■ヨゼフ・パレチェクさん作品
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1976年『Pummel.』***邦訳『ちびでぶカバくん』

初版 1976年
タイトル 『Pummel.』
テキスト≪シンプルに Libuse Paleckova(Palecek)
◆くわしく
イラスト Josef Palecek
出版社≪シンプルに Nord-Süd verlag  AG, Gossau Zürich,Humburg und Salzburg
◆くわしく
大きさなど※ ハードカバー版
カラー、28p
約22.5*22.3センチ
アマゾン洋書※

『Pummel.』
ペーパーバック
Dressler, Hbg.
ISBN: 3858250503
(1992/11)

邦訳
≪版元

オンライン書店ビーケーワン:ちびでぶカバくん

邦訳
『ちびでぶカバくん』
リブシェ・パレチコヴァー作
ヨゼフ・パレチェク絵
千野栄一訳
フレーベル館
1981年
品切れ
◆くわしく

邦訳大きさなど※ ハードカバー
カラー、28p。
約24.8*24.8センチ
アニメーション

1977年
Tylinek
監督;Libuse Paleckova
デザイナー;Josef Palecek
KF a.s. - Jiri Trnka Studio
11分, 35 mm、カラー
レン・コーポレーションさんの◇HPにご紹介あり

 

1990年新装版
≪版元についてシンプルに
『Stupsi : Die Geschichte vom kleinen Flusspferd, das auf der Suche nach sich selbst ist▼』
Verlag Jungbrunnen, Wien-Munchen
◆くわしく

カラー、32p
約24.7*25.8センチ
(2場面=4ページイラストが増える)
新タイトル、新イラスト、新テキスト(未邦訳)


原書を見て
表紙
オフホワイトの地に、黒いしっかりとした輪郭線でラフに枠が描かれ、その中に真っ赤な夕日(朝日?)と、ほっぺの桃色の可愛いちびでぶカバくんが、水に浸りながら、にっこりと草をはんでいる表紙です。
クレヨンをお使いなのでしょうか、パステルでしょうか、ヨゼフ・パレチェクさんならではの、深みのある色使いの、温かでのびやかなタッチ。
ところどころで、植物やちょうちょの羽の飾りに用いられている、ペイズリー模様(勾玉模様、渦巻模様とも呼ばれるそうです)のような文様が、ちびでぶカバくんたちの点々の眉や、可憐な草花とも調和して、リズミカルでどこかなつかしく、心地よい独自の雰囲気をかもし出している感じです。
邦訳を読んで
カバー見返しの、千野栄一さんの訳者のことばのひとつひとつがとても心に響きます。美しいイラストについても、
「・・・この絵を描いたパレチェックはいつも心に暖かさを持った優しい人で、その気持がどの絵にもあふれているとは思いませんか?」
とあり、お二人のすばらしいお人柄と交流がしのばれて、感激です。

物語は、ちびでぶカバくんことフリネックの、「自分探し」の遍歴を楽しく描いた物語。

ちゃいろがわのカバむらに、家族や仲良しのオテルカたちと住むすむフリネックは、いたずらと歌うことが大好きな陽気なカバ。
ところがある日、ひょんなことから自分のことがすっかりいやになって・・・。

「あなたはようきでかわいらしいカバさんよ」
バラはやさしく諭しますが、フリネックはききいれません。
「りっぱなカバだというのに、それいじょうなにがほしいの?」

「ちょうちょみたいにかろやかでうつくしくなりたい・・・」
まほうのバラは、ながいあいだかんがえていましたが、やがて、
「わたしのにおいをかいでごらんなさい」
といいました。
・・・。

フリネックは、ちょうちょになってふわりと舞い上がり、カバむらの上までやってきますが、おばさんカバと遊んでいるオテルカは気づきません。
そのとき、フリネックにいちわのとりがおそいかかって・・・。


邦訳のフリネックの名前について
ところで邦訳のちびでぶカバくんの名前はフリネックなのですが、これは原書『Pummel.』が1976年に出版された翌年1977年に制作されたチェコアニメ・『Tylinek』(←左記表参照)と、言葉の音が似ています。訳者の千野栄一さんは、チェコ語の原文から直接翻訳なさったのかもしれません(チェコ語の原本もあったのかも?)!
ちなみに、ドイツ語原書『Pummel.』のちびでぶカバくんのお名前は、「Pummel.」、なかよしの女の子のカバの名前(邦訳はオテルカ)が「Pummeline」なのでは、と思われます(ドイツ語が読めないので推測・・・)。
「原本ほるぷ世界の絵本」について
また、原書『Pummel.』が、なんと図書館に蔵書があったので、喜んで早速借りたのですが、1994年第三刷(※↓下記表参照)で、日本の「原本ほるぷ世界の絵本」のために再版されたもののようです。なんとパレチェクさんデザインのかわいい「原本ほるぷ世界の絵本」マークと、タイトルの下にパレチェクさんのサインの印刷が入っていました!
1977年アニメーションフィルム化
←左記表をご参照ください。
2006年4月、日本でもついに上映。2007年2月21日、待望のDVD化。他のチェコのアーティストのアニメ作品とともに楽しめます。
1990年新タイトル・新テキスト・新イラストの『Stupsi』について
下記1990年欄▼もご参照ください。
さらに、1990年にはすべてを新しくなさった、『Stupsi : Die Geschichte vom kleinen Flusspferd, das auf der Suche nach sich selbst ist』が出版されています。


