『おかしな結婚式』


『おかしな結婚式』
ボフミル・ジーハ 作
ヤン・クドゥラーチェク 絵
井出弘子 訳
童心社
1986年
品切れ
原書『SVATBA V RYBNICE』1980

銀の池とよばれる美しい静かな池に、カッパのおやぶん、スターレクじいさんが、けらいのナマズをしたがえて、カッパのおしろに住んでいました。なにもかも秩序正しくおさまっているきらきらとした銀の池の中で、カッパのスターレクがただ一つ気に入らないのは、悠々と勝手気ままにふるまっている、一匹の鯉のベーナでした。
スターレクはベーナを呼びつけて、あれこれ文句をつけた挙句、
「いつになったら結婚式を挙げるつもりか?」
と、まったく気乗りのしないベーナに迫り、無理やりあさって結婚式をとり行うよう命じます。
そして、銀の池をあげて盛大に祝うベーナとヨハンカの結婚式にむけて、当人たちの困惑をよそに、ちゃくちゃくと準備がはじまりました・・・。

ヤン・クドゥラーチェクさんの描く、クロレラのような独自の深い緑色の水の中の世界が、カラーの見開きいっぱいのページや、あちこちにちりばめられたカットで、そして繊細な白黒の線画のカットで、かなりたっぷりと堪能できます。

「原画の持ち味をなるべく正確に出したいと、原画から改めてフィルムを作っていただきました」
(『おかしな結婚式』訳者によるあとがき「おわりに」 より)

とありますので、本当に贅沢な本だったのですね!
ちなみにこの、訳者井出弘子さんによるあとがき「おわりに」も、ヤン・クドゥラーチェクさんについてとても詳しく書かれていて、かなり貴重だと思います。

砂金石(アベンチュリン・クォーツ)のようにきらめく池、翡翠のような緑、帽子をかぶったダンディなカッパ、かえる、魚、ビー玉のような大きなお目目・・・、といえば、この、
おかしな結婚式』、
かんむりをもらったかえる』(学研ワールド絵本 昭和50年 品切れ)などなど、いくつかのヤン・クドゥラーチェクさんの作品を思い出します。
主としてそれらの作品を眺めていて気がついたのですが、いくつかの作品間で、そっくりなモチーフ(あるいは同一)が用いられていることがあるようです。お描きになっている一連の作品全体が、ヤン・クドゥラーチェクさんならではの独自の大きな世界を形成していて、内なる美しいモチーフを何度も繰り返し描いていらっしゃるということなのでしょうね・・・。
おかしな結婚式』でも、例えば、『かんむりをもらったかえる』、などと、一部よく似た(あるいは同一)イラストが見られます。このような発見もひそかな楽しみ。

■ドイツ語版『Hochzeit im Teich』(Altia Verlag, Praha 1980)について

アマゾン洋書では、
『Hochzeit im Teich.』(Dausien, Hanau 1984)

児童書形式の邦訳版より大きいサイズで、イラストのレイアウトや順番などが少し異なっています。一部邦訳版には見られないイラストもおさめられています。

この『おかしな結婚式』の原書『SVATBA V RYBICE』1980は、テキストの作者、ボフミル・ジーハさんの1980年国際アンデルセン賞作家賞受賞を記念して、出版なされたもの、だそうです。
ヤン・クドゥラーチェクさんとボフミル・ジーハさんのコンビの本は、他にもいくつかありますが、カッパの出てくる物語では、1974年の作品、
Jak vodnici udobrili sumce』(Albatros, Praha, 1974)、
かっぱたちがどうナマズをてなずけたか」があります。
(『おかしな結婚式』おわりに 参照)

↑『Hochzeit im Teich
(ハードカバー)』
Dausien Werner
(1984/01)
ドイツ語版

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