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![オンライン書店ビーケーワン:ねことわたしのねずみさん](http://img.bk1.co.jp/bookimages/no_img_s.gif)
![『ねことわたしのねずみさん』スージー・ボーダル作 佐々木田鶴子訳 偕成社 品切れ](susinekotowatasinonezumisan.jpg)
『ねこと わたしのねずみさん』 スージー=ボーダル作 佐々木田鶴子訳 偕成社 1983年 品切れ
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小悪魔的でたけだけしいねこ、清楚で可憐なセリーナ、小さくても賢いねずみのプンパーニッケル。 セリーナの部屋の壁の穴にすんでいるプンパーニッケルを、ある日窓からしのびこんだねこがつかまえてしまいました。セリーナが機転をきかせて助け出すと、おこったねこが、今度はセリーナにとびかかってきます。こわくなって部屋から逃げ出すセリーナを、おいかけるねこ。気のせいかどんどん大きくなって・・・!
白黒の繊細な銅版画の、濃密な線の美しい迫力に圧される絵本。緻密に描かれた静かな町のたたずまいに、異質な大きさを放つねこのまがまがしさ!心の闇をすいとるように、巨大化するねこの瞳の強い光はどきりとするほど! 立ち向かうセリーナのまなざしは、いつしか勇気がみなぎって、慈愛に満ちた聖母のようにさえ見えてきます。
時に妖しいほどに美しい、不思議な密度に満ちた絵本。
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原書は『SELINA, PUMPERNICKEL UND DIE KATZE FLORA 』Nord-Süd Verlag,1981とあります。アマゾンドイツで画像を発見しました≫こちら
この作品は、ドイツ児童文学賞(1982)、ライプチヒ国際図書デザイン展銀賞(1982)、ブラチスラバ世界絵本原画展金牌(1981)、を受賞したそうです。 (『ねことわたしのねずみさん』偕成社表紙カバー見返しより)
白黒の、手の込んだ銅版画による繊細かつ大胆なイラストの絵本。巻末に銅版画の作り方の説明のページがついていて、とても繊細で込み入った手作業で、たくさんの時間と労力が必要だということがわかります。
ある日、セリーナは、自分の部屋の壁の小さい穴に住むねずみと友達になり、プンパーニッケルという名前をつけました。セリーナがチーズをもってくると、プンパーニッケルはおはなしをひとつしてくれるのでした。 ところが、ある日、プンパーニッケルは窓からねこにねらわれてしまいます。セリーナはすきをついてプンパーニッケルを助け出し、エプロンのポケットに隠したのですが、おこったねこが、今度はセリーナにとびかかってきました。 こわくなったセリーナは部屋を飛び出しますが、おいかけてきたねこが、気のせいかだんだん大きくなってきて・・・!
銅版画による繊細な黒線の濃密な集まりで、町並みやねずみの毛並み、セリーナの表情や衣服、そしてねこからゆらりとわきおこるような不穏な空気を、どきりとするほど大胆に描き出しています。 場面によって、レンガの家々の煙突からたなびくけむりが、ほのぼのと幸せに見えたかと思うと、不吉なのろしのように見えたり、時折窓からのぞく人々の幸せな光景が、ねことセリーナの対決の緊迫をいっそうきわだてたり、結末の場面にいっそうの和みを与えたり。 どんどん大きくなっていくねこの場面は底知れぬ迫力で、化け猫的ねこの魅力と魔力を存分に味わうことができます。
ねこがどうして大きくなったのか、セリーナがそれにどうやって立ち向かったのか。 じりじりと、ねこがセリーナにせまる場面、セリーナがねこにせまる場面の、みるみるうちのねこの変化、みなぎる緊張感とほどける開放感は、何度読んでもどきりどきりと胸に迫り、すとんすとんと小気味よく胸におさまっていきます。 ページいっぱいに刻まれた静かな線画の、闇とのはざまの濃密な白黒の世界が、心の闇をとらえ、勇気と希望の光を与えてくれる絵本です。
