■メアリ・チャルマーズさんの絵本

アメリカの絵本作家。代表作に、『Take a Nap, Harry』Harpercollinsなどの「ねこのHarry」シリーズ、Marigold and Grandma on the Town (An I Can Read Book)』Harpercollinsなど。
『おとうさんねこのおくりもの』*『とうさんねこのすてきなひみつ』(新訳復刊)
≫別頁『にいさんといもうと』

 
『おとうさんねこのおくりもの』福音館書店 品切れ

おとうさんねこのおくりもの  

『おとうさんねこのおくりもの』
メアリ・チャルマーズさく・え
まつのまさこやく
福音館書店
1980年
品切れ

あついなつのひ。
「ぼくたち、これからピクニックにいくんだよ」
つぎつぎと、他の家族が楽しそうにピクニックにお出かけするのを見るたびに、ねこの兄弟リトル・グレイとジョナサンは、おとうさんのところにかけもどり、
「ぼくたちもいく?」
「いいや、きょうはだめだ」
くりかえしたずねますが、おとうさんは首をふるばかり。

でも、おとうさんのかおつきは、なにやら、ひみつでもありそうです。
そうです。
おとうさんはちゃんと家族のピクニックのために、とっておきのものをこっそりこしらえていたのでした。

そして、ついに明日は待望のピクニック!
ねこの家族は大喜びで・・・

メアリ・チャルマーズさんの、優雅で愛らしいイラストと、繰り返しの楽しいテキスト、そしておとうさんねこのとっておきの秘密で、ピクニックへの期待と、ほのぼのとしたやさしい気持ちがふくらんでいく絵本。手放しで大喜びする家族を見ていると、こちらまでいつしかおとうさんと同じ満面の笑みがこぼれます。

メアリ・チャルマーズさんの邦訳絵本が、かつて福音館書店から出されていたのですね!
図書館の閉架書庫からとりよせました。
にいさんといもうと』(岩波書店 品切れ くわしくは≫こちら) 楽天ブックスと同じような少し小ぶりの大きさの、黄色い表紙。真ん中におめかししたねこの一家が、通りすがりのかえるたちに手を振りながら、にこやかにピクニックへ出かける場面が、黄色、水色、その混色の緑の3色を施された、シンプルな鉛筆の線で描かれています。
扉を開けると、見返しは水色。すこしくすんだうすい水色は、『にいさんといもうと』でも効果的に用いられている、個人的に大好きな色。
擬人化したねこの、ズボンやぼうし、フリルやリボンの、丹念に描かれ、品よくまとまった線画は、『にいさんといもうと』の雰囲気に惹かれる方なら、きっときっと気に入るはず!

原書は『MR. CAT'S WONDERFUL SURPRISE 』Harper& Row,Publishers,Inc.,1961年とあります。1960年の作品『にいさんといもうと』ともども、40年以上も前の作品なのですね。
古きよき絵本のもつ、きちんとしていながら、のんびりした、折り目正しきおおらかさがあるような気がします。

物語も、とてものびのびと、ひとつひとつ進みます。

あついなつのひでした。
おとうさんねこはいちごばたけのていれ、おかあさんねこはほしもの、モードはあかちゃんのおもり、にいさんのリトル・グレイとジョナサンは、のはらでしゃぼんだまをとばしていました。
そこへ、がのこどもたちがとんできて、
「ぼくたち、これからピクニックにいくんだよ」

それを聞いたリトル・グレイとジョナサンは大急ぎでうちへ帰り、早速おとうさんねこに、聞きました。
「ぼくたちもいく?」
「いいや、きょうはだめだ」

次の日、うさぎさんのいっかが、じどうしゃでとおりかかりました。
「あたしたち、ピクニックにいくのよー!」
それを聞いたリトル・グレイとジョナサンはまっすぐうちへかけてかえり、
「どうしてぼくたちはいかないの?」
「さきにかたづけなきゃならんしごとがあるんでね」
でも、おとうさんのかおつきは、なにやら、ひみつでもありそうです。
・・・。

優雅で愛らしいイラストと、繰り返しの楽しいテキスト、そしておとうさんねこのとっておきの秘密で、ピクニックへの期待がどんどんふくらんでいきます。
おとうさんねこが、みんなが寝静まった夜にこっそり家を抜け出して、何をせっせとこしらえているのか、テキストでは明かされていませんが、丹念なイラストにそのまま描かれているので、ほのぼのと、半ば安心した気持ちで、わくわくと、半ばおとうさんねこになったような気持ちで、ページをめくることができそうです。

さて、ついにとうとうピクニックにいけることになったリトル・グレイとジョナサンたちは、おかあさんねこまで、諸手を上げて大喜び。
そのピクニック前夜のおかあさんねこのはりきったお弁当作り、当日早朝の喜びいさむあまりのこねこたちの三度もの極端な早起きの、描写のひとつひとつがとてもほほえましくて好きです。
いよいよピクニックにいく場面の、今度こそ他の人たちにリトル・グレイとジョナサン自身が、
「ぼくたち、ピクニックにいくんだよ!」
と大手をふるところも大好き。(それが表紙になっています)
そんなに喜んでもらえた上に、おとうさんねこにはまだもう一つ、家族のための大切な秘密があるのですから、おとうさんねこのこっそりとはちきれそうな胸のうちを思うと、こちらの心まで弾んでしまいますよね。
満を持して描かれた、おとうさんねこの満面の笑顔が、いちばん好きな場面です!

のどかでおおらかで、優雅で上品な、古きよき絵本のおくりもの。
原書でも品切れのようですが、またぜひ復刊を希望いたします。
図書館などで見つけたら、お読みになってくださいね。

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 ・・・と、以前に書いたのが2006年5月のこと、なんとなんと、その前年の2005年8月に、童話館出版さまより、嬉しい嬉しい復刊になっていたのです!!
新しいタイトルは、

『とうさんねこのすてきなひみつ』童話館出版

表紙の装丁も新たに、あきのしょういちろうさんの新訳で、こっそりひそかにおくゆかしく、すてきなひみつをたくらんでいたのですね!(?)

アマゾンでお取扱いしているようです。嬉しい!
お近くの書店で注文していただくと、時間はかかりますがお取り寄せ可能ということです。あるいは、送料はかかりますが、直接童話館出版さままで。

『とうさんねこのすてきなひみつ』童話館出版

『とうさんねこの
すてきなひみつ』
メアリ・チャルマーズぶん・え
あきのしょういちろうやく
童話館出版
2005年

ねこの一家のいろいろな場面をつなぎ合わせた、パッチワークのような表紙も楽しい、新訳での待望の復刊!

とうさんねこは、ひとり、にんまりしています。とうさんねこには、ひみつがあるのです。かあさんねこだって、しらないひみつですよ。

ほくほくにんまりと、とうさんねこのとっておきのひみつを共有しながら、わくわくにっこりと、待ちに待ったピクニックを丁寧に楽しめる絵本。
とうさんねこの気持ち、かあさんねこの気持ち、こねこたちの気持ちのおりなすユーモアや、ハーモニーを、丹念なイラストと、テキストから、ひとつひとつかみしめるように味わいたい!

もしも旧訳を読む機会があったら、訳の雰囲気の違いを楽しむのもすてきなひみつのひとつですよね。


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