■モーリス・センダックさんの絵本 |
1928年生まれ。アメリカを代表する絵本作家。1946年『かいじゅうたちのいるところ』(冨山房) でコルデコット賞、1970年国際アンデルセン賞など、数々の賞を受賞した世界的な絵本作家。兄は作家のジャック・センダック。 |
*『まどのそとのそのまたむこう』*『ピエールとライオン』 |
『まどのそとのそのまたむこう』 福音館書店 限定復刊
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『まどのそとのそのまたむこう』 モーリス・センダックさく・え わきあきこやく 福音館書店 1983年 限定復刊
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ふなのりのパパは海へお出かけ、ママは一人であずまやにたたずみ、姉のアイダは赤ちゃんの妹のお守り。 けれど妹から目を離したすきに、ゴブリンたちが妹を連れ去り・・・。
その美しさに胸がざわめきさえするような、「まどのそとのそのまたむこう」の神秘的な世界を、いさましいアイダがホルンを手に進みます。
どこかここではない、遠いところへ行ってくる主人公を描いた、モーリス・センダックさんの絵本。 嬉しい2006年限定復刊。
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2006年春、福音館書店さんからの、嬉しい復刊絵本たちの一冊です。 少し前にも、やはり限定復刊になったことがあり、私物はそのときに思い切って購入。当時も税込み定価2100円と、絵本にしては豪華だったのですが、絵本を開いて納得しました。美しいカバーをはずすと、和書には珍しい豪華布張りに、金のタイトル文字の型押しがきらり。 愛蔵版の趣ですよね。
世界を代表する絵本作家、モーリス・センダックさんの魂のこめられた一冊です。 どのページも完璧なまでに美しく、内に激しい情熱と重厚な音楽を秘めていながら、やわらかく穏やかな色彩でみずみずしく包んでいます。 光と影と空間を自在に用いて描かれた、いきいきとした姉のアイダの活躍は、まるで目の前で舞台を見ているよう。 赤ちゃんの妹の、場面ごとの不安や喜びの一瞬を見事にとらえた、赤ちゃんらしいさまざまな表情は、言葉よりも強く、ハッと胸をうち、うったえかけてくるようです。
物語は、美しいレタリング文字(カリグラフィ)と、とてもシンプルな文章で、うたうように添えられています。
パパはうみへおでかけ。 ママはおにわのあずまや。 アイダはあかちゃんのおもり。 まほうのホルンをふいてあげよう。 だけど赤ちゃんをみないでいたら
ゴブリンたちがやってきました。 ・・・。
クラシックのオーケストラが静かに鳴り響きはじめるような、格調高い雰囲気の物語の最初から、薄紫色の衣に不吉な身を隠すようにつつんだゴブリンたちが、さりげなく登場し、やがて当然のように、アイダから赤ちゃんのいもうとをさらっていきます。
パパが海の遠くに出かけ、残されたママが物憂く一人の世界に沈む今、パパのかわりにママといもうとを守るのは、いさましい姉のアイダ。 アイダはゴブリンたちを追って、ママの黄色いレインコートにくるまり、ホルンをポケットにつっこんで、窓の向こうに出て行きます。
何か暗示のような、呪文のような、神秘的な言霊を感じるテキストと、生と死の境界をただようような、封じられていた内なる世界をさまようような、どこか胸騒ぎさえするような妖艶なイラストが、鳴り響く音楽とともに一つにとけあって、読み手を極上の別世界へと連れて行ってくれます。 物語の終わり近く、アイダが小川に沿って帰ってくる場面に、さりげなく風景の中に描かれたあずまやで、無心にピアノをひいているクラシカルな人物は、モーツァルトでしょうか・・・?? 物語の中ほどで、後ろ向きに飛び出してさまようアイダに、どこからともなくふなのりのパパの声が聞こえてくる場面の、左下に描かれた二人の男性は、誰・・・???
