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『たのしい ホッキー ファミリー !』 レイン・スミス作 青山南訳 ほるぷ出版 1995年
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楽しいホッキー家には、おとうさん、おかあさん、あかちゃん、お兄さんのヘンリー、お姉さんのホリー、そして犬のニュートンがいます。 なんでもない家族のおちゃめな日々が、とんでもないおしゃれなユーモアに大変身!
にっこりと多くを描かないシンプルで無邪気なイラストと、多くを語らない潔いテキストの行間に横たわる、クククとなってしまう絶妙のユーモアに気づくと、・・・とりこになってしまいそうな絵本。 なんてったって、レイン・スミスさんの絵本です。
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原書は『THE HAPPY HOCKY FAMLY』Viking,a division of Penguin Books USA,Inc,1993、とあります。 アマゾン洋書ではこちら↓
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『The Happy Hocky Family (Viking Kestrel Picture Books)』 Viking Pr
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ハロウィンのかぼちゃを思い出すようなハニワを思い出すような(?)ちょいと暗号めいたお顔がパレットのようにならぶ、すっきりしたデザインと、ちょいとシックな色使い、版画のようにちょいとかすれた塗り加減が、なんとも心惹かれる表紙です。
絵本のダストカバーもつるつるのコーティングされた紙ではなくて、画用紙のような和紙のような、リサイクルペーパーのような、ざらっとして厚みのある、なんともいいお色の魅力的な紙を使用。(汚れ、水濡れ要注意!)
本文ページの紙も、真っ白ではなくて無漂白っぽいベージュ色で、イラストに用いられている色もすっきりシンプル、薄黄色、レンガ色、青、黒、灰色、と、どこかレトロ。どうやら、白色はまったく用いられていないようです。 そして、もともとの黒色の輪郭線が、どこか版画のようにスタンプのようにかすれた効果を用いていて、さりげないコラージュあり、スタンプあり、と、なんとも洒落て垢抜けています。
つまり、個人的にかなり好みの1冊です。 そしてさらに、テキストがこれまた好みなのですよ、かなりかなりど真ん中!
この楽しい絵本は、楽しいホッキー家のお話です。 ホッキー家には、おとうさん、おかあさん、あかちゃん、お兄さんのヘンリー、お姉さんのホリー、そして犬のニュートンがいます。 それから、時にはあかちゃんの持っている風船、真っ白いコート、ホリーの大切なふね、飼ってみたペットのアリ、おかあさんの自慢の真新しいキッチン、ヘンリーの誕生日のプレゼント、お手製の紙飛行機・・・などなどの小さなエピソードが、何食わぬ顔で登場して、思い切りお腹を抱えさせてくれます。
例えば、あかちゃんの自慢の赤い風船。 これ、ぼくのふうせん。 きみ、ふうせん、もってる? ぼくのふうせんは赤だぜ。 ・・・。
なにやら読み手に誇らしげに見せびらかした次のページで、 ポンッ 風船は無常にも破裂し、あかちゃんは呆然と、力尽きて垂れ下がるひもの先の、もと風船のなれのはてを見つめます。
そして次のページで、意外にもあかちゃんとひもはにっこりとほほえみと落ち着きを取り戻し、
これ、ぼくのふうせんのひも。 きみ、ふうせんのひも、もってる? ぼく、ふうせんのひも、もってるよ。
空威張りとか、負け惜しみとか、哀愁とか、いろいろな単語が読み手の頭の中をよぎるよりも早く、なめらかに、あたかも何事もなかったかのようにピュアにほほえむあかちゃんの笑顔にうっかりだまされそうになりながら・・・ニンマリと、気持ちよく笑えます。
にっこりと多くを描かないシンプルで無邪気なイラストと、多くを語らない潔いテキストの行間に横たわる、クククとなってしまう絶妙のユーモアに気づくと、・・・とりこになってしまいそうです。
「自然観察が好き」を、アリを飼うことで立証しようとするヘンリーのちょっとした優しい心のお話と、続くホッキー家の真新しいぴかぴかのキッチンのお話は、不覚にも思わず悲鳴をあげそうになったほど。 イラストと、テキストと、余白の、一見無秩序に見えながら見事に溶け合うハーモニーをお楽しみいただけると思います。
さて、この楽しい楽しい絵本を3姉妹に・・・ですが、果たして、どこまでわかったかなあ。 風船がわれたり、白いコートに泥水をはねかされたり、ポケットの中身を洗濯してしまったり、何気ない日常生活のがっかりやうっかりを、からりと楽しく笑い飛ばすユーモアのセンスがたっぷりつまったこの絵本を読んで、ニンマリと、一緒にほくそえむ頼もしい日が、早く来るといいな。
そのホッキーファミリーのいなかへいく続編はこちら。
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『たのしいホッキーファミリー、いなかへいく!』ほるぷ出版
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『たのしい ホッキー ファミリー、 いなかへいく !』
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レイン・スミス作 青山南訳 |
ほるぷ出版 2005年 |
原書初版から10年、待ってましたのホッキーファミリー、なつかしい面影もそのままに、今度は田舎で大暴れ!
