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1980年『ソリマンのおひめさま』

初版 1980年
タイトル 『ソリマンのおひめさま』
テキスト

Karel Capek

イラスト Josef Palecek
出版社訳≪シンプルに 集英社
◆くわしく
原書 子供のための世界名作童話21
『ソリマンのおひめさま』
カレル・チャペックさく
ヨゼフ・パレチェックえ
千野栄一やく
集英社
品切れ
大きさなど※

児童書、ハードカバー。
カラー、白黒、77p
約21.5*15.5センチ

bk1 オンライン書店ビーケーワン:こどものための世界名作童話 21 
1984年ドイツ語版 『Die Prinzessin von Solimanien▼』
Capek, Karel
Palacek, Josef
版元表記2社あり 
1984年
bohem press,Zürich /
(übrige länder)Herder Verlag Wien
(österreichische (オースリア)Ausgabeとして)

 


原書『ソリマンのおひめさま』を見て
カレル・チャペックさんの『九つのお話ともう一つヨゼフ・チャペックのおまけのお話』(主な邦題、『カレル・チャペック童話全集』(青土社)、『長い長いお医者さんのお話』(岩波書店))の中の一つの「とってもながーいお医者さんの童話※」の中の、そのまた一つのお話(挿入話)に、ヨーロッパを代表する画家のヨゼフ・パレチェクさんがこの絵本のために新しくイラストを書き下ろしてくださったもの、です。(※タイトルは田才益夫さん訳の『カレル・チャペック童話全集』(青土社)のものに基づいていますくわしくは◆こちら)
さらに、それをチェコ語から千野栄一さんが翻訳なさった特別の、幻の、おしみなく情熱の注がれた逸品!
もうそれだけで夢のような、溜息がこぼれそうな作品です。

 

↑表紙のイメージはこんな感じでしょうか・・・

とりわけヨゼフ・パレチェクさんの美しいイラスト、表紙のエキゾチックなおひめさまの魅惑的な艶姿は、何度見てもほれぼれと魅入ってしまいます。

「とてもいそがしいパレチェック氏が『チャペックは好きだから、ことわるわけにはいかないな。』といって描いてくれた(千野栄一さんのあとがきより)」

 


物語とイラストについて
『ソリマンのおひめさま』の物語は、はるか海の向こう、南方の異教の国「ソリマン・サルタンくんしゅ国」を舞台としています。
主な登場人物は、その富める国王と病める深窓の姫君ズベイダ、そしてズベイダ王女の病気を治す一縷ののぞみとしてヨーロッパの本物の医者はかせ大先生を探すべく遣わされた家来一行のそばをたまたま通りがかったがばかりに治してさしあげねばならなくなった、気の毒なドクトル・きこりはかせ。
それぞれの腹のうちの思い込みと勘違いによる思惑の外れたり当たったり、震え上がったり奮い立ったり腕をふるったり斧をふるったりの、ユーモアと遊び心を随所にちりばめた愉快痛快なてんやわんやの鮮やかな物語です。

 

この、遠い異国の設定の作品たちの、南国の熟れた果実のような、したたるような美しさ、濃厚で妖艶な色つやの美しいこと!
原色というよりはもう少しこくのある深い色彩を重ねながら、それなのにはっとするような鮮烈な色づかい、まとまりと調和のとれた色彩と独特の文様が織り成すリズミカルなハーモニー・・・、ああもう、目も身も心も奪われます。
しかも魅惑のカラーだけでなく、点と線と塗りの部分を自由にあやつるモノクロのカットもこれまた豊富で、贅沢のきわみ。
モノクロの挿絵は、カラーであったものを白黒に印刷したものではなく、はじめから白黒印刷用に、線画で描き込まれたもので、パレチェクさんのカラーの芸術家魂と、白黒の職人技の、両方をあますことなく堪能できます。

 


