
さあ、おいでよこどもたち
おとうさんがいったこと
みんなおしえてあげようね
いいかいよおくきくんだよ

幼い子にもよくわかるやさしい言葉の、口ずさみやすいテキストで、小さな子どもの日々の生活の中の、いいことわるいことを、詩人のマヤコフスキーさんが説いています。
おそらく原文は韻を踏んだ、とてもきれいなものなのでしょう!

いつも清潔、よく遊び、よく学ぶ。ものをこわしたり、弱いものをいじめたりしない。お手伝いもがんばるぞ!

いいってどんなこと?わるいってどんなこと?

この表紙のインパクト!
ページをめくると、朱色、紺色、山吹色の、こっくりした取り合わせが際立つ、大胆なイラストに目を奪われます。
挿し色の、青りんご色の緑がとてもさわやかで、どこかレトロな雰囲気。

輪郭線をとらず、たっぷりと色をふくませた筆でひといきに描いたような、生き生きとしたのびやかな絵が、絵本の中の子どもたちのしているよいこと、わるいことを、大胆にユーモラスに読み手に伝えてくれます。

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■『おえかきだいすき』

おえかきだいすき

『おえかき
だいすき』
レグコビット作・絵
あさひみちこ訳
新読書社・
ラードガ出版所
税込価格 525 円
(本体 500円)
14p

オンライン書店ビーケーワン:おえかきだいすき 
おんどりさんが
おひさま かいた

とりさんたちは
おそらをあおくぬっている

さあ、描きましょう。
誰もがみんな絵描きさん。
いろんな生き物たちが、いろんなものを、思い思いに描いています。

そののびやかさたるや、空のよう、海のよう。
その大らかさたるや、太陽のよう、月のよう。
その情熱たるや、炎のよう、風のよう。

今にも踊りだしそうな、素朴で鮮烈な絵が、命の喜びを歌っているようです。

おえかきだいすき


テキストは短く一文程度。
誰が何を描いているか、をリズミカルにうたうテキストをきっかけとして、ページ全体に、あふれんばかりの生命力をたたえた自由な絵がほとばしっている感じです。

一度見ると、その圧倒的な鮮やかさ、力強さに、心打たれます。
色数はシンプルですが、大胆な朱赤、青、黄色の混じりけのないくっきりした色、輪郭線をとらず、さらっと筆でぬりわけたようなのびやかなフォルム、民芸品を思わせる独特のフォークロア調の文様・・・、あまり他では見たことのない、くっきりと晴れわたった、天真爛漫なイラストです。ただし、音楽で言えば、長調ではなくて、短調系。

作者のレグコビットさんの、他の作品もぜひ見たい、もっと見たい!
当時の社会の中でも、このような絵本が脈々と生まれ続けていたのですね。
とにかく、ロシア・ソビエト絵本に対するイメージが、また一新されるような魅力的な絵本です。
おめざめ絵本にぜひどうぞ。

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■『おふろおばけ』

おふろおばけ

『おふろおばけ』
コルネイ・
チュコフスキー作
メシュコーワ絵
ばばともこ訳
新読書社・
プログレス出版所
1983年
税込価格 525 円
(本体 500円)
18p

オンライン書店ビーケーワン:おふろおばけ 
もうふがぼくからにげだした。
シーツは、そらにまいあがり、まくらもぼくからにげだした。

おかしいぞ?
なんだろう?
みんなまあるいわになって
まわってる、まわってる

あれ!
ママのへやからとびだした
あしのまがったせんめいだい
あたまふりふりやってきて、
ぼくにむかっていいました。

なんてわるいこ!
きたないこ!
おふろぎらいのこぶたちゃん、
おまえはほんとにまっくろけ

くつしただってくつだって、
にげだしたのはあたりまえ、
きたないやつからにげだしたのさ。

さあ、おふろおばけが、きたないわるいこをきれいにするぞと追いかけます。
途中でぼくがどうにか逃げ出したところで、出会ったのは大わに!
仲良しのはずのわににまで、さっさと洗えとにらまれて、あわててぼくは家に帰って・・・。

リズミカルで愉快なテキストと、さわやかで明るいイラストで、ちょっぴりナンセンスで面白おかしく、どろんこ少年の物語を描いています。

おふろおばけ

どろんこごしごし、きたないこにはおばけがくるぞ!

