■ステファニー・ブレイクさんの絵本 |
Stephanie Blake 1968年アメリカ生まれ。8歳よりパリで暮らす。東洋言語研究所で中国語を学んだ後、子どもの誕生をきっかけに絵本制作に従事。乳幼児向けおもちゃ絵本も手がけている。邦訳絵本には『フランチェスカ』(教育画劇)がある。 (『フランチェスカ』(教育画劇) 著者紹介 より)
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『うんちっち』*『オオカミだー!』 |
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『うんちっち』 ステファニー・ブレイク作・絵 ふしみみさを訳 PHP出版 2005年
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何を言われても「うんちっち」一点張りのうさぎのこ。 ある日とうとうおおかみに食べられてしまって・・・。
大胆無邪気、色のきれいな楽しい絵に、子どもたちのひそかなあこがれの発音、予想を気持ちよくうらぎる展開、すっきり爽快、あっぱれ絵本!
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むかしむかし、たったひとつしかことばをいえないうさぎのこがいました。それは・・・!
「うんちっち」
あるひ、 オオカミが やってきて、 うさぎのにいいました。 「ぼうやを たべても いいかい?」 うさぎのこは こたえました。 「うん ちっち」
オオカミは ぺろりと ひとくち、 うさぎのこを たべてしまいました。 ・・・
単純明快、これでどーだ!といわんばかりの大胆な絵に、これできまり!のトドメの台詞。 「うんちっち」 子どもなりに、大人の前でおおっぴらに口にすることをはばかられるその台詞の、堂々たる魅惑的なタイトルからして、絵本を開く前から、子どもたちの熱い視線をとらえちゃいます。まだひらがなの読めないちびっこだって、耳にしたとたん、絵本の前にすっとんできちゃいそう! 台詞もいいですが、しかと正面を見据えたまんまるの目、ピンとたった長い耳に、まっしろの毛の元気なうさぎの、ほどよく隙間の見える前歯がいいですよね(笑)。子どもの歯がちょうどぬけちゃったのかしらん。その年頃特有の、生意気さと無邪気さと可愛らしさと抜け目のなさとがほどよくまざっていて、何かと心当たりのある切実な大人も多いかも(笑)。うさぎのぼうやの、手を後ろに回して立つポーズも、子どもの得意とする絵の描き方を思わせて、なんとなく親しみがこもります。
さらに、読んだらますますニンマリ。 タブーだと思い込んでいた(?)魅惑の台詞が次々と連発され、親しみやすい絵で、なんとなく身に覚えのあるようなないような頑固うさぎの日常が楽しく描かれたあとに、待ってましたのこわいオオカミが登場するのですから! ああ、やっぱり、そんなことばっかり言っているから、食べられちゃった。 なんて、よい子のため息が聞こえてきそう。絵本を読み聞かせしているときは、たいていのちびっこがたいそうよい子・自分棚上げ状態ですからね。もちろん、たいていのちびっこはいつもよい子でいるとは思いますが(笑)
ここまでよく似た古典的傑作絵本に、モーリス・センダックの『ピエールとライオン』▲(冨山房)があります。この絵本が大好きな3姉妹は、たちまち『うんちっち』にも興味シンシン!
ところで『うんちっち』ではオオカミが、ちゃんとよくかまないで、まるのみなんかしてくれたので、うさぎのこを食べた後のお話がますます笑えます。ひょっこりオオカミが登場するのと同じくらい、何気なくやってくる頼もしい人物が想定外で、これまた楽しい! かくかくしかじかの愉快な場面を経て、うさぎのこの口をついてさらりと出てきた台詞も、とぼけていて抱腹絶倒。能ある鷹はツメかくす、なんていうけれど、これでめでたしだとおもったらツメが甘くて、最後の最後のキメ台詞で、も一度子どもたちの拍手喝さいをあびることになるかも! 「あー、楽しかった、もういっかーい」、間違いなしだよね!
テキストのフォントも凝っていて、黙読の一人読みでも、白熱してしまいそうな絵本。 たいてい巻末に記されている作品奥付が、表紙をひらいた次のページにきていたりして、遊び心も随所にたっぷり。
原書は、『Caca boudin』2002 l'ecole des loisirs, Paris とあります。
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『オオカミ だー!』 ステファニー・ブレイクさく ふしみみさをやく PHP出版 2006年
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何か言われたら「オオカミだー!」で、やりたい放題のうさぎのこ。 ある日とうとう本当にオオカミがやってきて・・・。
大胆無邪気、色のきれいな楽しい絵に、昔話でも耳になじんだ強烈な台詞、ついにここまでかと思った後のどっきりするいましめと、ちゃっかりした結末の、やっぱり懲りない展開、あっぱれ絵本!
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むかし、シモンといううさぎのこは、誰かから何か言われるたび、 「オオカミだぁー」 とさけんで、やりたいほうだい。 おかあさんの言うことも、ようちえんの先生の言うことも、おとうさんの言うこともきかないで、 「オオカミだぁー」 とさけんで、みんなをおどかしていたら、ある日本当にオオカミがやってきて・・・!
表紙を見ただけで、前作を強烈に覚えていた3姉妹が、「うんちっちー!」とすっとんできた絵本。 前作と同じく、鮮烈で明快な絵、洒落た色使い、ここぞとばかりに大きくなるテキストの文字など、旬のつやつやした輝きを放つ仕上がり。 今回も待ってましたのオオカミが登場して、ホクホクにまにま。 さすがのシモンも本物の登場にあわてふためく場面では、 「あれえ、イソップのお話みたいだね」 なんて声も出たのですが、とうとう極めつけのページをめくると・・・!
前作でも登場する頼もしい人物ですが、この人物の思い切った処方が今回も決め手かも。
そして結末のとぼけた可愛らしさに、一堂びっくり大爆笑。さすがはちゃっかりさん、頭でっかちだけれど口先だけじゃなくなって、これでめでたく有言実行・言動一致(?)、これならほのぼの、やんちゃでお茶目でいいかもね。
原書は、『Au loup!』2005 l'ecole des loisirs, Paris とあります。
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