■マージョリー・フラックさんの絵本
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Marjorie Flack 1897−1958年。ニューヨーク州生まれ。アメリカを代表する絵本作家。著書に『アンガスとあひる』(福音館書店)、『おかあさんだいすき』(岩波書店)、『あひるのピンのぼうけん』(瑞雲舎)などがある。 |
『ウィリアムのこねこ』 |
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『ウィリアム の こねこ』 マージョリー・フラックぶん・え まさきるりこやく 新風舎 2005年
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「ミャー、ミャー、ミャー」 誰もが忙しい朝、迷子のこねこに気づいたのは、たったひとり忙しい理由のない小さいウィリアム。 ウィリアムはすっかりこねこが気に入るのですが、おかあさんは言うのです。 「もしかしたら、もうだれかのこねこかもしれないわよ」 そして、兄弟みんなで警察へ行ってみると、ちょうど、迷子のこねこを探している人が三人いることがわかりました。三人はこねこを見るなり、 「うちのねこだ!」
こねこはいったいだれのねこになるのでしょうか? 耳に心地よい繰り返しのテキストと、明快で美しいイラストで、丹念に描かれた古典絵本。こねこが元気と幸せを届けてくれます。 |
むかし、ある5月の月曜の朝、しましまのこねこが、村で迷子になっていました。 「ミャー、ミャー、ミャー」 と、迷子のこねこは鳴きましたが、誰もが忙しい朝のこと、牛乳屋さんも郵便屋さんも通勤途中のお父さんも通学途中の大きな子どもたちも、買い物途中のお母さんも、誰もこねこのことなど気づきません。 気づいたのは、牛乳屋さんでも郵便屋さんでも、お父さんでも大きな子どもたちでもお母さんでもない、どこにも急ぐ用事のない4歳の幼児、ウィリアム。
ウィリアムになついたこねこは、ピーターと名づけられ、ウィリアムも兄さん姉さんもすっかり気に入るのですが、どうやら迷子。 「もしおうちがみつからないようなら、うちでひきとりますって、いうといいわ。」 と、お母さんに言われて、兄さん姉さんが学校から帰ってくると、ウィリアムは、ピーターをかごに入れて、一緒に警察署に出かけます。
すると、迷子のこねこ捜索願の届出が、なんとこのところたてつづけに3件も! そして3件の届出人全員がたちまちに現れていうことには、 「まあ、これはうちのねこ!」 ・・・。
幼児の心をひきつける丹念な語りで、ひとつひとつ確実に物語を進ませながら、こねことのかかわりをやさしく描いて、ほのぼのあたたかなぬくもりを伝える、素朴でとてもすこやかな絵本。 均整のとれた美しいイラストも、幼いウィリアムをとりまく家族や町の人々のやさしさも、穏やかな物語の展開も、読んでいてすっぽりと安心感に包まれそう。 カラーのページとモノクロのページが交互に編まれている構成もなつかしい感じで、まさしく、古きよき絵本、折り目正しき古典絵本、時代を経てシオカドのとれたまろやかな絵本、という感じです。
最初から最後まで、一息に読んでしまって、あまりにもったいなかったので、子どもみたいに「もういっかーい」と、最初から丁寧にまた読み直してしまいました。自分の中の子どもの部分に、丹念に読みきかせをしているような、そんなここちよいデジャヴュ的気分も味わえる絵本、でした。
原書は『WILLAM AND HIS KITTEN』、コピーライト表示は、1938年と、1966年。
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