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『げんきな グレゴリー』 ロバート・ブライト作・絵 なかつかさひでこ訳 徳間書店 2003年 |
「ちょっと、おまえにしてほしいことがあるの・・・」 大好きなおばあちゃんのお願いを早合点した、元気で無鉄砲なグレゴリーの、天真爛漫な物語。 とにかくポップコーンみたいにはじけとぶグレゴリーの魅力が爽快、愉快痛快、青空のように明快な絵本。
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グレゴリーは、のどかなグレンジャーむらでいちばんやかましくて元気な男の子。 「ヤッホー」 とあまりに大きな声がしたので、むらの谷間に住むおばあちゃんは、遠くからでも、グレゴリーが遊びに来たとすぐにわかりました。 グレゴリーの大好きなおばあちゃんは、グレンジャーむらでいちばんおいしいホットケーキをつくるのです。 「おばあちゃん、ホットケーキやいて!」 グレゴリーのあまりの大声に、おばあちゃんは思わず耳をふさぎながら、ちょいと一計を案じます。すなわち、ホットケーキをやくためのおてつだいをさせようと思ったのです。 「ちょっと、おまえにしてほしいことがあるの」
ところが!
それを聞いたグレゴリーは、そのとたんこう思ったのです。 「してほしいことがあるって?そうか!おばあちゃんは、ぼくがどんなにつよいか、みたいんだな」
思ったが早いか、グレゴリーは、ヤッホーっとわめきながら、ホーガンおかへかけのぼっていきました・・・。
満々のガッツはすばらしいですが、早合点すぎはチトいただけないかも(笑)。 しかも、どんなにつよいかって、グレゴリーむらでいちばんおこりんぼうのくまのかたにポーンとのっかって、かたぐるまでおばあちゃんのうちまでつれて帰ってきたのです。 うーん、強さの証明のなんて大らかで爽快なこと。
「だけどおばあちゃんは、くまをつれてきてほしかったわけじゃないんだよ・・・」 とまどいながらおばあちゃんがそこまで言うが早いか、グレゴリーはまた、 「ヤッホー!」 と大声をあげながら・・・。
万事この調子、すっこーん、と、空高く突き抜けたグレゴリーのヤッホーが愉快痛快、そのたび勘違いされてつれてこられる不機嫌な動物たちや、おさわがせにまきこまれる生き物たちがお気の毒というか抱腹絶倒。 とにかくしゃにむに元気いっぱいのグレゴリーが、ついにはロケットのように空高く発射してしまう場面は、動物たちの不機嫌も思わず止むほど唖然呆然。 あまりのはじけた展開に(?)、グレゴリーはいったいどこへいっちゃったんだろう、と子どもたちとともに心配し、かつ大人読みしてこの物語はいったいどこへ・・・収拾はつくのか・・・と、ちらと余計な心配もしてしまうのですが、ご安心。おばあちゃんのやさしさでみんなを包み込み、静かに和ませ、グレゴリーにいろいろなことを気づかせていく展開が、穏やかで満ち足りた結末にちゃんと導いてくれます。
あっさりした線と色鉛筆で描かれたような、勢いのある素朴なイラストが、ぐいぐい絵本の中へひっぱって、包み込んでくれるような絵本。 使用されている色は、赤、青、黄色の三色と、その重ねた緑、でしょうか。その色数を抑えたカラーのページと、赤色だけのページが交互に組まれた構成が、由緒ある古典絵本を感じさせます。
無邪気で無鉄砲で、きかんぼうであわてんぼうで、やんちゃでおっちょこちょいで、早合点で怪力持ちの、かわいいグレゴリーの大活躍がところせましと画面いっぱいに楽しめる絵本。
原書は『GREGORY The Noisiest and Strongest Boy in Grangers Grove』1969、とあります。
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『なかよしのくまさん』 ロバート・ブライトさく 小林いづみやく 冨山房 1994年
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おじいちゃんが大好きなまーくんは、大好きな絵本を読んでもらおうと、うきうきとおじいちゃんの家に遊びに来たのですが・・・おじいちゃんはあいにく留守。
がっかりするまーくんを、ことりやうさぎがなぐさめますが、おじいちゃんでなければだめなんです。 だけど・・・おじいちゃんにそっくりなくまさんなら、どうでしょうか?くまさんにおじいちゃんの格好をさせてみたら・・・。
