■スクレビッキーさんの絵本 |
ゲオルギー・アレクセイビッチ・スクレビッキー 1903年生まれ。モスクワ大学卒業後、動物学を学び、自然と動物をテーマとした児童文学を多数発表している。動物園勤務の経験もある。 (『こうさぎの白いコート』金の星社、品切れ の著者紹介欄より) |
『こうさぎの白いコート』*『はたらきもののリスのトーニャ』 |
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『こうさぎの白いコート』 スクレビッキー作 宮川やすえ訳 伊東美貴絵 金の星社 1991年 現在品切れ
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初めてのきびしい冬にとまどうこうさぎが、いろいろな動物たちに、それぞれの冬支度をたずねてまわります。 みんなは親切に自分たちのやり方を教えてくれますが、どれもこうさぎにはむつかしくて・・・。
楽しい読み物仕立てで、動物たちの冬を生き抜く知恵、自然の営みが学べるロシアの児童書。
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ロシアの広大で豊かな自然と、動物への深い愛情と知識に裏打ちされた、著名な児童文学者といえば、ビアンキさん、スラトコフさん、画家のチャルーシンさん一家などなどがいらっしゃると思いますが、スクレビッキーさんもまた、とても多くの動物物語を著わしているそうです。さすがロシア、という感じですよね。
さて、『こうさぎの白いコート』です。 原書は『ВСЯК ПО-СВОЕМЧ』と、あります。 はじめての冬を迎えてうろたえてしまうこうさぎの物語を、のびのびと愉快にリズミカルに描いた、とてもためになる楽しい読み物です。 児童書ですが、簡単な漢字にはルビがふってあり、大きな字で読みやすく、軽やかでにぎやかなイラストも満載なので、あー面白かったと一気に読み終わると、気分はちびっこ動物博士かも。
物語は・・・。 春に生まれたこうさぎは、かあさんうさぎと過ごしたのもつかの間、一人で草を食べることを知り、豊かなロシアの夏に抱かれてすくすく大きくなっていきます。 そして木の葉が舞い落ちる秋が来て、かさかさ葉っぱの音が耳について眠れなくなり、なんだかそわそわと、落ち着かなくなってきます。 そんなとき、せっせときのこを拾っては木の枝にはさんでいるりすに出会って、 「どうしてきのこをとっておくの?」 と、訪ねます。 りすは驚いて、 「すぐにふゆがやってくるんだよ!」 と、こうさぎにも、冬に備えて、くるみやきのこなどの食べ物を集めておくように、寒さをしのげる巣を作っておくようにと、忠告します。 けれどりすのように巣を作ることの出来ないこうさぎは、 「ぼくはね、しげみの下で、ねるんだよ。それしかしらないんだよ・・・」 と、おどおどと答えることしかできません。 「きみ、ふゆをこすということが、どんなものか、しらないんだね!」 と、あきれてりすはきのこ集めにもどってしまい、こうさぎはどんどん遠くへ走ります。
続いて出会ったのは、冬ごもりに備えてせっせと穴を掘っているあなぐまでした。 こうさぎはあなぐまにも、何のためにそんなことをしているのか質問をして、結局冬について何も知らないとあきれられます。 けれどあなぐまに、一緒に穴を掘って、穴の中で冬を越さないか、と、親切にさそわれても、穴が掘れず、しげみの下で休むこうさぎには、穴掘りを手伝うことも、穴の中でじっとしていることも出来ません。
あなぐまと物別れに終わったこうさぎが、次に出会ったのは、小川でハコヤナギの木をせっせとかじるビーバーでした・・・。
こうして、こうさぎは、はりねずみ、つぐみなど、さまざまな動物たちに、それぞれの冬の越し方を訪ねてまわります。 それぞれの動物たちは、それぞれに独特で根拠と効果のあるとっておきの冬支度をこうさぎに披露してくれるのですが、果たして、しげみの下で眠ることしかできないこうさぎに、ぴったりの冬支度は見つかるでしょうか? こうさぎは無事に厳しい冬を生き延びることができるのでしょうか?
大きな字で読みやすく、簡潔な文章で、つぎつぎと繰り広げられる動物たちとの問答も楽しく、すいすいと読めるのですが、軽やかに描かれている内容は盛りだくさんで興味深く、うさぎの習性や動物たちの冬支度に対する、さまざまな新発見や再発見があるのでは、と思います。 私自身がほとんど動物について知らなかったので、うさぎの生まれた後のことや冬の過ごし方、はりねずみの冬支度やえぞやまどりの冬の知恵を、とても面白く新鮮な気持で読みました。
動物たちの越冬を、このように楽しくてためになる読み物に仕上げることができるなんて、さすがロシア、奥が深いなという感じ。 しかも、この読み物の奥深いところは、真正面から動物について描いているのですが、すこし斜めからうがってみると、人間についてもあてはまるような、そんな読み方も出来るところだと思います(うがちすぎ?)。 それぞれに、特別の、しかるべき根拠や期待できる効果やその方法にこだわる思い入れのたっぷりつまった、とっておきのやり方があって、そのお互いのやり方を尊重しつつ、相手のすぐれた手腕を認めつつ、自分の方法にも誇りをもち、共存共栄していけたら・・・という読み方も、出来るような気がするのですが、どうかしら?? ちなみに、原題は、みんな自分のやり方で、というような意味のよう(正確な訳ではありません、ごめんなさい)。
同じ作者、訳者、画家による児童書はこちら。↓
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『はたらきものの リスのトーニャ』 スクレビッキー作 宮川やすえ訳 伊東美貴絵 金の星社 1997年
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ロシアの森に住むリスの生態をいきいきと楽しい物語にしたてた作品。
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