『ぼくあかんぼなんかほしくなかったのに』偕成社 品切れ
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『ぼくあかんぼなんか ほしくなかったのに』 マーサ=アレクサンダーさく・え きしだえりこやく 偕成社 1980年 品切れ
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みんなよってたかってあかんぼばかりかわいがるんだ。そこでぼくは、あかんぼを引き車に乗せて、誰かもらってくれる人ををさがしに出かけたんだ。 ところが出会った人たちは・・・。
上の子の下の子に対するゆれる気持ちを、あたたかなユーモアをおりまぜて描いた愛らしい絵本。すっきりとしたシンプルなイラストとテキストが一つになって、かっちりと物語をもりたてています。
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ぼく あかんぼなんてほしくなかったのに。
みんな、あかんぼのいもうとばかりちやほやするんだ。 だからぼく、あかんぼをおもちゃの引き車に乗せたんだ。
「ねえ、このかわいいあかんぼ、ほしくない?」 ところが、みんな都合がよくないって。 そんなとき、うちのかあさんはあかんぼが大好きだよって、トビーが言ったんだ。 トビーの家は兄弟姉妹がいっぱい!さっそくかあさんが抱こうとしたけれど・・・あかんぼのやつ、どうしてだか泣いて嫌がるんだ。 ・・・
約15.5センチ*15センチの、幼児のちいさな手になじみやすい愛らしい大きさの、ほほえましい絵本。 鉛筆で描かれたような穏やかな線の繊細な線画に、セピア調の淡い色彩が施され、すっきりとシンプルな落ち着きをみせています。 登場する子どもたちが、安定したデッサンでひとりひとり表情豊かに描かれているので、いつのまにかすうっと絵本の世界にはいってゆけそう。
ちいさな兄弟姉妹の出現に、とまどって、ちょっぴりやきもちをやいたり、すねたりする上の子をほほえましく描き、上の子の気持ちをたくみにときほぐす、ユーモアと愛情がたっぷり。 うちは3姉妹なので、にいさんは永遠のあこがれ。にいさんといもうと、いいなあ。 ちなみに、三歳半の3姉妹三女がいちばん気に入ったようでした。(幼稚園先生ごっこをすればいつも園児役、お医者さんごっこをやれば必ず点滴をされる三女の役割は、いまのところまだまだもちろん?引き車の中のあかんぼなのにネ・・・?)
原書は『NOBODY ASKED ME IF I WANTED A BABY SISTER』 1971 The Dial Press, New York とあります。 アマゾン洋書では、再販されたようで、こちらなど。↓
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『Nobody Asked ME If I Wanted a Baby Sister (ハードカバー)』 Charlesbridge Pub Inc (2005/10/25) |
アマゾン洋書で購入しました。表紙のイラストは同じですが、邦訳版より少し大きくて(約18.5センチ*18.5センチ)、装丁、用いられている紙質が異なります。
邦訳は画用紙のようなざらっとした紙、この洋書はつるつるの紙が用いられていることもあって、印刷の仕上がりのピントが少し甘く感じられ、古い絵本に基づいているような感じがしました。 とおもったら、実際に原書の初版に基づいて、水彩と色鉛筆で彩色があらためられた新装版のようです。
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『When the New Baby Comes, I'm Moving Out (ハードカバー)』 Charlesbridge Pub Inc (2006/2/10) |
もうすぐお兄ちゃんになる男の子の、心の準備が整うまでを軽快に痛快に描いた、愛らしい物語。
そのぼくの子ども椅子、どうして色を塗ってるの? これもあれもみーんな、塗っちゃうつもり? ママなんてゴミ箱にすてちゃうよ、じゃなかったら、ぼくのほうが出て行っちゃうから! 憤懣やるかたない男の子ですが・・・。 お母さんの台詞と、文字なしページが決め手かな?
未邦訳? 『NOBODY ASKED ME IF I WANTED A BABY SISTER;ぼくあかんぼなんかほしくなかったのに』の前作にあたる作品だと思われます。 (テキストのコピーライトは1979年とあるので、制作順としては、後から描かれたのですね)
この絵本も、原書の初版に基づいて、水彩と色鉛筆で彩色があらためられた新装版のようです。
余談ですが、男の子の洋服の「3」は、3歳ということなのかな、それともパパママぼくの三人家族の三番目ということかな? そしてこの絵本の中にちらりと登場するぼくのベビーベッドですが、次作『NOBODY ASKED ME IF I WANTED A BABY SISTER』でちゃんとピンクに塗り替えられているものだったりします(表紙をごらんくださいね)。
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『When the New Baby Comes Im Moving Out (Picture Puffins) (ペーパーバック)』 Dial Books for Young Readers; Reissue版 (1992/10)
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こちらは1992年度版。この装丁、彩色の雰囲気は、邦訳に近いものだと思われます(この絵本は未邦訳だと思われますが)。 原書はどんな感じだったのかな?