まーくんとくまさんとおじいちゃんの、ちょっぴりちぐはぐで、和やかなやりとりが、くすくすおかしくて、ひなたぼっこのように心地よい物語。 茶色の一色使いのやさしいイラストと、シンプルでリズミカルで穏やかなテキストと、訳文が、熱いココアのように一つにとけあう古典的絵本。
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主人公のぼうやはマーくん、本が大好きで、おじいちゃんが大好きです。 マーくんにはなかよしのくまさんがいて、くまさんは蜂蜜が大好きです。 マーくんの大好きなおじいちゃんは何でもよく知っていて、おかのむこうの家に住んでいます。
ここまでで、マーくんと、なかよしのくまさんと、おじいちゃんの紹介のイラストが登場するのですが、足を広げて座り、両手を前に組んで瞑想している、くまさんとおじいちゃんの姿が、毛皮とひげの感じといわず、毛皮と洋服の茶色といわず、どことなくしっかりと似ているところが、笑えます・・・じゃなかった、大事です。
おじいちゃんとくまさんは実はそっくりなのです。
マーくんはうきうきと、大好きな本を持って、おじいちゃんの家に遊びに行きます。途中であったことりとうさぎに、「これからおじいちゃんのところへいって、おはなしをよんでもらうんだよ」と、思わず話しかけるくらい、心弾ませ胸ときめかせてやってきたのに・・・おじいちゃんは留守でした。
ここの描写、本当に嬉しくてはしゃいでいる子どもの気持がとびきり愛らしく描かれているように思えて、大好きな場面の一つです。でもまださらに、お気に入りの場面が続きます。のっけからですよ!
「けれどもおじいちゃんのいえにきてみると、なかにはだれもいませんでした。 ことりがうたをうたってくれました。でも、うたではだめなんです。 うさぎはおどりをみせてくれました。でも、おどりではだめなんです。」
原文を読んだことはありませんが、訳文テキストのきりりと短くてぴりりと胸に来る美しい文章はどうでしょう! 「でも、うたではだめなんです。」
そう、マーくんは幼くして本物を知っている、というか、何ものにもごまかされない何ものにもかえがたいしっかりした自分の気持を持っている、のでは。 誰があやしてもぎゃーぎゃー泣きわめく赤ちゃんが、母親に抱かれるとじきに泣き止むように、自分の望むものはこれで、他のものではない、と、肌でわかっているのですよね。
短いテキストとシンプルなイラストで、9ページめにして真実の一部をこれ以上ないくらい簡潔明瞭に提示されたように思えて、ここまでの一読で忘れられない絵本となりました。くまさんには蜂蜜のツボ、ではないですが私には完全にツボです。
さらに、ここからの展開が、また愛らしくてけなげでほほえましくて、たまらなく可愛いおとぼけぶりなのです。
というのも、おじいちゃんは留守だったのですが、ちょうど庭のみつばちのすばこのそばに、なかよしのくまさんがいたのです。 くまさんはよく見ると、おじいちゃんそっくり。
マーくんは試しに、くまさんに提案をもちかけます。すなわち、おじいちゃんのぼうしをかぶらせてみること。 くまさんはぼうしをかぶってくれました。だっていいくまだったからです。(この理由がまたたまらなくいいお味)
ああ、年若いのに道理が分かっていたと思っていたかしこいマーくんは、惜しいところまで理解していながら、実は肝心のところをちょいと勘違いしていたのでしょうか。 ことりのうたでもうさぎのおどりでも、満足することが出来なかったマーくんの気持を、もし納得させるものがあるとしたら、それはほんものそっくりのくまさんなのでしょうか? マーくんは人のいいそっくりくまさんを、よりほんものらしく小道具でおじいちゃんに仕立て上げることで、心の空白をまぎらそうとしたのです。
さらにマーくんは、おじいちゃんのうわぎもとってきました。 それからおじいちゃんのこうもりがさも・・・。
ゆったりとやさしく丁寧に語り進みながら、実はイチブの無駄もないテキストは、全文丸写ししたいくらいです。ぜひ図書館などで親子でお読みください! 無邪気なマーくんの罪のない真剣さが、されるがままのやさしいくまさんのお人よしも手伝ってなんてほのぼの、昔話によく見られる耳に心地よい繰り返しのリズムをともなって、だんだん高まりながら、独特のメルヘンを作り上げています。
そしてすべての小道具がでそろい、完璧におじいちゃんになりきらせたところへ、ほんもののなんでもしってるおじいちゃんが帰ってきます。 おじいちゃんは驚いて・・・。