郷に入ったホッキーファミリー、持ち前の明るいたくましさで、いつしか郷を従えたかも?
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原書は『THE HAPPY HOCKY FAMLY MOVES TO THE COUNTRY!』、コピーライト2003年とあります。 アマゾン洋書ではこちら。↓
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『The Happy Hocky Family Moves to the Country! (Happy Hocky Family)』
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Lane Smith
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Viking Childrens Books 2003年
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今度は楽しいホッキー家が、なんと田舎に引っ越して大騒ぎするお話です。 最初都会と田舎の落差にびっくりとまどうホッキー家ですが(このとまどいも、もちろん笑えるエピソードになっています)、持ち前の元気と明るさで前進あるのみ!
絵本の色使いも、全体的にシックな色合いはそのままに、茶色や緑、紫、ピンク、白色などがセンスよく加わって、さらににぎやかにパワーアップした感じです。 田舎での季節のめぐりをさらりと愉快に、何気なくチクリと痛快に描きながら、たくましく順応していくさまは、なかなか感慨深いものがあります。
ホッキー家は、本当に、世界中のどこでもホッキー家のまま、楽しくやっていけそうですね!
ところで、作者のレイン・スミスさんの作品をアマゾン洋書で検索していて、発見した、気になる気になる絵本はこちら。↓
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『Seen Art?』 Jon Scieszka
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Viking Childrens Books |
「ニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art/MoMA)、MoMA内部のアートを探求し続けながら、現代アートの最高傑作の数々を見ていく」絵本、ですって。(アマゾン洋書より) 翻訳希望!
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『くさいくさいチーズぼうや&たくさんのおとぼけ話』ほるぷ出版 品切れ
≫その他昔話パロディは こちら*≫ポール・ガルドンさんの昔話絵本は こちら
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『くさいくさい チーズ ぼうや& たくさんのおとぼけ 話』 ジョン・シェスカ文 レイン・スミス絵 青山南訳 ほるぷ出版 1995年 品切れ
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これは、なに? おなじみの昔話集が、50何ページのおきてやぶりのページ編集と、10いくつのおどろきのお話と、20いくつのおどろおどろしいイラストで、大笑いの昔話パロディ絵本になっちゃった! ジョン・ジェスカさんとレイン・スミスさんが手塩にかけ、昔話も絵本も手玉に取り、コールデコット賞オナー賞も手中におさめた、珠玉のおとぼけ話たちに、手抜かりも手加減もなし。 たくさんのおとぎ話と絵本を読みぬいた、違いのわかる大人のあなたに。
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これはおとぎ話ではなく、おとぼけ話です。 愛嬌と皮肉をたっぷりまとったシュールで贅沢なイラストを多数とりそろえた、新鮮で刺激的、改良済みのおとぼけ話がよりどりみどり、一冊にとりまとめられた豪快痛快昔話パロディ集です。 語り手役は「ジャックと豆の木」のジャック。 ・・・と、絶妙の相方は、「赤いめんどり」の働き尽くめで無視された気の毒な赤いめんどりちゃん。(本来のお話では、誰の協力も得られなかったため、独力で種の小麦粒から小麦を育て上げ、誰の協力も借りず独力で小麦粉のケーキをたいらげた、初志貫徹の(?)あっぱれなお話。有名な絵本では、『おとなしいめんどり』▼(童話館出版) 画像は原書『The Little Red Hen』Houghton Mifflin (Jp))
『くさいくさいチーズぼうや』の絶妙に訳された目次を少しながめるだけでも・・・↓
ひよこのリキン おひめさまとボウリングのボウル ほんとうにみにくいアヒルの子 もうひとりのカエルの王子さま 赤短パンちゃん ジャックの豆 問題 シンデルンペルシュティルツヘン うさぎのかみとかめ くさいくさいチーズぼうや ・・・
そそられますよね! 元になったお話は上から、
めんどりペニー えんどうまめの上に眠ったおひめさま みにくいアヒルの子 カエルの王子 赤ずきんちゃん ジャックと豆の木 シンデレラとルンペルシュツティルツヘン うさぎとかめ しょうがパンぼうや ・・・
ジョン・ジェスカさんとレイン・スミスさんの味付けで、どのお話がどのように調理され、どのように切り刻まれて混ぜ合わせられたか、どのように焼かれてどのようにひっくりかえされたか、タイトルから想像できそうなものもあれば、まったく予測不可能のものもあって、ヒリヒリとスパイシー、ページを開くごとに、スリルとサスペンスが待っています!