ところでまったく余談ですが、ほるぷ版再版当時の1994年といえば、すでに新・タイトル・イラスト・テキストの『Stupsi』が1990年に出版されていたと思うのですが、ほるぷ版ではもとの『ちびでぶカバくん』原書『Pummel』を採用なさっています。

また、「原本ほるぷ世界の絵本編集委員会」編集の、世界の絵本の作家たちのサインとメッセージとイラストが1冊にまとめられた、とてもとても贅沢な図録『A Collection Of Favorits Illustrations' Works』には、『ちびでぶカバくん』から抜粋のイラストと、ヨゼフ・パレチェクさんの温かな手描きのメッセージがおさめられていました!
涙が出るくらい豪華なアルバムです。もしかすると、日本の子どもたちのために、より親しまれている旧『Pummel』をお選びになったのかもしれませんね!


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1990年『Stupsi : Die Geschichte vom kleinen Flusspferd, das auf der Suche nach sich selbst ist』***邦訳『かばのティリーネック』

※編集の都合上、1990年にとんでいます。

初版 1990年
タイトル 『Stupsi : Die Geschichte vom kleinen Flusspferd, das auf der Suche nach sich selbst ist.
テキスト≪シンプルに Libuse Paleckova(Palecek)
◆くわしく
イラスト Josef Palecek
出版社≪シンプルに Verlag Jungbrunnen, Wien-Munchen
◆くわしく
大きさなど※

ハードカバー
カラー、32p
約24.7*25.8センチ
(2場面=4ページイラストが増える)

邦訳
≪版元

『かばのティリーネック』リブシェ・パレチコヴァー作 ヨゼフ・パレチェク絵 プロジェクト・アノ 2006年


邦訳
『かばのティリーネック』
リブシェ・パレチコヴァー作
ヨゼフ・パレチェク絵
木本栄訳
プロジェクト・アノ(◇レン・コーポレーション◇アット・アームズの共同出版)
2006年
◆くわしく

※大きさなど ハードカバー
カラー、32p
24.7*26センチ
参照アニメーション 1977年
Tylinek
監督;Libuse Paleckova
デザイナー;Josef Palecek
KF a.s. - Jiri Trnka Studio
11分, 35 mm、カラー
レン・コーポレーションさんの◇HPにご紹介あり

『メッセージ・フロム・チェコアート』
(アーティスト・ハウス)について

表紙は、『かばのティリーネック』の本文の一場面です。チョウチョになったティリーネックが、小鳥から逃れるもののすっかりおびえてしまう場面。

オンライン書店ビーケーワン:メッセージ・フロム・チェコアート

2006年、チェコアートの、過去、現在、未来が、一冊にぎゅっとつまった、羅針盤のような書籍が出版されました。チェコアニメーション、チェコ絵本をはじめとして、チェコの人形劇、建築、陶芸、家具、美術出版社、ビール・・・などなど、知りたい聞きたいチェコアートのお話が、歴史をふまえた解説で、あるいはインタヴュー形式で、豊富な写真入りで、いろいろな角度から楽しめます。

ヨゼフ・パレチェクさんについては、「美術監督で観るアニメーション」の美術監督の一人として、『かばのティリーネック』、『けしのみ太郎』、『魔法の果樹園』などなどがフィルム写真入りで解説されているほか、「チェコのこどもの本」の中で、現在もっとも活躍しているイラストレーターの一人として、ご紹介されています。
上記の「チェコのこどもの本」の歴史にもとづくくわしい解説の中には、ヨゼフ・ラダ、ヨゼフ・チャペック、イジー・トゥルンカ、アドフル・ザーブランスキー、ミルコ・ハナーク・・・などの作家の方々についても触れられていて、貴重な絵本の資料もいっぱい、読むのも見るのも嬉しくなってしまいます!