スージー=ボーダルさんの、白黒の銅版画の邦訳作品は、もう一冊ありました。今度のねこも不思議ですが、ねずみをおそったりしないどころか、話ができてしまうのです! ↓
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↑ 原書の一冊。 アマゾンには邦訳の情報が 見当たりませんでした・・・ |
![オンライン書店ビーケーワン:ねこのバレンティン](http://img.bk1.co.jp/bookimages/no_img_s.gif)
『ねこの バレンティン』 スージー=ボーダルさく よだしずかやく 偕成社 1978年 品切れ
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白黒の、緻密なタッチの銅版画作品。 リーザの家でのびのびと幸せに暮らしていたねこのバレンティンは、他の動物の言葉を話すことができたので、だんだん、ねずみやことりをつかまえることができなくなり、ねこの仲間たちに笑われるようになりました。 傷心のバレンティンは、こっそり家をでて、いろいろな動物たちの話を聞きます。そんなとき雨が降ってきて・・・。
細やかで詩情豊かなモノクロの絵がとても美しい作品。 丸まるねこ、見つめるねこ、うずくまるねこ、うなだれるねこ、しなやかな後姿のねこ、横顔のねこ、ねこの魅力がいっぱい。 ほそいほそい線で構成された白と黒のわずかなわずかな隙間にさえも、広がりと揺らめきを感じるような、繊細な絵本。
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モノクロの、繊細なタッチの、銅版画で描かれた作品。 スージー=ボーダルさんの、ウィーン美術学校の卒業制作としてかかれた作品だそうです。(『ねこのバレンティン』表紙カバー裏見返し、著者紹介より)
リーザといっしょに住む、黒いぶちねこのバレンティンは、ひろい草はらに囲まれた家で、のびのびととても幸せ。 草はらで、 のねずみにであうと、いつもていねいにあいさつをしました。そうです、バレンティンは ねずみやすずめなど いろいろなどうぶつたちのことばを はなすことができたのです。だんだん、バレンティンは、ねずみやことりをつかまえることができなくなりました。 ・・・。
そんなバレンティンを見て、ねこのなかまたちは、ひそひそと笑いものにしました。 傷ついたバレンティンは、だまって家を出たのですが・・・。
巻末に、銅版画の作り方のイラストと説明があります。『ねことわたしのねずみさん』の説明と基本的には同じですが、イラストの一部が異なっているので、もう一度楽しめるかも。 その銅版画で描かれた緻密なタッチのモノクロのイラストが、ほんとうにきれい・・・。 色がまったくなく、白と黒の線の重なりや密度で、その輪郭や存在をうきぼりにしていて、線のなびく方向のわずかな差異にも、ゆらゆらと不思議な闇と光がうごめいているみたい。 白黒ですが、いわゆる真っ黒というのはほとんどなくて、どの黒も、丹念にエッチングされ、ほんの少しの白い部分を隠し持っています。 悲しみを抱えたバレンティンが家を出て、やがて雨の中、大きな木の下で雨宿りしようとする、見開き一面の静かな場面は、圧巻。
邦訳絵本の、オフホワイトの画用紙のようなてざわりの紙もしみじみと好きです。 原書は『KATER VALENTIN』 Nord-Süd Verlag,Switzerland、コピーライトは1977年とあります。
スージー=ボーダルさんのカラーの邦訳作品はこちらなど。↓特徴的な赤青緑黄の色彩や、パッチワークのような衣装・・・月や星の模様や、しましま、幾何学模様などの布地を、大胆に切り替えてつくったような、民族衣装を思わせる衣装が、とても印象的。いったいどこの地方のモチーフなのかしら?
