■ジェラール・フランカンさんの絵本 |
Gerard Franquin 1951年フランス生まれ。絵本作家。広告のポスターなどを手がけていたが、学んでいたパリの美術学校でカストール文庫創立者ポール・フォーシェ氏の息子フランソア・フォーシェに出会い、カストール文庫などで活躍。邦訳作品に『つきにでかけたおんなのこ』(フレーベル館)など。 |
『つきにでかけたおんなのこ』*『はっけん・はっけんだいはっけん!』*『ミシュカ』 |
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『つきに でかけた おんなのこ』 ジェラール・フランカンさく ほりえとしゆきやく フレーベル館 1999年
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「またおつきさまにでかけているな、ぼんやりして!」 と、家族に言われ続けたおんなのこは、あるひとうとう、おつきさまにひょいと出かけてしまいました。 そこはとってもすばらしいところで、ちっとも退屈しないで毎日楽しく過ごしたのですが・・・。
ふんわり夢と憧れがふくらむ穏やかで甘いイラストと、ちょっぴりのナンセンスとユーモアが楽しい絵本。 ぼんやりさんの個性を、お月さまとみんなが見守っているよ。
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おんなのこはいつもぼんやりさん。 そうしているととってもきぶんがよかったのです。
でも、家族にはしょっちゅう言われます。 「またおつきさまにでかけているな。ぼんやりして!」
ききあきたおんなのこは、あるばんはらをたててこういってやりました。 「もうたくさん!そんなにいうんなら、ほんとうにおつきさまへいってしまうから」
残していくパパとママの気持ちを思うと、おんなのこはずいぶんまよいましたが、行きたい気持ちを抑えきることはできず、とうとう満月の夜に・・・。
濃縮したクリームのようなとろりとした色と筆づかいで、ぼんやりしたおんなのこの不思議なメルヘンを、ユーモラスにちょっぴりナンセンスにほのぼのと描いた愛らしい絵本。穏やかな優しさと、静けさにつつまれたブルーグレイが印象的。 パパ、ママ、ねえさん、おとうとはごく普通の服装なのですが、おんなのこは白い洋服と、白いねこ耳(?)つきぼうし姿。ぼうしからねこのひげみたいに飛び出している元気のいいみつあみには、鮮やかな赤いリボン。白一色の上下にぼうし姿は、まるで一風変わったつなぎのような、宇宙服のような雰囲気。白い上着のフードが、まるで酸素ボンベを背負っているみたいにも見えたりします。
それに、おんなのこがいともあっさり月へ引っ越してしまう場面も、ちょっぴりナンセンスが見え隠れして愉快。 穏やかな顔のお月さまに見守られ、夢とユーモアがすくすくと育まれてゆきそうです。 おんなのこが月でのびのびと体験するいろいろな出来事も、ふんわりと夢と憧れが広がります。 つきがほんとうにこんなところだったら!
絵本の中で、想像力を自由に働かせ、日ごろできないと思っていることをなんなくやってのけて、心を開け放つ爽快感! つきの世界のすばらしさと、充実したひとときをたっぷり味わったあとに、おんなのこは見るのです。残してきた家族の姿を・・・。
ぼんやりと夢見がちだけれど、きだてのよい女の子の、素直で愛らしい冒険物語。月での自分と、家族の中での自分、自分をとりまく絆を再発見する心の旅の絵本、ともいえるかな? 結末は、きっと、これがいちばんだね!
原書は『La petite fille dans la lune』1998 Edition MILAN,Toulouse.France.とあります。
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『はっけん・はっけんだいはっけん!』偕成社 品切れ
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『はっけん・はっけん 大はっけん!』 アンヌ-マリ・シャープトンさく ジェラール・フランカンえ すえまつひみこやく 偕成社 1998年 品切れ
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はじめて外の世界を探検に出た、小さなこねこのユーの大きな大きな発見のお話。見るもの聞くものかぐものさわるものみんなみんな初めてで、冷たい思いも温かい思いもいろいろしたけれど、いちばんの大発見はさてなんだったでしょう?
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ある日こねこのユーは、おにわから外へでてみることにしました。 外のせかいはどんなかな?
ところが、歩き出したとたんに、水溜りにポチャーン! 「ヒャー!つめたいよー。そうか、せかいってビショビショにぬれてるんだ。」 ひとつ、新しい世界を発見しました。
さらにどんどん歩くごとに、太陽の暖かさ、木の実の美味しさ、花のにおいたちに、つぎつぎと目を見開き、心躍らせるユーでしたが、トゲトゲの山みたいなへんなものにぶつかってしまって・・・!
