■ジュリア・ドナルドソンさんとアクセル・シェフラーさんの絵本 |
ジュリア・ドナルドソン・・・イギリスの作家。「もりでいちばんつよいのは?」でスマーティーズ賞などを受賞。シェフラーさんとのコンビの他の作品には、『くまくんのてがみ』(評論社)など、「どんぐりもりのおはなし」シリーズなど。 |
アクセル・シェフラー・・・1957年ドイツ・ハンブルク生まれ。イラストレーターとして、フランス、イギリス、ドイツの雑誌、書籍で活躍。イギリス在住。「もりでいちばんつよいのは?」でスマーティーズ賞などを受賞。他の挿絵には、『ぼうしのすきなこぶた』(あすなろ書房、品切れ)など。 |
『ぼくのママはどこ?』*『もりでいちばんつよいのは?』*『ぼうしのすきなこぶた』 |
≫別頁『おうちをわけっこ』 |
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『ぼくのママは どこ?』 ジュリア・ドナルドソンぶん アクセル・シェフラーえ 久山太市やく 評論社 2001年
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緑豊かなジャングルの中で、ママとはぐれたおサルのぼうやと、気のいいチョウチョウさんの、愉快な愉快なママさがし絵本。 問題は、おサルのぼうやと、チョウチョウさんの、思い描くママ像が、どうも一致しないというか、似ていないことなんだよね。 チョウチョウさんたら、ぼくの言葉を手がかりにたちまちひらめいて、ママらしき動物を見つけてくれるのは頼もしいんだけど、それ、どう見てもぼくのママじゃないでしょ! えっ・・・?
楽しいずっこけの繰り返しに、満を持したどんでん返しもお楽しみに。
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ぼく、ママとはぐれちゃった。おサルのぼうやが泣いていると、親切なチョウチョウさんがやってきて、いっしょにママをさがしてあげようと言いました。 そこでまずは、ママの特徴把握から。 「ママはどれくらい大きいの?」 ぼくの答えをきいて、小さなチョウチョウさんが自分なりにママを思い描き、思い当たる節をたずねあるきますが、はてさて?
「ぼくのママはね、ぼくより大きいの」 「ぼうやより大きいって?それなら、見たよ。こっちこっち、ついといで」 チョウチョウさんが親切に連れて行ったのは・・・、
「ちがうよ!ゾウさんじゃないか」 ぼうやはびっくり。 「ママはあんなにどでかくないよ。・・・ママのしっぽは木にまきつくんだ」 「木にまきつくって?なら、すぐそばだ。おいで、ぼうや!そこにいるよ」 今度こそチョウチョウさんが親切に示したのは・・・、
「なにいってんの、ヘビさんだよ」 ・・・
あれあれ、あららら。チョウチョウさんのひらめきはいつも早ちとり、どこか空回り、似て非なるものばかり、ちっともママさがしに結びつきません。 あのねえ、チョウチョウさんが見つけてくれたママって、ぼくにちっとも似ていないじゃない?
色艶のいい元気な絵と、ことごとく小さな読み手の裏をかく楽しいおとぼけのテキストで、最後の最後まで見せ場続き。くりかえす愉快なぼけとつっこみに大笑いしながら、早合点のチョウチョウさんといっしょにひとまわりしたら、・・・初めて明かされる真実に、そうだったのか!と、新鮮な驚き。まいったなあ。きみはきみ、ぼくはぼく。ものごとは、それぞれの立場で、それぞれの視点で見てみないとね。
愉快なやりとりに大笑い、意外な真相に大満足、そして明快な大団円と、読み聞かせが親子ともども楽しい大型絵本。
原書は『MONKEY PUZZLE』 2000 Macmillan Children's Books,A division of Macmillian Publishers Ltd. とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『Monkey Puzzle (ペーパーバック)』 Macmillan Children's Books (2000/8/11)
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『もりでいちばん つよいのは?』 ジュリア・ドナルドソンぶん アクセル・シェフラーえ 久山太一やく 評論社 2001年
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暗い森の中で、つぎつぎに敵に出くわしたネズミ。でも苦し紛れに口をついて出たでまかせの怪物「グラファロ」のおかげで、なんとか難を切り抜けることができました。敵はみんな、ネズミがグラファロとこれから会うと聞いて、尻尾を巻いて逃げてしまったのです。グラファロなんて、ほんとはどこにもいないのですけれどもね。 ・・・ほんとうに?
