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『にぎやか 色の ちび』 ミラ・ローベ作 ズージ・ヴァイゲル絵 伊東明美訳 税込み1680円 株式会社エルアイユー (HPで購入できます!) |
「にぎやか色のちび」って、何でしょう? 愛らしいぬいぐるみのようなにぎやか色のちびが、自分が何者か、自ら答えを捜し求めて、さまざまな動物たちをたずねます。
「きみはぼくたちのなかまじゃないよ」 動物たちの言葉に心を痛め、自分が何者かわからないもどかしさに涙をこらえて走りながら、ふいにちびはぴったりと立ち止まります。 ちびは悟ったのです。
「そうか!」 ・・・
「そのままでいいんだよ。あなたのままでいいんだよ」 というメッセージを、歌うようにリズミカルに、はずむように軽やかにさわやかに描いた、美しい古典絵本。 読むたびに、すっくと背筋が伸びるような、勇気と力をあたえてくれる大切な絵本です。
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あなたは、自分が誰だかわかりますか?(人間ですよね?) ところで、「にぎやか色のちび」って何でしょう? うま? いぬ? ろば? うさぎ? 愛くるしいピンクのころんとした体、ふさふさの青い頭と尻尾、オレンジ色の長い耳、まあるいお目目にまあるい手足・・・可愛い手作りのぬいぐるみみたいな、正体不明のにぎやか色のちびは、自分が誰だか知らないことに、ある日突然気がつきました。 鳥が歌い、花が咲いても、ちびはもうちっとも楽しくありません。
「おはよう、うまさん! おはよう、こうまさん! わたし、あなたたちににていない? わたしね、じぶんがだれだかしりたいの。 あっちむいて、こっちむいて、 こっちむいて、あっちむいて、 わたしのなかまをさがしているの」
ちびのふさふさの髪のゆれるさまは、確かにうまのたてがみに似ています。 けれどうまも、ひつじも、やぎも、 「ちがうね、きみはぜったい、うまじゃない! ほんとにあなたはいったいだあれ?」
そこでちびは、自分が誰だか知りたくて、今度はボートで、水にすむ魚たちをたずねます。 けれど魚たちの答えも、陸の鳥たちの答えも、街なかをつなにひかれて散歩する犬たちの答えもみんなみんな同じでした。 「きみはぼくたちに似ていない。きみはぼくたちの仲間じゃない!」
走りながらちびは今にも涙があふれそう。 そのとき、 ちびは気がついたのです。 ・・・
テキストはオーストリアの有名な児童文学作家の、ミラ・ローべさん(1913-1995)。 イラストは、ミラ・ローべさんとコンビをくんで、数々の作品をさまざまな手法で描いてきた、チェコ生まれの有名な画家、ズージ・ヴァイゲルさん(1914-1990)。 華やかなコラージュと、軽やかな水彩を組み合わせた、どこかなつかしいタッチのイラストは、みずみずしいカラーと、白黒のページが交互に組まれた構成で、由緒ある古典絵本の雰囲気です。
それもそのはず、原書の初版は1972年で、各国語に訳されて、30年以上も愛され続けてきた絵本だそうです!
美しいイラストに、くりかえしの楽しいリズミカルなテキスト、つぎつぎとはずむような展開、そしてモノクロのページなのに、大人も子どももはっとする、ちびの悟りの場面、続くカラーの本当に心にも鮮やかな場面・・・長く愛され、読み継がれた理由が、絵本を読んだらすぐに納得できました。
「ほかの子と違っていていいんだよ。あなたはあなたのままでいいんだよ」 というメッセージを、あらゆる子供と大人に向けて、わかりやすく親しみやすく心を込めて表現した絵本です。 自分自身を見つめ、認め、自分自身の足で立ち、歩くこと。 ちびの一つ一つの行動が、鮮やかな色彩と軽やかな文章で、明快に読み手を導きます。
巻頭と巻末には、ちびのぬいぐるみの作り方がのっていますので、読後に親子で挑戦してみるのも楽しいですよね!
