■ステファーノ・ヴィタールさんの絵本
1958年イタリアのPaboda・パドヴァ生まれ。ヴェネチア大学、ヴェローナ大学卒業。カリフォルニア大学やカリフォルニアのパサディナのデザイン・アートカレッジで絵画を学ぶ。、「The New York Times 」「Business Week」「 New York magazine」などの雑誌へのイラストや、デザインの仕事などに携わる。世界各国の伝統絵画を研究し、独自の画風を想像している。絵本の挿絵も多数。
(『ながれ星がはこんできたおはなし』偕成社 著者紹介 参照)
『When the Wind Stops 』*『ながれ星がはこんできたおはなし』*『Nursery Tales Around the World』

 
『When the Wind Stops』

『When the Wind Stops
(Picture Book Ser.)
(ペーパーバック) 』
Charlotte Zolotow作
Stefano Vitale絵
Trophy Pr;
Reprint版
(1997/02)

テキストの一部を改められ、Stefano Vitale (ステファーノ・ヴィタール)さんによる新しいイラストが添えられた、新しい「かぜはどこへいくの」。

図書館で借りたのは、HarperCollins Publishersのハードカバー版で、初版は1995年。
コピーライトは、
1962,1995 by Charlotte Zolotow
Text copyright renewed 1990 by Charlotte Zolotow
Illustrations copyright 1995 by Stefano Vitale
とあります。

邦訳『かぜはどこへいくの(偕成社、松岡享子訳、1981年)は、版元Harper&Row Publishers より原書が1975年に出版された、ハワード・ノッツさんの挿絵によるものです。
ハワード・ノッツさんの繊細な鉛筆画による白黒の挿絵と、自然のおおらかな営みを母と子のやさしい対話で描いたシャーロット・ゾロトウさんの文章が、とても好きです。

新しい『When the Wind Stops』1995 は、イラストがStefano Vitale さんのカラーのイラストになりました。木目や木肌を活かした板の上に直接描かれ、深い色合いとふっくらした線で、デザイン的にも美しくわかりやすくまとめられた、愛らしいイラストです。太陽や木、雲、波など、自然の描き方にフォークロア的な雰囲気もあり、伝統的なものと新しいものが親しみやすく木肌の上でとけあっているよう。

シドロモドロ英語(笑)で読んで、邦訳の文章と比べたとき、おそらく部分的に、削除されたり改められたりして、推敲がなされたのだろうなあ、と思われる場面がいくつかありました。素人が読むと、削るなんてもったいないくらい、和やかで美しいものなのですが。その分、イラストの配置がいくらかゆったりしているようです。

Stefano Vitale さんの主な作品はこちらなど。↓

『The Folks in the
Valley:

A Pennsylvania
Dutch ABC
(ボードブック)』
Harpercollins
Childrens Books;
Board版
(1998/02)

『If You Listen
(ハードカバー) 』 
Running Pr
Book Pub (J)
(2002/07)

テキストCharlotte Zolotow。
1980年テキストの新イラスト版のようです。

『Sleepy Book
(ハードカバー) 』
Harpercollins Childrens Books;
Newly Ill.版
(2001/8/7)

テキストCharlotte Zolotow。
1958年テキストの新イラスト版のようです。

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邦訳作品は、こちら。↓

 
『ながれ星がはこんできたおはなし』偕成社

『ながれ星が
はこんできた
おはなし』

ヴァリスカ・グレゴリー作
ステファーノ・ヴィタール絵
みき たく訳
偕成社
2001年

「まだこのちきゅうができたばかりで、
空がインクのようにくろかったころ、
二つのおはなしがながれ星のようにおちてきました。
お日さまのおはなしと、お月さまのおはなしです。
きみはどちらのおはなしがすきかな?」

太陽と月にまつわる二つの示唆的なお話に、フォークロア調の幻想的な板絵がそえられた物語。

オンライン書店ビーケーワン:ながれ星がはこんできたおはなし

板に塗られ、木目に沈んだ深い色合いが美しい、独特のタッチの壁画のような絵。その、ステファーノ・ヴィタールさんの板絵が、太陽と月の二つのおおらかな物語つみこみ、空の輝きを映し出すような神秘的な絵本になりました。