ネズミくんの機転に舌をまきつつ、ひょうたんからコマのまさかの場面に度肝をぬかれて、気が動転したのも束の間、再びのネズミくんの危機回避のすばらしい機知と、立ち回りの見事さに、たいしたもんだと拍手喝采、とびきりの芝居を観たような、爽快な気分になれる絵本。
さあ、森でいちばんつよいのは、だれだったかな?
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暗い森の奥深く、ネズミが歩いておりますと、キツネ、フクロウ、ヘビがつぎつぎやってきて、いっしょにご馳走食べないかと言葉巧みにさそいました。 「そりゃあふるえがくるほどすてきだな。でも、ぼく・・・グラファロとおひるをたべるやくそくなんだ」 「グラファロ?なんだい、グラファロって?」 「グラファロだよ!きみ、しらないの?」
ネズミはグラファロを語ります。 「おそろしいきば、あしにはかぎつめ、せなかにむらさきいろのとげをはやしているやつさ」 それはネズミの口からでまかせ。けれどキツネたちがすっかりおののき、すたこら逃げ出すのを見送っているうちに、だんだん演技に磨きがかかり、言い回しもなめらかにこなれ、いよいよ真に迫ってきます。
「やれやれ、よかった。グラファロなんてどこにもいないのに・・・」 森でいちばん弱そうなネズミが、とりあえず知恵の力で森でいちばん強くなりました・・・かに見えたけれど、これでめでたし、めでたしかな? 本当に、グラファロなんて、どこにもいないのでしょうか? それなら、これは、なに? !
はらはらどきどき弱肉強食の駆け引きを、奇想天外、荒唐無稽のほら話ではぐらかしつつ、適材適所にまるくおさめた、してやったりの知恵物語。三度のくりかえしを踏みつつ行って帰るという絵本のお手本のような展開も、巧みな対句のような言葉の五七五調のような軽快な語りの訳も、淘汰され磨きぬかれた昔話のように、完成度が高い雰囲気! 一難去ってまた一難、森でいちばん強いのは、結局、一体誰だった?
巧みに練られまとめあげられた痛快な物語ですが、忠実に描きこまれた愉快な絵も魅力的。 大型の絵本であることも、白熱の読み聞かせに一役かってくれそうです。 あまり小さな子だと、もしかすると、後半のひねりのきいた面白さが十分に理解できないところもあるかもしれませんが、ひとたびわかれば喜びは格別、手放しで楽しめる絵本だと思います(大笑いした8歳の3姉妹長女が、妹たちに熱心に解説しておりました。今ではそろって大のお気に入り)。
ともかく文句なく面白い絵本、選ばれた文句も語呂がよくてころころ口の中で転がせます。 どきどきもはらはらもわくわくもびっくりもニンマリもみんなつまった天晴れな絵本、おなかの底から親子で何度でも楽しんでくださいね。
同じ版元・評論社から、こんなジクゾーパズル絵本も出ているのですって。
原書は、『THE GRUFFALO』1999 Macmillan Children's Books,A division of Macmillian Publishers Ltd. 訳文でもふんだんに韻をふみ、対句表現をちりばめた楽しい文章になっています。きっと、いわんや原文をや、なのでしょうね! アマゾン洋書ではこちらなど。↓
『Gruffalo (ペーパーバック)』 Macmillan Children's Books (1999/8/27)
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『The Gruffalo (BOOK & CD) (ペーパーバック)』 Macmillan Audio Books (2004/9/3)
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CDつき絵本も。
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『The Gruffalo Jigsaw Book (JIGSAW BOOK) (ボードブック)』 Macmillan Children's Books (2004/3/5)
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ジグソーパズル絵本の原書。
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そしてなんと、嬉しい続編が出ているのですって! こんどはグラファロの子どもが登場。ん〜、読みたい!