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『ぼくのさんりんしゃ』 トラウテ=ジーモンスさく スージー=ボーダルえ ささきたづこやく 偕成社 1982年 品切れ
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少年パオリーノはさんりんしゃにのってお出かけです。車輪の具合も、ガソリンスタンドでちゃんと調べてもらいました。もちろん交通規則はきちんと守って、あぶないときはベルをならし、信号が赤のときは止まります。 だから野原で日が暮れて、真っ赤な太陽を見たとき、きちんと木の下で止まって待ったのですよ。けれどそのまま眠ってしまって・・・。 どうしよう。パオリーノのさんりんしゃにはあかりがありません。夜はあかりをつけなくちゃ、ばっきん、ですものね。こまったパオリーノは・・・
普通の毎日から少しだけふわりと飛び出した、少しだけナンセンスでユーモラスで、おおらかな夢の広がる絵本。
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パオリーノはガレージからさんりんしゃを出しました。 ガソリンスタンドまでのっていくと、おじさんが車輪の具合をしらべてくれました(さんりんしゃにガソリンはいらないですからね)。 パオリーノは出発し、町の通りを進みましたが、道の真ん中に大きな犬がねそべっていて、ベルをならしてもどこうとしません。 おまわりさんがやってきて、ふえをならすと、犬はやっと去りましたが、 「このつぎはばっきんだぞ」 と言われても知らん顔。 パオリーノはおまわりさんに交通規則を聞かれましたが、ちゃんと答えることができました。 それからまたどんどんいくと・・・。
首に赤いスカーフを結び、片頬に絆創膏を張っている、しましまセーターの男の子、パオリーノ。賢そうな瞳にそばかすの愛らしい、小学生くらいの少年のようにも見えますが、さっそうとまたがる愛車は三輪車。 ガソリンスタンドのおじさんが真面目に車輪を調べてくれたり、りりしくて恰幅のいいおまわりさんが、犬に「ばっきんだぞ」と言ってみたり、どことなくなんとなくユーモラスで、本当のお話から少しだけずれた分、夢が広がっているようです。
どんどん野原に進んで日が暮れて、そろそろ帰ろうと思ったものの、真っ赤なお日さまを見て、 「あかのときは、とまってまたなきゃいけないんだ。」 なんて思い出して、三輪車を止めて待つことにしたり・・・、物語の最初から、ほのかにユーモラスでちょっぴりナンセンスでおとぎ話的予感を感じていたものが、物語の後半に向けて、どんどんおしゃれでハイセンスなファンタジーに育っていく感じがしました。好きです、この物語。
スージー=ボーダルさんの、独特の色使いのカラーの中に繊細な線を施し、表情に独特の傾きを加えた精緻なイラストも、現実とファンタジーの間を巧みにつないでいるよう。星や月の模様の入ったパッチワークのような洋服、赤青緑を主とした民族衣装みたいな模様の衣装が、華やかで印象的。 ページのどの場面にも、かならず犬、もしくは猫が登場するところもお茶目でどこか秘密めいていて、物語の表情を豊かにしているように思います。
原書は『PAOLINO GEHT AUF REISEN』Nord-Süd Verlag 1978、とあります。
テキストのトラウテ=ジーモンスさんは、 「1930年、ソ連のカリーニングラードに生まれる。大学では心理学を専攻。1957年以来、家族とともにイタリアに住んでいる。主な作品に、絵本「ねがいの国」がある。」 と、あります。 (『ぼくのさんりんしゃ』表紙カバー裏見返し、著者紹介より)
・・・。ん?▼
「ねがいの国」と聞いて、あっ、と、思いました。そうです、ヨゼフ・パレチェクさんの1970年の作品、『Wunschland』(Nord-Süd )の、テキストの作者の方が、Traute Simonsさんその人なのでは!!! |
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アマゾンを検索しても、邦訳の情報か見当たらなかったので、洋書を検索してみました。右の『Ochsenspatz und Regenloewe. 24 der bekanntesten Kindergedichte von Christian Morgenstern』は、同じコンビによる別作品かもしれません。比較的最近の作品なのでしょうか?
『Kindergedichte. Schlummerliedchen. Die drei Spatzen. Fips』 Nord-Sued Verlag AG 1992
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『Three Nursery Poems』 Tundra Books 1977
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『Ochsenspatz und Regenloewe. 24 der bekanntesten Kindergedichte von Christian Morgenstern』 Ravensburger Buchverlag G 1994
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「幼児から大人まで楽しめる、味わい深い詩に、ボーダルが美しい絵をそえました。ミニ絵本3冊を、きれいな箱に入れてあります。プレゼントに最適の絵本。」 と、あります。 (『ぼくのさんりんしゃ』偕成社、品切れ、表紙カバー裏見返しの、「このほかのボーダルの絵本」より)
テキストの作者のモルゲンシュテルンさん(1871-1914)は、 「ドイツの有名な抒情詩人。子どものための優れたナンセンス詩を残した。」 とあります。 (『三ばのすずめ』表紙カバー裏見返し著者紹介より)
原書のコピーライトは1977年。邦訳出版も1977年。残念ながら、現在品切れ。図書館の書庫から借りた可愛い絵本には、箱はついていませんでした。図書カードには、たくさんの人が借りた証拠の日付印がおされ、表紙カバーがのこっているのは一冊のみ。その一冊のスージー=ボーダルさんのイラストの表紙カバーを外すと、布張りのような色紙の、タイトル文字も何もないシンプルな装丁。・・・ん?▼
この装丁、この小ぶりの版型、そして本文の「printed&bound in Singapore」の文字・・・、どこかで・・・。
そう、ヨゼフ・パレチェクさんの幻の「アンデルセン3冊セット」、1980年偕成社発行、現在品切れの、あの珠玉のてのひら絵本たちに、そっくりなのです!!!原書(1980年コピーライト)の版元も、Nord-Süd 社と、ヨゼフ・パレチェクさんのアンデルセン3冊セットと同じ。 これはもしかすると、想像ですが、当時、一連のミニ絵本3冊セット、箱入りシリーズをなしていたのかもしれないですよね。きっと、パレチェクさんの3冊セットにも、箱入りだった原書と同じように、邦訳の箱もあったのでは・・・???
