■レベッカ・ドートゥルメールさんの絵本
1971年フランスのギャップ生まれ。パリ国立装飾美術学校に学ぶ。在学中に絵本作家としての才能を見出され、挿絵などを手がけるようになる。
(『恋するひと』朔北社 表紙カバー見返し著者紹介より)
『恋するひと』*『そらをとんだ本』

 

『恋するひと』朔北社

『恋するひと』
レベッカ・ドートゥルメール作
うちだややこ訳
 朔北社

大人とのはざまにゆれる少年少女の、ため息のような赤。
恋への謎と憧れで膨らんだバルーンのように、すそのふくらんだ不思議なフォルム。

恋って、何?
悩める小さなサロメたちと一緒に、大きいひとも小さいひとも、一緒に考えてみませんか?

フランスの、美しくしたたるしずくのような絵本。


オンライン書店ビーケーワン:恋するひとその紅色に恋。
夢見る乙女の心の光と影を映し出すような、濃厚で奥深い紅色が、きれい・・・!

そして見返しも、中表紙もきれい、映画のはじまりみたい。
左ページ(原書記載、本の詳細記載のページ)には、小学生くらいの洒落たクラスメイトたちが、ひとりひとりに名前と個性を与えられてたたずんでいます。その見つめる先の、右ページの中表紙には、主人公のメガネの女の子サロメと、ちょっぴりサロメにいじわるなエルネスト。
とんがり帽子のようにすそのふくらんだサロメのスカートは赤い水玉。エルネストのシャツは赤いハート、つつのようにふくらんだズボンも赤。
余白の白に、影のある深い赤が、くっきりと映えて、なんてシック・・・赤ワインみたい。

いつもサロメをからかうエルネストのことをいつも報告するサロメに、ママは言った。
「もしかしたらサロメに恋してるんじゃないかしら?」

「サロメに恋してるですって!」
きょうみしんしんのポリーヌがきいた
「いったいなんなのよ恋って?」
教室がざわめいた
・・・

恋って、なに?
サロメと仲間たちの問いかけがはじまります。
こっくりとした深い紅色の、不思議な奥行きのある背景が、恋への謎と、憧れと、興味と、不安と、おののきをかきたてるよう。

「しってるよ!」
アベルがとくいげにいった。
「ひとは恋におちるんだ」

サロメはよく自転車からおちるけど
「恋からおっこちたことなんていちどもないわ」
・・・

恋に対するサロメたちのひとつひとつのおませな台詞の気の利いていること!
だれかが恋について知っていることを言えば、だれもがそれを手がかりに考えるのですが、恋は、するりとその手をすりぬけ、いずこへふんわり逃げてしまいます。
恋は稲妻?
恋は病気?
恋はだれのため?

恋はサロメたちをどきどきさせて、そわそわさせて、びくびくさせて、はらはらさせて、好きなだけうっとりと悩ませながら、謎のまま宙ぶらりん。
サロメたちは、恋を上から見おろしたり、下から見上げたり、物陰から眺めたり、回り込んで眺めたり、正体不明の謎めいた恋のまわりを遠巻きに、つかずはなれず追いかけて、さながら見習いの探偵のように、恋の決定的秘密をつかもうと試みるのですが・・・。

オンライン書店ビーケーワン:恋するひとどこか人形劇の舞台を見ているような、不思議に赤いページの中に、ぽたりと落ちてゆく瞬間のしずくのようにたわわなフォルムで、恋に恋するサロメたちが美しく描かれています。
それから、おのおのページのまんなかにさりげなく一つずつ、可愛いたくらみのようにちりばめられた落書きがあるのですが、このおしゃまな落書きは、作者のレベッカ・ドートゥルメールさんの5歳の娘の作品なのですって!
親子で楽しんで作られた様子が目に浮かぶよう。

うちだややこさんのこなれた訳も美しく、流れるような文字のレイアウトもおしゃれ。
小さなおしゃまさんに贈りたい、大きなおしゃれさんに贈りたい、フランスの愛すべき、恋すべき絵本。
原書は『L'amoureux』、コピーライト2003年、Hachette Livre/Gautier-Languereau、とあります。
この絵本は、
「フランスで有名なこどもの本の賞の一つであり、図書館員や書店員が選ぶすぐれた作品に贈られる2004年度ソルシエール賞を受賞」
だそうです。
(『恋するひと』朔北社 表紙カバー見返し著者紹介より)
アマゾン洋書で検索すると・・・取り扱い作品が見当たらないのですが、アマゾンフランスでは、魅力的な作品たちがたくさん!
レベッカ・ドートゥルメールさんの描く「バーバヤガー」などなど、気になる気になる!

『Babayaga』
Edelvives
2005

アマゾン洋書では、
スペイン語とありました。
ぜひ、日本語でも・・・!


ぜひつづいての邦訳をお願いしたいです。

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『そらをとんだ本』講談社

オンライン書店ビーケーワン:そらをとんだ本

『そらを
とんだ本』

ピエール・ロリ文
 レベッカ・ドートゥルメール絵 
中井珠子訳 
講談社 
2005年

物静かな色彩の美しい表紙を開いたら、本文のあちこちにちりばめられたルビーのような、一面にふんわりとひろげられた赤いシルクのスカーフのような、ゆっくりと沈むワインのような、深い赤色が華やかなイラスト。静かな扉のむこうに、思いがけないドラマチックな世界が広がっていた、なんて、読書のときめきや醍醐味そのものみたいですよね!

これは、そんなときめきを内に秘めた小さな本自身が、思いがけず未知の世界へすべりおちて、ドラマチックな冒険をしたお話。そらを飛ぶ本のページから、ぱらぱらはらはらとこぼれおちるかぼそい活字のイラストが、ビーズみたいで、紙ふぶきみたいで、静かに静かに小さな本の旅のメロディを奏でているみたいです。

繊細な線と筆づかい、大胆な構図と赤の色づかいの、おしゃれで華麗なイラストと、いたずらな風のように魅力的なテキストに導かれ、小さな本とおおらかな旅を楽しんでみませんか?

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