■スティーブン・マイケル・キングさんの絵本 |
Stephen Michael King はじめて描いた絵本“The Man Who Loved Boxes”でさまざまな賞を受賞、人気作家に。 |
『もくようびはどこへいくの』*洋書 |
|
『もくようび は どこへ いくの?』 ジャニーン・ブライアン文 スティーブン・マイケル・キング絵 すえよしあきこ訳 主婦の友社 2005年
|
「もくようびはどこへいくの」なんて、あどけない疑問にひたむきにとりくみ、幼い子なりにのびのびと答えをみつけた、絵本ならではの夢一杯の物語。
帽子の赤がときおりさし色になっているほかは、青を基調とした静かな夜の色彩にまとめられているので、最後のページの詩情豊かなイラストとテキストがとてもとても印象的。
おやすみまえにぴったりの、穏やかなメルヘン絵本。幼い心の世界を大切にした不思議なお話。
|

「もくようびはどこへいくの?」 タイトルの不思議と、青い表紙に惹かれて、読みました。 無邪気な手描きのタイトル文字は銀色。あどけない表情で、首をかしげる鼻の大きな白いくま・スプーのとなりに、飛行士のような帽子をかぶったくちばしの長い鳥(ペンギン?)・ハンブー。ぬいぐるみが、仲良く並んで夜空を眺めているみたいに愛らしいたたずまい。タイトル文字の「の」の先っぽに引っかかって描かれている赤と白のしましまのとんがり帽子は、誰のもの? 「もくようびはどこへいくの?」なんて無垢な瞳で問われたら、なんて答えればいいのかしら?
ページをめくると・・・青。澄んだ夜空の青の世界。白い星がまたたき、スプーとハンブーの白い身体をほのかに青く照らしています。
もくようびのことでした。 その日はスプーの誕生日。楽しかった特別の一日も、夜になるともうおわり。 スプーはふしぎでたまりません。 よるのあいだになにがおきているんだろう。 ぼくのおたんじょうびはどこへいっちゃうんだろう。
きんようびがくるまえに、楽しかったもくようびにさよならが言いたくて、スプーはともだちのハンブーといっしょに、そっと家の外にでていきました。
ふたりが最初に行ったのは、うーご、ごーご、と穏やかに川のながれる橋の上。 「もくようびくん、きみなの?」 大声で聞いても、返事はありません・・・。
そこで次にふたりが行ってみたのは・・・。
表紙のタイトルにひっかかっている赤と白のしましまのとんがり帽子は、スプーのパーティのときの帽子で、楽しかった誕生日のもくようびを象徴するような華やかさ。 その華やいだひとときを通り過ぎて、今は夜、いつもの夜と同じように、静かにおしまいになろうとしています。 今日がずっと続いたらいいのにな・・・。誰にでもそんな一日はあると思いますが、 どうしておわってしまうんだろう→どこにいくんだろう→探せばどこかにいるのではないか→いるのならさよならが言いたい、 なんて、あどけない発想がほほえましくて、大胆無邪気。さらに、無垢なふたりが気の向くまま、音の聞こえるままに捜し歩く小さな冒険が、絵本ならではのほのぼのとしたさわやかさ! 繰り返しもくようびをたずねて問いかける場面も、昔話的な絵本の形式をきちんとふんでいて、上質のメルヘンを味わっている感じです。
ところで、ふたりが一生懸命さがしている「もくようび」ですが、そもそも「もくようび」っていったい何?そんな疑問に、「もくようび」を探しつかれたスプーがふと、胸のうちをつぶやきます。 「もくようびって、こんなかたちをしてるとおもうんだ。・・・おたんじょうびケーキみたいにまんまるで、ろうそくみたいにあかるくて、ふうせんみたいにぼくをたのしくしてくれる・・・」
スプーの考える「もくようび」のかたちの話を、はじめおもしろそうにきいていたハンブーは、じっと考えて、そして・・・。
大人が読むと、「もくようび」なんて抽象的なものに、無邪気なふたりを会いに行かせる展開だけでも、どうなっちゃうのかなとはらはらしてしまうのですが、さらにスプー自身に具体的な「もくようび」の形を思い描かせて、無邪気な期待をどんどんふくらませたりして、大丈夫なのかしら・・・?と、やきもきしてしまいます。 でも、大丈夫。 きっと、天晴れな結末に、目の前がさあっと晴れわたるかも。