さて。 この、なんともいえず愛嬌と温かみのある、正体不明のかわいいちびちゃん、『にぎやか色のちび』。 30年以上も、そして今なお愛され続けているという、この色鮮やかな絵本が読後も忘れられず、 訳者の伊東明美さんのあとがきにあった、HPをたずねてみました。
それがこちら、
「伊東明美の翻訳者の小径」。
↑↑↑ ぜひクリックして、ウィーンの香りただよう素敵なHPをお楽しみください。 さらに、トップページの可愛いちびくんをクリックすると、『にぎやか色のちび』について、訳者の方ならではのとっても詳しいご説明がこちらでご覧いただけます!
本当に、訳者の伊東明美さんがどんなにちびくんを大切に思っているか、この絵本がドイツ語圏でどんなに愛されているか、よく伝わってきて感動。 しかも、ビーケーワン、アマゾンなどでは、購入できないということになっていますが、なんと、この絵本は直接出版社の株式会社エルアイユーさんのHPで、ご購入できるそうなのです。よかった! しかも、送料はエルアイユーさんがご負担くださるのですって!こちらをごらんになってくださいね。
エルアイユーさんは、まだできたての新しい出版社さんだそうで、大人の事情うごめく複雑な取次ぎ事情などから(笑)、一般の書店などの販売ルートにのっていないそう。 そのあたりの事情などもふくめて、くわしいことは、こちらをぜひごらんになってください。
さらに、『にぎやか色のちび』をみんなで応援する楽しいHP、
「にぎやか色のちび★ちびとなかまたち」
もあって、その中の「にぎやか色のちび・・・誕生物語」では、ちびくんの物語を日本語に訳すに当たっての興味深いエピソードや、協力者の方々の情熱的なご活躍がごらんいただけます。
そんな苦労や、出版業界のいろんな困難を乗り越えて、訳者の伊東明美さんと、生まれたての出版社「エルアイユー」さんが、さらに続けてご紹介してくださったのが、 『赤いロッコと緑のギル』。
『にぎやか色のちび』のミラ・ローべさんとズージ・ヴァイゲルさんの同じコンビによる古典的名作(訳者はもちろん伊東明美さん!)なのですって! これまた愛されて読み継がれてきた名作絵本を、20年分の思いと共に日本語で読めるなんて、素敵!ですね。 ぜひクリックして、絵本の詳細をごらんになってくださいね。
そしてぜひ読んでみたいなと思われましたら、ぜひお住まいの図書館にリクエストして、この素晴らしい絵本をどんどん子どもたちのそばに、それからママたちのおそばにおいてもらいましょう。さらに、お気に召しましたら、株式会社エルアイユーさんのHPへどうぞ。
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さて、先日版元エルアイユーさんに注文した『にぎやか色のちび』と、『赤いロッコと緑のギル』が、嬉しいことに早くも届いたので、早速子供たちと一緒に読んでみました。 (絵本の題名をクリックしていただくと、翻訳者の伊東明美さんのHPの、絵本の紹介のページで、くわしい内容がごらんいただけますので、ぜひごらんになってくださいね)
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『赤いロッコと 緑のギル』 ミラ・ローベ作 ズージ・ヴァイゲル絵 伊東明美訳 税込み1680円 株式会社エルアイユー (HPで購入できます!)
