■ルース・ガネットさんの本
Ruth Chrisman Gannett 1896-1979 邦訳作品には、『エルマーとりゅう』(福音館書店)シリーズ、『ミス・ヒッコリーともりのなかまたち』(福音館書店)などがある。
『わたしのおかあさんは世界一びじん』

 

『わたしのおかあさんは世界一びじん』大日本図書

『わたしのおかあさんは
世界一びじん』
ベッキー・ライアーさく
ルース・ガネットえ
光吉郁子やく
大日本図書
1985年

夏の最後の小麦の刈り入れで村中大忙し、明日はおまつりという暑い暑い日。
小さなワーリャは、迷子になってしまいました。麦畑での昼寝からさめたら、お母さんがいません!

心配してあつまってきた村人たちに、しゃくりあげるワーリャが、やっと答えられたのは、

「わたしのおかあさんは世界一びじん!」

さあ、村中の女たちの中から、「世界一びじん」探しがはじまりました・・・。

リズミカルなテキストと、人々の素朴な表情を生き生きと伝える美しい細密画で、とんとんと楽しく物語を読み進めば、ウクライナの古い言い伝えも小粋な、ほろりとするような結末がしっかりと心に残ります。

むかしむかし、穫り入れの季節をむかえたウクライナの農村のお話。
主人公の小さな女の子・ワーリャは6つ。
今日はこの夏最後の小麦の穫り入れの日。お父さん、お母さんにくっついて畑に行って、お母さんのお手伝いにせっせとはげみながら、いよいよ明日にせまった、村人総出の収穫祭を夢見て、暑い長い一日を過ごします…、
そのうち、暑くてくたびれて、いつのまにかお母さんのそばをはなれたワーリャは、まだ刈られていないすずしい小麦の木陰にちょっと横になって、すやすやと眠ってしまいます…。

そして。

目覚めてびっくり。
お母さんがいません。
お父さんもいません。

ワーリャはお母さんを探して走り回りますが、まわりは知らない人ばかり。
「まいごになったの?」
と、やさしく聞かれて、ワーリャはおもわず泣き出します。
お母さんの名前をたずねられても、ワーリャは悲しくて声も出ず、しゃくりあげたあげく、やっとの思いでこういいます。
「わたしのおかあさんは世界一びじん!」

さあ、この言葉を手がかりに、村長さんは、村中から、美人のお母さんたちを集めます。
果たして、集まった美しい母たちの中に、ワーリャの捜し求める世界一びじんのお母さんはいるでしょうか…?

ワタシにとっての世界一の基準と、アナタにとっての世界一の基準がたぶん同じでないように、ワーリャにとっての世界一びじんと、村人にとっての世界一びじんの基準が、多種多様であるところが、このお話のミソで、ほのぼのいい味だしているところです。

さらに、村長さんの語る、ロシアの人なら誰でも知っているウクライナのことわざが、きらきら光をはなっています!
選り抜きの美人母たちもそれぞれに素敵ですが、ワーリャ親子のなんとチャーミングで幸せそうなこと!
素朴でたくましく、おおらかで美しい、ウクライナの大地の香りが、絵本からあふれているようです。

本文は、モノクロのページと、カラーのページが交互に編まれているレトロな構成。
本文カラーページに使われている色は、朱、青、からし色、ベージュ、緑、黒、とひかえめ。その温かみのある配色の取り合わせが、どこか懐かしくて、アメリカの絵本にしては、どこか中欧・ロシア的な雰囲気が漂う感じ…と、思ったら、それもそのはず。
「むかし むかし、ロシアのウクライナに…」
で、はじまるこの愉快なお話は、テキストの作者のベッキー・ライアーさんが、幼いときに、ロシア人の祖母から聞いたウクライナの昔話、だそうです。

ワタシにとっても、アバタに、じゃなかった、アナタにとっても、たぶん勇気と希望とさわやかな感動を届けてくれる、晴れやかですがすがしい絵本。
邦訳版は一応児童書の体裁なのですが、活字も大きく、美しいイラストも豊富ですので、ぜひ、図書館などで親子でごらんになってくださいね。

原書は、『My Mother is the Most Beautiful Woman in the World』c/o A.M.Heath&Company,ltd.,London,1945、とあります。

アマゾン洋書ではこちらなど。↓

My Mother
is the Most Beautiful
Woman in the
World

William Morrow & Co Library

1946年コールデコット賞オナー賞受賞作品だそうです。
 

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