■ミラ・ローべさんの絵本*2
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ミラ・ローべ・・・(1913-1995) ドイツのユダヤ人の家庭に生まれ、ドイツナチスの手を逃れて1936年パレスチナへ亡命、1940年結婚後2児の母となり、1950年一家でウィーンへ移住、フリーの作家となる。1943年より児童文学の創作に励む。童話『りんごの木のうえのおばあさん』で、オーストラリア児童文学国家賞、ウィーン市児童図書賞を受賞など、国内外の数々の賞を受賞した。≪ミラ=ローべさんの他の絵本はこちらにも。 (『あるきだしたゆきだるま』偕成社 より)
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『あるきだしたゆきだるま』* |
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『あるきだしたゆきだるま』 ミラ=ローベさく ヴィンフリート=オプゲノールトえ ささきたづこやく 偕成社 1984年
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にわにたっていたごく普通のゆきだるまが、リーザに熱いお茶を飲ませてもらったとたん、心までかっかとあたたまり、じっとしていられなくなりました。思わず歩き出したゆきだるまは、まずにぎやかな町へ出て驚き、静かな田舎へ行ってびっくり・・・。
さあ、ゆきだるまは、どこへ向かったらよいのでしょう?
考えぬかれた構成と、描きこまれたきれいな線画の、にぎやかなページたちを、つぎつぎとめくるスリルと楽しみにあふれた絵本。 寒いところでしか生きられないという定めをもつゆきだるまが、自分にぴったりの場所を探すほのぼのとした愉快な物語ですが、作者の生い立ちを知って読むと・・・また、静かなる熱いメッセージが伝わってくるような気がします。
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リーザの庭に、普通のゆきだるまがたっていました。おふるのぼうしをかぶり、にんじんのはなをつけたゆきだるまです。 外は寒いでしょうと、やさしいリーザが熱いお茶を飲ませてあげると、ゆきだるまは身体と心まで熱くなりました。もうじっとしてはいられません。
歩き出したゆきだるまは、にぎやかな町へ出ました。みんながゆきだるまを見て驚き、ゆきだるまも人や車の多さにおどろきました。 「もっとしずかでひろびろとしたところへいきたいなあ」 と、つぶやいたゆきだるまに、男の子が田舎への道を教えてくれました。 田舎の一面の銀世界へ来たゆきだるまは、「すてきなところだなあ」と、つぶやきますが、カラスの話をきいてびっくり・・・。
あるきだした雪だるまが、自分にぴったりの場所を探して旅するテキストは、素直で心温まる展開で、小さな子にもわかりやすく、読み聞かせにもおすすめです。 絵本全体を通じて用いられている、定まった枠の内と外の巧みなレイアウトが、華やかな線画にぴったりととけこんでいて、目にも鮮やか。 つぎつぎとページをめくるたびに、同じ枠に基づいて描かれていながら、その大胆な違いのきわだつイラストに、ハッと心も奪われます。 めくったあとの、目のさめるような美しい変化に、何度でもページを開きたくなる楽しい絵本。 昔話を思わせる締めくくり方も、しゃれています。
原書は『ES GING EIN SCHNEEMANN DURCH DAS LAND』(Verlag Heinrich Ellermann KG,1980)とあります。 イラストは、ヴィンフリート=オプゲノールトさん。1939年ドイツ生まれ、33歳からウィーンに移住、教科書の挿絵や絵本の制作を始めたそうです。アマゾン洋書などで検索すると、作品多数。 テキストは、オーストリアの代表的児童文学作家、ミラ=ローベさん。1913年ドイツ生まれ、ユダヤ人のため戦時中一家でパレスチナに逃れ、亡命生活の後、ウィーンで優れた児童文学作品をつぎつぎと発表。≪ミラ=ローべさんの他の絵本はこちらにも。
わくわくとどっきり、ユーモアとやさしさがちりばめられた、楽しくてにぎやかな絵本ですが、作者からの静かなメッセージをまたもう一つ感じるとしたら・・・大切な絵本になりそうです。
ネット書店などでは、次第に「品切れ」表示のところが多くなっているようですが、どうぞ偕成社さま、ひきつづきの重版をお願いいたします!
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