原書を見て
表紙

1976年初版の『Pummel.▲』をもとに、イラスト・テキスト・版元をあらためた絵本『Stupsi : Die Geschichte vom kleinen Flusspferd, das auf der Suche nach sich selbst ist』が、1990年に出版されています。
こちらの表紙は全部で4頭のちびでぶカバくん(ティリーネック)が、まんまるおめめでほほえんでいるイラスト。
それぞれ、身体が青い鳥になったティリーネック、赤い魚になったティリーネック、そのまんまの花一輪くわえたティリーネック、そして、タイトルの文字の『Stupsi』の「」の文字の丸い点の上に、玉乗りのようにちょこんと立った、羽をひろげたちょうちょになったティリーネック。
ドイツ語が読めないので詳細不明なのですが、「Stupsi」はティリーネックの名前と思われ(なかよしの女の子のカバの名前がPummelになっているのでは、と推定)、イラストとタイトル、名前だけでなく、テキストそのものも全く新しくなっているようです。
イラストは、『pummel』のモチーフを引き継ぎながら、新しいタッチで鮮やかに丹念に描きあらためた感じで、新しい場面が2場面増えています。(ラスト間際で、ちびでぶカバくんが戻っていく場面が、2場面続けて描き足されている感じです)。
ページ数にすると4ページ(2見開き分)増えていて、物語をより深く楽しむことができそうです。

裏表紙は、1976年『Pummel』、1990年『Stupsi』ともに、魔法の花が描かれています。『Pummel』ではけしの花のような、きれいな普通のピンクの花に描かれていましたが、『Stupsi』では、よく似たモチーフの花びらの花の真ん中に、擬人化されたやさしい人の顔が描かれています。


本文を眺めて
上記1976年『Pummel.▲』もご参照ください。

本文イラストは本当に夢のように美しく、明るく濃厚で繊細な色彩で、太陽の国の神秘的な密林を思わせる独特の魅力あふれる風景が描かれ、表情豊かで愛嬌と元気いっぱいの登場人物たちが、いきいきしたレイアウトも楽しく、絵本の中をぴちぴちととびはねるように描かれています。
見開き構成を巧みに用いて、片側一面にメインのイラスト、片側にテキストと、そのまわりに少しずつ変身するさまを示したティリーネックのカットがテンポよくちりばめられていて、こまわりのフィルムをみているよう。
以前アニメ化された「ティリーネック」が、この作品『Stupsi』の中で装いも新たに美しく結晶化しているようです。


邦訳『かばのティリーネック』を読んで

 


2007年2月21日、待望のDVDが発売に!
他のチェコのアーティストのアニメーションとともに楽しめます。

2006年、アニメーションの上映にあわせて、ついに『stupsi』の翻訳絵本『かばのティリーネック』(プロジェクト・アノ)が出版されました!
邦訳の表紙は、本文中のイラストと同じものが用いられ、原書『stupsi』の表紙とは異なっています。原書のタイトルも洒落ていましたが、邦訳のタイトル「かばのティリーネック」の文字のデザインもさらに遊び心たっぷり。さりげなくカバの色としっぽと足のデザインを組み込んでいるところは、邦訳のオリジナルでしょうか。原書の「」の文字の上にちょこんと止まっていたちょうちょのかばくんも、邦訳の「」の文字の上にちゃんとちょっこり立っています。
原書を大切にしながら、邦訳ならではのこだわりも感じさせる、嬉しい心遣いですよね!

大きさ、ページ数、イラストとテキストのレイアウト、奥付表記の場所などなど、すみずみまで原書に忠実で、細やかな配慮のゆきとどいたとっておきの一冊!

物語は、基本的には1976年『Pummel』と同じティリーネックの「自分探し」の遍歴の物語。そしてさらに細やかになめらかに、小さなエピソードが広がった感じがします。

いたずらが好きで歌うことが好きであかるいやんちゃなティリーネックは、みんなに愛されるかばでした。
ところが、ある日、ひょんなことから自分のことがつくづくいやになって・・・。

「あなたは今までだって、ずっとかばだったじゃないの。いつも明るくて、元気いっぱいだったわ!」
ピンクの魔法の花はなぐさめますが、ティリーネックは聞き入れません。
「あなたはすてきな、あいらしいかばなのに・・・」
「ぼく、かばなんてもういやなんだ。もっと小さくてきれいないきものになりたい。そうだ、ひらひらのチョウチョなんかいいなあ!」
花は、しばらくかんがえると、こういいました。
「わかったわ。わたしのかおりをかいでごらんなさい!」
・・・。

美しいチョウチョになって、かばのむれのいるところまで飛んでいきますが、ひとりぼっちでさみしそうなオティルカはまったく気づきません。
そのかわりに一羽の鳥が、ティリーネックに気がついてしまったのです・・・。

1976年の『pummel』のラストに、さらにじっくりと描き足した結末が、豊かで幸せな余韻をもたらします。

「自分」を探したティリーネックが、川のほとりを歩いて、そして駆け出していく・・・その先さえも、読み手の中につむいでゆくような、心に響く美しい絵本。
ティリーネックがいきいきと動き出すアニメーションとあわせて、親子で繰り返し楽しみたいですね!

『かばのティリーネック』リブシェ・パレチコヴァー作 ヨゼフ・パレチェク絵 プロジェクト・アノ 2006年

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