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ドイツで愛されているモルゲンシュテルンさんの子どものための詩に、人気画家スージー=ボーダルさんの繊細なイラストを添えた、それだけで贈り物のような、箱入りの3冊セットの愛らしいてのひら絵本。きっと当時の子どもたちにとても喜ばれたことでしょうね!
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![オンライン書店ビーケーワン:こいぬのフィップス](http://img.bk1.co.jp/bookimages/no_img_s.gif) |
『こいぬのフィップス』 スージー=ボーダル絵 クリスティァン=モルゲンシュテルン詩 ことうえみ子訳 偕成社 1977年 品切れ
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「かんがえる本」と、最初にあります。
こいぬが一ぴき なまえはフィップス おじさんから ネクタイを もらいました ・・・
すてきに仕上げてもらったネクタイをつけて、得意満面、鼻高々のフィップスの愛らしい詩。 どうしてフィップスはいつもとちがうのかな? スージー・ボーダルさんの緻密なカラーイラストが楽しさを添えています。セピア調の色彩の中に、すこしエキゾチックな赤、青、緑、黄色の、民族衣装的な色合いと模様の服やクッションが印象的。
原書は『FIPS』、Nord-Süd 、コピーライトは1977年。
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![オンライン書店ビーケーワン:三ばのすずめ](http://img.bk1.co.jp/bookimages/no_img_s.gif) |
『三ばのすずめ』 スージー=ボーダル絵 クリスティァン=モルゲンシュテルン詩 ことうえみ子訳 偕成社 1977年 品切れ
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たのしむ本、と最初にあります。
葉の落ちたはしばみの木の枝の、
みぎはしにいるのが エーリッヒ ひだりはしにいるのが フランツ そしてまんなかにいるのが ずうずうしいハンスです ・・・
ゆきがふってきました。 ぶるるっ! ・・・
「ずうずうしい」という言葉がどきりと面白いですよね。くっつきあって寒さをしのいでいるすずめの、真ん中がいちばんぬくぬくとあたたかな位置だから、ということでしょうか。? 静かな情景がとても味わい深い作品。
原書は『DIE DREI SPATZEN』、Nord-Süd 、コピーライトは1977年。
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『おやすみなさい』 スージー=ボーダル絵 クリスティァン=モルゲンシュテルン詩 ことうえみ子訳 偕成社 1977年 品切れ
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ねむくなる本、と最初にあります。
おやすみなさい おやすみなさい むかしむかしあるところに ひつじが一ぴきいました ・・・
のんびりと、おだやかで、意味を深く考えると、少しナンセンス。おやすみまえの呪文のような、味わい深い詩。
イラストに出てくる女の子も、ひつじかいのおじさんも、赤、青、緑の色々な模様で構成されたパッチワークの衣装を着ていて、どこか民族衣装のよう。ひつじのいる野原の草木は、鳥の羽のような雰囲気です。
原書は『SCHLUMMERLIEDCHEN』、Nord-Süd 、コピーライトは1977年。
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ちなみに、最近のスージー=ボーダルさんの洋書絵本を、アマゾン洋書で検索すると、こちらなどがありました。↓
『Tiger Baby』 North South Books
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『1,2,3 What Do You See: An Animal Counting Book』 North South Books |
この表紙画像をアマゾンでクリックして拡大してみてくださいね。いちばん右の女の子の衣装やぼうしのカラフルな模様も、どこかの民族衣装的。
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