■シシリー・メアリー・バーカーさんの絵本 |
1895-1973。ロンドン南部の都市クロイドンに生まれる。身体が弱く、幼年時代を家庭で教育を受けて過ごす。15歳のとき、父親の売りこんだ絵が絵葉書になる。1912年父親の死後、家計を助けるため、自ら作品を売りこむ。1923年、自作の詩に、細密な植物画と妖精の絵を添えた詩集『花の妖精たち:春』が出版され、大変な人気を呼ぶ。敬虔なクリスチャンで、清廉な心の持ち主であった。 *参照;『白鳥とくらした子』(徳間書店)著者紹介欄、『花の妖精たち』(フェリシモ出版)著者紹介欄 より
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『白鳥とくらした子』*洋書たち* |
≫別頁;こちらの絵本も・・・*イーダ・ボハッタさんの絵本*エルサ・ベスコフさんの絵本*ジュビレ・フォン・オルファースさんの絵本*
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『白鳥とくらした子』
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シシリー・メアリー・バーカー作・絵 八木田宣子訳 徳間書店
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やさしいおとうさんが遠い長い航海に出かけたあと、世話人に辛い思いをさせられるスーザン。おとうさんが助けた白鳥を話し相手に、少ないパンをわけあい、ぼろぼろの服をつくろって、なんとか耐えしのんでいましたが、突然引っ越すことになり、白鳥とも、おとうさんが帰ってくるはずの家とも、遠く離れてしまいます。
悲しみに沈むスーザンでしたが、ある日窓から、一羽の白鳥が飛んでいくのを目にして、追いかけていくことを決意します。
シシリー・メアリー・バーカーさんの残した、繊細で優雅な挿絵の、清らかで愛らしい物語。
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「1938年の初版以来、世代を超えて読みつがれている作品です。」 と、書籍の帯にあります。 美しく華やかな『花の妖精たち』シリーズで著名なシシリー・メアリー・バーカーさんが、自ら描いた清らかな物語に、奥ゆかしいイラストを添えた、宝物のような作品。
やさしいお父さんが遠い長い航海に出てから、世話人ディナージ夫人は、手のひらをかえしたように、小さなスーザンをひどいめにあわせました。心がねじまがっていたのです。
スーザンの話し相手は、ラッシー川の白鳥たち。ひなのときにお父さんが助けた白鳥はいまや立派に成長し、スーザンの話をまるで理解するようにじっときいて、心のなぐさめになってくれるのでした。 スーザンはわずかなパンをわけあって、ぼろぼろの洋服をつくろいながら、父の家に帰ってくるその日を夢見て、ラッシー村でのつらい日々をけなげに耐えていたのです。
ところが、スーザンのために父の残したお金をくすねつづけて、隠せなくなってきたディナージ夫人は、ある日突然、「ラッシー村から出て行く」と言い出しました。 これでは父がラッシー村の家に帰ってきても、もう会うこともかなわないでしょう。嘆くスーザンの屋根裏部屋の窓を、あの白鳥がゆっくりと何かを探すように通り過ぎていって・・・。
「あれはまちがいなくあたしの白鳥だったわ。もし、白鳥が見つけてくれないんだったら、あたしが白鳥を見つけなきゃ。」
強い決意を秘めたスーザンは、そうっと夜の町に忍び出ます・・・。
美しい昔話を思わせるような、物語の前半のクライマックスです。素直で純粋な心で、辛い日々を耐え忍ぶだけでなく、自ら行動を起こし、物語をつかみとる、きりりとした主人公、スーザンが好き。 一枚しかない洋服はぼろぼろでも、心の美しさを見えないヴェールのようにまとったスーザンは、どんなおひめさまにも負けないくらい、清らかで、凛としています。 小さなスーザンが、やっと見つけた白鳥の背に乗り、美しく力強い翼に身を任せ、遠いラッシー村まで飛んでいく場面は、想像力とあこがれをかきたてられる珠玉の場面。
そして、物語は後半へ。ラッシー村のラッシー川で、白鳥たちに大切に守られながら健やかで幸せな日々をおくり、時には元気に泳ぎ、おてんばもしたり、見違えるように元気に大きくなって、父の帰る日を待ちますが・・・。
たったひとつたりないものがありました。 それは、いつか父が帰るその日のための、洋服。今までの服はぼろぼろの上に、小さくなって、もはや服とはよべないほど。 そのみじめな洋服のすそを広げる水辺のイラストが、なのに妖精のようにはなやいで美しいのは、スーザンの心の清らかさが光を放っているからでしょうか。
セピア調の落ち着いた色彩で、しっとりと繊細に描かれた自然と白鳥と女の子の美しさ。 白鳥の王は、冠も擬人化も何もないのに、白鳥の王たる威厳をはなち、動物としての白鳥の完璧な美しさを保ちながら、人間と口のきけるファンタジー要素を兼ね備えています。
物語の後半が、昔話的要素を少し離れ、現代的なものを感じるのは、とても細やかに描かれている、小さなスーザンの川での日々や成長ぶり、そしてスーザンの洋服を手に入れるためのいろいろなエピソードから感じるものかもしれません。 白鳥たちと過ごしたラッシー川の日々には、どこか小さな探検家や冒険家になったようにわくわくした気持ちで、いっしょに楽しめるときめきがあります。自然と一体化して、健やかに眠り、健やかに目覚め、日々をきちんと整えていく、生活の喜びを感じます。 幸せな物語の結末は、読む時々によって、夢のような美しさを感じたり、一抹の切なさを感じたり・・・物語が閉じられた穏やかな満足感とともに、きっと、さまざまな思いをはせることができると思います。
シシリー・メアリー・バーカーさんその人を思わせるような小さなスーザンの、純粋で愛らしい物語を、その美しい絵に導かれ、じっくりと読み、思いにひたることができるのはとても幸せ!
