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1980年『Three Andersen's Marchen』***邦訳「アンデルセン童話3冊」

初版 1980年
タイトル ドイツ語版原書
『Three Andersen's Marchen』
 ・『Töpel-Hand』
 ・『Der Schweinehirt』
 ・『Die Prinzessin auf der Erbse』
の三冊セット
テキスト≪シンプルに Hans Christian Andersen
◆くわしく
イラスト Josef Palecek
出版社≪シンプルに Nord-Süd verlag ,Swizerland
◆くわしく
大きさなど※ 各1冊カラー、28p(本文24p)
約15.1*11.2センチ
3冊セットの箱入り
printedについてなど記載なし
邦訳
≫シンプルに

「アンデルセン童話」3冊

「アンデルセン童話」
・『まぬけなハンス』、
・『ぶたばんのおうじ』、
・『豆つぶの上のおひめさま』
の三冊セット
ハンス・クリスチャン・アンデルセンさく
ヨゼフ・パレチェク絵
やまのうちきよ子訳
偕成社
1980年、品切れ
◆くわしく

邦訳大きさなど※ 各1冊カラー、28p(本文24p)、
約15.1*11.2センチ
ドイツ語原書とほぼ同じ版型。
printed&bound in Singaporeの記載あり

当時分売していたかどうか、箱入りだったかどうかなど、詳細不明
英語版

英語版
『Three Fairy Tales:
・"The Princess and the Pea",
・"The Swineherd" and ・"Blockhead Hans"』
Everyman(※アマゾン洋書のリストによる)
1980年

英語版版元Everyman社は、『Des Kaisers neue Kleider.◆』の、英語版『The Emperor's New Clothes』も1979年に出版

英語版アマゾン洋書※

『Three Fairy Tales』
ペーパーバック
32p
Everyman
ISBN: 0460060597 (1980/11/06)
未読

このアマゾン洋書のリストは、3話を1冊にまとめたものかも。詳細不明。
アマゾンイギリスの情報がもう少しくわしくて、同じISBN番号0460060597で『◇Three Fairy Tales: "The Princess and the Pea", "The Swineherd" and "Blockhead Hans"
とありますが、詳細不明。

その他、3冊セット箱入りがあったらしい。詳細不明。

■国際版について


↑上記のように、アマゾン洋書を検索すると、英語版『Three Fairy Tales』
がありました。
版元Everyman社で、ペーパーバック (1980/11/06) Everyman 32p  とあります。
未読のため詳細不明ですが、ページ数からすると、たぶん原書・邦訳版の装丁とは別のもので、1冊にまとまっていたのでは、と推定されます。

 

ちなみに、邦訳版は、ドイツ語版原書とまったく同じ装丁、版型で、一冊16センチ、24ページと記載があります。
そして、printed&bound in Singaporeと、あります。もしかして、当時国際共同出版 (で、シンガポールで一括製版・印刷 ) だったのかなあ…、などと、個人的勝手な想像はふくらむのですが・・・どうなのでしょう???
ちなみに、ドイツ語版原書には、printedについては何の表記も見当たりませんでした。


原書を見て
3冊セット、箱について
1980年Nord-Süd Verlag社より出版された(世界同時出版かも?)、ヨゼフ・パレチェクさんイラストの珠玉の手のひら「アンデルセン童話」絵本3冊セットです。
私物は、Nord-Süd Verlag,Mönchaltorf+Hamburg、1980と、ISBN番号は3冊すべてに3-85825-127-5とあり、3冊セット、箱入り販売だったと思われます。
ちなみに、箱の表紙は『Der Schweinehirt 』のぶたばんの王子とおひめさまの、花に囲まれてキッスをしようとする横顔の美しいイラスト。
個別の『Töpel-Hand』 の本文中のイラストとは異なりますので、箱のために描きおろされたイラストだと思われます。
箱の裏のイラストは、青い頭巾に白い長いあごひげ、片手に花を持ってぴょんと飛び上がる愛らしい小人さん。この小人さんは、白黒のカットで、各絵本の表紙カバー見返しにちょこんと登場しています。トレードマークかもしれませんね!

小ぶりなサイズが愛らしい各絵本の表紙カバーを外せば、布張り、ではないのですが、キャンバス地のような紙張りで、3冊それぞれベージュ(『Töpel-Hand』まぬけなハンス)、水色(『Der Schweinehirt 』ぶたばんのおうじ)、レンガ色(『Die Prinzessin auf der Erbse 』豆つぶのうえのおひめさま)、と、きれいな装丁。一切のタイトル文字やイラストはなく、いさぎよいシンプルさ。
これは邦訳版も同じです。


邦訳版を読んで
アンデルセン童話・1『まぬけなハンス』

クリックで拡大します。アンデルセン童話・1『まぬけなハンス』ハンス・クリスチャン・アンデルセン作 ヨゼフ・パレチェク絵 偕成社

ミニ絵本ながら、パレチェクさんのあでやかで鮮やかなイラストが、とてもいきいきとたっぷり描かれていて、ヨゼフ・パレチェクさんの魅力がぎゅっと凝縮された感じの絵本です。
物語は、三人兄弟のすえっこの、ちょっとまのぬけたハンスの愉快痛快なお話です。
できのいい二人の兄とはちがって、お城にいこうにも、父親から馬をもらえなかったあわれなハンスは、それならと、自分のヤギにまたがって颯爽と出かけます。
途中カラスの屍骸や、かたっぽの古い木靴やどろなど、一見とんでもない「いいもの」を携えて、あきれる兄たちをものともせず、嬉々としておひめさまにお目通りを願います。そして・・・。

おひめさまの献立がひなどりのソテーならば、ハンスの即興メニューはカラスの木靴なべのソテー、どろソース添え。
まさしく割れ鍋に綴じ蓋、かも。
美しいけれど、こういうナンセンスタイプのおひめさまは、フェアリーテイルには珍しい部類なのでは、と思ったりもするのですが、どうでしょうか。その分新鮮で、無邪気にあっけらかんと楽しめるので、なかなか好きです。ラストの締め方も好み。そして、たなぼた式になんとなく何度でも何度でも助けてもらえるほかの昔話の男性主人公とはちょっとちがって、のらりくらりと見えても最後まで自力で頑張っているところが頼もしい!
一見トンチンカンに見えてその実機転の利くハンスは、なかなかの伊達ものかもしれませんね(?)