一つは、「お日さまのおはなし」。
雲のゆりかごから落ちたお日さまが木にはさまってふるえているのを、通りがかったキツネが見つけました。キツネは大急ぎで木にかける大きな覆いを縫い、とりかごを覆うようにおひさまの木にかぶせ、おおいばりで、夜と昼の決定権を握る支配者になりました。ところが、キツネはイタチのことを忘れていて、イタチはカラスのことを忘れていて・・・。
太陽をめぐる動物たちの泥沼の争いを描いたお話。
太陽の、昼間のお話なので、イラストの基調となっているのは、深い橙色・・・灼熱の日差しのようにも、空を焦がす炎のようにも思われる、美しくざわめく橙色。

もう一つは、「お月さまのおはなし」。
空のボタンホールから落ちたお月さまを、ただひとり起きていたクマが見ていました。クマは古いいいつたえをよく知っていたので、みんなでわけたり、わって中身を見てみようと言い出す動物たちをいさめて、クモの銀の網のふくろで、お月さまをもう一度空につりさげようと提案しました。空まで運んでつりさげるのはタカの役目です。
動物たちが見守る中、三日三晩銀のふくろを編み続けて、くたびれたクモは・・・。
月をめぐる動物たちの熱い協力を描いたお話。
月の、夜のお話なので、イラストの基調となっているのは、深い青緑色・・・木目が湖に静かに広がる波紋のようにも、ひんやりと冷えた霧の流れのようにも思われる、美しく冴え冴えとした青緑色。

さまざまな動物たちが、空からの大切な珍客をめぐってくりひろげる、おおらかで不思議で、暗示的な二つの物語。
文章のはしばしに詩的な美しさがにじんでいて耳に心地よく、絵のすみずみまで繊細な光と影を感じさせて目に快く、対照的な二つの民話をさまざまに照らし合わせながら、楽しむことができる絵本。

ステファーノ・ヴィターレさんの描く世界各国の民話の板絵を、一冊でたっぷり味わえる民話集を図書館で発見。↓

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『Nursery Tales Around the World』

『Nursery Tales
Around the World

(ハードカバー)』
Judy Sierra 選・再話
Stefano Vitale 絵
Clarion Books
(1996/03)
114p

ステファーノ・ヴィターレさんのフォークロア調の装飾をほどこした濃密な板絵が、巻末の資料のページ以外、すべてにわたって楽しめます。テキストのページにも、まるで美しい額縁のような飾り枠が、お話ごとに違った模様で描かれているのです。独特のムードが圧巻!

アメリカ、イギリス、ノルウェー、ロシア、ギリシャ、インド、フィリピン、中国などなど、世界各国から集めた民話を、
「Runaway Cookies」
「Incredible Appetites」
「The Victory of the Smallest」
「Chain Tales」
「Slowpokes and Speedsters」
「Fooling the Big Bad Wolf」
の、6つのテーマごとに、3つの類話をまとめた民話集。合計18話。

フォークロア調のイラストや飾り枠の施された美しいページに、短い物語が合計18話、101ページ、巻末の解説と資料が12pにわたって記された、読み応えのある民話集です。
Runaway Cookies」には、「おだんごパン」「しょうがぱんぼうや」など、
Incredible Appetites」(大食いの話)には、「はえをのみこんだおばあさん」「礼儀正しいおうむとお行儀の悪い大食いのねこのおもてなしの話(「ねこのかわ」)」など、
The Victory of the Smallest」には、「畑から出て行かない羊をありが追い出した話」、「かになどが協力分担して巨人を打ち負かすお話(日本の「さるかに」のような感じ)」、など、
Chain Tales」には、「ジャックのたてた家」、「棒よぶて、棒がぶたないので火よ燃せ、火が燃さないので・・・とどんどんめぐるお話」など、
Slowpokes and Speedsters」には、「うさぎとかめ」「コヨーテと(4匹の)うさぎが地球の4点を基準として一回りする競争をしたお話」など、
Fooling the Big Bad Wolf」には、「私を食べる前に人間式の踊りを踊ってからにしてくれ、・・・という機転で危機を逃れたお話」「さんびきのこぶた」など、
さまざまなお話が、テーマ別に3話ずつおさめられています。
一つのお話を一つの枠の中に一つの流れとしてまとめあげたタペストリーのようなイラストが、素朴な民話の魅力をひきたて、シドロモドロ英語の理解を大いに助けてくれました(苦笑)。


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