訳者千野栄一さんのあとがきについて
さらに、千野栄一さんによるあとがきは必見で、千野氏とパレチェク氏の素敵な出会いにまで触れてくださっている嬉しさ!気が遠くなってしまいそうです。
この『ソリマンとおひめさま』をめぐる千野栄一氏のチェコのチャペック博物館でのエピソード、それからヨゼフ・パレチェクさんご本人のアトリエでのエピソードなどは、『ビールと古本のプラハ』(白水Uブックス) にも少しおさめられています。表紙もパレチェクさんによるもの(「秋」、1995年のサインあり)で、必見かも。
1984年ドイツ語版『Die Prinzessin von Solimanien 』 について
下記1984年のこちら▼もご参照ください。
この美しすぎる幻の作品を、日本の子どもたちだけが独り占めしていてよかったのかしら、と、もったいなく思うこともあったのですが、違いました。
1980年日本での出版の後、1984年に、ドイツなどで絵本として出版なされたようです。
タイトルは、
『Die Prinzessin von Solimanien 』 。
版元は、bohem press社ならびにHerder Verlag 社とあります。
ドイツ語のテキストのコピーライトは、Atrium Verlag, Zürichとあります。
これは、1967年出版の、パレチェクさん挿絵のチャペックさんの童話『Seltsame Geschichten von Räubern und Polizisten, Briefträgern und Prinzessinnen, Drachen und anderen Tieren.◆』のテキストのコピーライトと同じです。ちなみにこの1967年の児童書の本文イラストはすべて白黒の線画で(カラーは表紙と裏表紙のみ)、おさめられている6編のお話の中に、「ソリマンのおひめさま」はありませんでした。
1984年『Die Prinzessin von Solimanien』***(『ソリマンのおひめさま』ドイツ語版)
※編集の都合上1984年にとんでいます。
初版 1984年
タイトル 『Die Prinzessin von Solimanien』
テキスト Capek, Karel
イラスト Josef Palecek
出版社

bohem press,Zürich
(übrige länder);推定、ドイツなど。オーストリアを除く他の国向け

Herder Verlag Wien
(österreichische (オースリア)Ausgabeとして);推定、オーストリア国内向け

ページ数、版型、内容などは同じ

大きさなど※

ハードカバー
カラー、32p。
約29.5x20.5cm
絵本形式
オリジナル邦訳の白黒カットはなし。表紙も異なる

その他 カレル・チャペックさんのドイツ語テキストのコピーライトは、Atrium Verlag, Zürich
(同じくカレル・チャペックさんテキスト、ヨゼフ・パレチェクさんイラストの、1967年出版作品『Seltsame Geschichten von Räubern und Polizisten, Briefträgern und Prinzessinnen, Drachen und anderen Tieren.◆』のテキストのコピーライトと同じ)
邦訳(原書) 『ソリマンのおひめさま』
集英社
1980年、品切れ
上記1980年のこちら▲もご参照ください。

ドイツ語版『Die Prinzessin von Solimanien』を見て
 
 

↑表紙のイメージはこんな感じでしょうか・・・

入手したドイツ語版絵本は、なんと表紙が青い海と帆船のイラスト!
邦訳の『ソリマンのおひめさま』の、緑色の枠の中でたたずむ、あでやかなおひめさまのお姿ではなかったのです。
ので、はじめ違う本かと思ってしまうほどでした。
ちなみに、青い海に、きこりを乗せた船の浮かぶ洋書の表紙は、邦訳の中にもそっくりな場面があるものです(邦訳32-33ページ)。
ただし、全く同じものではないので、もしかすると、ヨゼフ・パレチェクさんが新しく洋書の表紙として描きあらためなさったものかも!(邦訳の32-33ページと同じ海のイラストは、洋書の本文中にありました。トリミングしてあるようで、大きさが多少違います)

洋書の本文のイラストは、邦訳中のイラストとほぼ同じだと思います。ただし、もともとのサイズが、洋書の方が大きいので、イラストもゆったりと、克明に見えるように思います。しかもトリミングがなされていたり、日本語版の場面から一部抜き出して構成を変えていたりしている部分もあるので、同じイラストながら、まったく別の仕上がり、という感じです!

しかも、洋書には、ページ数(32ページ)の関係か、白黒のカットが全くないのです。カラーの場合も、邦訳にはあるのに、洋書では見当たらないものもあって、邦訳がかなりお得で贅沢な作品だったのでは、と思われます。

ちなみに、版元のbohem press社は、どうやらチェコと関連のある国際的な出版社のようで、パレチェクさんの絵本では、他に1983年『Die kleine Abendmusik 12 Gutenachtgeschichten◆』、1985年『Das Lied vom Apfelbaum.◆』を出版しています。
ですので、本国チェコでも原書となる出版があったのでは、と、思われますが、不明です。ご存知の方教えてくださいませ。
さらに、私物のbohem press社版の絵本の奥付に記載のあったもう一つの版元Herder Verlag社は、オーストラリア(限定)向け販売の版元のようで、やはり『Das Lied vom Apfelbaum.』のもう一つの出版社でもあります。

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