細部まで丹念に描かれた絵画のあちこちに、まだ知らぬ秘密がたくさん隠されていて、ひとつひとつが、別の物語に結びついているような、大いなるセンダック・ワールド。
そのモーリス・センダックさんが後に5年がかりで描き、1988年に出版された『DEAR MILI』(Trophy Pr など。邦訳は『グリム童話 ミリー』ほるぷ出版)の中の、訳者の神宮輝夫さんのあとがきに、 「ゴールドスタインの記事によれば・・・、この絵本(※『グリム童話 ミリー』)の仕事をしているあいだ、背後にはマーラー、ハイドン、モーツァルトたちの音楽がひびいていたということです。」 とあります。 その音楽とおなじものが、『まどのそとのそのまたむこう』にも流れているような気がします。
嬉しいことに、『まどのそとのそのまたむこう』を、たちまち3姉妹も気に入って、じっと眺めたり、一人で見入ったりしています。 自分たちの年頃に近い、いさましい姉と姉を慕う無垢な赤ちゃんのいもうとの姿を、とても身近に感じるとともに、ちょっと不穏でまがまがしい全体の雰囲気を、怖いものみたさの幼心で、ちょうどぴったり楽しんでいるのではと思います。
限定復刊ですので、お探しの方はお早めに! よろしければ、図書館などでお読みになってくださいね。
原書は『OUTSIDE OVER THERE』Harper&Row,Publishers,Inc.,New Tork,1981、とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。 1982年コルデコット賞オナー賞をはじめとして、数々の賞を受賞している作品です。
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『Outside over There (Caldecott Collection)』 Trophy Pr
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『ピエールとライオン』 ためになるおはなし はじまりのうた といつつのまき モーリス・センダックさく じんぐうてるおやく 冨山房
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手のひらサイズの水色の小さな絵本です。 原書は『PIERRE: A Cautionary Tale』Harper&Row,Publishers,Inc.,New York 1962、とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『Pierre: A Cautionary Tale in Five Chapters and a Prologue』 Harpercollins
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↑ 上記洋書は、邦訳絵本と同じ色調の表紙。その他の版には、下記のような、茶色を基調とした版もあるようです。 ↓
『Pierre: A Cautionary Tale in Five Chapters and a Prologue』 Trophy Pr
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『Pierre: A Cautionary Tale in Five Chapters and a Prologue』 Bt Bound
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また、この絵本は、セットで箱入りの豆本としても出版されていて、こちら。↓
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『Nutshell Library (Caldecott Collection)』 Harpercollins Childrens Books
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『Alligators All Around』, 『One Was Johnny』 , 『Chicken Soup with Rice』, 『Pierre』 の4冊
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この愛らしい豆本セットの邦訳はこちら。↓
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『ちいさなちいさなえほんばこ』 モーリス・センダックさく じんぐうてるおやく 冨山房
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『アメリカワニです、こんばんは』 『ジョニーのかぞえうた』 『チキンスープ・ライスいり』 『ピエールとライオン』 の4冊の豆本セット
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さて、『ピエールとライオン』です。 3姉妹も大好きな「ためになるおはなし」。 シンプルで小ぶりな表紙に、 「はじまりのうた といつつのまき」 と記されていて、クラシカルな気品が漂います。 その手にぴったりなじむこの絵本を手にした小さな子どもが、小さいながらも大人の本のようにきちんと整えられた扉、中表紙、目次・・・の洒落た装丁を目にして、この絵本に、特別な予感を抱く様子が、目に浮かぶよう。 3姉妹にとっても、大切な一冊になりました。