おじいちゃんのおおらかでてきぱきとした采配がお見事、だれもがみんなにこにこほほえむ読後には熱いお茶、もちろんココアがぴったりです。
茶色一色使いのシンプルな絵本なのですが、かえってはっとするほどおしゃれで、ほのぼのと温かみを感じてしまうのですが、これは茶色がくまさん色で、チョコレート色でココア色だからでしょうか? 熱いココアのように、ほっとひといき、嬉しい甘さがじんわり心にひろがるような、陽だまりのような絵本です。
長く品切れでしたが、このたび再販となったのかもしれません。アマゾンなどで、お取扱いがあるようです。嬉しい! ←楽天ブックス(取り扱い中)
原書は『THE FRIENDLY BEAR』World's Work Ltd. 1957年、とあります。
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『おばけのジョージー』 ロバート・ブライトさく・え 光吉夏弥やく 福音館書店 1978年 品切れ
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ジョージーは、ホイッティカーさんのちいさな家のやねうらにすんでいるちいさなおばけ。ジョージーがきまった時間に階段とドアをきしませると、家の人たちやねこやふくろうにはそれぞれ寝る時間や活動する時間がきたとわかります。 万事うまくいっていたのですが、ある日ふと思いついたホイッティカーさんが、階段やドアを直したために・・・。
愛らしいおばけのジョージーの、居場所探しの愉快な古典絵本。丹念な文と絵で描かれる、純真なジョージーのさまよう姿に、大人も子どもも応援したくなってしまいます。
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ニューイングランドのちいさなむらに、ホイッティカーさんのちいさないえがありました。このいえの、ちいさなやねうらにすんでいるちいさなおばけのジョージーは、 まいばんおなじじかんに、かいだんをみしりといわせ、ひろまのドアをぎーといわせました。 するとホイッティカーさんとおくさんには、もうねるじかんだとわかり、ねこのハーマンには、ねずみをさがしまわるじかんだとわかりました。 ところがある日、ふと思いついたホイッティカーさんが、階段のゆるんだ板にくぎをうち、広間のドアのちょうつがいに油をさしたので・・・
活躍の場をなくし、住む家をなくしてしまったちいさなおばけのジョージーの、居場所探しを描いた愉快で愛らしいお話。 ひとつひとつ丁寧に順を追って語っていくテキストが、まるで小さい子になって耳を傾けているみたいに、心地よくくつろげる感じです。 ゆったりと、一つのことが別のことへとつながって、気がつけば、またひとまわりして戻ってくる展開も、大好き。 クラシカルな紺色一色の素朴な線画も、夜のちいさなおばけの絵本にぴったりですよね。 あどけない子どものようなおばけのジョージーが、ほんとうにいとおしくなる絵本。
原書は、『GEORGIE』 Doubleday & Co.,Inc., U.S.A. 1944 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『Georgie (ペーパーバック)』 Farrar Straus & Giroux (J); Reprint版 (1999/09)
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『おばけの ジョージー おおてがら』 ロバート・ブライト作・絵 なかがわちひろ訳 徳間書店 2004年 |
ある晩、おばけのジョージーの家に、二人組みのどろぼうが入りました。どろぼうたちは、ホイッティカーさんの家の、古くてすてきな家具や道具たちをごっそりトラックにつんで・・・。
丹念に描かれたテキストとイラストが、とても心地よい読み物。おばけのジョージーのくらす家の中や、のどかな村を描いた、モノクロの線画がとても美しく、いきいきとして見ごたえたっぷり。 愛らしいジョージーから、健やかな勇気をもらえるような楽しい絵物語。