テキストの作者、コルネイ・チュコフスキーさん(1882-1969)は、「ごきぶりゴン 」「アいたた先生 」(邦訳は理論社・品切れ・など)など、子どものための愉快で美しい詩をたくさん書いていて、ステーエフさん、コナシェヴィチさんなど、いろいろな画家がいろいろな時代に繰り返しイラストを添えているそうです。
同じものと思われる挿絵のこのお話は、「ごしごしたいしょう」(Ye.メシコーフ)の題名で、『ごきぶりゴン』(理論社 品切れ)の中でも紹介されています。

お風呂に入る前、子どもと一緒に楽しんで読みたい、愉快でさっぱりさわやかな絵本。

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■『いきているぼうし

いきているぼうし

ニコライ・ノーソフ作
イ・セミョーノフ絵
福井研介訳
新読書社・
プログレス出版所
1981年
税込価格420 円
(本体 400円)
14p

『いきているぼうし』

オンライン書店ビーケーワン:いきているぼうし 
すがすがしいミントブルーに黄色い大きなぼうし、その下から、にっこりほほえむしましまこねこのワーシカ。
扉を開けるとすぐに、そのワーシカが、とんでいるハエを追って、台所で高くジャンプしているイラストが描かれています。
その隣のページは、中表紙。これから物語が始まるのだな・・・とめくると。
続いてのページは、少し近づいた同じ構図の同じ部屋のイラスト。
異なるのは、ジャンプしたワーシカに、たんすから落ちてきた黄色い帽子がかぶさっているところ。

その右のページには、二人の男の子が食卓でなにやら筆を持って熱心に絵を描いているイラストと、ワーシカがはからずも帽子にかくれてしまったことを説明する本文テキスト。
表紙裏の生き生きとしたイラストから、既に物語は始まっていたのですね。

この、帽子に目の前をふさがれてしまったあわれな帽子ねこワーシカと、まるで生きているかのように勝手に動く不可解な帽子を目の前で見た二人の男の子ボーバとワージクの、おっかなびっくり、こわごわどっきり、果敢な謎解き物語。

いきているぼうし

軽快な線画に、明るく澄んだ彩色は、どこかステーエフさんのイラストを思わせるみずみずしさ。

少年たちや、部屋の家具には、生き生きとした影がきちんと描き込まれていて、謎の帽子がじりじり近づいてくる場面では、ほどよい緊迫感をかもし出しています。

少年たちの部屋のしつらえも丁寧に描かれているので、当時の暮らしの雰囲気もあわせて楽しむことが出来ます。

それにしても、お部屋の中の小さな侵入者と迎えうつ二人の勇敢な少年の、ほほえましいこと、愛らしいこと。

何気ない毎日にふと起こった小さな事件を、みずみずしくさわやかに描いた、ほのぼのとした物語。

テキストの作者のニコライ・ノーソフさんの他の邦訳作品には、『ヴィーチャと学校友だち 』(岩波書店 品切れ)などがあるようです。
新読書社さんの絵本には、もう一冊、イラストが同じイ・セミョーノフさんの『シューリクのまほう 』があります。

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■『きんのさかなのものがたり』

きんのさかなのものがたり

『きんのさかな

ものがたり』
アレクサンドル・
プーシキン作
コナシェヴィチ絵
いじゅういんとしたか訳
新読書社・
プログレス出版所
1983年
税込価格500 円
(本体 525円)
18p

オンライン書店ビーケーワン:きんのさかな の ものがたり 
あおいあおいうみのそばに、じいさんとばあさんがすんでいた。
あるひ、じいさんがうみにあみをなげると、3どめにきんのさかながかかった。

きんのさかなはにんげんのことばで、
「おじいさん、わたしをうみへにがしておくれ。おれいにはなんでもすきなものあげます。」
といった。
じいさんはびっくりしたが、やさしく海へ逃がしてやった。

家に帰ってばあさんに話すと、ばあさんはじいさんをどなりつけた。
「おけでももらえばよかったのに。うちのおけはこわれているのだよ。」

じいさんがあおいうみへでかていくと、うみはすこしあれていた。
「なんのごようですか、おじいさん」
「まことにすまないが、さかなの女王さん、ばあさんはあたらしいおけがほしいそうだ。」
「かなしまないで。あんしんしてかえってごらん。あたらしいおけがありますよ。」