少し前にフェリシモさんから復刊されていた『花の妖精たち』の邦訳が、どうやら企画中止になってしまったいま、入手可能なシシリー・メアリー・バーカーさんの邦訳は、この一冊になってしまいました。 さらなる邦訳を望みます!
原題は『THE LOAD OF THE RUSHIE RIVER』とあります。 アマゾン洋書ではこちら↓など。他にもさまざまな版元から、繰り返し出版されているようです。
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『Lord of the Rushie River (Flower Fairies Series)』 Penguin Books Ltd 、1989、56p
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アマゾン洋書でいろいろ検索してみると、邦訳の表紙と同じイラストの本に、『Fairy Stories and Rhymes (Flower Fairies S.)』Frederick Warne がありました。↓
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『Fairy Stories and Rhymes (Flower Fairies S.)』 Frederick Warne、2000、128p
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美しい花と妖精たちのイラストを眺めているだけでも、心が和み、ゆっくりと洗われてゆくような絵本たち。 アマゾン洋書で検索しただけでも、数え切れないくらいたくさんの種類の絵本や関連書籍、ポストカード、アクティビテイーブック(ぬりえ、きりえ、きせかえ人形などなど)などがあり、その変わらぬ人気の高さがうかがえます。
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『A Deluxe Book of Flower Fairies』 Frederick Warne & Co
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クラシックな花の妖精を集めた美しく豪華なコレクション愛蔵版。272p。
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『Flower Fairies: The Little Collection』 Frederick Warne & Co |
「The Little Collection」とあるように、手のひらサイズ(約7*8.2cm)のちいさなちいさな4冊セットの箱入り絵本です。
『花の妖精たち』シリーズが、緑、紫、黄、桃の4色をテーマに一冊にまとめられ、可愛い小箱におさめられているベスト版。 本棚の宝石箱のような、花と妖精のいっぱいの愛らしい絵本。
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『Flower Fairies: The Little Green Book (Flower Fairies Collection)』 Frederick Warne & Co
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『Flower Fairies the Little Lilac Book (Flower Fairies: the Little Books)』 Frederick Warne & Co
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『Flower Fairies the Little Yellow Book (Flower Fairies)』 Frederick Warne & Co
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『Flower Fairies: The Little Pink Book (Flower Fairies Collection)』 Frederick Warne & Co
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『Flower Fairies Collection』「春・夏・秋・冬・木・庭・道ばた・アルファベット」
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『The Flower Fairies Complete Collection (FLOWER FAIRIES)』 Frederick Warne & Co
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特製ボックスに、下記の8冊がおさめられた愛蔵版。大切な人への贈り物にも・・・
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『Flower Fairies of the Spring (Flower Fairies Collection)』Frederick Warne & Co |
「春」
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『Flower-Fairies of the Summer (Flower Fairies Collection)』Frederick Warne & Co |
「夏」
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『Flower Fairies of the Autumn(Flower Fairies Collection)』 Frederick Warne & Co |
「秋」
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『Flower Fairies of the Winter: Poems and Pictures (Flower Fairies Collection) 』Frederick Warne & Co |
「冬」 シシリー・メアリー・バーカーの亡くなった12年後の1985年に、初めてまとめられたものだそうです。
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『Flower-Fairies of the Trees (Serendipity Books)』 Frederick Warne & Co |
「木」
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『Flower-Fairies of the Garden (Serendipity Books)』 Frederick Warne & Co |
「庭」
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『Flower Fairies of the Wayside (Serendipity Books)』 Frederick Warne & Co |
「道ばた」
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『A Flower Fairy Alphabet (Serendipity Books)』 Frederick Warne & Co |
「アルファベット」
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『Flower Fairies: Postcard Book (Flower Fairies S.)』 Frederick Warne & Co
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フラワーフェアリーのポストカードブック。 30p。 少し大きめの定形外サイズ。
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シシリー・メアリー・バーカーさんの絵本 「さ」の絵本箱へ
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