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ちいさなおばけのジョージーは、ホイッティカーさんのいえにすんでいて、まいばん、かいだんをみしっ、いまのとびらを、ぎいっと、ならします。 ジョージーは、おばけですが、とてもはずかしがりや。だから、たとえ、しらない人が、はいってきたとしても、おどかすことなんかできません。 ところがあるばん、ホイッティカーさんとおくさんが留守の間に、家の中や屋根裏部屋の、古いアンティークな家具たちに目をつけた、二人のどろぼうがやってきて・・・。
はずかしがりやの、ちいさなおばけのジョージーが、ぬすまれたアンティーク家具を取り戻すために、勇気を奮い立たせて大活躍する愉快なお話。 耳に心地よい丁寧な物語の運びと、目に心地よい、柔らかで力強いモノクロの鉛筆画が、素直で愛らしいおばけのジョージーの世界に、のびのびと心地よく連れて行ってくれる感じです。 黒の濃淡と線であらわされた素朴なイラストは、ほどよい臨場感と、夜の闇と、なつかしさと愛らしさがとけこんでいて、ほのぼのとしたおばけの物語にぴったり。 みんなとジョージーが頑張る場面は、一緒になって応援してしまいますよね。 最後のジョージーの、ねずみたちとの場面も、小さい子の行動はおばけでも一緒なんだなあ、なんて、おもわずにっこり。 読者にウィンクしているみたいな終わり方も好きです。
原題は、『GEORGIE AND THE ROBBERS』 1963 とあります。
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『おばけの ジョージー ともだちをたすける』 ロバート・ブライト作/絵 なかがわちひろ訳 徳間書店 2006年
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はずかしがりやのちいさなおばけのジョージーが、動物園に入れられてしまったふくろうのオリバーを助けるために、ねこのハーマンと助けにいく愛らしい絵童話。 のんびりほのぼのした雰囲気の文と絵に心が和み、元気と勇気がわいてきます。
みんなそろって、いつものように、のんびりすごす、当たり前の幸せを、楽しく教えてくれるおおらかな本。
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おばけのジョージーは、ホイッティカーさんの家のやねうらべやにすんでいて、まいばん、かいだんを、みしっ、居間のとびらを、ぎいっと、ならします。 ねこのハーマンは、ねずみと、おいかけっこをし、ふくろうのオリバーは、めをさまして、おきにいりの木のえだで、ホッホーとなきます。 こういう音をきくと、ホイッティカーさんと、おくさんは、あくびをして、もうねるじかんだなと、おもうのでした。
ある日、ホイッティカーさんとおくさんが、ハーマンをつれて、大きな町に旅行に出かけました。友達とはなれたくないオリバーと、心優しいジョージーも一緒です。 ホテルにつくと、さっそくハーマンはねずみを見つけ、ジョージーは色々探してみしっ、ぎいっと音のする場所を見つけ、オリバーは止まり木になるうってつけの場所を見つけて、ひとあんしん、よかったね。
ところが、ホテルの旗ざおの先っぽに止まって休んでいるオリバーを、ホテルのボーイが見つけてしまったから、困ったことになりました!
あわれなオリバーは、眠っているところを捕まえられて、動物園へ連れて行かれてしまったのです。 それを窓から見ていたハーマンは、さっそくジョージーと動物園に助けに出かけて・・・。
やさしくて楽しい幼年童話の体裁の、「おばけのジョージー」シリーズの一冊。 本文イラストは、鉛筆画でしょうか、白黒の楽しい線画に、やわらかい濃淡がそえられたクラシカルな雰囲気。61ページにわたって、すべての見開きページに、そのほのぼのとした大きな挿絵がおさめられているので、なんだか幸せな、得した気分。
小さい子の興味を、目からも耳からも惹くように、わかりやすく丁寧に描かれた絵にも、リズミカルな繰り返しの用いられた文にも、細かな部分まで配慮がゆきわたっています。 「行って、帰る」基本的な物語を、子ども心をくすぐる心地よい文と絵で描き、小さな冒険のどきどきとはらはらをスパイスに加えた親しみやすい物語は、少し大きい子が自分で理解しながら読み進んでいくのにも、ぴったりの童話ですよね。 楽しい冒険のあとの「ただいま」、の幸せな安堵感、満ち足りたあたたかな気持ちを、ジョージーたちと一緒に味わえる、おおらかな本。
原書は『GEORGIE TO THE RESCUE』1956 とあります。
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