■シムズ・タバックさんの絵本 |
1932年ニューヨーク、Bronx (ブロンクス) 生まれ。著名なイラストレーター、グラフィックデザイナー、絵本作家。CBS recordsのグラフィックデザイナー、「ニューヨークタイムズ」のデザイナーとして活躍。Syracuse University(シラキュース大学)の教授もつとめる。絵本では、『ヨセフのだいじなコート』▼で2000年コルデコット賞、『これはジャックのたてたいえ』▼(ともにフレーベル館)で1998年コルデコット賞オナー賞を受賞。現在ニューヨーク在住。 |
『ヨセフのだいじなコート』*『ハエをのみこんだおばあさん』*『これはジャックのたてたいえ』*『モーっていったのだあれ?』 |
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『ヨセフの だいじな コート』 シムズ・タバック作 木坂涼訳 フレーベル館 2001年 |
ヨセフのもっていたつぎだらけのだいじなコート、だんだん短く小さくなって、ジャケットになり、チョッキになり・・・、 そしてついにどうなった? 大事にしてゆくことの小さな積み重ねから、大きな物語が生まれる絵本。
シムズ・タバックさんが子どものころにうたっていた「オーバーコートをもっていた」というユダヤのうたを、アレンジしてつくった切り抜き絵本。 黒色の地に、深みのある色彩とコラージュをちりばめた絵が魅力的。 2000年コールデコット賞受賞作品。
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ヨセフはコートをもっていました。 でも、あちこちすりきれてつぎをあてていました。 そこでヨセフは、コートをジャケットにつくりかえ、 ・・・
だいじなコートのつぎあて部分がつぎつぎ切り落とされて、残った部分がジャケットに、ジャケットがチョッキに、チョッキが・・・と、どんどんみるみる小さく細かく変身していく楽しいお話が、ぴったりの穴あき絵本になりました。 次のページの一部が小さな穴になっていて、ページをめくると、ちょうどぴったり、ヨセフのコートの変身後の形になっています。そこからのぞいているのは、前のページの変身前のコートの生地。だんだんコートが小さく変身していく様子が、小さな子にもより実感できる巧みな仕掛けになっています。穴あき絵本にふさわしく、比較的しっかりした厚みのある紙が用いられているのも嬉しい配慮。 大事なコートを最後の最後まで大事にしたヨセフと同じように、絵本も大事に読みたいですよね。最後の最後に大事なコートから何を受け取るか、メッセージがコートと同じくらいあたたかな絵本。
黒を基調とした地に、色とりどり、さまざまなコラージュをリズミカルにちりばめた華やかなイラストが、単純な繰り返しの楽しい民話を、さらににぎやかに盛り立てています。さらに、ところどころ、手紙や壁飾りなどに小さな小さな文字で記されたお茶目な一言も見逃せません。 いろいろな民族調の色調や柄、模様がほのぼのと調和した陽気なイラストのコラージュに、さりげなく和風の柄も織り込まれているのも嬉しい発見。 見返しの思い思いの端切れのコラージュ、裏表紙の整然とならんだボタンのコラージュも、わくわくする美しさ、ぎっしりお宝の詰まったおもちゃ箱のふたを開けたときみたい!
原書は『JOSEPH HAD A LITTLE OVERCOAT』1999 Viking Children's Books,a division of Penguin Putnam Inc.とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『Joseph Had a Little Overcoat (Caldecott Medal Book) (ハードカバー)』 Viking Childrens Books (1999/10) |
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どうしてだか、ハエをのみこんだおばあさん、つぎにクモをのみこんだ。クモのつぎは、トリ・・・。 だってハエをクモに、クモをトリに捕まえてもらおうと思ったから。おばあさん、しんじゃうのかもしれないね。 ・・・
アメリカの子どもたち、大人たちに愛され続けているうたをもとにした楽しい切り抜き絵本。 1998年コールデコット賞オナー賞受賞作品。
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黒とオレンジ色を基調とした、どことなくパンプキンや、ハロウィンを思わせる、楽しくてこわーい雰囲気の、お洒落な絵本。おばあさんのたっぷりした黒色の洋服に、紙ふぶきの水玉模様のようにちりばめられた、こっくりした色使いのコラージュがきれい。おばあさんがつぎつぎと動物たちを丸のみするたびに、おばあさんの洋服もまるまるとページいっぱいに広がってゆくのですが、その中心がちょうどうまく穴あきになっていて、のみこんだ動物が穴からぴったりのぞく仕掛けになっています。ページをめくる前も、めくった後も、それぞれにお楽しみ。 動物たちの合いの手のような台詞の一つ一つや、テキストのコラージュ的な凝ったフォントを見るのも楽しくて、盛りだくさんの雰囲気。
一見理にかなっているようで(?)、ナンセンスなながーいテキストが、うたと同じくらいあっけらかんと描かれていて愉快です。
原書は『THERE WAS AN OLD LADY WHO SWALLOWED A FLY 』1997 Viking Children's Books,A memberof Penguin Putnam Inc.とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『There Was an Old Lady Who Swallowed a Fly (Caldecott Honor Book) (ハードカバー)』 Viking Childrens Books (1997/09)
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『これは ジャックの たてた いえ』 シムズ・タバック作 木坂涼訳 フレーベル館 2003年
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こんどのシムズ・タバックさんのわらべうた絵本は、古くから何世紀にもわたって子どもたちに愛されてきたつみかさねうた。おそらく、16世紀のヘブライ語のあそびうたがもとになっているのだそうです。 (『これはジャックのたてたいえ』フレーベル館 より)
最後の最後にジャックのたてたいえにお邪魔した謎の人に、絵本をめくって会ってみる?