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見た目は瓜二つ、性質は全く逆の鏡合わせのような二つの部族が、互いをよく知らないまま憎みあっていました。ところがそんなある日、それぞれの一族の無邪気で明るい子ども、ロッコとギルが、むれからはなれてばったり出くわしてしまって・・・。
見えるものだけに惑わされず、目に見えない大切なものを、しっかりと自分の目で見る大切さ、お互いを知り、深く分かり合う喜びを、ファンタジーに重ねて、みずみずしく描いた深い物語。
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で、早速届いた絵本を、・・・まずは私がチェックと称して、こっそり一人で読んでみたのです(笑)。 ふんふん、・・・テキスト多めで、小説みたいな感じ。お魚みたいなゲッギというのは、作者のミラ・ローべさんが作り出した、架空の動物なのですね。
しかも互いに見た目もそっくりな関係なのに、 赤いロッコは泳ぐなんてもってのほかの「岩ゲッギ」、 緑のギルは山登りなんてとんでもないの「沼ゲッギ」という設定で、 お互いよく知りもしないのに憎みあっている、という食わず嫌い的な間柄なのですね。 果たして、6歳、4歳の幼稚園児が、見たことも聞いたこともない架空の動物を思い浮かべ、この少し複雑でややこしい設定を理解できるかなあ、と、正直、危ぶんだところもあったのですが・・・、
出来るものなのですね。
しかも、 「おもしろい」 「もう一回読んで」 と、言われてしまいました。結構長くて、口が疲れたのですが(笑)、そのかいはあった!
ここで、ミラ・ローべさんの巧みなテキスト運びにも感服ですが、その独特のゲッギの世界を見事にわかりやすく描き出した、ズージ・ヴァイゲルさんの力量にも敬服してしまいます。
ズージ・ヴァイゲルさんは多彩な画風をお持ちなのだそうですが、この『赤いロッコと緑のギル』のタッチは、『にぎやか色のちび』のコラージュを利用したような、カラフルでどこかクラシカルなものとは違って、 やわらかい線と明るい軽やかな水彩画の、比較的シンプルでユーモラスな画風に仕上がっています。原書『Die Geggis』の初版が1985年と比較的新しいためか、印刷もより鮮明な感じ。
ミラ・ローべさんのテキストですが、ややこしい設定のわりに、ズージ・ヴァイゲルさんの楽しいイラストと、訳者の伊東明美さんの的確な訳文に導かれて、すんなり独自の世界に入っていけます。
子供心にあこがれるちょっとした冒険と、未知の友だちとの出会いとけんかと仲直りが、これまた「ロッコとギル」という好奇心いっぱいの素直な子どもの視点で丁寧に描かれているので、子どもにもわかりやすく、親しみやすい感じです。
それでいて、仲間同士の大人が互いを理解しようともせず、あやまった誤解と偏見にもとづいて、いがみあい、その偏ったものの見方を子供たちにもせっせと植えつけている、という、架空のゲッキたちの閉塞した状態を、 見事に子供たちの「ロッコとギル」のふたりがはねのけ、自ら確認した事実と交わした友情により、協力して、大人たちの誤解をも解いてしまう、 という奥の深い筋書きは、読んでいて胸のすく爽快さです。
作者のミラ・ローべさんは、1913年ドイツのユダヤ人の家庭に生まれ、ドイツナチスの手を逃れて1936年パレスチナへ亡命、1940年にご結婚後2児の母となり、1950年一家でウィーンへ移住、フリーの作家となったそう。子どもの本を書き始めたのは1943年からだそうで、1953年よりグラフィック・アーティストのズージ・ヴァイゲルさんとコンビを組んだ作品を次々と発表し、多くの版を重ね、各国語に訳され、国内外の数々の賞を受賞した、そうです。1995年にお亡くなりになられました。
『赤いロッコと緑のギル』のほのぼのとしたラストに託された、ミラ・ローべさんの世界の子供たち、大人たちへの熱いメッセージ、平和への切なる思いを感じずにいられません。