ヨゼフ・パレチェクさんの描く、明るくさわやかでりりしい青年ハンスと、すらりと美しいおひめさまがナンセンスで洒落た物語にぴったりの美しい絵本。


アンデルセン童話・2『ぶたばんのおうじ』

クリックで拡大します。アンデルセン童話・2『ぶたばんのおうじ』ハンス・クリスチャン・アンデルセン作 ヨゼフ・パレチェク絵 偕成社

 

王子さまもおひめさまも、宝物も魔法の道具も出てくる、盛りだくさんで、見所たっぷりの、あっけらかんとした愉快なお話しです。
ただ、昔話の多くのおひめさまたち・・・青年主人公たちの憧れの高嶺の花的とやかおひめさまも、自ら主人公で苦難を乗り越える開墾者的たおやかおひめさまも、最後はほほえむめでたし物語の多い中では、このお話のおひめさまの設定は、ちょっと変わっているといえるかもしれません。
少々つれないくらい一本きっちりとスジをつらぬいた王子さまも、昔話的には変り種かも(?)。
まさしく自分のまいたタネ、ということでしょうか。世の中そうそううまくはいかないゾ、という人生の教えみたいなものを、こどもたちは知らぬ間に楽しく受け止め、心の準備にとりかかる、かも、しれません。

このお話の締めくくり方、ポロロンとメロディの聞こえてきそうな余韻も好きです。

ヨゼフ・パレチェクさんのイラストは、ミニサイズながら迫力満点。細やかに描き込まれた木々や草花の美しさ、選び抜かれた色使い、すらりと美しいおひめさま、すっくとりりしい王子さま、ずんぐりとコミカルな王さまの、いきいきと豊かな表情、・・・見開きのページ全体を効果的に使って、レイアウトを考え抜かれた、流れるように美しいイラストが、物語を華やかに盛りたてています。ひたすら美しいです。
原画の美しさは、ほんとうにいかばかりなのでしょうね…。

上▲でも述べましたが、ドイツ語版洋書の3冊セットの化粧箱の表紙は、この『ぶたばんのおうじ』の一場面を表紙のためにあらためて描かれたものです。

 


アンデルセン童話・3『豆つぶの上のおひめさま』

クリックで拡大します。アンデルセン童話・3『豆つぶの上のおひめさま』ハンス・クリスチャン・アンデルセン作 ヨゼフ・パレチェク絵 偕成社

なんて清楚で可憐な寝顔でしょう。『豆つぶの上のおひめさま』です。見ているこちらまでうっとりと夢の中・・・。

ページを開けば、これぞヨゼフ・パレチェクさんの色使い、見開きページごとに、オレンジ、赤、紫、藍・・・と、魔法のように美しく重ねられ、とりまとめられたテーマカラーを堪能できると思います。

お話も、これぞ昔話の王道路線、ぽつんとひとつぶの豆つぶの上に、しきぶとんを20まい、はねぶとんを20まいと、うやうやしく重ねられ、その上に寝かされたおひめさまが、翌朝寝心地をたずねられるという、あのフェアリーテイルを、パレチェクさんの美しく華のあるイラストで満喫できると思います。


3冊シリーズ一連の表紙から裏表紙まで
この3冊のシリーズ、それぞれ、表紙扉をひらいた一ページめと、裏表紙から開いた一ページめに、ヨゼフ・パレチェクさんのお描きになった、額縁に入った感じの花 ( 植物 ) のイラストが真ん中にあります。
本文とはあまり関係なさそうなので、なんとなく読み飛ばすところですが、ふとつぶさにながめてみると、『豆つぶの上のおひめさま』 では、最初の白いきれいなエンドウの花が、ラストでは実を結んだ豆になっていて、パレチェクさんが、お話の意味をさりげなくきちんとくみとった表現になっているのがわかります。
それではと、『まぬけなハンス』 と 『ぶたばんのおうじ』 の表紙・裏表紙から、それぞれ一ページめをあらためて開いてみると、・・・最初の美しい花が、物語に沿うようにちゃんと変化していて、興味深いです。

裏表紙は、それぞれのおひめさまのお顔が一枚の写真のように描かれていて(このおひめさまの表情、帽子や花冠などの頭にもご注目くださいね)、パレチェクさんが、表紙から裏表紙まで、すみずみまで細やかなこだわりと情熱をもって、シリーズでお描きになったのだな、と、わかります。

もし、お近くの図書館に蔵書があれば、ぜひぜひ親子でごらんになってください!
ぜひぜひぜひとも、これからの子どもたちにも手にとって触れさせてやりたい、芸術的な美しい手のひら絵本。
アンデルセン生誕200周年を祝って、どうぞぜひぜひ復刊・重版・再版なさってくださいませ、出版社さま!

初出メモ:2004-11-07 07:26:34

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