■マーサ・アレクサンダーさんの絵本3『Blackboard Bear』シリーズ
絵本作家。アメリカのジョージア州生まれ。シンシナチ芸術学院、ハワイ大学で絵画を学ぶ。1965年から子どもの本の挿絵を描き始め、1968年に絵も文も自作の『Out!Out!Out!』(文字なし絵本)を出版。
1969年に『Blackboard Bear』、翌年には『Bobo's Dream』を出版。
その他の主な作品には、
『Nobody Asked Me If I Wanted A Baby Sister』(邦訳『ぼくあかんぼなんかほしくなかったのに』)、
『I'll Protect yOu from the Jungle Beasts』、
『Marty mcGee's mcGee's Space Lab』、
『No Girls Allowed 』、
『Move Over,Twerp』
などがあります。
(『How My Library Grew, by Dinah 』著者紹介参照)
『Blackboard Bear』*『Blackboard Bear』シリーズ
≫別頁『How My Library Grew by Dinah』*『Even That Moose Won't Listen to Me』*洋書
≫別頁『ぼくあかんぼなんかほしくなかったのに』*『When the New Baby Comes,I'm Moving Out』*『だれかあたしとあそんで』*『ほらきこえてくるでしょ』
≫別頁『ねえさんといもうと』

 

『Blackboard Bear』

***
『Blackboard Bear』
story and pictures by
Martha Alexander
Dial Books
for Young Readers.,
New York
1969

大きい子たちの仲間に入れてもらえなくて、くやしいちびっこぼうやが、黒板にでっかく描いたのは・・・。不思議なクマが、黒板を抜け出して、ぼうやの溜飲を下げてくれる爽快な絵本。
小粒な版型の愛らしい絵本ですが、なかなかぴりっと刺激的。邦訳希望!

カウボーイごっこにギャングごっこ。
「ぼくもいれて」
大きなおにいちゃんたちの仲間に入りたいのに、
「もっちろん、だめ。」
小さなぼうやは小さすぎるから相手にしてもらえません。
「ちびっこは家でそのくまと遊んでな」
ですって。
ぼうやは、もちろん、怒ります。

しかたなく家に帰ってしたことは、腹いせにくまのぬいぐるみを投げ捨てること、それから・・・チョークで黒板に絵を描くこと。でっかいでっかい大ぐまです。赤いチョークで首輪をつけて、紐をつけて、ちょいとひっぱったら、ほうら、黒板グマがお出ましになりました!

「ぼくもかして」
たちまちわらわらとあつまってくるおにいちゃんたちに、今度はぼうやが言う番です。
「もっちろん、だめ。」
さらにぼうやは・・・。

図書館で借りたのは、小ぶりの版型の愛らしい、白い表紙のハードカバー版。青、赤、黒、の3色刷りのシンプルな彩色が、クラシカルな雰囲気です。
タイトル文字のBLACKBOARD BEARの上を、でこぼこみちのように、等間隔で横向きに歩いていく男の子たちが描かれています。そのいちばん先頭をさっそうと歩くのは、くまのぬいぐるみを手にさげたいちばん小さな男の子。後ろに続くおにいちゃんたちは、カウボーイ姿だったり、ギャング姿だったり、インディアン姿だったりしますが、誰もが明らかにぼうやより年上のようです。あらら?おちびさんがおにいちゃんたちをひっぱってるのかな?
そして、続く裏表紙には、一番最後の少年が赤い紐でひっぱっている、赤い首輪の大きな黒くま。でも完全な黒色ではなくて・・・どちらかというと、濃灰色というか、・・・そう、それは「黒板」の色。タッチも切り絵みたいにベタッと均質な感じで、まさしく「黒板」を切りぬいたみたい。

表紙、裏表紙だけを眺めても、絵本をぎゅっと濃縮したようなフレッシュな物語を感じるイラスト。
絵も文もマーサ・アレキサンダーさんの手がけたこの小さな絵本は、ほんのひとこと、ふたことの会話、あるいはまったく無声、沈黙の場面と、それを口にしたり耳にしたり目にしたりする人物たちの表情、しぐさから成り立っていて、丁寧に描かれたイラストの移り変わりを追うだけで、説明無用、翻訳不要、ほとんど何を言っているのかわかってしまう明快さ、こたえられない痛快さです。
最初少年たちの仲間に入れてもらえなくてふてくされていた小さな男の子の、形勢逆転の喜びをかみしめながら、少年たちの丁寧な懇願を涼しい顔で高らかにお断りするあのしたり顔を見て!
さらに男の子のトドメがたまらなく痛烈です。静かな文字なしの結末のページにイチコロ、お行儀のよい豪快な黒板ぐまに文句なく一目ぼれいたしました。

マーサ・アレキサンダーさんの繊細なタッチで描く、等身大の子どもたちの素直な表情、いきいきとしたしぐさ、それからまっすぐなプライドが、やんわりふわりと物語を包み、ちくりとひきしめ、きらりとひきたてているような絵本。鉛筆と水彩で軽やかに描かれた全体のタッチと、黒板のそこだけベタ塗りのタッチの歴然とした差が、この絵本の世界をよりリアルにシュールに楽しめるものにしているように感じます。

この絵本はとても人気が高く、その後も続編や、再版がなされているようです。アマゾン洋書で見つけた画像のある再版の絵本はこちら。↓
古いもののイラストに、少し新しい手が加わっているのかもしれません。下記のどちらの絵本も、青、赤、黒の3色使いの1969年度版の表紙とは異なっています。

『Blackboard Bear
(ペーパーバック)』
Walker Books Ltd
(1995/09)

 『Blackboard
Bear

(ハードカバー)』
Candlewick Pr;
2nd版
(1999/11)

 

『Blackboard Bear』シリーズ

『You're a Genius, Blackboard
Bear

(ペーパーバック) 』
story and pictures by
Martha Alexander
Candlewick Pr (1997/08)

『We're in Big Trouble,
Blackboard
Bear
(ハードカバー) 』
story and pictures by
Martha Alexander
Candlewick Pr; 2nd版
(2001/10)

『I Sure Am Glad to See You,
Blackboard
Bear

(ハードカバー) 』
story and pictures by
Martha Alexander
Candlewick Pr; 2nd版 (2001/04)

『And My Mean Old Mother
Will Be Sorry,
Blackboard
Bear
(ハードカバー) 』
story and pictures by
Martha Alexander
Candlewick Pr; 2nd版
(1999/11)

『I'll Never Share You,
Blackboard
Bear
(Blackboard Bear)
(ハードカバー)』
Candlewick Pr; 1st版 (2003/11)

『Four Bears in a Box:
Blackboard Bear/
We're in Big Trouble, Blackboard Bear/
I Sure Am Glad to See You, Blackboard Bear/
and My Mean Old Mother
Will Be (ハードカバー)』
story and pictures by
Martha Alexander
Dial Books for
Young Readers; Boxed版 (1992/01)

箱入り4冊セット
のようです。

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