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これはジャックのたてたいえ これはジャックのたてたいえにしまってあったチーズ これはジャックのたてたいえにしまってあったチーズをたべたねずみ ・・・
土台となる言葉の家に、きりなく増築改築するように、どんどんずらずら飾りをならべて、ぎりぎりまで積み上げていくのが楽しい、つみかさねわらべうた。どこまで息継ぎなしでなめらかに読めるか、知らず舌なめずりして挑戦してしまいそう。
あちこちに遊び心があふれたにぎやかなイラストは、黒を基調としていてきりっと小粋。黒以外に用いられている豊富な色が、どれも少し沈んだ深みのある色で、あかぬけたまとまり。テキストのフォントもコラージュみたいに色とりどり、形もさまざまで楽しいので、一枚一枚の場面が、それぞれ独立したポスターみたいに華やかで魅力的。 見返しも、裏表紙も、眺めるだけでも楽しいね。
原書は『This Is the House That Jack Built』2002 G.P.Putnam's Sons,an imprint of Penguin Putnam Books for Young Readers, a divition of Penguin Group(USA)
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『This Is the House That Jack Built (ハードカバー)』 Simms Taback Putnam Pub Group (2002/08) |
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『モーって いったの だあれ?』 ぶん ハリエット・ツィーフェルト え シムズ・ターバック やく はるみこうへい 童話館出版 1998年
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ある朝、赤いおんどりが、いつものように時を告げると、だれかが「モー」って答えたんだって。もしかして、それはきみかい? まさか!もちろんこう言うよね! めくってごらん。陽気で明快、鮮やかでおしゃれな動物たちが、なんて言ったか、答えてくれるよ。 子どもたちが大好き、楽しくて華やかな仕掛け絵本。 |
まいにちあさはやく、あかいおんどりはなやのやねにのぼって、ときをつくります。 コケコッコー! いつもは、だれもこたえません。 そう、だれもね。 でも、あるあさ、だれかがいいました。
モー!
あかいおんどりは、動物たちにつぎつぎ訊ねて回ります。 「だれかが、モーっていったんだけど、きみかい?」 するとみんな答えます。 「ぼくは、モーとはいわないよ。ぼくは・・・」
犬、猫、ひつじ、ぶた、ろば・・・。 さあ、おんどりが出会った動物たちは、それぞれなんて鳴くのかな? カラフルで楽しい絵についている、半分のページをめくって、確かめてみましょう。
ボードブックではありませんが、比較的しっかりした紙を用いた、開いて楽しむしかけ絵本。16ページ(見開きの右ページすべてに開くページがついているので、全部では32ページともいえるかな?)。
身近な動物たちの陽気な絵に、めくってお楽しみのしかけページ、そして小さい子の期待を裏切らない素直な展開、愛らしい結末に、幼児が大喜びする絵本。 どこかフォークロア的な文様をとりいれた、渋い深い色使いのお茶目な線画に、読み聞かせの大人の目も、大いに楽しむことができますよね。 明るく晴れた空の色も、どんどん歩いていく地面の色も、出会う動物たちの色も模様も、本当にありそうで、なさそうな大胆な配色で、自由闊達な雰囲気が広がっています。
原書は『Who Said Moo?』1996 HarperCollins Children'sBooks, a division of HarperCollins Publishers. Inc.とあります。
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『Who Said Moo? (ボードブック)』 Handprint Books Inc; Board版 (2002/03) 16ページ
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背景の色が異って、また邦訳とは異なる雰囲気。
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