突然ですが、とてもとても古い絵本のご紹介。目下探求中ですが、残念ながらすでに品切れで、ふと読みたくなると、図書館の閉架書庫よりリクエストで貸し出ししてもらうのみ。 その絵本はこちらです。
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『まどをあけて!』 ヘレナ=べフレロバさく ハンナ=チャイコフスカえ うちだりさこやく 偕成社 1978年 現在品切れ |
こびとのミハウェクが、ふねをつくりました。 さあ、出発するのに、仲間がいれば素敵です。 水をこわがらなくて、ライオンなどの猛獣から逃げられて、自分と同じように木登りの出来る仲間はいないかな。 ミハウェクは一軒一軒、家の窓をとんとんとん、とノックして回ります。 すると窓が開いて、顔をのぞかせた動物たちは、気難しい顔。
水の嫌いな猫も、木登りのできない犬も、みんなみんな、 「おとなりへいってごらんよ」
ミハウェクは仲間をみつけることができるでしょうか?
ポーランドの素朴で愛らしい仕掛け窓明け絵本。深みのある色使い、筆のあともみずみずしいタッチ、ところどころ効果的に施されているコラージュ、切り絵のようなタッチ、つぎつぎと小人がノックする家の窓の、しゃれたカーテンや部屋のしつらえ・・・と、レトロで新鮮な魅力がいっぱいつまった、お洒落な絵本。 かっちりとした正統派古典絵本的、和やかで愛らしい結末は3姉妹も大好き。
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品切れ、なんですよね。この頃の偕成社さんの新訳えほんシリーズ、結構好みのラインナップなのですけれど・・・。 例えば、ドイツのヴィルフリード・ブレヒャーさんという方が絵も文も手がけた個性きわだつ作品、『ウエンデリンはどこかな?』、 トレッツ夫妻のユーモアあふれる作品、『かいじゅうなんかこわくない』、 などなど・・・、かなり個人的にほれこんで探求中のものがいくつかあるのです。 とはいえ、この新訳えほんシリーズの一部には、嬉しいことに現在も脈々と読み継がれている名作、 『しりたがりやのこいぬとたまご』、 『ねこねここねこ』、 『まっくろネリノ』、 などなど、とびきりのラインナップもあったりするので嬉しいかぎり。
さて。 『まどをあけて!』 です。 原書は『OTWORZ OKIENKO』Nasza Ksiegarnia、1969、とあります。 テキストのヘレナ=ベフレロパさんは1908年ポーランド生まれ、教師、児童雑誌の編集を経た後、詩や幼年童話を発表なさっているそうです。 イラストのハンナ=チャイコフスカさんは1930年ポーランド生まれ、絵本や童話の挿絵画家としてご活躍なさっているそうです。 (『まどをあけて!』の筆者紹介欄より・・・1978年出版当時のものです)
この絵本はドイツ語にも訳されているらしく、『Öffne das Fensterchen』、ドイツでも人気が高かったのかもしれません。 その他のハンナ=チャイコフスカさんの作品(おそらくヘレナ=ベフレロバさんとコンビ)のドイツ語版には、『Das Häschen aus dem zerbrochenen Spiegel.』1964年、『Ein lustiger Sommer.』1974年などがあるようです。
ヘレナ=ベフレロバさんの邦訳作品には、『こぐまとシーソー』(福音館書店 品切れ)があるようです。 ハンナ=チャイコフスカさんの邦訳絵本は・・・残念ながら、『まどをあけて!』のみのよう。 しかしその1冊で、心の窓から新鮮な風が吹き込んでくるには十分すぎるほど、印象的。
筆のあともみずみずしいタッチと、ところどころ効果的に施されているコラージュ、切り絵のようなタッチ、深みのある素朴な色の取り合わせ、つぎつぎと小人がノックする家の窓の、しゃれたカーテンや部屋のしつらえ・・・と、レトロなのですが、まったく色褪せず、とても魅力的なのです。
物語も、とてもとても愛らしくほほえましくて、さわやかなもの。 こびとのミハウェクが、ふねをつくりました。 さあ、出発するのに、仲間がいれば素敵です。 水をこわがらなくて、ライオンなどの猛獣から逃げられて、自分と同じように木登りの出来る仲間はいないかな。 ミハウェクは一軒一軒、家の窓をとんとんとん、とノックして回ります。 すると・・・。
この、とんとんとん、と窓をたたく場面、窓の部分が開閉する簡単な仕掛け絵本になっていて、窓を開けると、中の住人の動物たちが顔をのぞかせる仕組みになっています。 窓の下にはノックするミハウェクの後姿が描かれていて、本当にミハウェクの後ろにくっついて、家の窓をノックしているみたい。 「いないいないばああそび」ではありませんが、窓を開けると顔がのぞく、単純だけれど子どもの期待を裏切らない頼もしい仕掛けが、子ども心を強くとらえて、3姉妹もわれ先に窓を開けんと目をランラン(笑)。ですので、読み聞かせの際には勢いあまって窓を破られたりしないよう、細心の注意が必要かも。
そして、窓を開けると、のぞく動物たちの顔が・・・、ミハウェク(と読み手の子どもたち)の期待に対して、何故か少し浮かない表情なのです。 例えば、いちばんめのねこのバルトシェクは、朝が早いせいもあって眠たそう。 ミハウェクが海に誘うと、おあつらえむきに逃げ足も速くて木登りもできるねこは、水が嫌いだ、と言って、すげなくまどを閉めてしまいます。 「おとなりへいってごらんよ」
そして窓ではなくページ全体を次へめくると、窓からのぞいていたバルトシェクの部屋の中の全体像。家の中で考える場面です。 行けばよかったかなあ、いや、とんでもない。 そのお部屋のさりげない素朴なしつらえや、窓のカーテンの模様にも注目です。おしゃれ。
一方ミハウェクはおとなりの家へ行って、窓をとんとんとん、とノックします。 今度出てきたのはいぬのプフィク。 泳ぎが得意で走るのも得意なプフィクは、しかし首をふって、 「きのぼりはむりだなあ。となりへいってみたまえ。」 そして・・・。
ミハウェクは、果たして仲間を見つけることができるでしょうか?
最後までわくわくと、ページをめくるのも楽しい、素朴でおしゃれな絵本です。 実は、運良く古いドイツ語版を入手することができたのですが・・・、印刷の仕上がりが、少し異なる雰囲気なのですよ。全体的に色が薄い感じ。印刷は本国ポーランドでなされているみたいなのですが、版が違うのかしら(ちなみに邦訳より古い1971年)。やはり最初に目にした印象は大きくて、邦訳の印刷を追い求めるべく、引き続き探求中です。どこかで出あえるかなあ。
図書館などにもし蔵書がありましたら、ぜひ親子でお読みになってくださいね。
追記;この絵本への出会いのきっかけをつくってくださった素敵なkazさまのエントリはこちら。kazさまの現在のブログはこちら。kazさまありがとう〜!
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