■「3びきのくま」特集
女の子がくまの家に不法侵入し無銭飲食のあげく逃亡・行方不明になるという(笑)、よく考えればすえおそろしい(?)、あの楽しい物語。
イギリス民話(ジョゼフ・ジェイコプズ)、トルストイ再話のものなどが有名。
バスネツォフ絵*レーベデフ絵*ポール・ガルドン絵*レズリー・ブルック絵
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バスネツォフ絵 『3びきのくま』福音館書店

3びきのくま

『3びきのくま』
トルストイぶん
バスネツォフえ
おがさわら とよきやく
福音館書店

おんなのこがもりへあそびにいって、まいごになりました。
ふときがつくとちいさないえがありました。
とがあいています。
のぞいてみるとだれもいませんので、なかへはいりました。

そのいえは、おとうさんぐまのミハイル・イワノビッチ、おかあさんぐまのナスターシャ・ペトローブナ、ちいさなくまのこのミシュートカの、3びきのくまのいえだったのです。
・・・

けむくじゃらのくまに授けられた、ちゃんとした名前の響きや、ちゃんとくりかえすテキストの響き、そしてちゃんとしつらえたくまのいえの調度品の重厚な美しさに、目も耳も飽きることなく魅了される絵本。

バスネツォフさんの作品です。

濃厚な色彩で、真正面から丁寧に描かれているのですが、くまの家族がきちんと盛装し、かしこまっていればいるほど、小さな侵入者にひっかきまわされるさまが、あらあらまあまあとおかしい感じです。
勝手に入って勝手に食べて勝手に眠る女の子のちゃっかり度にもドギモをぬかれますが、満腹で喜んでいすをゆする女の子の手に持ったかごから、ばらばらばらと木の実やきのこがこぼれおちて床にちらばるさまや、そのあといすがこわれる不幸に見舞われるさまは、なんだかあららというかお気の毒というか憎めない愛嬌があります。

もし、女の子が支配される側の民衆で、盛装したくまが支配する側だと仮定すると、女の子の勝手気まま度はそのまま民衆のウップン晴らし度にかさなりそうな気もするのですが(うがちすぎ??)、最後は見つかって、命からがら逃げ出すことになっているのですよね・・・しかし結局つかまらず、いずこへと逃げのびた、とも読めます。

つづいて、偕成社のレーベデフさんの作品。

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レーベデフ絵 『三びきのくま』偕成社 品切れ

三びきのくま

『三びきのくま』
レフ=トルストイさく
ウラジミル=レーベデフ絵
うちだ りさこやく
偕成社
品切れ
1989年

おんなのこが、森へあそびにいって、まいごになりました。
あるきまわるうちに、一けんのいえのまえにでました。

みるとドアがあいています。
なかをのぞくと、だれもいません。
おんなのこは、いえのなかへはいりました。

そのいえには、おとうさんぐまのミハイル=イワーノビッチ、おかあさんのナスターシャ=ペトロブナ、ちいさなあかちゃんぐまのミシュトカぼうやがすんでいました。
・・・

大中小と、並んで怒るけむくじゃらのくまの絵が楽しい絵本。くまらしく何もまとっていないくまたちの家は、調度品もワイルド。

後期のレーベデフさんの作品と思われます。こわいくらいリアルですが、ともすればぬいぐるみのくまばかり見慣れた目にはとても新鮮です。
ヴァスネツォフさんとは異なる画風ですが、濃厚な色彩が美しく、どこか水墨画を思わせるようなタッチがみずみずしい感じです。
くまたちはくまらしく服も着ずのっそりと毛むくじゃらで牙も爪もあらわなのですが、サーカス的な二本足歩行のせいか、どこか、憎めない愛らしさも持ち合わせているように思います。
何より愛らしいのは女の子、地味な色のお洋服にもかかわらず、つんとした横顔に小花のプラトークがよくお似合いです。

