■ロラン・ド・プリュノフさんの絵本
1925年フランス生まれ。ニューヨーク州在住。父ジャン・ド・ブリュノフの早世後、1945年以降、あとを引き継いで「ぞうのババール」シリーズを手がけるほか、オリジナルの作品も生み出している。
『あいにいくよ、ボノム』
≫別頁『ババール王さまのかんむり』*『こんにちは、ババールいっか』

 

『あいにいくよ、ボノム』講談社

『あいにいくよ、ボノム』
ロラン・ド・ブリュノフさく
ふしみみさをやく
講談社
2005年

エミリの家の窓から見える山のてっぺんに、ちょっと変わった男の子が一人で住んでいます。ある日決心したエミリが会いに行くと、男の子は大喜び。エミリはボノムと名前をつけます。エミリとボノムの楽しい時間。
けれど、長くは続かなくて・・・。

結末の、ボノムが選んだ自分の道、エミリが決めた自分の道が、とてもとても印象に残る絵本。


オンライン書店ビーケーワン:あいにいくよ、ボノム

表紙のように、淡い水彩の赤色だけをさし色にした、あっさりとした独特のお洒落な線画。
原書は『BONHOMME』、1965、とあります。

表紙カバー見返しによると、ボノム、というのは、「ちいさなおとこのこ」という意味だそうです。
ぼうや、という感じなのかなあ。

主人公は赤いお洋服のエミリという可愛らしい女の子。
エミリの部屋から見える、木の一本しかない山のてっぺんに、あたまにひょろりと一本のとげをもち、ころころ太った、なんだかおかしなおとこのこが住んでいます。

エミリはある日、男の子を訪ねに行こうと決心し、一人で山を登ります。
男の子はちょっぴりはずかしそうですが、エミリが声をかけると、よっぽど嬉しかったのか、
「とつぜん、おとこのこはすごいスピードで、きのまわりをはしりだしました。」
ぐるぐると、時計回りに回っている(ために8人いるように見える)ボノムのイラストが描かれています。この、嬉しい・楽しい時に高まる気持を抑えきれず、ぐるぐる回ってしまうの、2-3歳の小さい子によく見られるような気がするのですが、もしかするとボノムも思ったより(エミリよりも)あどけない年齢なのでしょうか。(でも大人びたところもあわせもっているのです。なんとも不思議)

その幼さゆえにまだ、あるいははじめから、ボノムは言葉をもっていないのか、ボノムが答える場面はありません。
けれども二人にあまり言葉は関係ないようで、エミリは、
「あなたのこと、ボノムってよんでいい?」
と、ボノムに名前をつけて、すっかりうちとけてしまいます。

エミリとボノムが山のてっぺてんで、楽しいひとときを過ごしているころ、エミリの家では、エミリがいなくなったと大騒ぎがおこっていました。
市長さんはすぐに山に警官たちを送り、ボノムを網で捕まえてしまいます・・・。

ラストの感じから言うと、ボノムはウーパールーパーにも少し雰囲気の似た、つるんとした感じの不思議な男の子。無邪気で、はずかしがりやで、陽気で、明るい性格のように思え、人々に危害を加えたり、悪事をたくらんでいるようにはまったく見えません。

それなのにボノムは捉えられ、動物園の檻に入れられて、長いとげもすっかりしおれてしまいます。

エミリが市長さんにボノムを助けてと頼んだとき、市長さんが提案したのは、ボノムの自由と引き換えに、ボノムのとげのさきにせんをすること。
あたかもボノムを捕獲したのは、このとげ一本の危険のためとでもいうような、皮肉なユーモア。

この、ひげのせんが、小道具として、ある種ボノムの象徴として、後にころんと出てくる場面が、切なくて、ほろ苦くて、好きです。どこかうつろで退廃的で、それでいて何か達観し超越した雰囲気すら感じるのはなぜかしら。

妖精のような、宇宙人のような、未知なる不思議な男の子、ずっとひとりぼっちで、ひとりの自由と寂しさを共に知り尽くしている、大人で子どものボノム。
自分の思うままにしっかりと歩いていく少女のエミリ。
最後のページの力強いエミリが、実はいちばんのお気に入り!どうぞいつまでも、大人になっても、「あいにいくよ、ボノム」が続きますように。

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