■ジョン・バーニンガムさんの絵本
ジョン・バーニンガム・・・1937年生まれのイギリスの作家で、1964年デビュー作の『ボルカ』(ほるぷ出版)オンライン書店ビーケーワン:ボルカと、1970年『ガンピーさんのふなあそび』(ほるぷ出版)オンライン書店ビーケーワン:ガンピーさんのふなあそびで、ケイト・グリーナウェイ賞を2度受賞。個性的で魅力的な作品を、現在も発表し続けている人気作家です。

『アルド・わたしだけのひみつのともだち』*『なみにきをつけて、シャーリー』*『もうおふろからあがったら、シャーリー』

 
『アルド・わたしだけのひみつのともだち』ほるぷ出版

アルド・わたしだけのひみつのともだち

アルド・
わたしだけの
ひみつのともだち

ジョン・バーニンガムさく
たにかわしゅんたろうやく
ほるぷ出版

アルドという、他の人には見えない、一風変わった秘密の友だちと、女の子との、大切な心の交流を描いた、異色の作品。
あぶり出しのように、子どもの頃の遠い記憶の闇の中に何かが浮かび上がり、長く心に残ります。
このテーマを、こんな風に絵本にできるのは、ジョン・バーニンガムさんならではですよね。

アルド』の原書は『ALDO』(Jonathan CapeLtd, London 1991)と、あります。アマゾン洋書はこちら。背景が異なるのですね。なんだかさわやか。↓


『Aldo(Red Fox Picture Books)』
Red Fox


て、『アルド』ですが、これは絵本にしては、すこし異色の作品です。

わたしはひとりきりで、すきなようにすごすことがおおい。
もちろんテレビも見るし、おもちゃもほんもある。ママと公園にも行く。
それはわるくない。
でも、わたしには秘密の友達がいる。
その名はアルド。
わたし以外の人には見えない。わたしが困ると助けてくれる。私が泣くとなぐさめてくれる。淋しいときにはそばにいてくれる・・・。

幼くして孤独をはっきりと知る女の子が、淡々と自分の内なる孤独との交流を語る、静かで忘れがたい絵本です。

落書きのようにほのぼのとした不思議な味わいのイラストはわかりやすく、のびのびとした不思議な空間で、アルドと無邪気に遊ぶ楽しげな場面も多く、テキストも大きな文字で短いのですが、・・・底抜けに明るい作品ではなく、きっぱりとわかりやすい絵本ではありません。
幼い子供たちが大きくなるにつれて知っていく、さまざまなこの世界の理不尽さや不可解さについても、子どもらしい素直さの残るやさしいまなざしでさらさらと描かれています。

わたしは秘密の友だちアルドの存在を信じていて、頼っていて、探していて、求めています。
けれどいっぽうで、アルドが自分にしか見えず、信じられていないことも知っています。
だからわたしがアルドを呼ぶときは、つらいとき苦しいとき悲しいとき淋しいとき、わたしだけのひとりの時間で (あるいは周囲の時間から切り離してひとりきりになるために)、
わたしだけのひとりの場所で (あるいは周囲の状況から切り離してひとりきりを確保するために)、
そしてわたしだけのひとりのためです (こんな素敵なアルドが、他の人のところにも行って、何か助けになるといいな・・・とも思うのですが、他の人がアルドを信じないことを知っています)。
楽しいとき嬉しいとき幸せなとき夢中なとき、わたしはアルドをすっかりわすれていることもあります。でもそれはアルドが自分からいなくなったということではなくて、思い出せば、必要なときアルドはそばにきてくれます。

そして、わたしはたぶん、アルドがいつの日か、自分からいなくなることも淡々と予知しています。
・・・切ない絵本。


「アルド」は、どの子どもの心の中にも、きっとひそかに住んでいます。
くらやみをしっかりついてきてくれたり、しかられたときやいじめられたときにそっとなぐさめてくれたり、その子によって登場の仕方も頻度もそれぞれさまざまだと思うのですが、意識するにせよしないにせよ、その子だけの大切な友だちであり、守るべき砦であり、ひそかな駆け込み寺なのだと思います。
あるいは、つらい悲しみや苦しみに、自分が分裂してしまわないための自分の分身・・・。あるいは、つらい悲しみや苦しみをすいとってくれる真綿のような、楽しい喜びや幸せならわかちあって倍にふくらむクッションのような、そんなぬくもりある自分の分身ではないかと、思うのです。

この本を本当に必要とするのは、もしかしたら主人公の女の子のように、学校などの集団生活に入ってからのことかもしれませんし、もっと大人になりはじめてからかも、しれません。そのときに、ふと、この絵本の思い出のはじっこを、心の底に眠る小石のように見つけることが出来たなら、幼い昔にこの絵本を読み聞かせした価値が輝くことでしょう。
もしン年前の(笑)10代半ばにこの絵本に出会えていたら、心のバイブルになっていたかもしれません。
ちなみに、他人には見えないひみつのともだちを描いた絵本には、『ひみつのともだちモルガン、『ことりはどこ?(童話屋)などがあります。


ジョン・バーニンガムさんの作品、『なみにきをつけて、シャーリー』(ほるぷ出版)オンライン書店ビーケーワン:なみにきをつけて、シャーリー、 『もうおふろからあがったら、シャーリー』(童話館出版 品切れ)とともに、大人になった今初めて読んでも、忘れがたい絵本です。

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なみにきをつけて、シャーリー
ジョン・バーニンガム さく
へんみまさなお やく
ほるぷ出版

シャーリーが一家で海辺に行くお話。左のページでは、シャーリーの両親が椅子にねそべってのんびりしています。
右のページは、シャーリーだけののびのび夢舞台。シャーリーは、大きく海へ繰り出し、自在に冒険を楽しむのです・・・ここでなら、縛られた現実の枠をすこしだけはみ出しも、だあれも邪魔をしませんから。
この絵本を読み聞かせするとき、シャーリーと、おかあさんの、どちらの気持によりそえますか?
おきざりにされた子どもの気持を、コミカルにからりとシニカルにどきりと描いた、少し異色の忘れがたい絵本。

 

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もうおふろからあがったら、シャーリー
ジョン・バーニンガム 作
あきのしょういちろう やく
童話館出版
1974年 品切れ

シャーリーが一人でお風呂に入るお話。
左のページでは、おふろまわりを掃除したりシャーリーのぬぎちらした服を片付けたりしながら、あれこれシャーリーにお小言を言っているおかあさんが、白い背景にあっさりと描かれています。
右のページでは、それを聞きながらこっそりおふろの配水管からぬけだし、想像の世界の大冒険へと出かけるシャーリーが、のびのびと一枚の風景画のように描かれています。
ねえ、シャーリー、きいてるの?

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