で、これは余談ですが、読み聞かせのとき、 「いまのはどっち(のゲッギ)が言ったの?」 「ギルって緑のほう?ロッコって赤いほう?」 と、何度かきかれて、やっぱりちょっと4歳児にはややこしいかなーと、思ったりもしたのですが(笑)、いいことを思いつきました。 「ギル→日本語読みでごめんなさいですが、ローマ字つづりはGIRU、→つまり頭文字はG→GといえばGREEN(英語ですが)→緑色→沼ゲッギ」 「ロッコ→ROKKO→R→RED→赤色→岩ゲッギ」 と、覚えるのです。というか、 ドイツ語で、赤色はRot、緑色はGrün 、というそうですので、きっと、もともとそういう作者の意図の名づけなのではないかと、おそまきながらはっとしたりして(笑)。 ということは、ロッコとギルは、アッカとグーリン、とか、レドンとミドリン、とか、そういう感じのネーミングなのかなあ(笑)、と、考えたりして。
で、アマゾンドイツで一生懸命検索してみると、原書でも「Gil und Rokko」というお名前みたい。しっかり五つ星の書評がのっていて、現在も普通に流通しているようです。こちらも長く愛されているのですね。アマゾン洋書では、CDも販売されているようです。
さて、このような魅力的な絵本『赤いロッコと緑のギル』は、ネット書店などでは「お取り扱いできません」となっているようですが、エルアイユーさんのHPで直接購入できます。しかも、送料および郵便振替お支払い手数料を、エルアイユーさんがご負担くださるのです! つまり、書店で購入する場合と同じご負担金額で・・・、というエルアイユーさんの優しいお心遣い。お家にいながらにしてきれいな絵本が入手できるなんて、嬉しい限りですよね。
それから、『にぎやか色のちび』にも、『赤いロッコと緑のギル』にも、それぞれのユニークでかわいい主人公たちのマスコットの作り方が載せられていますので、ぜひ、お子様とご一緒にお作りになって、絵本の世界をさらに堪能してくださいね。 実はうちの三姉妹たちからも、つくってつくってコールというか、つくっていい?つくっていい?コールが特に長女からかかっていて(笑)、自分で作る気満々なので、一緒に挑戦してみました。
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ギルとロッコ。同じくハハ作。フェルト製。 20センチ×20センチのフェルトまるまるちょうど一枚で、身体が完成。 |
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これ、ちび です。3姉妹のハハ 作。布+フェルト。 |
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←3姉妹長女(6歳) 作。布+輪ゴム+ペン。針と糸未使用。 うしろは、決してのぞいてはなりませぬ(笑)。 |
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作りかけて置いておく時間が長かったので、3姉妹にことごとく愛されてさわりまくられて、フェルトの宿命、表面がけぱだってなんだかよれっとした出来上がりになっちゃいました。ので、決して近づいてはなりませぬ(笑)。
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『ぐるぐるっと町』 ミラ・ローベ作 ズージ・ヴァイゲル絵 塩谷太郎訳 学習研究社 品切れ
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お話は、とある森にくっついた町が舞台。 大人の大切な憩いの場、子どもの大好きな遊び場でもある森が、市長の突然思い立った都市開発の槍玉にあがり、つぶされてしまう!・・・ということになって、大人も子どもも、森の小さな生き物たちも、大きな木々も、みんなうろたえ、悲しみに沈みます。 みんなのなげきをみかねたお月様が、森のこびとの妖精のフッレウッレおばさんをよびおこすと、フッレウッレおばさんは、森の悲しみの声をたずさえて、市長のもとに向かいます。
市長の子どもたちだって、大切な森を守るべく、夜遅くまで知恵を振り絞り、朝早くからとびきりの作戦に打って出ます。 その方法がまたおおらかで楽しくてお見事! 美しいイラストとあいまって、とてもさわやかに鮮やかに心に残ります。
いつしか目の前の豊かさのために、見えない自然の豊かさを忘れてしまいがちな人間の大人たちへ届いてほしい、声なき自然と、小さき子どもたちからの、とても大切なメッセージ。
