■表紙について ヤン・クドラチェックさんならではの、神秘的で深い色合いのきらめく緑色を基調とした、静かな池の底に小屋があり、その屋根の上に、わらを束ねたような帽子と赤いチョッキを着たカエルがこしかけ、目の前をゆうゆうと泳ぐ大きなお目目の魚を見つめています。翡翠のように光るお目目も、きらびやかな模様のうろこも、冠と一体化したような背びれも、まるで宝石をちりばめたよう。
■物語について 池、カエル、魚、と、ヤン・クドラチェックさんの描く水もしたたる美しい世界が堪能できます。 ある日静かな池に、おそろしいなまずの怪魚があらわれて、魚たちをいじめてあばれはじめました。お城の魚の王さまは、怪魚を退治したものにはほうびを与える、と、おふれを出しますが、ざりがにたちでさえ、おののいて逃げ出してしまいます。 それを見て、何事かと後を追ったかえるは、ばったり怪魚に出くわしてしまいます。 しかしかえるどん、ぴょうんとうまいこと、みずりんごの木に飛びのいたものだから、怪魚はかえるをつかまえようと、ぐいぐい木をおして、りんごがばらばらと落ちて・・・。 ストーリーはまったく異なりますが、どこかしら日本の民話「やまなしもぎ」を思い出すような、なつかしく心地よく、水面のさわやかな風のふく物語。
■絵本を読んで 全頁カラー、見開きいっぱいに躍動するみずみずしいイラストに、短くリズムよいテキストが添えられています。おんぼろぼろろん、などの、楽しく美しい擬態語がとても印象的。 飄々としたかえるどんも、物語の締めくくり方もとても好み。 池、カエル、魚、の、イラストの一部は、『Jak vodnici udobrili sumce』(未邦訳 1974年)▲、 『SVATBA V RYBNICE』(1980年 邦訳『おかしな結婚式』1986年)▲、 と、モチーフが重なっている(あるいは同一)ところもあるようです。
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■「学研ワールド絵本」について 過去の「学研ワールド絵本」シリーズの貴重な1冊です。 「学研ワールド絵本」といえば、現在も脈々と続く月刊予約絵本シリーズで、世界中で活躍するさまざまな作家、イラストレーターたちが、日本の園児たちのために描き下ろした、国際色あふれるオリジナル作品が魅力のシリーズです。 1970年代には、ヤン・クドラチェックさん、ヨゼフ・パレチェクさんなどなど、とても豪華な作家陣の作品が発表されていたようです。現在一部復刊していますが、まだまださらなる復刊を望みます!
■海外での出版について 当時の「学研ワールド絵本」の中には、欧米向けとして翻訳、出版されたものもあったようですが、『かんむりをもらったかえる』については、不明です。本国チェコでの出版もあったのでしょうか・・・不明。
■その他の学研版元の作品については、 『ちびむしちゃんのさんぽ』▲ 『かわせみとまほうのさかな』▲ 「おやゆびひめ」▲ 「ジャックとまめのき」▲ があります(判明分)。
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