おとこのこがひとり なまえはピエール このこがいうのはただひとつ 「ぼく、しらない!」 ・・・
おかあさんにも、 「ぼく、しらない!」 おとうさんにも、 「ぼく、しらない!」 挨拶されても質問されても、とがめられてもなだめられても懇願されても、あの手この手の誘い文句も、何でもかんでも、 「ぼく、しらない!」 ついに、おとうさんとおかあさんは仲良く連れ立って出かけてしまいます。
口調のよいなめらかな文章に、相手をなめきった「ぼく、しらない!」の、捨て台詞。文字を読んでも耳で聞いても、どきっとしますが、リズミカルな文章に繰り返しさしはさまれていると、民謡の合いの手やお囃子のように、だんだん愉快に楽しく響いてくるから不思議。 もし実生活でこれを繰り返し実践されたりしたら、こんな優雅なやりとりをする余裕はないでしょうけれどもね(苦笑)。 大人も子どももそれぞれにたっぷり心当たりのある、イヤイヤちゃんの大活躍ぶりに、びっくりしたりあきれたり、いいのかなとはらはらしたり、いいぞいいぞとこっそり応援したり、だめだめとちょっぴりお姉ちゃんのつもりでたしなめてみたり。
おるすばんの小さな暴君のもとに、やがてやってきたのは、暗闇とはらぺこらいおん。 「しにたいかね」 ときかれても、 「ぼく、しらない!」 多少ひるんだライオンに、 「おなかにはいれば、おまえのおやも・・・」 と進言(?)されても、 「ぼく、しらない!」 とうとう、らいおんはピエールをたべちゃった。
初志貫徹で、見事ライオンにまるのみにされたピエールは、あっぱれですらあります。 小さな読み手のどきどきとはらはらを一身に背負ったまま、まんまと食べられてしまったあわれなピエールは、これからどうなってしまうのでしょう? 「きちんとよめば、おしまいにためになることかいてある」ので、お楽しみに。
本文は、少しくすんだ黄色と青色の2色をそえて、さらさらと生き生きと描かれた線画。 何でもかんでも、 「ぼくしらない!」 が決まり文句のきかんぼうのピエールの、気難しさもふてぶてしさもやんちゃでちょいと可愛らしいところも、わかりやすくはっきりと、表情豊かに描かれています。
3姉妹二女が三歳当時気に入ったのは、ピエールがついにライオンに食べられてしまうところ。食べる・食べられるのちょっぴりこわーいお話が大好きな二女の、小さなスリルがきちんと叶えられて、小さな正義もきちんと最後に正しくなっているところに大満足。 長女が同じ三歳当時気に入ったのは、この絵本が「はじまりのうたといつつのまき」に分かれているところ。いちのまき、にのまき、と、たどたどしく読み上げてごきげんでした。 さらに「はじまりのうた」という一文に反応した歌好きの長女に楽譜つきの歌と勘違いされ、「ママ、これ、うたって」と、ねだられてあせったことも。その口調のよさは、歌になっていてもまったくおかしくないとおもうほどですが、もしかすると、こちら↓で本当に歌になっているのかもしれません!
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DVD 『かいじゅうたちのいるところ』 ヤマハミュージックメディア 字幕・ナレーション:二か国語 (日本語・英語) 日英対訳小冊子付き
↑画像をクリックすると楽天ショップ「絵本ナビ」で詳細がごらんいただけます。
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収録作品(全3話) 第一話「ちいさなちいさなえほんばこ」(歌) ♪アフリカワニです、こんにちは ♪ピエールとライオン ♪ジョニーのかぞえうた ♪チキンスープ・ライスいり 作曲・歌:キャロル・キング〈字幕〉
第2話「まよなかのだいどころ」
第3話「かいじゅうたちのいるところ」
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上記にもあるキャロル・キングさんの歌のCDが、こちらだと思われます。↓
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CD 『おしゃまなロージー [Original recording remastered] [Soundtrack]』 キャロル・キング Sony Music Direct
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1.おしゃまなロージー 2.ジョニーのかぞえうた 3.ワニさんがいっぱい 4.いじっぱりピエール 5.ロージーの魔法 6.チキン・スープのバラード 7.ライス入りチキン・スープ 8.夢のP通り 9.ロージーのお隣さん 10.女優ロージー 11.人生って頭痛ね 12.おしゃまなロージー(リプライズ)
TVアニメのために書き下ろした楽曲で構成されたサントラ盤(75年作)。モーリス・センダックの書いた子供向けの詩にキャロル・キングが曲を付けた異色作をデジタル・リマスター仕様で。 *アマゾン内容紹介より
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