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『だれかあたしと あそんで』 マーサ=アレクサンダーさく・え きしだえりこやく 偕成社 1980年 品切れ
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いつだって、にいさんのオリバーは楽で得、いもうとのボニーは損な役。いやになったボニーは、遊んでくれる人をさがしますが・・・。
ちいさな兄弟姉妹の遊びの中に生じるちいさな摩擦を、楽しく生き生きと描いた物語。幼い子の手になじむ小ぶりの版型、身近なテキスト、やさしい線と色のわかりやすい絵が、幼い子の心をとらえます。
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前作『ぼくあかんぼなんてほしくなかったのに』(偕成社、品切れ)の、続きともいえる小さな絵本(16センチ*16センチ)。 今度の主人公は、前作では引き車の中で無邪気に寝かされて運ばれていた、あかんぼのいもうと・ボニー。そのボニーも、いまではもうピンクのリボンにピンクの水玉のワンピースのよく似合う、愛らしい女の子になっています。 前作の物語の最後のページと、この『だれかあたしとあそんで』の物語の最初のページが共通したモチーフを持っているので、前作から続けて読むと、その「類似」を「発見」した幼い子の驚きと喜びに輝く顔が見ものかも。最初からぽーんと絵本の世界にとびこめます。
にいさんのオリバーのゆうゆうと寝そべるおもちゃの引き車を、馬車のように引いて歩くのはいつだっていもうとのボニー。 どろぼうごっこをすれば、いつだってボニーはどろぼう、ぐるぐる縛られてしまいます。 「なぜいつもあたしばかり?」 抗議すれば、 「やーめた。なきむしなんかとあそびたくないもん。」 オリバーはさっさと別の友達のところへ。 ボニーだって憤慨。 「あたしだってあそびたくないわよ。いばってばかりいるひとと。」 気を取り直して別の友達や、いぬやねこを従えて遊ぼうとしますが・・・
年上らしく知恵が回り、涼しい顔でうまく立ち回る親分気取りのにいさんと、年下らしく無邪気で、対等に扱われたいのに、はたと気が付くと損な役回りばかりさせられている気の毒ないもうとの、なんともほのぼのくすくす愉快で痛快な物語。気づくボニー、怒るボニー、気を取り直すボニー、猫なで声を出すボニー・・・などなど、ボニーの豊かな表情のうつりかわりを眺めているだけでも楽しい! うちは3姉妹ですが、ボニーのそっくりさんも、オリバーのそっくりさんも、いるいる!それによく見れば、ボニーだってオリバーにそっくりだったりして・・・。 誰もが誰かにそっくりで、くるくる回る、にくめない愛らしいお話。 3姉妹三女が大のお気に入り(のところが、なんとなく感慨深いなあ。三女はどの子の立場で読んで、どの子を身近に感じたのかしらん。にいさん?いもうと?それとも別の、第3の誰かさん?) 前作からずっとにいさんのオリバーの目線で読むと、あの小さなオリバーもすっかり成長して世界が広がり、兄の特権(?)を行使できるようになってよかったねとか(笑)、いもうとのボニーによりそって読むと、あのねたきりあかんぼのボニーがこんなにも大きくなったのねぇとか、もしも続編があるとしたら、今度の主人公はあのコかなとか、いろいろな思いにとっぷりとひたることも、できるかも。
原書は『I'LL BE THE HORSE IF YOU'LL PLAY WITH ME』 1975 The Dial Press, New York とあります。
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『ほらきこえてくるでしょ』
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ラ=ヴァーン=ジョンソンぶん マーサ=アレクサンダーえ きしだえりこやく 偕成社 1969年 品切れ
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穏やかでやさしい文と絵で、夜のひとときにじっと耳をすませ、満ち足りた一日をふりかえり、心を豊かにふくらませ、しあわせな眠りについた小さなぼうやの物語。
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ビリーはおおきくなりました。だからいろんなことを知っています。 なかなか眠れない夜、おやすみなさいをしたあとで、ビリーはベッドにちぢまって、いろいろな物音にじっと耳をすませます。
カタ カタ カタ 下の台所から聞こえてくる音。あれは、おかあさんが、ばんごはんのお皿を洗っている音。 おいしかったな、おにくに、マッシュポテトに、そのあとチョコレートプティングだったな。 ビリーは思い出します。
バン バン バン 今度の音は地下室から。 ああそうだ!あれは、おとうさんがこわれたビリーのくるまをなおしているのです。 ビリーは考えをめぐらせます。
おや、こんどのおとは、リリリリリーン。 ・・・
楽しかった一日の終わりを告げるように、そっと下の部屋から聞こえてくる物音。夜のひそやかな音たちが、昼間の元気なビリーの一日を思い出させ、ビリーをつつむ大きな愛情を感じさせます。 この家の昼間のにぎやかさ、夜の静けさは、きっと、太陽のようにビリーを中心に回り、月のように満ち引きしているのでしょうね。 少しずつまわりの世界を知り、目を開き、耳をすませながら、大好きな家族に囲まれて、幸せな一日の余韻に満たされて・・・。 ビリーの、太陽の恵みを受けた小さな若木のように、すくすくと成長してゆく日々が、絵本を閉じた後も伝わってくるようです。
この物語は、テキストの作者のラ=ヴァーン=ジョンソンさんの最初の絵本で、なかなか寝付けないでいた4歳の息子ビリーとの「音ききごっこ」の、実際のエピソードをきっかけとして生まれたそうです。 (『ほらきこえてくるでしょ』偕成社 あとがき 作者と作品について(岸田衿子) より) 同じあとがきで、イラストのマーサ=アレクサンダーさんについてもふれられてあって、 「その繊細でおっとりした筆致は、よくこのお話の世界を伝えています」 とあります。優雅な線と淡い色彩の、静かで美しいイラストに、まさにぴったりの言葉ですよね。
原書は『NIGHT NOISES』1968 PARENTS' MAGAZINE PRESS Inc.とあります。
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