しかも、するりととぼけているのは、昔話だけではありません。 絵本そのもの、絵本のつくりや装丁も、十二分に遊びつくしています。 表紙をめくった見返しのページから、すでに読み手の意表をつく、前例を見ない驚きの展開づくし。 見返しで遊び、作者の「○○にささげる」「親愛なる○○へ」などを記した献辞ページを逆手どり、「はじめに」の前書きもおちょくり、目次ページまでちゃっかり利用しつくし、ページの構成も順序もでたらめ的綿密計算ウルトラCで、何もかも徹底的に遊び倒しています。ここまでもりだくさん、具だくさんだと、満腹で、グウの音も出ないですよネ。爽快。
注意・・・この本のなかのお話はとぼけています。 頭がぼける心配があります。気をつけましょう。 |
との注意書きが、絵本の「はじめに」のページに記されていますが、頭がぼけたり、ばけたりしないように、心しておなかを抱えてください。 昔話のもつ素朴さも残酷さも、おとぼけ話の中に大切に保存されながら、昔話のもつ疑問やつっこみをさしはさみたくなる余地が、おとぼけ話の中で大切にはぐくまれ立派なパロディになっていますので、お楽しみに! PTA受けする絵本かどうかはわかりませんが・・・原書『THE STINKY CHEESE MAN AND OTHER FAIRLY STUPID TALES』1992 は、1993年コルデコットオナー賞受賞作品。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『The Stinky Cheese Man and Other Fairly Stupid Tales』 Dutton Childrens Books
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『The Stinky Cheese Man and Other Fairly Stupid Tales (Viking Kestrel Picture Books)』 Viking Childrens Books
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ところで表題にもなっている「くさいくさいチーズぼうや」の、そこはかとなく情けなくて可愛い表情ですが、目はオリーブ、口はベーコンなのですって。ベーコン・・・と、言われてみれば、まさしくベーコンですが、口として用いられると、肉片の熱くなみうち、ジュウジュウとちぢんだ感じに、ほのかな哀愁と純情を感じて、こじんまりとしたオリーブとともに、脂っこさというか、忘れがたい深い味わい・・・。
脂っこさというか、しつこさならこちらの読み物も。↓
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『フリップ村のとてもしつこいガッパーども』いそっぷ社
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『フリップ村の とてもしつこい ガッパーども』 ジョージ・ソウンダース文 レイン・スミス絵 青山南訳 いそっぷ社
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作者の生み出した架空の村(個性的な三件の家の集落)のこだわりの人々と、村のヤギにまつわりついてはなれない架空の生き物「ガッパー」にまつわる、悲喜こもごもの騒動を、主人公の少女デキルの目を通して、チクチクと痛快に描いた、不気味で不思議な物語。 大胆なデフォルメで持ち味を引き出し、さまざまな技法を駆使して重厚な雰囲気に仕上げたレイン・スミスさんのイラストと、お話になぞらえて痛烈に現実をえぐるようなジョージ・ソウンダースさんのテキストをお楽しみください。 いそぎんちゃくのような見た目でこしぎんちゃくのようにくっつく奇怪なガッパーは、かたくなった大人の頭を、ウニのようにときほぐしてくれるかも???
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