■ミロスラフ・ヤーグルさんの絵本 |
Miloslav Jagr 1927年、チェコのセミリ生まれ。1946年ジェレズニー・ブロトにあるガラス商業学校卒業後、プラハの実用芸術大学でヨゼフ・ノバーク教授の指導を受ける。装飾絵画専攻。児童書を中心とする挿し絵、アニメーションフィルム、舞台装飾、および陶芸に従事。 (『そらとぶしょうねん』フレーベル館 品切れ 表紙カバー裏見返し 著者紹介 より) |
『そらとぶしょうねん』 |
関連; 千野栄一さんの本『ビールと古本のプラハ』 |
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『そらとぶしょうねん』 ミロスラフ・ヤーグル作・絵 千野栄一訳 フレーベル館 1985年 品切れ
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ひょんなことから空飛ぶ翼を手に入れた少年が、チェコの大空を舞うのびやかな物語。 眼下に見下ろす独特のフォルムの美しいチェコの町並みが、夢と憧れ、郷愁をかきたてます。 作者の静かな情熱を感じるさわやかな絵本。
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チェコのイゼラ川の真ん中の川中島に暮らす少年は、川の凍る冬には学校に行けません。ある日ゆきだるまをつくって遊んでいると、103番目のゆきだるまの大きなこびとが口をきいて、ねがいをかなえてあげようといいました。
「かわにこおりがはったとき、とんでがっこうにいけるように、つばさがほしい」 そういうわけで少年は、学校へ飛んでいくようになりました。飛ぶことが好きになった少年は、目にした美しいチェコの景色をたくさんの絵にしたためます。
ところがある日、それを見た用務員さんが・・・。
好きです。 のびのびとした水彩の、すこしくすんだ色調の、独特のユニークなデフォルメの、楽しくてにぎやかな絵。 空から見下ろす町並みが、このうえなく美しく、ああ、チェコの絵本だなあ、という感じ。 山ののどかな畑のうねも、らせん状に巡る道も線路も、けむりをたなびかせる家々の煙突も、箱庭のように、宝の地図のように、一枚の風景にとけこんで、眺めているだけでわくわくします。 まさしく「会心の作」ですよね。
そして何より、健やかな憧れと郷愁をさそうお話が好き。作者の大切な心のふるさとを描いているのかも・・・などと思ったりします。
原書『KLUK S KRIDLY』(正確な表記ができなくてごめんなさい) Albatros社 のコピーライトは1980年。千野栄一さんによる邦訳の出版は1985年。20年以上前の絵本なのですね。 残念ながら現在は品切れ。当時のチェコの社会体制を考えると、空をのびのびと飛ぶ少年の物語は、なんて自由だったのでしょう。 1980年前後といえば、同じチェコの絵本作家、ヨゼフ・パレチェクさんの素晴らしい作品がつぎつぎと世に送り出された年と重なっていますよね。(このころフレーベル館、岩崎書店、童心社、ほるぷ出版、偕成社、佑学社・・・と、多くの出版社がチェコの素晴らしい絵本をご紹介くださっています)
図書館などでこの『そらとぶしょうねん』をごらんになる際には、ぜひ、カバー見返しの千野栄一さんの訳者のことばをお読みください。これがまた、実に素敵なのです!まさに、『ビールと古本のプラハ』(白水社) の世界。 ちなみにこの表紙は、ヨゼフ・パレチェクさんによるものです。
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『ビールと古本のプラハ』 千野栄一著 カバー絵ヨゼフ・パレチェク「秋」 白水社 1997年
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百塔の町プラハ。ビールに情熱をかたむけ、古本をいつくしむ町プラハ。歴史と芸術の古都プラハに、かつて学び、暮らし、人々と心を通わせた著者が、愛するプラハの今昔、魅力について語ったエッセイ集。 1988-97年にかけて、岩波書店の雑誌『図書』の掲載されたエッセイなどをまとめ、新たに加筆したもの。
ヨゼフ・パレチェクさんのアトリエを訪れたときのお話も少しふれられています。(「チャペックとビールのチェコ」)
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