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ミラ・ローべさんと、ズージ・ヴァイゲルさんのコンビの楽しい読み物です。 イラストは、それはそれは見事な葉っぱのコラージュがたっぷりと。たぶん本物の葉っぱをどんな風にしてか、大胆に利用なさったと思われるのですが、葉脈のうつりもみずみずしく、あざやかな色彩に見惚れてしまいます。
それにしても『ぐるぐるっと町』、楽しい邦訳タイトルですね! 原書は『Das Stadtchen Drumherum』(Verlag Jungbrunnen,Wien-Munchen 1970) とあります。
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『なまけものの王さまとかしこい王女のお話』徳間書店
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上記『ぐるぐるっと町』と同じく、かつて学習研究社から 『ぐうたら王とちょこまか王女』として出版されていた楽しい児童書が、版元とタイトルも新たに、原書のズージ・ヴァイゲルさんのイラストを添えて、めでたい復刊となりました。
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『なまけものの王さまと かしこい王女のお話』 ミラ・ローベ作 ズージ・ヴァイゲル絵 佐々木田鶴子訳 徳間書店 2001年
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美食、飽食と運動不足で、ついに重い病気になってしまった王さま・ナニモセン5世を助けるために、元気でおちゃめな王女・ピンピが大活躍。 王さまの病気を治す本当にかしこい人を探して、城を抜け出し、森で、一人の少年・ガウデオと出会います。それは、ピンピがこれまでお城の中では一度も見たことも聞いたこともないような森の少年でした。 そして・・・。
随所にユーモアとウィットがちりばめられ、ちくちくと皮肉がきらめく、遊び心たっぷりの軽やかなテキストに、いきいきとした線画のイラストを添えた、愉快痛快爽快な読み物。 とてもうやうやしい文章で描かれるも、やることなすことすべて愚鈍で笑いを誘うナニモセン5世と、ひたむきに彼を案じる王女ピンピの、だんだん物事の本当の姿に目を見開き心を開いていく素直さとかしこさが、とてもさわやかで、魅力的。
最初から最後まで大真面目に面白い、由緒正しき現代のおとぎ話の決定版。
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原題は『KONIG TUNIX』(Verlag Jungbrunnen,wien/munchen 1979) と、あります。
祝・復刊です。 たぶん、小学生の時に学研版を読んだように思います。とはいえ、ほとんど内容を忘れていて、なつかしくてあらためて読んでみたら、 面白いのです!
ある国に、ナニモセン5世というなまけものの王様がいて、王女のピンバーネッラのおつきも含めると、実に333人もの家来を従えていました。 が、着替えから国事からすべて家来にまかせっきりで、靴下をはかせてもらうために足をあげておくことさえ、くたびれる大仕事。 名ばかりの国事は、昼食と夕食のメニューを決めること、よりやわらかい寝具を注文してみたりすること・・・。こうして、美食につぐ運動不足で、ついに重い病気になってしまいました。 病気の王様を本当に心配するたった一人の城の住人である、娘のピンピは、あわれな王様の病気を治す本物のかしこい人を探すべく、城から駆け出し、森で迷子になってしまいます・・・・。
これでもか、というくらい、ユーモアとひねりと皮肉のきいたブラックペッパーみたいな楽しい文章に、読めば抱腹絶倒、ホットになることうけあいです。 しかも、ミラ・ローべさんと黄金のコンビの、ズージ・ヴァイゲルさんのいきいきとした楽しい線画が、そそかしこにちりばめられて、くすくす笑いながらもすいすい読める、という感じ。
昔話みたいにはじまる、長めのお話だけど、読みだしたらあっという間。とまりませんからたまりません。 ピンピの可愛い活躍ぶり、影で笑いものにされているナニモセン5世の知らんぷり、というか、知らぬが仏、というより、怪しい高額のお医者さまの知ったかぶりに、本当に仏にされそうになった(笑)ナニモセン5世の死んだフリ、じゃなかった、死んだようにぐったりとなったさま・・・。のはずの、ナニモセン5世のイキギモをぬき、ついでに333人の家来のドギモもぬき、お城をすっかりヌケガラにした、愉快痛快なピンピと森の少年ガウデオのひとはだぬいだお芝居ぶり。 ・・・どうぞ、はじめから終わりまでひたすら面白いので、図書館などでぜひお読みください。