とびきりうれしいものを大発見した、こねこのユーとハリネズミのラーのほほえましい物語。 何にも知らないまっさらのユーの、ビショビショもホカホカもフワフワもちトゲトゲも、とにかく何でも全身で受け止め、学びとりながら前進する、小さな大冒険に、元気と勇気と明るい希望が満ちてくる絵本。
青紫色をさしいろにした、鮮やかな色彩の日差しにとけこむようなみすみずしいイラストをよく見ると、あちこちにお茶目な指紋がぺたぺた。実にさりげなく色彩の一部を成していて、独特の楽しいアクセントになっています。
原書は、 『EUSTACHE ET RAOUL』1992 Pere Castor Flammarion とあります。
テキストの作者のアンヌ-マリ・シャープトンさんは、『こびとの村のクリスマス』(文化出版局、品切れ、挿絵ゲルダ・ミューラー▼)などの「こびとの村」シリーズのテキストの作者でもあるそうです。
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『ミシュカ』 マリイ・コルモン作 ジェラール・フランカン絵 末松 氷海子訳 セーラー出版 1993年
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いばりやの女の子から逃げ出した、ビロードのぬいぐるみのくまのこミシュカは、森の中で自由を満喫、もうぜったい誰かのおもちゃのくまにはならないぞと誓います。 そんなとき、たまたま、 「クリスマスには、なにかひとついいことをしなくちゃいけないんだって。」 という、ガンたちのおしゃべりを耳にしてしまったミシュカは、トナカイの手伝いで子どもたちにプレゼントを配りながら、ずうっと考えに考えて・・・。
小さなミシュカの選んだ、少し切なくて尊いクリスマス物語。本当の贈り物をご一緒に。
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ビロードでできたこぐまのミシュカは雪のなかを、ザックザックとあるいていました。 けさ、いばりやでおこりんぼうの女の子、エリザベットの家から出てきたのです。 「もうぜったいおもちゃのくまなんかにならないぞ!」
森の中の散歩はゆかい。誰かの落し物のはちみつのびんだって、ほら、ふたがあかないから怒って転がしたら、真っ二つに割れて、ごちそうをおなかいっぱいたべることができました。 食べたら眠くなって、木の枝で夕方まで寝ていたら、二羽のガンの話し声が聞こえてきました。
「クワッ、クワッ!今夜はクリスマスだね!」 「クワッ、クワッ!そうね。今夜は、みんな、なにかひとついいことをしなくちゃいけないのよね。・・・」
(ぼく、ちっとも知らなかった・・・。) ミシュカが考えながらまた歩いていくと、とつぜんトナカイの鈴の音が聞こえてきました。クリスマスのプレゼントを配っているのです。 「ねえ、ぼくのてつだいをしてくれない?」 ・・・
愛らしいぬいぐるみのミシュカの、とびきりすばらしいクリスマスを自分で見つけ出す物語。 幼い子どものように純真で、まだいろいろなことを知らないあどけないミシュカが、おこりんぼうの女の子から逃げ出して、初めてつかみとった森の中のひろびろとした自由は、これから友達もできて、面白いこともいろいろありそうな、きらきらと希望に輝く自由でした。 そのミシュカが、なにかひとついいことをするクリスマスの話を耳にして、自分にできることは何か、いっしょうけんめい考えます。 自分に与えられたものと自分が与えるもの、自分でつかみとったものと、自分で捧げるもの、自分の使命、自分にできること。 希望に満ちた自由とひきかえに、自分が誰かの希望になるという、小さなミシュカの決意は、切ないほど、きらきら輝いて、ちょこんとおさまった最後のページのミシュカの横顔を明るくまぶしく照らすのでした。 これからつづくであろう、ビロードのくまのこミシュカの新しい物語は、きっと楽しい夢をいっぱいもたらすに違いありませんよね。 幸せにね、ミシュカ!
この絵本は、 「フランス児童文学の歩みの上でどうしても忘れることのできないペール・カストール文庫の中の一冊だ。今から60年以上前、ポール・フォーシェという人が当時さかんになった新しい教育運動に共鳴し、子どもの自発性や感受性を大切に育む手段として創造的な子どもの本を作りだした。これが現代までつづいているカストール・シリーズである。」 と、あります。 (『ミシュカ』セーラー出版 訳者 末松氷海子 あとがき より) もともとこの絵本は、カストール・シリーズに30冊以上の絵本を残すロシア人のフェオドール・ロジャンコフスキーさんが1941年に描いたものだったそうですが、後に、ハードカバー版の再版にあたって、ジェラール・フランカンさんの絵となりました。 「なぜ昔どおりにロジャンの絵を使わず、「ロジャンの絵をもとに」したいわば複写のような形にしかならなかったのか、理由はわからない」 と、同あとがきにあります。 ただ、ジェラール・フランカンさんも、カストール学校の優等生で、現代のカストール絵本の担い手だそうです。
表紙を見る限りでは、よく似た感じのこの2冊の絵本、ぜひ、ロジャンコフスキーさんの版も見てみたいなと思います。
原書は『MICHKA』Pere Castor Flammarion、テキストのコピーライトは1941年、イラストのコピーライトは1991年、とあります。 アマゾン洋書では、スペイン語のこちらなど。↓
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『Michka (Coleccion Rascacielos)』 (Everest De Ediciones Y Distribucion 1993 スペイン語 ハードカバー
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ロジャンコフスキーさんの表紙の洋書も、発見しました。↓
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『Michka (ペーパーバック)』 Distribooks Inc フランス語
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なお、『ミシュカ』のテキストの作者、マリィ・コルモンさんと、フェオドール・ロジャンコフスキーさんのカストール絵本には、『みんなだいすきりんらんろん』(童話屋)があります。マリィ・コルモンさんのその他のカストール絵本の邦訳絵本には、『マルゲラットとおおかみ』▼(パロル舎)があります。
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ジェラール・フランカンさんの絵本 「さ」の絵本箱へ
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