スプー自身の思い描く「もくようび」象によって、見事大団円に導かれた満ち足りた結末を、ぜひ図書館などで親子でお読みになってくださいね。 天真爛漫なスプーも気のよいハンブーも大満足、おやすみまえの読み気かせではらはらどきどきの子どももうなづき、はらはらやきもきの大人もうなる(?)天下一品の納得の展開が、きっと楽しい眠りに誘ってくれると思います。
ところで、「もくようびはどこへいくの」なんて、子どもらしい、大人の頭をなやます問いかけに、ひたむきに夢一杯に、茶目っ気たっぷりに、そして発言者の子どもの視点にもどって意外なやり方でこたえる物語は、どこかで読んだような・・・と、しばらく考えて、思い出しました。 『たくさんのおつきさま▼』(徳間書店) です。小さなレノア姫の言い出した「おつきさまがほしい」という願いを、意外な方法でかなえたきっかけは、大人の賢者たちの至極ごもっともな意見ではなく、小さなレノア姫自身のあどけない月に対する考え方でした。『もくようびはどこへいくの?』 の疑問が見事に解けたのも、スプー自身の「もくようび」に対する考え方がきっかけになっています。 この原点にたちもどる発想の転換の鮮やかさ、子どものまなざしによりそって子どもの心を満たす鮮やかさが、個人的にとても好き。
それから、ほのぼのとしたスプーとハンブーのやりとりや、あどけない好奇心のままに行動する楽しい物語に、もう一つの物語が思い出されました。 「くまのプーさん」シリーズ(岩波書店、フレーベル館など多数) (←画像は『プーさんのぼうきれあそび』フレーベル館 訳者は末吉暁子さん)です。 そういえば、どこかぬいぐるみのようなイラストの雰囲気や、スプーとプーという名前や、ハンブーとピグレットの関係が、似ているといえぱいえなくもないような・・・。 そう思って読み返すと、『もくようびはどこへいくの?』の邦訳のテキストには、スプーがくまであるとか、ハンブーがとりであるとか、ふたりがどんな場所のどんな家に住んでいて、だれと暮らしているかとか、くわしい描写がほとんどなされていないことに気がつきました。のんびりとして、詩情豊かなテキストから、無邪気なスプーとハンブーの世界を、読み手の自由に想像できる楽しみがまだまだありそうですよね。
原書は『WHERE DOES THURSDAY GO?』Margaret Hamilton Books,A division of Scholastic Australia Pty Limited in 2001. とあります。 オーストラリア児童図書賞受賞作品だそうです。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
|
『Where Does Thursday Go』 Clarion Books
|
|
アマゾン洋書の書評を読むと、主人公たちの名前は、「Bruno(主人公)」「Bert(その友だち)」になっているようです。もともとの原書表記ではどうなっていたのでしょうね!
▲上へ
『Milli, Jack, and the Dancing Cat (ハードカバー)』 Philomel Books (2004/04) |
|
『Mutt Dog (ハードカバー)』 Harcourt Childrens Books (J) (2005/09)
|
|
『Piglet And Papa (ハードカバー)』 Harry N Abrams (2007/05)
|
|
『Piglet And Mama (ハードカバー) 』 Harry N Abrams (2005/3/15)
|
|
この記事へのコメントを読む▼*書く▼ (この記事へ戻るには、ブラウザの戻る、をクリックしてくださいね) |
▲上へ
スティーブン・マイケル・キングさんの絵本 「さ」の絵本箱へ

HOMEへ

Copyright (c)2005-2007 kudolacieko All Rights Reserved
|