児童書ですし、読み聞かせにはくたびれそうですが、音読したら、実に楽しそうな文章があちこちにあるのですよ! 訳者の方の力量はもちろん、ミラ・ローべさんの原文が、本当に遊び心茶目っ気たっぷりで、抜群の面白さなのでしょうね。
文中のイラストは、もともとカラーだった原画を、モノクロで印刷したような雰囲気です。しかしながら、ズージ・ヴァイゲルさんの描くお茶目なピンピは元気いっぱいとびはねていて、読み手のこちらまでわくわくしてくる感じ! まさしく現代のおとぎ話にぴったりです。
本の小ぶりな大きさも愛らしいし、ぜひ、3姉妹がもう少し大きくなったら、自由に読めるよう、本棚にこっそりちゃっかり並べておきたい作品です(笑)。
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『クルリン』 ミラ・ローベ作 ズージ・ヴァイゲル絵 齋藤尚子訳 徳間書店
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クルリンは女の子がこしらえたお人形。ひょんなことからヒヨコ王子と雨のみずうみをただよい、古いむぎわらぼうしで雨宿りをしようとします。 けれど、そこには先客の気難しいカエルがいて、 「『わしの』ぼうしだぞ」 と、主張します。 クルリンはかまわず、困っている生き物たちをどんどん招き入れてやりますが、だんだん帽子はぎゅうぎゅうになってきて・・・。
一つ帽子の下でくりひろげられる、弱いものたちのおしあいへしあい、つばぜり合いと、助け合い、ゆずりあいを、愉快痛快スパイスたっぷりに描いた、お茶目で楽しい古典絵本。
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ズージ・ヴァイゲルさんは、チェコ生まれのいろいろな画風をお持ちのグラフィック・デザイナーなのですが、こちらの 『クルリン』は、みずみずしい筆の跡ものびやかな水彩と、素材の持ち味を生かしたコラージュの楽しい、クラシカルなイラスト。 鮮やかなカラーのページと、もとはカラーだったものを白黒で印刷したような(?)無彩色のページが、互いに引き立てあうように交互に組まれていて、目にも新鮮、由緒正しき古典絵本の趣です。
原書は、『BIMBULLI 』(Verlag Jungbruuen Wein Munchen 1964)とあります。こちらも、こどもたちに長く愛され続けている絵本、だそうです。
女の子が白い布を上手に使ってこしらえた、ままごとの可愛い人形の名前はクルリン。 クルリンはひょんなことから、めんどりのたまごをあずかります。やがて、中からピイピイ、ヒヨコ王子が生まれました。
生まれたてのヒヨコ王子をままごとのうばぐるまに乗せて、クルリンは野原を散歩します。ところが、うばぐるまが坂道をころがりおちて、ヒヨコ王子もろとも、みずうみにバッシャーン! クルリンは勇敢にうばぐるまにとびのって、おびえるヒヨコ王子をはげまします。やがて、空からざあざあ、大粒の雨が降り出しました。
ちょうど雨宿りにもってこいの、古いむぎわらぼうしが、むこう岸のアシのしげみにひっかかっていたのですが、先客のカエルがいて、 「これは、わしのむぎわらぼうしだ」 とつっぱねます。 そこへ、木ぎれにしがみついたネズミが、がたがたふるえながら流されているのが見えました。 「おーい、こっちにおいでよ!」 クルリンはネズミにさけびます。 「『わしの』ぼうしだぞ!」 と、カエル。 そこへ今度は、クワガタとバッタが流されてきて・・・。
少し長めのしっかりとしたテキストの、次々と訪れる楽しい場面展開に、いつしかぐいぐいと引き込まれます。 にぎやかな生き物たちの、帽子の下で繰り広げられる、おしくらまんじゅうのような愉快な押し問答は、そのまま子どもが読んでも十分面白いけれど、大人が読んでも、さらに深く楽しめます。 どしゃぶりに流されて、困っている生き物たちを、帽子の所有権を主張するカエルにかまわず、みんな「ここにおいで」と、よびよせる気前のいいクルリン。 ぶつくさ文句ばかりで気難しいカエルと、一つ屋根の下ならぬ一つ帽子の下に、ぎゅうぎゅうで雨宿りすることになった生き物たちの、それぞれの言い分や、やまない雨に、だんだん出てくる不平不満。 何とか場の雰囲気を和らげて、みんなの気をまぎらわそうと、クルリンはあれこれ遊びを提案しますが、水はどんどん増してきて、帽子の中は真っ暗に・・・。