 
ポール・ガルドン絵 『3びきのくま』ほるぷ出版

『3びきのくま』
ポール・ガルドン作
ただひろみ訳
ほるぷ出版

むかし、3びきのくまがもりのなかのいえでないよくくらしていました。
1ぴきはちいさなこぐま。
1ぴきはちゅうくらいのくま。
1ぴきはでっかいおおぐま。
・・・

3びきがさんぽにいっているあいだに・・・
キャンディ というおんなのこがくまのいえにやってきました。
キャンディはまどから、そしてかぎあなから中をのぞきました。
なかにはだれもいません。
キャンディは、ドアのとってをまわしました。
・・・

この3びきのくまに名前はなく、逆におんなのこにキャンディという名がつけられています。なんとも現代的な響きの名前に、その容姿がこれまた絶妙!金髪の豪華な縦巻きロールに大きなおリボン、よそいき風の青いワンピースに、そこだけどこか奇抜なしましまピンクのタイツ・・・良家のお嬢様風をよそおいながら、なかなかのぬけめないふるまいに、読みながらそわそわどきどきはらはら。家に帰ってきたくまたちのひとつひとつの驚きを重ねて、物語はクライマックスへ!

けむくじゃらで裸のくまたちに、素朴な丸太の家具たち。パッチワークのおふとんがおしゃれで、くまたちの暮らしの余裕や茶目っ気を感じたり。
この勝負、くまの勝ち?

アマゾン洋書で原書を検索すると、こちらなど。↓

THE THREE BEARS
Houghton Mifflin (Juv)

3姉妹に大ウケだったのがこれ。なんで画像が無いのでしょう?
初めて読み聞かせしたとき、「コレ、子どもの時に読んだ!」と、懐かしい記憶がよみがえり、個人的にも格別の思い入れのある一冊。ほるぷ出版、1978年初版だそうで、ずーっと愛されてロングセラー。

このポール・ガルドン版『3びきのくま』が、これまでのなかでもっとも、不法侵入無銭飲食不法占拠と、女の子の堂々たる無作法をそれとなくたしなめている絵本だと思います。
ポール・ガルドンさんの描く金髪の女の子「キャンディ」は、一度見たら忘れられないくらい鬼気迫る迫力です。とりわけ登場のアップの場面の生意気度、こまっしゃくれ度は衝撃的。
くまらしく裸でけむくじゃらのくまたちですが、表情がとても豊かで、ユーモアもたっぷりまとっています。

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 レズリー・ブルック絵 「三びきのくま」;『金のがちょうのほん』の中から

オンライン書店ビーケーワン:金のがちょうのほん

 『金のがちょう
のほん
四つのむかしばなし』

レズリー・ブルック文・画
瀬田 貞二訳
松瀬 七織訳
福音館書店

むかしむかし、三びきのくまが、森の中に一けんの家をたてて、いっしょにくらしていました。
一ぴきは、かわいいちっちゃいくまで、一ぴきは、ちゅうくらいのくまで、もう一ぴきは、すごくおっきいくまでした。
・・・

三びきが森へさんぽにでかけている間に、きんきらこという女の子が、この家にやってきました。
きんきらこ、まず、まどをのぞいてみて、それから、だれもいないものですから、そっと、戸をあけてみました。
・・・

三びきのくまと女の子に、特に名前はありません。くまたちはけむくじゃらですが、実に優雅できちんとした暮らしぶり。テキストは女の子をそれとなくたしなめている感じもします。

この中にも「三びきのくま」がおさめられています。
こちらはとってもクラシカルで荘厳な雰囲気。イラストも、描かれているくまの家の調度品も、豊かな階層のお屋敷を思わせます。とはいえ、なおかつ、くまがくままのままの裸のけむくじゃらの姿で、フライパンを持っていたりシャベルを手にしていたり、メガネをかけたりと、ひとつひとつ人間くさく行動しているので、その新鮮なちぐはぐさがくすくす可笑しいったら。表情も豊かで、笑えます。
由緒正しき美しき古典の世界をたっぷりと。

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