『The Gruffalo's Child (ペーパーバック)』 Macmillan Children's Books (2005/9/2)
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『The Gruffalo's Child (BOOK & CD) (CD)』 Macmillan Audio Books (2005/11/18)
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CDつき絵本。
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『ぼうしのすきな こぶた』 マーティン・オーボーン文 アクセル・シェフラー絵 ふじさきなおこ訳 あすなろ書房 1996年 品切れ
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ぼうしの大すきなこぶたがおりました。お洒落なめずらしい帽子をかぶって散歩に行くたび、つい「どうだい」と自慢して、動物たちにまんまと取り上げられてしまいます。 「返してほしければ、おまえがどんなこぶたか見せてごらん」 そこでこぶたは、言われたとおり頑張って、見事に帽子を取り戻したのでした。そして、いままでのこぶたに足りなかったものをも。
昔話のような三度の繰り返しのお話と、明るく元気な絵が楽しい、ぼうしに思慕するこぶたのぼうしの辛抱物語。じゃなかった、こぶたの成長物語。
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あるところにぼうしの大すきなこぶたがいました。
で、はじまる、この愉快な物語、あるところの「ぼうし絵本」大すきなこぶたハハには見逃せるはずがありません(笑)。 ところがぼうし好きのこぶたの本物のおかあさんにとっては、たくさんのぼうしであそんでばかりのこぶたは、見かけばかり気にして・・・と、心配の種だったりするのです。 そうですよね。見かけばかりにかまけていては、大切な中身が欠けてしまいがちですものね。
そこで、こぶたの絵本は語ります。奇しくも、ぼうしでおしゃれしててくてく散歩に出かけたこぶたが、期せずして出くわした動物たちとのやりとりの中で、見かけだけでなく、中身もだんだんみがいてゆくお話を。
背の高いぐらぐらゆれるえんとつぼうしをかぶったこぶたが、散歩の途中で出会ったのはキリン。 「どうだい、このえんとつぼうし。のっぽのきみにもくまけないぜ!」 得意げなこぶたくんのぼうしを、キリンはひょいととりあげて、自分の頭の上にのせてしまいます。 「もしおまえさんが、ちょっとやそっとじゃくじけないこぶたなら、ここまでのぼって、とりにきたまえ」 なんてしゃあしゃあと言われて、さてこぶたくんはどうしたでしょう?
次の日、ギザギザでゴワゴワのしっぽちょんぎりぼうしをかぶったこぶたが、散歩の途中であったのははらぺこワニ。 「どうだい、このしっぽちょんぎりぼうし。おっかないきみにもまけないぜ!」 自慢げなこぶたくんのぼうしを、ワニはぐわっと口をあけると、あっというまにのみこんでしまいました。 「もしおまえが、ゆうきのあるこぶたなら、おれのはらぺこのぺこぺこのあごをこじあけて、ぼうしをとってみな」 ・・・
言葉遊びのように楽しいテキストの、昔話のようにリズミカルな三度の繰り返しの中で、ひとつひとつこぶたは大切なことを学びとっていきます。 意気揚々と歩くこぶたは、もう、見かけだおしの今までのこぶたではないのです。 ところが、三度の試練を乗り越えた次の日、外は冷たい雨模様。いままでとは一味も二味も違う立派なこぶたくんが出会ってしまったのは、小さくて愛らしくて遠慮がちの四度目だったのでした。いままでにない試練と未練に、動揺するこぶたくんでしたが・・・。
明るくてにぎやかで楽しいイラストに、とんとん拍子の楽しいテキスト。いちばんおしまいの愉快な帽子のイラストが、物語をお茶目に凝縮しています。おかあさんもきっと、ちゃんとわかってくれたのですね! 見返しのぼうし、ぼうし、ぼうしも圧巻。 やったね、こぶた!
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