極限状態での集団心理を、小さな生き物たちのファンタジーになぞらえて、ユーモラスに、時にシニカルに、リズミカルに描きます。 『にぎやか色のちび』▲ や、『赤いロッコと緑のギル』▲同様に、この『クルリン』 も、読む人ごとにさまざまな受け止め方を与えてくれるので、子どものときに一度だけでなく、大人になってからも二度、三度と開けば、そのたびに新しい発見があるのでは。
クルリンは、自分も生まれたて(作りたて)のおちびちゃんなのに、どっこい賢くてしっかりちゃっかりしていて、生まれたばかりのヒヨコ王子の、いっちょまえの保護者の貫禄。 このあたりは、ままごと好きな3姉妹にも大受けでした。 おまけに、表紙見返しに、クルリンの作り方まで載っているから、見よう見まねで何とかてるてるぼうずもどきを作って、さっそく空き箱のベッドに寝かせて遊んでいました。 ( 結局、しっかりもののクルリンも、子どもたちにかかればあっという間に赤ちゃんになっていましたが、笑)
作り方は簡単そうですが、さらに我が家では、もっと簡単にするべく、糸を使わず輪ゴムでくくっちゃって、名前ペンでおめめもお口もボタンも書いちゃいました。これなら、ほとんど布で作ったてるてるぼうず、という感じなので、6歳の長女にも何とかできる感じ。(仕上がりは、まあ、あのその、ですが、参照は上記写真▲をどうぞ・・・)
で、この『クルリン』たちの、どこか「ノアのはこぶね」を思わせる、雨宿りという設定ですが、また別の、何かの絵本でも見たような・・・、と、思ったら、ありました。図書館で以前読んだ記憶があって、探してみたのですが、こちら。
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『みんなおいで』 ミラ・ローベ作 アンゲリカ・カウフマン絵 くすだえりこ訳 好学社 1980 品切れ
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あめがふる。どこもかしこもみずびたし。 「もうたくさん!」とうんざりしたねこの、枝にいる木までねっこからなぎ倒して、あめはふる。 思わぬ船旅に出発したねこの方に、びしょぬれのぶた入りの、木のおけが流されてきた。
「おいで!」 ねこは言った。 ぷっかぷか、きはただよっていく。 見れば、いぬがけんめいに泳いでいる。「たすけて!」 「おいで!」 とねこはこえかけた。
「このつぎやってくるのはだれかしら」 そこへ、つぼにのりこんだにわとりふうふが・・・。
ねこの流木を助け舟に、大小強弱さまざまな動物たちのひとときのやりとりが、リズミカルな劇のように描かれた楽しい絵本。 ふだんは見知らぬもの同士、あるいは敵対するもの同士でも、本当に困ったときには助け合い、譲り合い、知恵を出し合って、ともに困難を乗り越える、力強い作品です。 「みんなおいで」とあらゆるものに言い続けたねこの勇気と機転、やさしさと心の広さが、とても心に残ります。
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こちらもミラ・ローベさんの作品なのですね。 イラストは、アンゲリカ・カウフマンさん。この方も、オーストリアの著名な児童書・画家だそうです。繊細な線を活かした線画で、主として登場人物たちを描き、筆の面を活かした大胆なタッチで、背景などをしたためた、どこかクラシカルなイラスト。カラーと、白黒の、交互で構成された絵本です。
ちなみに原書は『Komm,Sagte Die Katze』(Verlag Fur Jugend Und Volk Gmbh 1975) とあります。こちらのほうが、『クルリン』より新しい作品なのですね。 てきぱきとリズミカルで、スパイスのきいたシンプルなテキストと、繊細で大胆なイラストの、雨上がりのようにさわやかな絵本。 現在惜しくも品切れなのですが、図書館などに蔵書がありましたら、お読みになってみてくださいね。
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