じいさんがかえってみると・・・。

ロシア文学の父といわれる、プーシキン(1799-1837)の作品に、コナシェヴィチさんがすばらしい絵を添えた、美しい作品。


きんのさかなのものがたり

生き生きとした力強い線、みずみずしく深く澄んだ色で、民族の香り豊かな華やかな挿絵を描き、本文テキストの囲み枠に、赤・青・黄色・緑色の軽やかな原色で、流れるような飾りを施した、目にも鮮やかな絵本です。

ばあさんとまずしい家が、どんどん派手に立派になるさま、うらはらに海と空がどんどん暗く荒れていくさまが、かわらないじいさんの身なりと低姿勢を、うきぼりにしています。

昔話の形式をふみ、リズミカルに繰り返しながら、だんだんうねり高まる物語を、訳文で聞いても面白いことはもちろんですが、原文の美しい韻をふんだ詩で耳にすると、さぞかしすばらしいのだろうな、と思います。

ばあさんがどんな欲深で身の程知らずな要求をしても、何も言わず応じていた金の魚ですが、ついに最後に、自身の自由の剥奪を要求されると、ぴしゃりと波をはねかえし、すべてを消し去った・・・。

さまざまな解釈の出来る物語だと思いますが、その奥底に、プーシキンや人々が力強い熱いものを時代を超えて託しているような、普遍の作品だと思います。

かつて同じ原書と思われる絵本が、ほるぷ出版より『きんのさかな』(1979年 品切れ)として出版されたことがあるようです。

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■『銀色の馬』

銀色の馬

ロシアの民話
『銀色の馬』
ミハイル・ブラートフ再話
タチヤーナ・マーブリナ

ばばともこ訳

新読書社・
ラードガ出版所
税込価格 500 円
(本体 525円)
24p

オンライン書店ビーケーワン:銀色の馬 
むかしむかし、おじいさんと、三人のむすこがすんでいました。
三ばんめのむすこのイワンは、「イワンのばか」とよばれていました。

ある日、おじいさんの麦畑が何者かに荒らされて、三人のむすこたちが、順番に、夜の見張りをすることになりました。
一日目、二日目と、上の兄たちは寝てしまいましたが、「誰もこなかったよ」。

三日目、イワンが見張っていると、銀色の馬が現れて、畑をめちゃめちゃにしています。
そっと近づいて、首に縄をかけてつかまえたのですが、
「はなしておくれ。いつかきっと、やくにたつから!」
と言われ、もう畑を荒らさないと約束したので、イワンは馬を逃がしてやりました。

話をきいた兄たちは、イワンの話を信じず、逃がしたというイワンを笑いものにしました。
そんなある日、王さまから国中におふれが出ました。
「王さまのむすめのエレーナ姫の座っている高い塔の窓辺まで、馬に乗ってとびあがり、姫の指輪をとったものは、姫と結婚させる」

早速その日、兄たちはお城に見物に出かけ、後を追ったイワンは、こっそり銀色の馬を呼び出しました・・・。

銀色の馬

いつの時代の頃に描かれたものなのでしょうか。
タチヤーナ・マーブリナさんの、邦訳作品でよく知られているものとは少し趣の異なる、輪郭線のはっきりした作風が楽しめる作品です。(福音館書店より出ている『ロシアの昔話』のなかのよく似たテキストの「魔法の馬」のイラストとはまた異なっています)

民族色豊かなお城の風景や、人々の衣装、そして生き生きとした表情などが、一つ一つ細やかに描かれた、華やかな昔話絵本。

表紙見返しに描かれた、美しい飾り枠の中の登場人物たちのりりしいイラストなどを見ると、タチヤーナ・マーブリナさんならではの情熱的な色使いやモチーフを感じることが出来ます。

三番目の息子、三日目の夜、不思議な銀の馬、美しいエレーナ姫、指輪、三度目の挑戦、お城での宴・・・と、大らかなロシアの昔話の醍醐味を堪能できる、華やかな絵本。

新読書社さんのお問合せ先はこちら。

電話 03−3814−6791
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